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★ピタラス諸島第五、アーレイク島編★
628:これで封印出来るっ!!
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「そっ!? そそそっ!?? そんな事ぉっ!?!?」
出来るわけないだろぉおぉぉ~っ!!!
ギンロの立てた作戦は、あまりにも危険かつ無慈悲なもので、俺は驚き過ぎてどもりまくる。
相手は中級悪魔だぞっ!?
ハンニと同じくらいやばい奴なんだぞっ!!?
あんな訳の分からん攻撃してくるんだぞっ!?!?
俺なんか、一瞬で丸焦げどころか……、消し炭になるぞぉっ!?!!?
「案ずるな、我がしかと守る。何故ならば我は、時の神の使者を守る、青銀の守護者! なのだからな!!」
めっちゃドヤ顔のギンロ。
でもさ、あんたさ、ただ単に今、二つ名を言いたかっただけでしょ!? そうでしょうっ!??
「もぉおぉぉ~……、怒った!!!」
ふぁっ!? グレコ!!?
既にさっきからキレていたはずのグレコが、何やらもう一段階怒ったらしい。
なんと、魔法弓をティカに向かってギリギリと構えているではないか。
怒っている為か、その全身からは黄緑色の魔力のオーラがバンバン溢れ出ている。
「グレコ!? 何をっ!!?」
まさか、ティカを殺す気!?
「グレコ待て! 我とモッモに任せるのだっ!!」
はっ!? ギンロ!?? 勝手にそんなっ!!??
「何する気!? 何か作戦があるのっ!??」
ひぃいぃっ!? グレコがガチ切れしてるぅっ!??
こ、怖いっ!!!
目で殺されてしまうぅっ!!!?
「モッモが奴の気を引いている隙に、我がティカを魔法陣より引き離す! 行くぞモッモ!!」
「なんっ!? まだ僕やるって言ってなぁあぁあぁぁ~~~!!?」
俺を背に乗せたまま、全速力で走り出すギンロ。
周囲を取り囲むユーザネイジアの巨根の群を抜けて、ティカとカイムが交戦中の場所まで一目散。
途中、空中に残っていたハーピー達に見つかるも、ギンロの俊足に追いつけるハーピーなどいない。
ほんの一瞬、瞬きするほどのほんの僅かな時間で、ギンロはティカとカイムの元まで駆け抜けた。
「んんん!? 誰です、あなた方!??」
先に気づいたのはカイムの方だった。
ティカの爪が届かない上空にスッと移動して、冷ややかな目でこちらを見下ろしている。
「ぬっ!? 何故来たっ!??」
ティカのその言葉は、どちらかというと俺ではなくてギンロに向けられたものだろう。
お前の手を借りずとも、自分一人で悪魔を倒してやる! ……そんな風に言いたげな顔をしている。
「悪魔カイムよ、その者は真の時の神の使者ではないっ!」
いきなりぶっ込むギンロ。
相手には伝わり易いと思うけど……
まだ、俺の心の準備が出来てないんですけどぉっ!?
「うふふ、もしやお仲間ですか? フェンリルとは珍しいですねぇ」
不敵に笑いながら、カイムはティカとギンロを交互に見ている。
たぶんだけど……、奴は、俺の存在には気付いていないようだ。
「何を戯けた事を……。自分こそが真の時の神の使者だ! 貴様は下がってろっ!!」
鋭い牙を剥き出しにして吠えるティカ。
だけど残念ながら、興奮し過ぎてケツァラ語で話しているみたいだから、ギンロには意味が通じていません。
「うふふふふ、妙な組み合わせですねぇ。あなたはもしや、フーガの魔導師団の者でしょうかねぇ?」
なっ!? カイムの奴、騎士団の事までちゃっかり知ってやがるのか!??
「否っ! 我は真の時の神の使者の守護者……、青銀の守護者!! ギンロ!!!」
それ、絶対言いたかっただけだよねっ!?
「ほほう、なるほど……。それではギンロに尋ねましょう。この竜人が時の神の使者ではないというのなら、この者は何者なのです? その体に我々と同じ力を宿し、更には神の力の痕跡をも残す……、摩訶不思議なこの者が時の神の使者で無ければ、いったい何者だと言うのですか??」
カイムの奴、マジでティカを時の神の使者だと思ってんのか?
つまり、分かってない……
なんだかこいつ、大した奴じゃないような気がしてきたぞ!?
