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★ピタラス諸島第五、アーレイク島編★

622:ちゃんと作戦がある!

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悪魔:古来より伝わる、魔界からカオスの世界に渡りし、悪き思想を持つ魔族。ヴェルドラ歴前、アストレア歴の初頭に既にその存在が確認されている事から、俗に言う神話時代、或いはそれ以前より、悪魔はこの世界に存在していたと推察される。彼らの身体的特徴は、額の角と背中の翼であり、どちらも見るからに禍々しい形、色をしている。彼らの持する強力な魔力は、この世界においては邪な力であり、その使用こそが世界に歪みをもたらすと考えられる。これまで数多の町、国が、悪魔の手によって滅ぼされ、犠牲者の数は計り知れない。往々にしてその存在は邪悪そのものであり、世界平和の為には排除すべき存在であると認知されている。

 ~世界生物大全集より~

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「おまい、それどっから仕入れた情報だ? 建国の父銀竜フーガの親が悪魔だなんて……。んなの、おいら聞いた事も見た事もねぇぞ??」

 驚いた時特有の変顔で、カービィが問うた。

「んまぁ、教科書には載ってねぇだど。おめぇさ、ミシェルを知っとるけ?」

 問いには答えず、意味不明な質問を返すボナーク。

「あん? ミシェルって……、あいつか?? 現政界ナンバーツーの、ミシェル・ジウ・ロットの事か???」

 んん? 誰それ?? 新キャラ???
 勿論だけど、俺は知らないぞ。

「んだ。あいつさぁ~、わしゃの古くからの飲み友達だっけ。政界に入界した後も、月一くらいで飲んでるだど」

「げっ!? マジかっ!?? ボナークおまい……、あんなのとよく酒が飲めるな!!!」

 めっちゃ失礼な事を言うカービィ、しかも顔がめっちゃ嫌そう。
 けども、カービィがそんな事を言っちゃうくらい、そのミシェルなんちゃらは問題有りな人物なのか……?

「んな事言うなっけ。あいつぁ、飲んだら案外可愛いんだど? んでだ……、もう二十年以上前の事だっけ、ミシェルが教えてくれたんだど。フーガの建国に関する秘密、世界に伏せられている真実を。んまぁ~、当時はわしゃも驚いたっけが、ちゃ~んとしたフーガの手記が残っとるらしいっけ、本当だど」

「手記!? マジかっ!?? ……でも、だとしたらなんで国民には伏せられてんだ? あれか、やっぱり混乱を防ぐ為か??」

「んだろうなぁ~。建国に悪魔が関わっていたとなるとぉ、国民も周辺諸外国も黙っちゃいねぇだど? んだども、国の要人には周知済みらしいでぇ~、知らねぇのは一般国民だけだど」

「うひゃ~、マジかぁ~……。確かに、国の始まりに悪魔が関わっていたなんて発表されちゃ、みんなパニックになりそうだもんな」

「んだど。んで、そういう事実もあってぇ~、これまでの悪魔の定義っつぅ~か、悪魔に対する認識を変えるべきだっつぅ議論が、政界のトップでここ数年行われてるだど。まぁ、これまでの全てをひっくり返す事になるっけ、そう簡単にはいかねぇだども……」

「なるほど……。んで、その話を聞いたから、おまいは悪魔を捕獲してみたいと思ったわけか?」

「んだ。全ての悪魔が悪意の元に行動するわけじゃねぇだど。逆に言うと、悪行を起こす悪魔には、きっと何か理由があるはずなんだっけ。わしゃはそれが知りてぇだ。悪意を持った悪魔と、そうでない悪魔……。その違いはなんだっけ? 悪意を持たねぇ悪魔に出会えりゃ、その意図が分かるかも知れねぇだど。んまぁ、悪魔と呼ばれるだけあるっけ、悪意を持ってねぇ方が珍しいだど。ユーザネイジアにいる奴はぁ~、十中八九悪意を持った悪魔だっけ、絆を結ぶんは不可能だろうけんど……。捕獲して国に連れ帰れたらば、いろぉ~んな謎が解明されるさも知れねぇだど?? わしゃはその為に、悪魔を捕獲してみてぇんだぁ」

 ……ふむ。
 つまりボナークは、悪魔という存在を研究する為に悪魔を捕獲してみたい、という事なのか。
 
「なるほどなぁ~。けどよ、ここに来るまで悪魔と何度も対峙したけど、あいつら相当厄介だぞ? 捕獲なんざしようもんなら、全力で抵抗してくるだろうし、危険極まりねぇ」

「んまぁ……。細けぇ~事は後で考えるっけ。わしゃもまだ遠くからしか見た事ねぇだど。近付いて話してみて……。無理そうだったらば、おめぇさ何とかしてっけぇ~」

 おおおっ!? 最終的にはカービィに丸投げしたぞこいつっ!??
 ボナークこの野郎、結構適当なんだなおいっ!!??

