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★ピタラス諸島第四、ロリアン島編★
591:なんだか漲ってきたぁあぁぁ〜っ!!
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夜が来た。
昨日とは違って、とても静かな夜だ。
トルテカの町は、松明の火に照らされて、オレンジ色に染まっていた。
ダーラの作った晩御飯、白身魚のソテーと葉野菜の炒め物を美味しく頂いた後、俺とギンロはもといた赤岩の建物へ戻る事にした。
ティカは、ゼンイやその仲間達と今後について話がしたいらしく、食後は別行動となった。
「紅竜人は、これからが正念場であるな」
周囲を見渡しながら、ギンロは言った。
まだやはり、全体的に疲れた様子は見て取れるものの、夕食の配給を美味しそうに食べる紅竜人達はなんだかとても幸せそうだ。
「そうだね。けど、きっと大丈夫だよ。ほら、紅竜人は案外みんな図太いから」
ティカの言う通り、国が無くなって、王が居なくなっても、きっとみんなで協力して上手くやっていけるはずだ。
生きていける場所があるのなら、それだけで充分だよ。
「うむ。その点は、ピグモルによく似ておるな」
は? 紅竜人がピグモルに似てる??
いやいや、まさかまさか。
ギンロってば、まぁ~た訳の分からん事を言ってぇ~。
……けど確かに、ピグモルも考えようによっちゃ、かな~り図太いけどさ。
でも似てるってのは、ちょっと言い過ぎじゃなくて???
「モッモ~! ギンロ~!!」
名前を呼ばれて、揃って振り返る俺とギンロ。
そこには元気良く走ってくるグレコの姿があった。
「あ、グレコ。今までどこ行ってたのさ?」
どうせ、サンと長話してたんでしょ?
「ずっとサンと一緒にいて、怪我人の手当てを手伝ってたのよ」
あ……、そうだったのね、働いてたのか。
どうせ井戸端会議してたんだろって、決めつけてごめんなさい。
「さっき、ロビンズさんとチリアンが言ってたんだけど、明日この町に畑を作るそうよ」
「畑? なんの??」
「ほら、瘴気で腐った体を治すには滅瘴薬が必要になるでしょう? 滅瘴薬を作る為には、いろんな薬草が必要になるのよ。チリアンが種を沢山持っているらしいから、畑を作って、私達が去った後でも紅竜人達が自分で薬を作れるようにするんだって」
「なるほど。しかし、ここには水が無いのではないか? 井戸の一つも見当たらぬが」
「ギンロにしては鋭いわね。けど大丈夫。明日、井戸を掘るらしいから」
「井戸を掘るっ!? また凄い話になってるねっ!!」
「あらモッモ、あなたも手伝うのよ?」
「うぇっ!? 僕が手伝うのっ!?? 無理だよ、井戸掘りなんて……」
せっかく打撲による全身の痛みが引いたのに、今度は筋肉痛になっちゃうじゃないか。
「違うわよ、力仕事は紅竜人がやってくれるはず。モッモが手伝うのは、地下の水脈を探す事」
「地下の水脈!?」
もっと訳わからんぞっ!?
「なるほど。水の精霊ウンディーネの力を借りるのだな?」
ほぉっ!? なるほどそういう事かっ!!
……いや、ゼコゼコのやつ、そんな事出来るのかっ!??
