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★ピタラス諸島第五、アーレイク島編★

601:能力値

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「おぉ~、すげぇ……。本当に魔力を持ってる。確かにこの数値なら、炎魔法を使えてもなんら不思議じゃねぇな」

 小さな望遠鏡のような魔道具、その名も生体測定魔道鏡(別名、まるはだか望遠鏡)を覗き込み、ティカの体をジロジロと観察しながら、カービィはそう呟いた。

 生体測定魔道鏡とは、生き物が持っている力を能力値アビリティーとして数値化出来る魔道具で、体力、魔力、霊力、神力の四つを測定する事が出来る。
 ちなみに、体力はそのまま力の強さや肉体の筋肉量などを表し、魔力は体内の魔素保有量を、霊力は聖霊を呼ぶ力、神力は神様から授かった加護の力を表すという。
 ただ、ノリリア曰く、世間一般的には、この魔道具による測定結果の信頼性は低いらしい……
 機械の性能云々というよりかは、そもそも能力値は測れるものじゃない、という考えが一般的なようだ。
 でもまぁ、一つの指標にはなるんじゃないかな? と俺は思っている。

「どれくらいあるのだ? 我と同じくらいか??」

「ねぇ、私より多いの?」

 生体測定魔道鏡を初めて目にするギンロとグレコは興味津々だ。
 だが二人とも、ティカの結果がどうというよりも、自分達の能力値が気になっているご様子です。

「いやぁ~、まさかとは思ったが、本当に魔力覚醒しちまってるとはなぁ~……。こりゃまた、フーガの学界の定説が大きく覆るぞぉ~?」

 嫌らしげな笑みを浮かべるカービィ。

「定説って何? どんな定説なの??」

「ほら、前に話した事あったろ? 体内に魔素を保有する魔物と、魔素を保有しない無物の話。今現在も、学界では魔物の定義に関する議論が絶えなくてな。今のところ、ダリレオ・ダリレイ博士の【魔物無物説】が学界では有力になりつつあったはずなんだけど……。魔力覚醒が現実に起こり得る現象だと証明出来たら、魔物無物説は廃説になるだろうなぁ~」

 ふ~ん……、よく分かんないけど、そうなんだ~。

「魔力覚醒は、そう簡単には起こらねぇ事象だ。早い話、1を100にするよりも、0を1にするほうが明らかに難しいんだよ。まぁティカさんの場合は、自然の成り行きでこうなったわけじゃないから、世に言う魔力覚醒に当て嵌まるかどうかはちょいと疑問だが……。いやはや、それにしても驚いたぞ。生きているうちに、魔力覚醒した奴と出会えるなんざ、夢にも思ってなかったからなぁ……」

 感心しまくりなカービィの視線に、ティカは更にドヤ顔になる。
 けれどもまぁ……、カービィが言うようにティカは、一度半殺しにされて、違法薬物を盛られて肉体が変化し、更に悪魔化されて、心臓抉り取られて、なんとか生き残った末に魔力を得たって事だから……
 普通とはちょっと違うだろうな、うん。

「カービィ、それは誰でも測れるのか? 我も己の強さを知りたいのだが」

「私も気になるわ。自分にどれくらいの力があるのか……」

 カービィの大きな独り言なんて全く気にせずに、ズイズイっと、カービィに詰め寄るギンロとグレコ。
 かくいう俺も、これまでの旅の中で少しは成長出来てるかも知れない!? という淡い期待を抱いているので、ちょっぴり測ってもらいたいなぁ~…… 

