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★ピタラス諸島第五、アーレイク島編★

654:抹消

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「グッ!? グレコぉおぉぉ~!!!」

 躊躇なく、グレコの胸に飛び込む俺。
 そんな俺をギュッと抱き締めるグレコ。
 まさに、感動の再会である。

 怖かったぁっ!
 怖かったんだよぉおぉぉっ!!

 半泣きになりながら、グレコの腕に抱かれていると、真顔でこちらを見るテッチャと目が合った。

「ええのぉ~。外見が可愛い奴は、素直に甘えられてぇ~」

 かなり羨ましそうなその声に、俺は途端に恥ずかしくなって、すっとグレコから離れた。
 するとグレコは、俺の両肩をギュッと掴んでこう言った。

「本当に良かったわ! ここまでみんな試練に合格したから……。モッモだけ不合格になったらどうしようって、心配してたのよ」

 ……おいグレコ。
 抱き締めて貰った手前、文句を言うのもどうかと思うが、その言い方は少々失礼ではないかい?
 
「ポポゥ、無事で良かったポよ、モッモちゃん」

 心底ホッとした様子で駆け寄ってきたのはノリリアだ。
 その後ろには、俺より先に扉をくぐって行ったパロット学士、インディゴ、ロビンズの姿もある。
 どうやらグレコの言葉通り、ここまではみんな、無事に試練をクリア出来たらしい。

「モッモさんは、どなたを選ばれたのですか?」

 パロット学士が興味津々な様子で尋ねてきた。
 どなたを、っていうのは……、恐らく、グリフォンに問い掛けられた、あの質問の事だろう。

「あ……、僕は聖母アリマを選んだよ」

「ふむ、そうですか。やはり皆バラバラですな」

 おん? バラバラとは??

「私とロビンズは、賢者ワー・イーズを選択しましたの」

 インディゴの言葉に、ロビンズが頷く。

 え? そうなんだ……
 じゃあ、グリフォンの問いの答えは、一つじゃないってことなのかな。

「私とノリリア、パロット学士は、三人とも盟友テュシアを選んで、テッチャは邪竜ジャーマを選んだらしいのよ」

 グレコの言葉に、俺は大いに驚く。

「えぇえっ!? テッチャ……、ジャーマを選んだの!!?」

 趣味悪過ぎだろが! おいっ!!

「いや~、何かの引っ掛け問題かと思うての。本当ならば、わしも賢者殿を選びたかったのじゃが……。試練というくらいじゃて、何か裏があるんかと思ったんじゃ」

 あ、なるほど、そういう事……
 にしても、よく選べたな。

「こうなってくると、益々試練の真意が分からなくなってくるポね」

 胸の前で腕組みをし、むむむと考えるノリリア。
 その時、俺の背後でピカッと何かが光った。
 振り向くとそこには、キョトンとした様子のギンロが立っているではないか。

「ぬ? グリフォン殿は何処へ??」

 そう呟きながら、キョロキョロと周囲を見回すギンロ。
 よく見ると、ギンロの背後の壁には、裁定の間に入った時と同じ、中央にグリフォンのレリーフを象った、金色に光る扉が存在していた。

「良かった、ギンロも無事に合格したのね」

 喜ぶグレコ。
 しかしながら俺は、あれ?っと首を傾げる。

「ねぇギンロ……、ティカは?」

 俺の問い掛けに、まだ現状を把握出来てないギンロが、キョトン顔のまま答える。

「ティカは、我よりも先に裁定の間へと向かったが……? む?? ここは……、最初の部屋ではないか??? どうなっておるのだ????」

 やっぱり、ティカが先に進んだようだ。
 だけどまだ、ティカはここへ戻ってきていない……

「ねぇノリリア。みんながここに戻ってきた順番は、裁定の間に進んだ順番と同じだったの?」

 俺の言葉に、事態を把握したらしいノリリアが、眉間に皺を寄せながら頷いた。

 となると……、え? ティカの奴、まさか……??
 