「ご名答! ……なんだか妙ね。ギンロにしては勘が良すぎない?」
相変わらず失礼だな、グレコ。
「うむ。頭を打ってからというもの、冴えておる」
タダでは起き上がらないその精神力だけは褒めるてあげるよ。
だけどねギンロ、脳震盪で頭が冴えるとか無いから、絶対に。
「まぁとにかく、明日も忙しいから、今日はゆっくり休まないとね」
「そうだね~」
ガチャっとドアを開いて、建物の中に入ると、カービィとノリリアが起きていた。
「あ! 良かった、二人とも目が覚めたんだね!!」
笑顔で駆け寄る俺。
「おうモッモ! おはよう!! って言っても、もう夜だけどな~、なははは!!!」
「ポポ、寝過ぎたポね~」
カービィもノリリアも、大量の瘴気を浴びて全身が真っ黒になっていたのだが、さすがというかなんというか、守護魔法と滅瘴薬によって体は無事なようだ、いつもの鮮やかなピンク色に戻っている。
すると、グ~っというあの音が、二人のお腹から同時に鳴った。
「ポッ!? ポポポポ、お腹が……」
恥ずかしそうに赤面するノリリア。
「腹減った! なんか食うもんねぇのかっ!?」
堂々と空腹を認めるカービィ。
「ダーラが外で配給してくれてるの。私も夕食がまだだったから、取ってくるわね」
「我は運ぶのを手伝おう」
「ダーラさんが来てんのかっ!? 挨拶に行かねばっ!!」
忙しなく部屋を後にする、グレコとギンロとおまけのカービィ。
部屋には俺とノリリアと、まだ眠ったままのミルクだけになった。
「……モッモちゃん」
「ん? なぁに??」
「今回はその……、ありがとポ。無理なお願いしてごめんポね。モッモちゃんも無事で、本当に良かったポ……」
俯いて謝るノリリア。
どうやら、無茶苦茶な無茶振りをした事は理解していたらしい。
そりゃそうだ、いくら時の神の使者とはいえ、俺は世界最弱種族と名高いピグモルなのだ。
あんな、怪獣紛いな邪神と真っ向から対峙するなんざ、もう金輪際ごめんだね。
だけども、結果的になんとかなったのだ、過去の事は水に流そう!
俺は、鞄の中をゴソゴソと漁って、あれを取り出す。
奈落の泉の底で出会ったロリアンの影、彼から貰ったロリアンの遺産、金属でできているらしい銀の書物。
残念ながら、不良品らしくて開く事が出来ないのだが……
「はい。これ」
とりあえず、ノリリアに手渡す。
「ポポ? これは……?? ポッ!? まさか!!? ロリアンの遺産ポかっ!?!?」
驚いて目がまん丸になるノリリア。
「うん。ちょっと……、開け方が分からなくて、まだ中を見れてないんだけどね。でも、これで全部揃ったよね? 各島の、アーレイク・ピタラスの墓塔攻略に必要な鍵となる、四人の弟子の遺産」
受け取った銀の書物を、食い入る様に見つめるノリリア。
その手は微かに震えている。
「ポポポゥ……。揃ったポ。やっと、やっと揃った……」
泣いているわけではなくて、感激しているようだ。
心臓がドキドキしているのだろう、ノリリアは大きく深呼吸する。
「モッモちゃん、本当にありがとポ。モッモちゃんが居なければ、ここまで来る事は出来なかったポね。感謝してもし切れないポよ。騎士団を代表してお礼を言うポ、ありがとうございますポ」
深く深く、頭を下げるノリリア。
「やめてよ、そんな……。僕はどっちかっていうと、いつも足でまといだからさ。ちょっとでも役に立てたなら良かったよ」
にっこりと笑う俺。
「ポポ。モッモちゃんは謙虚過ぎるポよ。少しはカービィちゃんにも見習って欲しいポね」
「ははは、カービィには無理じゃないかな?」
「ポポ、それもそうポね」
「とにかく……、これで鍵は全部揃った。あとは、アーレイク島の墓塔を目指すだけだね!」
「そうポね。けど……」
「けど? どうしたの??」
不安気な表情になるノリリア。
「これまでピタラス諸島は、未開の地ながらも、五百年前のムームー大陸大分断以降は大きな事件も災害もなく、原住種族が危険視されていただけで、比較的安全な地域だと認識されてきたポね。だから団長も、今回のクエストを遂行するに当たって、あたちのような半人前の黒魔導師がリーダーでも大丈夫だって考えたはずポ」
半人前だなんて、そんなそんな……
それこそ謙虚の塊ですよ、ノリリアさんや。
それに、ノリリアが半人前なら、俺はいったい何人前なのさ?
十二分の一人前とかになるんじゃないか??
いや、もっとだな、二十分の一人前だな、うん。
「それが今回、様々な事件が起きて、悪魔や邪神、果てには神代の悪霊までもが潜んでいたとなると……、やっぱり、最後のアーレイク島も油断出来ないポよ。それに、逃げた邪術師ムルシエの行方も気になるポ」
あ~、そういやそんな奴もいたな。
その後が大変過ぎたのと、心臓を取られたティカも無事だったから、ムルシエの事なんてすっかり忘れてたわ。
そういやあいつ、去り際になんか物騒な事言っていたよな?