「おまいに言われなくても何とかするけどよ。こっちは命かかってんだから。しっかしなんだ……、捕獲は諦めとけよ? 生半可な気持ちで対峙できる相手じゃねぇよ」

「いんや、諦めねぇど。わしゃにも夢があるっけ、譲れねぇだど。おめぇさも分かっとるけ?」

 ……うん、平行線だわ。
 しかも何故だか、カービィとボナークは不適に笑っている。
 お互いをよく知っているらしいから、お互いが何を考えているのかもよく分かっているのだろう。
 なんだろうな……、嫌な予感しかしない。

 寒気を感じた俺は、思わずブルリと身震いした。
 すると……

「案ずるなモッモ。お主は我がしかと守る」

 俺をおぶっているギンロが、力強い声でそう言った。
 その言葉に同調するように、隣を歩くグレコが俺を見て、ニコッと笑って頷いた。

 うん、大丈夫だ。
 俺には、守ってくれる心強い味方がいるのだ。
 一人じゃないからきっと大丈夫だ、うん!

 と、その時だ。

「モッモ、聞こえるか?」

 ほん? この声は??

「え、ティカ?」

 絆の耳飾りから、ティカの声が聞こえてきた。

「え? ティカから連絡が??」

 グレコの問い掛けに、こくんと頷き、静かにするようにとシーッと口に指を当てる俺。

「モッモ、今どこだ?」

「あ、えと……、穴の中。ユーザネイジアの木を目指して、地下の通路を移動中」

「そうか。こちらは既に、その木の目と鼻の先だ。先程、桃色の獣女とその仲間達を見つけた故、合流して待機している。どうやら数名が見当たらぬらしいが……、まぁ問題はないだろう」

 桃色の獣女て……、ノリリアの事だよな?
 すげぇ言い回しだなそれ。
 てか、名前覚えなよ。

「青色の獣男が周辺の偵察に向かったが、敵の数が多く、容易には木には近付けない。そもそも、どういう作戦なんだ? 何故ここに集まっている??」

 あうち、やっぱりよく分からないままに、一人そこまで突っ走って行ったのねあなた。
 無謀と言うか、アホと言うか……

「えとね……、多分だけど、ノリリアはその木に潜んでいる悪魔を退治するつもりなんだよ。悪魔は恐らく、時の神の使者を狙ってて……、つまり、敵の狙いは僕なんだ」

「何!? この島にも悪魔がいるのか!??」

 あ~っとぉ~……、そこから?
 え?? 出発前の話、ちゃんと聞いてた???

「我が故郷リザドーニャを、その悪意と画策にて滅しし悪魔が、ここにも……? そしてモッモ、君の命を狙っていると??」

「あ……、うん。あ、でもね、まだ僕が時の神の使者だとはバレてな」

「よし分かった! 君がここに到着する前に、自分がそいつを仕留めておく!!」

 ……え? は?? ちょっ!??

「待ってティカ!? 早まらないでっ!!? た、たぶん、もうすぐそっち着くからさ! こっちには残りの騎士団のメンバーもいるし、それにカービィもギンロもグレコも一緒だし!! ちょっと待っててよ!!!」

 大きな声を出して慌てふためく俺に対し、前を歩くカービィとボナークが足を止めて振り返り、状況を察したのであろうグレコが眉間にシワを寄せる。

「大丈夫だ、心配するな、ちゃんと作戦がある! それに、この最強の体を手に入れた自分にとって、悪魔など敵ではない!! ギンロが着く前に、必ずや倒しておく!!!」

 だから、ギンロと張り合うのやめてよっ!?

「いやっ!? ちょっと待って!!? ティカ!?!? ねぇティカっ!!???」

 ……………

 ……………

 駄目だ、返事がない。

「ティカ……、なんて?」

 静かに問い掛けてきたのはグレコだ。
 俺が説明せずとも、ティカが何をしようとしているのか、恐らくグレコは気付いているのだろう。
 笑顔ではあるものの、既にその額には青筋が走っている。

「あ……、えと……。先に、悪魔を倒しておいてくれる、って……」

 にへらと笑う俺。
 気まずい沈黙が一瞬だけ流れて、そして……

「おいおい、まずいぞ!? あいつ一人で何とか出来るわけねぇっ!!?」

 ガーン!って感じで、口を大きく縦に開けて叫ぶカービィ。

「倒しちゃ駄目だっけ!? 捕獲するんだどぉっ!!?」

 性懲りもなく、そんな事を言うボナーク。

「ぬぅ、己の身一つで敵に向かうとは……、なかなかに勇猛であるな、ティカよ。我も負けてはいられぬ」

 何故かみなぎるギンロ。
 そしてグレコは勿論……

「何考えてるのよ、あの馬鹿トカゲ!? こうしちゃいられないわ、急がないとっ!! ほら、走るわよっ!??」

 ひぃっ!? プチ切れグレコ様っ!!?
 怖いから走ってギンロ!!!

「なっ!? ど、どうしたんですかっ!??」

 これまで、くっちゃべりながらノロノロと歩いていた最後尾の俺達が、口々に叫びながら突然走り出したもんだから、前を行くアイビー達はめちゃくちゃ驚いていた。
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