「知らん! 其奴はただの紅竜人だ!!」
ハッキリと真実を述べるギンロ。
だけど残念ながら、もはやティカは、普通の紅竜人とは掛け離れた存在だと思うけどね。
「うふふふふ。それは、主人を守る為の、苦し紛れの嘘でしょうかね?」
ニヤニヤと笑うカイム。
主人を守る為のって……、つまり、ティカが主人で、ギンロが飼い犬って事?
……ぶふっ!? 何それシュールなんだけど!!!
「真の時の神の使者は、この者である!」
「へ?」
ギンロの大きな手にガッと両脇を掴まれて、ストンと地面に下ろされる俺。
顕になった俺の姿に、カイムは一瞬沈黙した。
てか……、ヒィイィィ~~~!?
めっ!?? 目の前に悪魔ぁあっ!!?
「その……、鼠が、真の時の神の使者、ですと……?」
めっちゃ引いてる、カイムめっちゃ引いてるわ!
何言ってんのよこの犬は? 頭おかしいんじゃないの?? こんな糞鼠が使者なわけないじゃなぁ~い??? 的な目で俺を見てるっ!!
「ギンロ! 下がれ!! 戦うのは自分だ!!!」
言葉が通じてない事にようやく気付いたらしいティカが、公用語を使って、ギンロに向かって捲し立てるように叫ぶ。
その目の怖いこと怖いこと……
全身からは黒い煙がもくもくで、おっかないし臭いし、もはやティカが悪魔に見えるわ。
「ティカ! 下がるのだ!! モッモに任せろ!!!」
負けじと吠えるギンロ。
こちらはこちらで、怒ってこそいないんだけど、そもそもの見た目が怖いから……
いや、てかさ、俺に任せたりなんてしないでぇえっ!?
そうこうしているうちにも、地面には光の牢獄と呼ばれる封印結界の魔法陣が出来上がっていた。
馬鹿なのかなんなのか、気付いていないらしいカイムは、その魔法陣のちょうど中央に浮遊しているのだ。
今がチャンスなのは間違いない!
しかし、俺とギンロは問題ないが、ティカがまだ魔法陣の中だ!!
つまり、激しく邪魔だっ!!!
すると視界の端で、ユーザネイジアの根の影に隠れつつ、こちらに向かって何かを合図しているアイビーの姿が目に入った。
シッシと手を振ってるあたり、早くそこを退け!といった感じだろう。
仕方ない、一か八かだ……、ビビってる場合じゃないぞ、俺っ!
「ぼぉっ! 僕は!! 時の神の使者モッモ!!!」
両手を堅くギュッと握り締め、震える体に力を込めて、俺は叫ぶ。
そして、腰に装備していた万呪の枝を取り出し、その先端をカイムの鳥面へと真っ直ぐに向けた。
「僕と戦えっ! 僕と戦わないと!! た、戦わないと……? あ……、赤ん坊にまで、戻しちゃうぞぉっ!!!」
……うん、自分でも何言ってんのかさっぱり分かんない。
けど、なんとかカイムの視線をティカから逸らそうと、俺は必死だった。
と、次の瞬間。
シュン……、ストンッ!
「ギャッ!?」
何かが空を切る音がして、ティカが悲鳴を上げた。
見ると、お尻の尻尾の生え際に、黒い矢が刺さっているではないか。
黄緑色に光る荊が巻きついたそれは、どう見ても、痺れを切らしたらしいグレコが放った矢だった。
ビックリしたのと痛いのとで、ティカは思わず体勢を崩した。
ギンロはそれを見逃さず、ティカ目掛けて突進し、低い姿勢でその真っ赤な巨体にタックルをかました。
そうする事で、ティカとギンロの体は見事、封印結界の魔法陣の外へと弾き出されたのだ。
おぉっしっ! これで封印出来るっ!!
「まさか……、その剣は!?」
そう言ったカイムは、なんと俺を見ていた。
真っ黒な鳥の目を飛び出しそうなほどに見開き、嘴を半開きにして、何やら大層驚いている。
……いや、剣なんて持ってないけど!?
「今ポッ!!!」
背後でノリリアの声が聞こえて、カイムの足元にある魔法陣が黄色い光を放ち始める。
「なっ!? なんですっ!??」
慌てふためくカイム。
マジで気付いてなかったのか!?