……よく思い出せないけど。
「それに、モッモちゃん……。あなたがここにいる事も、きっと偶然じゃ無いって、あたちは考えているポ。モッモちゃんはきっと、何か大きな力に導かれて……、そう、運命に導かれてここにいるのポよ」
運命って、そりゃまた……、やけに非科学的な発想だな、ノリリアよ。
まぁしかし、それについては俺も薄々感じてたけどね。
なんか、俺ってめっちゃ重要人物なんじゃね? って。
けど自分でそれを言っちゃうと、調子に乗ってるみたいで嫌だったんだよな。
「モッモちゃん。アーレイク島でもきっと、何かが起こるポ。何が起こるかまでは分からないポが、世界を揺るがすような何かが、起こる気がするポね。それでもモッモちゃんは、あたち達に協力してくれるポか? あたちは……、もうモッモちゃん無しに、先に進む自信がないポね。今回の事でよく分かったポよ、あたちは無力だって……。だからモッモちゃん、お願いポ。アーレイク島でも、どうかあたち達を助けて欲しいポね」
ノリリアの言葉、その真剣な眼差しに、俺は生まれて初めての感情を抱いていた。
胸が高鳴って、気持ちが昂って、体も心も震えるような。
誰かに、こんなにも必要とされた事など、これまでにあっただろうか?
……まぁ、前世の記憶があるおかげで、村では神童扱いされてたし、重宝されていた事は確かだけど、それとはまた違う。
上手く説明出来ないんだけど、俺じゃなきゃ駄目なんだって、初めて誰かに頼りにされたかのように感じられて。
うぅうぅぅ~っ!
なんだか漲ってきたぁあぁぁ~っ!!
「任せてっ! 僕に出来る事なら、なんだってするよっ!!」
両腰に手を当てて、ドーン! と胸を張る俺。
その時、背後で扉がガチャリと開いて……
「んあ? なぁ~にポーズ決めてんだモッモ~??」
ニヤニヤとカービィに笑われるも、今はそんなの全然気にならない。
行くぞ、アーレイク島!
待ってろよ、ピタラスの墓塔!!
俺が全部、攻略してやるぜっ!!!
昨日とは違って、とても静かな夜だ。
トルテカの町は、松明の火に照らされて、オレンジ色に染まっていた。
ダーラの作った晩御飯、白身魚のソテーと葉野菜の炒め物を美味しく頂いた後、俺とギンロはもといた赤岩の建物へ戻る事にした。
ティカは、ゼンイやその仲間達と今後について話がしたいらしく、食後は別行動となった。
「紅竜人は、これからが正念場であるな」
周囲を見渡しながら、ギンロは言った。
まだやはり、全体的に疲れた様子は見て取れるものの、夕食の配給を美味しそうに食べる紅竜人達はなんだかとても幸せそうだ。
「そうだね。けど、きっと大丈夫だよ。ほら、紅竜人は案外みんな図太いから」
ティカの言う通り、国が無くなって、王が居なくなっても、きっとみんなで協力して上手くやっていけるはずだ。
生きていける場所があるのなら、それだけで充分だよ。
「うむ。その点は、ピグモルによく似ておるな」
は? 紅竜人がピグモルに似てる??
いやいや、まさかまさか。
ギンロってば、まぁ~た訳の分からん事を言ってぇ~。
……けど確かに、ピグモルも考えようによっちゃ、かな~り図太いけどさ。
でも似てるってのは、ちょっと言い過ぎじゃなくて???
「モッモ~! ギンロ~!!」
名前を呼ばれて、揃って振り返る俺とギンロ。
そこには元気良く走ってくるグレコの姿があった。
「あ、グレコ。今までどこ行ってたのさ?」
どうせ、サンと長話してたんでしょ?
