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★ピタラス諸島第五、アーレイク島編★
653:偉大なる存在
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ぎゃあああぁぁぁぁっ!?
出たああぁぁぁっ!!?
かっ、怪物ぅうぅぅぅ~っ!?!?
目の前に現れた巨大グリフォンの、その余りの迫力に、俺の全身はガタガタと震えた。
大岩の如きその体は、鷲の頭がある位置までの高さが推定で5メートル。
後ろの方に見える、下半身より生え出る、先っぽにフサフサの毛が生えた獅子の尻尾、そこまでの体の全長は、もはやここからでは推し測る事すら不可能なほどに距離が遠い。
そして、俺の真ん前にある、体の前で揃えられた二本の前足は、小さなピグモルの俺なんて一思いに踏み潰されちゃいそうなほどに巨大だ。
加えて、恐ろしいのはその大きさだけではない。
高所からこちらを見下ろしている鷲の顔、そこにある二つの瞳が、さながら狩りをしている最中の猛禽類のように鋭いのだ。
嘴も太くて大きくて、獲物の肉を引きちぎり易いようにと、鋭利に曲がっているのが見て取れる。
詰まるところ、今の俺は、巨大な天敵に睨まれた下弱き小さな野鼠……、でしかなかった。
やべぇっ!? やべぇえぇっ!!?
喰われるぅうっ!!??
慌てて身を隠そうにも、ここは白い煙がモクモクと漂うだけのだだっ広い空間で、隠れる場所など何処にもない。
というか、見える範囲の全てが白い煙に巻かれており、天井や壁すらも見えないのだ。
一体全体、どうなってんだぁあぁぁっ!?!!?
完全なるパニックに陥り、バクバクと爆発しそうなほど強烈に鼓動する、俺の小ちゃなマイハート。
冷静に思考する余裕などもはや皆無で、頭の中は完全にフリーズしていた。
すると、頭上のグリフォンの嘴が、ゆっくりと開かれて……
嫌ぁああぁぁぁっ!?
やっぱ喰われるぅううぅぅっ!!?
『それでは、裁定に入る』
非常に落ち着いた低い声で、グリフォンはそう言った。
さっ!? さささ、最低っ!!?
何が最低なのっ!?!?
……あ、裁定かっ!?!!?
その言葉を聞いても、俺はまだ冷静さを取り戻せず、自分が置かれている状況、今から何が始まるのかを全く理解出来ずにいた。
しかしながら、そんな俺の様子などお構いなく、グリフォンは嘴をパカパカと動かして喋り続ける。
『リブロ・プラタより語られし、英雄と邪竜ジャーマの物語。あれには続きがあるのだ』
えっ!? 英雄っ!?? ジャーマ!?!?
なんだっけそれ!?!!?
『故郷の南の国へと帰還した英雄は、王よりとある提案を受ける。国を……、いや、世界を守りし偉大なる者として、巨大な石像を一体、王国内に建てようではないかと』
石像!? 何の話だっ!??
てか……、落ち着け俺っ!!??
『そこで、国王は英雄に問うた。誰の石像を建てるべきか? とな……』
ふぅ~、ふぅ~、ふぅ~……、大きく深呼吸をしてぇ~、ふぅうぅぅ~。
よし、少し落ち着いてきたぞ。
……で、何の話だっけ?
『王は五つの選択肢を出した。一つ目が、己が命と引き換えに英雄をこの世に産み落としし乙女、聖母アリマの像。二つ目が、その生涯を英雄の育成に捧げた魔導師、賢者ワー・イーズの像。三つ目が、命を賭して英雄を助けし友、盟友テュシアの像。四つ目が、世界を滅ぼさんとした邪悪、青き炎を司る竜ジャーマの像。そして五つ目が、世界を平和へと導きし英雄、勇者モッモの像』
もっ!? 勇者モッモだとっ!??
予想だにしていなかったグリフォンの言葉に、一旦落ち着いたはずの俺の頭は、またしてもプチパニックを起こす。
そう言えば、リブロ・プラタの語った三つの物語の中で、主人公ともいえよう英雄の名前は、一度も明らかにされなかった。
今考えると凄く妙なんだけど、聞いている時は何とも思わなかったのだ。
それがまさか、俺と同じ「モッモ」という名前だっただなんて……
『さぁ挑戦者よ、選ぶのだ。汝が考える、後世に伝えるべき偉大なる存在は、果たしてどの者だ?』
グリフォンの問い掛けに、俺は気付く。
今まさに俺は、何かを試されている……、つまり、これが試練なのだと。
しかし、答えが分からない……、さっぱり分からないぞ!