「よぉ~しっ! こうなったら、全員の能力値を測ろうぜ~!! モッモ、紙とペン出して書き出せぇっ!!!」

「へいっ!」

 こうして急遽、俺達の身体測定が始まった。





-----+-----+-----

 ティカ

 リザードマン(クリムゾン)A

 体力:1080P
 魔力:120P
 霊力:0P
 神力:0P

-----+-----+-----

 ギンロ

 フェンリル(パントゥー)A

 体力:1070P
 魔力:250P
 霊力:0P
 神力:0P

-----+-----+-----

 グレコ

 ブラッドエルフ AAA

 体力:370P
 魔力:200P
 霊力:30P
 神力:0P

-----+-----+-----

 カービィ

 マーゲイ AAA

 体力:140P
 魔力:690P
 霊力:0P
 神力:0P

-----+-----+-----

 モッモ

 ピグモル SSS

 体力:70P
 魔力:3P
 霊力:910P
 神力:30P

-----+-----+-----





「ぐぬぬぬぬ……。体力でティカ殿に負けているとは……」

 悔しそうに唸るギンロ。

「これって、どう受け止めればいいのかしら? 普通のエルフはどのくらいなの?? なんだか、ティカやギンロに比べると……、私って大した事ないのね。はぁ……」

 何やら落ち込むグレコ。

「おぉ! 魔力上がってるぅっ!? さすがおいら様、密かに日々成長していたのであ~るっ!!!」

 上機嫌なカービィ。

「体力は、自分が、一番」

 唸るギンロに喧嘩を売るが如く、ニヤリと笑ってみせるティカ。

 各々が、俺が紙に書き出したそれぞれの能力値の結果を見て、好き好きに感想を述べているのを他所に、俺は一人、目をパチパチさせていた。
 
 お……、俺の能力値……、なんか、随分と変わってない?
 前は確か、体力が50Pで、魔力は0Pで、霊力は覚えてないけど、神力は……、確か3Pだったはずだぞ??
 しかし、今のこの結果を見る限りでは……
 体力が20P増えて、微々たるものの皆無だった魔力が3Pとなり、神力が十倍にっ!?
 こ、これは……、凄いのではっ!??
 いろいろと、凄いのではっ!?!?

 体力と神力が増えた事は素直に嬉しいけれど、注目すべきはなんといっても魔力だろう。
 さっきカービィは、0を1にする方が難しいと言っていた。
 つまり俺は、その難しい事を乗り越えてしまったのではないのか?
 ティカと違って俺は、半殺しにされて違法薬物を飲んだわけでもなく、悪魔化したわけでもなく、心臓を抉り取られたわけでもない……
 ごく自然に、この3Pという僅かながらもしっかりとそこにある魔力を獲得したのならば……、俺こそ、魔力覚醒したと言えるのでは??
 むふ……、むふふふふ。

 俺ってば、実はめちゃくちゃ凄いのではぁっ!?!!?

 一人静かに興奮する俺。
 なんだか嬉しくて、含み笑いが止まらない。
 
「いや、負けたとてたかが10P……、気にするほどではない。日々の鍛錬をしかと積んでゆけば、早々に覆せるはず」

「では、競おう。自分は、負けない」

 バチバチと火花を散らす、ギンロとティカの体力馬鹿二人。

「グレコさんは並のエルフって感じだな。サンもこんくらいだ!」

「並のエルフって……、はぁ~。なんか落ち込むわぁ~」

「いやいや、落ち込む必要はねぇぞ? それにほら、いつの間にか霊力が備わってる! おいらの記憶が正しければ、前は無かったはずだ!!」

「前? 前っていつの話?? いつ私の事測ったのよ???」

 グレコの鋭い睨みに、カービィは冷や汗をかきながら視線を逸らしている。

 誰も……、俺の能力値なんて興味無いようだ。
 なんだよなんだよ……
 けっ! ちょっとくらい注目してくれたっていいじゃないか!?

 とは思うものの、別に構わない。
 今はなんていうか、すっごい充実感というか、一種の手応えのようなものを俺は感じているのだ。
 確実に成長してる、確実に強くなってるんだっていう手応え……、つまり自信だ。
 手元の紙を見つめながら、嬉しくて、俺は大きく息を吸い込んだ。
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