間抜けな奴だなっ!!?
封印の魔法、その名も光の牢獄。
地面に描かれた魔法陣の至る所から、黄色い光を帯びた幾本もの太い糸が伸び上がって、カイムの周りに鳥籠のような物を作り上げていく。
それはもう目にも止まらないスピードで、カイムは文字通り、あっという間に籠の中の鳥になってしまっていた。
しかし、驚きはしたものの、カイムは自分が置かれている状況をすぐさま理解したらしい。
辺りに視線を向けた後、何故だか不敵に笑った。
「うふふふふ、そうでしたか……。アーレイクの言っていた予言は確かに現実になりましたねぇ」
ニヤニヤと笑うカイム。
絶対絶命な状況のはずなのに、なんで笑ってんだこいつ!?
「ですが残念。真の時の神の使者よ、ここで私と会い見えたのが運の尽き。お前は今日、ここで死ぬのですっ!」
そう言うと、カイムはその掌を俺に向けた。
そこには先ほどティカに放っていた、あの電気ビリビリな黒い光の球が!
ふぁあっ!?
こっ!??
殺されるぅうっ!?!?
封印結界はまだ未完成で、隙間が幾つもある。
カイムがあの球を放てば、確実に俺はやられてしまう。
「さようなら!! 無力な時の神の使者よ!!!」
ニヤリと笑って、カイムは黒い球を俺目掛けて発射した。
その間、およそ1秒も無かっただろう。
俺は瞬時に決心していた。
そして叫んだのだ。
「戻れぇえっ!!!」
こんな奴にやられてたまるか!
宣言通り、赤ちゃんまで戻してやるぅ!!
そんな事を思いながら、俺は万呪の枝をギュッと握り締めた。
しかし、カイムが黒い球を放ったのがほぼ同時で……
ヒューーーン
やべぇっ!?
黒い球がぶつかるっ!??
ぎゃあぁあぁぁぁ~~~!?!?
目前に迫った黒い球を前に、叫び声を上げる事も出来ないまま、俺は目を見開き硬直した。
すると次の瞬間、白い何かが、俺の眼前を覆った。
ボォーーーン!
「モッモーーーーー!?!?」
爆破音と共に、グレコの叫び声が背後から聞こえた。
出来るわけないだろぉおぉぉ~っ!!!
ギンロの立てた作戦は、あまりにも危険かつ無慈悲なもので、俺は驚き過ぎてどもりまくる。
相手は中級悪魔だぞっ!?
ハンニと同じくらいやばい奴なんだぞっ!!?
あんな訳の分からん攻撃してくるんだぞっ!?!?
俺なんか、一瞬で丸焦げどころか……、消し炭になるぞぉっ!?!!?
「案ずるな、我がしかと守る。何故ならば我は、時の神の使者を守る、青銀の守護者! なのだからな!!」
めっちゃドヤ顔のギンロ。
でもさ、あんたさ、ただ単に今、二つ名を言いたかっただけでしょ!? そうでしょうっ!??
「もぉおぉぉ~……、怒った!!!」
ふぁっ!? グレコ!!?
既にさっきからキレていたはずのグレコが、何やらもう一段階怒ったらしい。
なんと、魔法弓をティカに向かってギリギリと構えているではないか。
怒っている為か、その全身からは黄緑色の魔力のオーラがバンバン溢れ出ている。
「グレコ!? 何をっ!!?」
まさか、ティカを殺す気!?
「グレコ待て! 我とモッモに任せるのだっ!!」
はっ!? ギンロ!?? 勝手にそんなっ!!??
「何する気!? 何か作戦があるのっ!??」
ひぃいぃっ!? グレコがガチ切れしてるぅっ!??
こ、怖いっ!!!
目で殺されてしまうぅっ!!!?