どれが正解なんだっ!?
グリフォンは、その鋭い両の瞳で、ジッと俺を見つめている。
正直めちゃくちゃ怖いけれど、急かすような感じでは決してない。
俺の答えを、静かに待ってくれているのだ。
……うん、じっくり考えよう。
ようやく落ち着きを取り戻し、平常運転に戻った俺は、三つの物語を思い出しながら考える。
王の出した選択肢は五つ。
だけど、俺の中では既に、選択肢は三つに絞られていた。
まず……、邪竜ジャーマの像はないな、普通にない。
脅威を忘れないってのは勿論大事だけど、グリフォンはさっき、「後世に伝えるべき偉大な存在」って言っていた。
それにはジャーマは当て嵌まらないだろう。
そしてもう一つは、勇者モッモの像だ。
確かに、ジャーマを倒したのは英雄だけど……、名前を聞いた後だと、俺の中ではちょっと印象が変わってしまっている。
俺自身、神の力を持ってはいるけれど、常に周りから助けられているわけで……
そう考えると、英雄も、これまで沢山の人に支えられて、助けられてきたからこそ、ジャーマを倒せたのだと思うのだ。
英雄一人の力では、邪竜ジャーマ討伐は、決して成し遂げられなかったはず……
そう考えると、自ずと選択肢は三つに絞られる。
お母さんである聖母アリマか、師匠である賢者ワー・イーズか、犠牲になってくれた友達のテュシアか……
と、ここまで考えた時、俺の頭の中には、ふと母ちゃんの笑顔が思い浮かんだ。
そして……
「聖母アリマにします!」
瞬間的に、俺はそう言っていた。
『聖母アリマ……、その理由は?』
問い掛けるグリフォン。
「理由!? えと……。ぼ、僕は……。僕は! 母ちゃんが好きだからです!!」
俺の返答に、グリフォンはパチパチと数回瞬きをした。
こいつ、何言ってんだ? 的な雰囲気を醸し出しながら。
さすがの俺も、言ってから、馬鹿な事を言ってしまった! と後悔したが……
言ってしまったものは仕方が無いので、今思っている事を、素直に言葉にする事にした。
「えと、その……。僕には母ちゃんがいます! あ、当たり前だけど……、えっと……。母ちゃんは、偉大なんです。僕には妹が二人いて、その……、二人を産む時に、母ちゃんは命を落としかけたんです。だからたぶん、僕の時も……、命懸けで、僕を産んでくれたんです!! うん、きっと……。だから、同じように、命懸けで英雄を産んだ聖母アリマも、偉大だと思うんです!!!」
ちょっと、自分でも何言ってるのか分からなくなってきたけど……
双子の妹、ハノンとマノンが誕生した後に、母ちゃんは一時意識不明になった。
出産の際に、血が沢山出過ぎたのだ。
あの時ばかりは、母ちゃんの死を覚悟して、号泣したっけ……
だけど母ちゃんは戻ってきてくれた。
そして俺を……、俺と兄弟姉妹達を、立派に育ててくれたのだ。
その経験というか、体験を踏まえて考えるに、聖母アリマが一番凄いって、俺は思う。
聖母アリマは、英雄を産んですぐ亡くなっちゃったわけだけど……
そもそもが、自分の命と引き換えに英雄を産むって決断した彼女は、とても勇敢で、偉大な存在なんじゃないかって、思ったのだ。
それに、その存在に共感できたって部分も大きいな。
正直、今の俺には、師匠と呼べる存在はいないし、仲間はいるけど、盟友ってのもピンとこない。
だから、実在する大好きな母ちゃんに近しい存在、聖母アリマを選ぼうと考えたのだ。
『では、小さき挑戦者よ……。汝の選択は、聖母アリマで良いな?』
試すように、再度問い掛けてくるグリフォン。
先ほどよりも幾分か鋭いその視線に少々ビビりつつも、俺はこくんと頷いた。
こ、これで、良いんだ……
これで失格だとしても、悔いはないぞっ!
プルプルと震える拳をギュッと握り締めながら、ジッとグリフォンを見つめる俺。
すると……
『我、第一の裁定者なり。この者の進行を許可する』
グリフォンが静かにそう言うと、目の前が真っ白になって……
「ん? ……え?? あれ???」
いつの間にか俺は、塔に入って最初に通った、巨大昇降機の部屋へと戻っていた。
おや? 何がどうなって……??
「モッモ! 良かった、試練に合格したのねっ!!」
その声に振り向くと、そこには満面の笑みで両手を広げるグレコが。
その側には、ニヤリと笑うテッチャ、安堵の表情でこちらを見るノリリアと、その他先に扉をくぐっていった騎士団メンバーの姿があった。
出たああぁぁぁっ!!?