「ずっとサンと一緒にいて、怪我人の手当てを手伝ってたのよ」
あ……、そうだったのね、働いてたのか。
どうせ井戸端会議してたんだろって、決めつけてごめんなさい。
「さっき、ロビンズさんとチリアンが言ってたんだけど、明日この町に畑を作るそうよ」
「畑? なんの??」
「ほら、瘴気で腐った体を治すには滅瘴薬が必要になるでしょう? 滅瘴薬を作る為には、いろんな薬草が必要になるのよ。チリアンが種を沢山持っているらしいから、畑を作って、私達が去った後でも紅竜人達が自分で薬を作れるようにするんだって」
「なるほど。しかし、ここには水が無いのではないか? 井戸の一つも見当たらぬが」
「ギンロにしては鋭いわね。けど大丈夫。明日、井戸を掘るらしいから」
「井戸を掘るっ!? また凄い話になってるねっ!!」
「あらモッモ、あなたも手伝うのよ?」
「うぇっ!? 僕が手伝うのっ!?? 無理だよ、井戸掘りなんて……」
せっかく打撲による全身の痛みが引いたのに、今度は筋肉痛になっちゃうじゃないか。
「違うわよ、力仕事は紅竜人がやってくれるはず。モッモが手伝うのは、地下の水脈を探す事」
「地下の水脈!?」
もっと訳わからんぞっ!?
「なるほど。水の精霊ウンディーネの力を借りるのだな?」
ほぉっ!? なるほどそういう事かっ!!
……いや、ゼコゼコのやつ、そんな事出来るのかっ!??
「ご名答! ……なんだか妙ね。ギンロにしては勘が良すぎない?」
相変わらず失礼だな、グレコ。
「うむ。頭を打ってからというもの、冴えておる」
タダでは起き上がらないその精神力だけは褒めるてあげるよ。
だけどねギンロ、脳震盪で頭が冴えるとか無いから、絶対に。
「まぁとにかく、明日も忙しいから、今日はゆっくり休まないとね」
「そうだね~」
ガチャっとドアを開いて、建物の中に入ると、カービィとノリリアが起きていた。
「あ! 良かった、二人とも目が覚めたんだね!!」
笑顔で駆け寄る俺。
「おうモッモ! おはよう!! って言っても、もう夜だけどな~、なははは!!!」
「ポポ、寝過ぎたポね~」
カービィもノリリアも、大量の瘴気を浴びて全身が真っ黒になっていたのだが、さすがというかなんというか、守護魔法と滅瘴薬によって体は無事なようだ、いつもの鮮やかなピンク色に戻っている。
すると、グ~っというあの音が、二人のお腹から同時に鳴った。
「ポッ!? ポポポポ、お腹が……」
恥ずかしそうに赤面するノリリア。
「腹減った! なんか食うもんねぇのかっ!?」
堂々と空腹を認めるカービィ。
「ダーラが外で配給してくれてるの。私も夕食がまだだったから、取ってくるわね」
「我は運ぶのを手伝おう」
「ダーラさんが来てんのかっ!? 挨拶に行かねばっ!!」
忙しなく部屋を後にする、グレコとギンロとおまけのカービィ。
部屋には俺とノリリアと、まだ眠ったままのミルクだけになった。
「……モッモちゃん」
「ん? なぁに??」
「今回はその……、ありがとポ。無理なお願いしてごめんポね。モッモちゃんも無事で、本当に良かったポ……」
俯いて謝るノリリア。
どうやら、無茶苦茶な無茶振りをした事は理解していたらしい。
そりゃそうだ、いくら時の神の使者とはいえ、俺は世界最弱種族と名高いピグモルなのだ。
あんな、怪獣紛いな邪神と真っ向から対峙するなんざ、もう金輪際ごめんだね。
だけども、結果的になんとかなったのだ、過去の事は水に流そう!