「モッモが奴の気を引いている隙に、我がティカを魔法陣より引き離す! 行くぞモッモ!!」
「なんっ!? まだ僕やるって言ってなぁあぁあぁぁ~~~!!?」
俺を背に乗せたまま、全速力で走り出すギンロ。
周囲を取り囲むユーザネイジアの巨根の群を抜けて、ティカとカイムが交戦中の場所まで一目散。
途中、空中に残っていたハーピー達に見つかるも、ギンロの俊足に追いつけるハーピーなどいない。
ほんの一瞬、瞬きするほどのほんの僅かな時間で、ギンロはティカとカイムの元まで駆け抜けた。
「んんん!? 誰です、あなた方!??」
先に気づいたのはカイムの方だった。
ティカの爪が届かない上空にスッと移動して、冷ややかな目でこちらを見下ろしている。
「ぬっ!? 何故来たっ!??」
ティカのその言葉は、どちらかというと俺ではなくてギンロに向けられたものだろう。
お前の手を借りずとも、自分一人で悪魔を倒してやる! ……そんな風に言いたげな顔をしている。
「悪魔カイムよ、その者は真の時の神の使者ではないっ!」
いきなりぶっ込むギンロ。
相手には伝わり易いと思うけど……
まだ、俺の心の準備が出来てないんですけどぉっ!?
「うふふ、もしやお仲間ですか? フェンリルとは珍しいですねぇ」
不敵に笑いながら、カイムはティカとギンロを交互に見ている。
たぶんだけど……、奴は、俺の存在には気付いていないようだ。
「何を戯けた事を……。自分こそが真の時の神の使者だ! 貴様は下がってろっ!!」
鋭い牙を剥き出しにして吠えるティカ。
だけど残念ながら、興奮し過ぎてケツァラ語で話しているみたいだから、ギンロには意味が通じていません。
「うふふふふ、妙な組み合わせですねぇ。あなたはもしや、フーガの魔導師団の者でしょうかねぇ?」
なっ!? カイムの奴、騎士団の事までちゃっかり知ってやがるのか!??
「否っ! 我は真の時の神の使者の守護者……、青銀の守護者!! ギンロ!!!」
それ、絶対言いたかっただけだよねっ!?
「ほほう、なるほど……。それではギンロに尋ねましょう。この竜人が時の神の使者ではないというのなら、この者は何者なのです? その体に我々と同じ力を宿し、更には神の力の痕跡をも残す……、摩訶不思議なこの者が時の神の使者で無ければ、いったい何者だと言うのですか??」
カイムの奴、マジでティカを時の神の使者だと思ってんのか?
つまり、分かってない……
なんだかこいつ、大した奴じゃないような気がしてきたぞ!?
「知らん! 其奴はただの紅竜人だ!!」
ハッキリと真実を述べるギンロ。
だけど残念ながら、もはやティカは、普通の紅竜人とは掛け離れた存在だと思うけどね。
「うふふふふ。それは、主人を守る為の、苦し紛れの嘘でしょうかね?」
ニヤニヤと笑うカイム。
主人を守る為のって……、つまり、ティカが主人で、ギンロが飼い犬って事?
……ぶふっ!? 何それシュールなんだけど!!!
「真の時の神の使者は、この者である!」
「へ?」
ギンロの大きな手にガッと両脇を掴まれて、ストンと地面に下ろされる俺。
顕になった俺の姿に、カイムは一瞬沈黙した。
てか……、ヒィイィィ~~~!?
めっ!?? 目の前に悪魔ぁあっ!!?
「その……、鼠が、真の時の神の使者、ですと……?」
めっちゃ引いてる、カイムめっちゃ引いてるわ!
何言ってんのよこの犬は? 頭おかしいんじゃないの?? こんな糞鼠が使者なわけないじゃなぁ~い??? 的な目で俺を見てるっ!!
「ギンロ! 下がれ!! 戦うのは自分だ!!!」
言葉が通じてない事にようやく気付いたらしいティカが、公用語を使って、ギンロに向かって捲し立てるように叫ぶ。
その目の怖いこと怖いこと……
全身からは黒い煙がもくもくで、おっかないし臭いし、もはやティカが悪魔に見えるわ。
「ティカ! 下がるのだ!! モッモに任せろ!!!」
負けじと吠えるギンロ。
こちらはこちらで、怒ってこそいないんだけど、そもそもの見た目が怖いから……
いや、てかさ、俺に任せたりなんてしないでぇえっ!?
そうこうしているうちにも、地面には光の牢獄と呼ばれる封印結界の魔法陣が出来上がっていた。
馬鹿なのかなんなのか、気付いていないらしいカイムは、その魔法陣のちょうど中央に浮遊しているのだ。
今がチャンスなのは間違いない!
しかし、俺とギンロは問題ないが、ティカがまだ魔法陣の中だ!!
つまり、激しく邪魔だっ!!!