かっ、怪物ぅうぅぅぅ~っ!?!?
目の前に現れた巨大グリフォンの、その余りの迫力に、俺の全身はガタガタと震えた。
大岩の如きその体は、鷲の頭がある位置までの高さが推定で5メートル。
後ろの方に見える、下半身より生え出る、先っぽにフサフサの毛が生えた獅子の尻尾、そこまでの体の全長は、もはやここからでは推し測る事すら不可能なほどに距離が遠い。
そして、俺の真ん前にある、体の前で揃えられた二本の前足は、小さなピグモルの俺なんて一思いに踏み潰されちゃいそうなほどに巨大だ。
加えて、恐ろしいのはその大きさだけではない。
高所からこちらを見下ろしている鷲の顔、そこにある二つの瞳が、さながら狩りをしている最中の猛禽類のように鋭いのだ。
嘴も太くて大きくて、獲物の肉を引きちぎり易いようにと、鋭利に曲がっているのが見て取れる。
詰まるところ、今の俺は、巨大な天敵に睨まれた下弱き小さな野鼠……、でしかなかった。
やべぇっ!? やべぇえぇっ!!?
喰われるぅうっ!!??
慌てて身を隠そうにも、ここは白い煙がモクモクと漂うだけのだだっ広い空間で、隠れる場所など何処にもない。
というか、見える範囲の全てが白い煙に巻かれており、天井や壁すらも見えないのだ。
一体全体、どうなってんだぁあぁぁっ!?!!?
完全なるパニックに陥り、バクバクと爆発しそうなほど強烈に鼓動する、俺の小ちゃなマイハート。
冷静に思考する余裕などもはや皆無で、頭の中は完全にフリーズしていた。
すると、頭上のグリフォンの嘴が、ゆっくりと開かれて……
嫌ぁああぁぁぁっ!?
やっぱ喰われるぅううぅぅっ!!?
『それでは、裁定に入る』
非常に落ち着いた低い声で、グリフォンはそう言った。
さっ!? さささ、最低っ!!?
何が最低なのっ!?!?
……あ、裁定かっ!?!!?
その言葉を聞いても、俺はまだ冷静さを取り戻せず、自分が置かれている状況、今から何が始まるのかを全く理解出来ずにいた。
しかしながら、そんな俺の様子などお構いなく、グリフォンは嘴をパカパカと動かして喋り続ける。
『リブロ・プラタより語られし、英雄と邪竜ジャーマの物語。あれには続きがあるのだ』
えっ!? 英雄っ!?? ジャーマ!?!?
なんだっけそれ!?!!?
『故郷の南の国へと帰還した英雄は、王よりとある提案を受ける。国を……、いや、世界を守りし偉大なる者として、巨大な石像を一体、王国内に建てようではないかと』
石像!? 何の話だっ!??
てか……、落ち着け俺っ!!??
『そこで、国王は英雄に問うた。誰の石像を建てるべきか? とな……』
ふぅ~、ふぅ~、ふぅ~……、大きく深呼吸をしてぇ~、ふぅうぅぅ~。
よし、少し落ち着いてきたぞ。
……で、何の話だっけ?
『王は五つの選択肢を出した。一つ目が、己が命と引き換えに英雄をこの世に産み落としし乙女、聖母アリマの像。二つ目が、その生涯を英雄の育成に捧げた魔導師、賢者ワー・イーズの像。三つ目が、命を賭して英雄を助けし友、盟友テュシアの像。四つ目が、世界を滅ぼさんとした邪悪、青き炎を司る竜ジャーマの像。そして五つ目が、世界を平和へと導きし英雄、勇者モッモの像』
もっ!? 勇者モッモだとっ!??
予想だにしていなかったグリフォンの言葉に、一旦落ち着いたはずの俺の頭は、またしてもプチパニックを起こす。
そう言えば、リブロ・プラタの語った三つの物語の中で、主人公ともいえよう英雄の名前は、一度も明らかにされなかった。
今考えると凄く妙なんだけど、聞いている時は何とも思わなかったのだ。
それがまさか、俺と同じ「モッモ」という名前だっただなんて……
『さぁ挑戦者よ、選ぶのだ。汝が考える、後世に伝えるべき偉大なる存在は、果たしてどの者だ?』
グリフォンの問い掛けに、俺は気付く。
今まさに俺は、何かを試されている……、つまり、これが試練なのだと。
しかし、答えが分からない……、さっぱり分からないぞ!
どれが正解なんだっ!?