俺は、鞄の中をゴソゴソと漁って、あれを取り出す。
奈落の泉の底で出会ったロリアンの影、彼から貰ったロリアンの遺産、金属でできているらしい銀の書物。
残念ながら、不良品らしくて開く事が出来ないのだが……
「はい。これ」
とりあえず、ノリリアに手渡す。
「ポポ? これは……?? ポッ!? まさか!!? ロリアンの遺産ポかっ!?!?」
驚いて目がまん丸になるノリリア。
「うん。ちょっと……、開け方が分からなくて、まだ中を見れてないんだけどね。でも、これで全部揃ったよね? 各島の、アーレイク・ピタラスの墓塔攻略に必要な鍵となる、四人の弟子の遺産」
受け取った銀の書物を、食い入る様に見つめるノリリア。
その手は微かに震えている。
「ポポポゥ……。揃ったポ。やっと、やっと揃った……」
泣いているわけではなくて、感激しているようだ。
心臓がドキドキしているのだろう、ノリリアは大きく深呼吸する。
「モッモちゃん、本当にありがとポ。モッモちゃんが居なければ、ここまで来る事は出来なかったポね。感謝してもし切れないポよ。騎士団を代表してお礼を言うポ、ありがとうございますポ」
深く深く、頭を下げるノリリア。
「やめてよ、そんな……。僕はどっちかっていうと、いつも足でまといだからさ。ちょっとでも役に立てたなら良かったよ」
にっこりと笑う俺。
「ポポ。モッモちゃんは謙虚過ぎるポよ。少しはカービィちゃんにも見習って欲しいポね」
「ははは、カービィには無理じゃないかな?」
「ポポ、それもそうポね」
「とにかく……、これで鍵は全部揃った。あとは、アーレイク島の墓塔を目指すだけだね!」
「そうポね。けど……」
「けど? どうしたの??」
不安気な表情になるノリリア。
「これまでピタラス諸島は、未開の地ながらも、五百年前のムームー大陸大分断以降は大きな事件も災害もなく、原住種族が危険視されていただけで、比較的安全な地域だと認識されてきたポね。だから団長も、今回のクエストを遂行するに当たって、あたちのような半人前の黒魔導師がリーダーでも大丈夫だって考えたはずポ」
半人前だなんて、そんなそんな……
それこそ謙虚の塊ですよ、ノリリアさんや。
それに、ノリリアが半人前なら、俺はいったい何人前なのさ?
十二分の一人前とかになるんじゃないか??
いや、もっとだな、二十分の一人前だな、うん。
「それが今回、様々な事件が起きて、悪魔や邪神、果てには神代の悪霊までもが潜んでいたとなると……、やっぱり、最後のアーレイク島も油断出来ないポよ。それに、逃げた邪術師ムルシエの行方も気になるポ」
あ~、そういやそんな奴もいたな。
その後が大変過ぎたのと、心臓を取られたティカも無事だったから、ムルシエの事なんてすっかり忘れてたわ。
そういやあいつ、去り際になんか物騒な事言っていたよな?
……よく思い出せないけど。
「それに、モッモちゃん……。あなたがここにいる事も、きっと偶然じゃ無いって、あたちは考えているポ。モッモちゃんはきっと、何か大きな力に導かれて……、そう、運命に導かれてここにいるのポよ」
運命って、そりゃまた……、やけに非科学的な発想だな、ノリリアよ。
まぁしかし、それについては俺も薄々感じてたけどね。
なんか、俺ってめっちゃ重要人物なんじゃね? って。
けど自分でそれを言っちゃうと、調子に乗ってるみたいで嫌だったんだよな。
「モッモちゃん。アーレイク島でもきっと、何かが起こるポ。何が起こるかまでは分からないポが、世界を揺るがすような何かが、起こる気がするポね。それでもモッモちゃんは、あたち達に協力してくれるポか? あたちは……、もうモッモちゃん無しに、先に進む自信がないポね。今回の事でよく分かったポよ、あたちは無力だって……。だからモッモちゃん、お願いポ。アーレイク島でも、どうかあたち達を助けて欲しいポね」
ノリリアの言葉、その真剣な眼差しに、俺は生まれて初めての感情を抱いていた。
胸が高鳴って、気持ちが昂って、体も心も震えるような。
誰かに、こんなにも必要とされた事など、これまでにあっただろうか?
……まぁ、前世の記憶があるおかげで、村では神童扱いされてたし、重宝されていた事は確かだけど、それとはまた違う。
上手く説明出来ないんだけど、俺じゃなきゃ駄目なんだって、初めて誰かに頼りにされたかのように感じられて。
うぅうぅぅ~っ!
なんだか漲ってきたぁあぁぁ~っ!!
「任せてっ! 僕に出来る事なら、なんだってするよっ!!」
両腰に手を当てて、ドーン! と胸を張る俺。
その時、背後で扉がガチャリと開いて……
「んあ? なぁ~にポーズ決めてんだモッモ~??」
ニヤニヤとカービィに笑われるも、今はそんなの全然気にならない。
行くぞ、アーレイク島!
待ってろよ、ピタラスの墓塔!!
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