すると視界の端で、ユーザネイジアの根の影に隠れつつ、こちらに向かって何かを合図しているアイビーの姿が目に入った。
シッシと手を振ってるあたり、早くそこを退け!といった感じだろう。
仕方ない、一か八かだ……、ビビってる場合じゃないぞ、俺っ!
「ぼぉっ! 僕は!! 時の神の使者モッモ!!!」
両手を堅くギュッと握り締め、震える体に力を込めて、俺は叫ぶ。
そして、腰に装備していた万呪の枝を取り出し、その先端をカイムの鳥面へと真っ直ぐに向けた。
「僕と戦えっ! 僕と戦わないと!! た、戦わないと……? あ……、赤ん坊にまで、戻しちゃうぞぉっ!!!」
……うん、自分でも何言ってんのかさっぱり分かんない。
けど、なんとかカイムの視線をティカから逸らそうと、俺は必死だった。
と、次の瞬間。
シュン……、ストンッ!
「ギャッ!?」
何かが空を切る音がして、ティカが悲鳴を上げた。
見ると、お尻の尻尾の生え際に、黒い矢が刺さっているではないか。
黄緑色に光る荊が巻きついたそれは、どう見ても、痺れを切らしたらしいグレコが放った矢だった。
ビックリしたのと痛いのとで、ティカは思わず体勢を崩した。
ギンロはそれを見逃さず、ティカ目掛けて突進し、低い姿勢でその真っ赤な巨体にタックルをかました。
そうする事で、ティカとギンロの体は見事、封印結界の魔法陣の外へと弾き出されたのだ。
おぉっしっ! これで封印出来るっ!!
「まさか……、その剣は!?」
そう言ったカイムは、なんと俺を見ていた。
真っ黒な鳥の目を飛び出しそうなほどに見開き、嘴を半開きにして、何やら大層驚いている。
……いや、剣なんて持ってないけど!?
「今ポッ!!!」
背後でノリリアの声が聞こえて、カイムの足元にある魔法陣が黄色い光を放ち始める。
「なっ!? なんですっ!??」
慌てふためくカイム。
マジで気付いてなかったのか!?
間抜けな奴だなっ!!?
封印の魔法、その名も光の牢獄。
地面に描かれた魔法陣の至る所から、黄色い光を帯びた幾本もの太い糸が伸び上がって、カイムの周りに鳥籠のような物を作り上げていく。
それはもう目にも止まらないスピードで、カイムは文字通り、あっという間に籠の中の鳥になってしまっていた。
しかし、驚きはしたものの、カイムは自分が置かれている状況をすぐさま理解したらしい。
辺りに視線を向けた後、何故だか不敵に笑った。
「うふふふふ、そうでしたか……。アーレイクの言っていた予言は確かに現実になりましたねぇ」
ニヤニヤと笑うカイム。
絶対絶命な状況のはずなのに、なんで笑ってんだこいつ!?
「ですが残念。真の時の神の使者よ、ここで私と会い見えたのが運の尽き。お前は今日、ここで死ぬのですっ!」
そう言うと、カイムはその掌を俺に向けた。
そこには先ほどティカに放っていた、あの電気ビリビリな黒い光の球が!
ふぁあっ!?
こっ!??
殺されるぅうっ!?!?
封印結界はまだ未完成で、隙間が幾つもある。
カイムがあの球を放てば、確実に俺はやられてしまう。
「さようなら!! 無力な時の神の使者よ!!!」
ニヤリと笑って、カイムは黒い球を俺目掛けて発射した。
その間、およそ1秒も無かっただろう。
俺は瞬時に決心していた。
そして叫んだのだ。
「戻れぇえっ!!!」
こんな奴にやられてたまるか!
宣言通り、赤ちゃんまで戻してやるぅ!!
そんな事を思いながら、俺は万呪の枝をギュッと握り締めた。
しかし、カイムが黒い球を放ったのがほぼ同時で……
ヒューーーン
やべぇっ!?
黒い球がぶつかるっ!??
ぎゃあぁあぁぁぁ~~~!?!?
目前に迫った黒い球を前に、叫び声を上げる事も出来ないまま、俺は目を見開き硬直した。
すると次の瞬間、白い何かが、俺の眼前を覆った。
ボォーーーン!
「モッモーーーーー!?!?」
爆破音と共に、グレコの叫び声が背後から聞こえた。
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