グリフォンは、その鋭い両の瞳で、ジッと俺を見つめている。
正直めちゃくちゃ怖いけれど、急かすような感じでは決してない。
俺の答えを、静かに待ってくれているのだ。
……うん、じっくり考えよう。
ようやく落ち着きを取り戻し、平常運転に戻った俺は、三つの物語を思い出しながら考える。
王の出した選択肢は五つ。
だけど、俺の中では既に、選択肢は三つに絞られていた。
まず……、邪竜ジャーマの像はないな、普通にない。
脅威を忘れないってのは勿論大事だけど、グリフォンはさっき、「後世に伝えるべき偉大な存在」って言っていた。
それにはジャーマは当て嵌まらないだろう。
そしてもう一つは、勇者モッモの像だ。
確かに、ジャーマを倒したのは英雄だけど……、名前を聞いた後だと、俺の中ではちょっと印象が変わってしまっている。
俺自身、神の力を持ってはいるけれど、常に周りから助けられているわけで……
そう考えると、英雄も、これまで沢山の人に支えられて、助けられてきたからこそ、ジャーマを倒せたのだと思うのだ。
英雄一人の力では、邪竜ジャーマ討伐は、決して成し遂げられなかったはず……
そう考えると、自ずと選択肢は三つに絞られる。
お母さんである聖母アリマか、師匠である賢者ワー・イーズか、犠牲になってくれた友達のテュシアか……
と、ここまで考えた時、俺の頭の中には、ふと母ちゃんの笑顔が思い浮かんだ。
そして……
「聖母アリマにします!」
瞬間的に、俺はそう言っていた。
『聖母アリマ……、その理由は?』
問い掛けるグリフォン。
「理由!? えと……。ぼ、僕は……。僕は! 母ちゃんが好きだからです!!」
俺の返答に、グリフォンはパチパチと数回瞬きをした。
こいつ、何言ってんだ? 的な雰囲気を醸し出しながら。
さすがの俺も、言ってから、馬鹿な事を言ってしまった! と後悔したが……
言ってしまったものは仕方が無いので、今思っている事を、素直に言葉にする事にした。
「えと、その……。僕には母ちゃんがいます! あ、当たり前だけど……、えっと……。母ちゃんは、偉大なんです。僕には妹が二人いて、その……、二人を産む時に、母ちゃんは命を落としかけたんです。だからたぶん、僕の時も……、命懸けで、僕を産んでくれたんです!! うん、きっと……。だから、同じように、命懸けで英雄を産んだ聖母アリマも、偉大だと思うんです!!!」
ちょっと、自分でも何言ってるのか分からなくなってきたけど……
双子の妹、ハノンとマノンが誕生した後に、母ちゃんは一時意識不明になった。
出産の際に、血が沢山出過ぎたのだ。
あの時ばかりは、母ちゃんの死を覚悟して、号泣したっけ……
だけど母ちゃんは戻ってきてくれた。
そして俺を……、俺と兄弟姉妹達を、立派に育ててくれたのだ。
その経験というか、体験を踏まえて考えるに、聖母アリマが一番凄いって、俺は思う。
聖母アリマは、英雄を産んですぐ亡くなっちゃったわけだけど……
そもそもが、自分の命と引き換えに英雄を産むって決断した彼女は、とても勇敢で、偉大な存在なんじゃないかって、思ったのだ。
それに、その存在に共感できたって部分も大きいな。
正直、今の俺には、師匠と呼べる存在はいないし、仲間はいるけど、盟友ってのもピンとこない。
だから、実在する大好きな母ちゃんに近しい存在、聖母アリマを選ぼうと考えたのだ。
『では、小さき挑戦者よ……。汝の選択は、聖母アリマで良いな?』
試すように、再度問い掛けてくるグリフォン。
先ほどよりも幾分か鋭いその視線に少々ビビりつつも、俺はこくんと頷いた。
こ、これで、良いんだ……
これで失格だとしても、悔いはないぞっ!
プルプルと震える拳をギュッと握り締めながら、ジッとグリフォンを見つめる俺。
すると……
『我、第一の裁定者なり。この者の進行を許可する』
グリフォンが静かにそう言うと、目の前が真っ白になって……
「ん? ……え?? あれ???」
いつの間にか俺は、塔に入って最初に通った、巨大昇降機の部屋へと戻っていた。
おや? 何がどうなって……??
「モッモ! 良かった、試練に合格したのねっ!!」
その声に振り向くと、そこには満面の笑みで両手を広げるグレコが。
その側には、ニヤリと笑うテッチャ、安堵の表情でこちらを見るノリリアと、その他先に扉をくぐっていった騎士団メンバーの姿があった。
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