 一抹の不安が過ぎる俺。
 その後、扉の前にはマシコットが姿を現し、続いてライラックが。
 そして、何故だか不機嫌そうな顔のカービィも、無事に戻って来たのだが……

「ポポゥ……。ティカちゃんが、戻って来ないポね」

 緊張した面持ちで、扉を見つめるノリリア。
 俺も、グレコも、テッチャもギンロも、かなり気不味い表情で扉を見つめている。
 そして……

『第一の試練! 終了~!!』

 何処からともなくリブロ・プラタの声が響いて、金の扉の前にスーッと、リブロ・プラタが姿を現した。
 
 第一の試練終了って……、おいおいおい!
 ティカの奴、マジでどこ行ったんだよっ!?

『第一の試練を突破せし挑戦者達よ、見事であった! ここに第一の試練終了を宣言し、上階への鍵を託さん!!』

 そう言ってリブロ・プラタは、水色の瞳をカッ!と光らせたかと思うと、その表紙から何かを発現させた。
 それは白くて丸い、真珠のような輝きを放つ小さな宝石で、フワフワと空中を移動しながら、先頭にいたノリリアの手の中へ収まった。

「ちょっと待って! まだ仲間が一人、戻って来てないわっ!!」

 堪らず叫んだのはグレコだ。
 するとリブロ・プラタは、冷ややかに目を細めてこう言った。

『裁定の間より戻らぬは、その者が試練に敗れたという事……。これより先に進む権利を、その者が得られなかったという結果である。即ち、その者はこの塔より、その存在を抹消されたのだ!』

 存在を、抹消……、だと?
 そんな……、じゃあ、ティカは何処に??
 まさか、死……???

「ティカ! おいティカ!! 聞こえっか!? 聞こえたら返事しろっ!!!」

 隣に立っていたカービィが、絆の耳飾りを使ってティカに呼び掛ける。
 するとすぐさま返答があって……

「おぉ、カービィ? どこだ??」

 俺たち五人の耳に、ティカの声が聞こえてきた。

「どこだじゃねぇっ! おまいこそ、今どこにいんだよっ!?」

「自分?自分は……。何故だ?? 塔の、外だ。入り口、の前。皆、どこだ???」

 困惑している様子ではあるものの、その口調からして、ティカは無事なようだ。
 存在を消された=殺されたのかと思ったから、かなり焦ったけど……、どうやら普通に生きている。
 そして何故か、塔の外、入り口の前にいると言う。

 絆の耳飾りから聞こえたティカの言葉を、グレコが、心配するノリリア達に伝えた。

「つまり……、試練に敗れた者は塔の外へと追いやられる、っちゅ~ことじゃな?」

 テッチャの問い掛けに、リブロ・プラタはまたしても目を細め、笑っているかのように小刻みに震えて見せた。

 なんだよっ!? 
 存在を抹消とか言うから、めっちゃビビっただろうがっ!??
 塔から追い出されるだけかよっ!?!?

「ポポ、残念ポが……。試練をクリア出来なかった以上、脱落するのは仕方の無い事ポよ。ティカちゃんはもう戻っては来られないポ。今のあたち達には、どうする事も出来ないポね」

 ノリリアの言葉に、俺は改めて、この塔の恐ろしさを痛感した。
 魔法が使えないだけでは無い……、自由に出入りする事すら、今の俺たちには不可能なのだ。
 この先に待つ試練をクリアして、先に進む事以外、俺たちに選べる道はないのだと……

『さぁ! 次なる試練へと進むのだ!! 愚かなる挑戦者達よ!!!』

 俺達を嘲笑うかのように、パラパラと意味もなくページをめくりながら、リブロ・プラタは叫んだ。
 





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 封魔の塔・第一階層にて、ティカ・レイズン、脱落。
 残る挑戦者、計11名。

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