上 下
476 / 800
★寄り道・魔法王国フーガ編★

464:魔法王国フーガ、王都フゲッタ

しおりを挟む
「うぅ……、う~ん?」

「お? 気がついたか?? お~い、モッモ~???」

   カービィの声がする。
   俺はゆっくりと瞼を上げた。

「ここは……、どこ?」

   視界に映るのは、見慣れない白い天井。
   重厚感ある焦げ茶色の柱と、品の良い薄水色の小花柄の壁。
   
   むくっと身を起こすと、そこにはカービィと、フーガに帰ったはずのメイクイとメラーニアの姿があった。

「ありゃ? 二人共……、どうしてここにいるの??」

   寝ぼけ眼の俺の言葉に、メイクイが苦笑する。

「駄目だこりゃ、完全に記憶飛んでやがるな。まぁ、初めての長距離空間移動の後だとこんなもんですかね?」

   メイクイがカービィに目配せする。

「んだ。吐かなかっただけで偉いと思うぞ!」

   腕組みをし、何度も深く頷くカービィ。

「あははは! 僕は吐いたからねっ!!」

   吐いた事の何が面白いのか……、メラーニアは爆笑している。

   あのぉ~、えっとぉ~……
   何がどうなったんだっけ?

   ぼんやりとする頭で、記憶を遡る俺。
   そして思い出す。

「あっ!? そっか!! フーガに来たんだっ!??」

   そうだよそうだよ! 
   ノリリアの付き添いで、星雲のペンダントってやつを使って、魔法王国フーガに飛んだんだ!!

   星雲のペンダントの空間移動魔法は、本当に空を飛んで移動するという、かなり荒技な魔法だった。
   前世のテレビゲームで、フィールドから町まで一瞬で飛んで移動できる魔法があったように思うが……、リアルだとあんな感じなんだな。
   未だに全身の毛並みが後ろへとピシッ! と流れていて、前方から受けていた風がいかに強かったのかが伺い知れる。
   正直あれなら、風の精霊リーシェがふざけて俺を運んでた頃と大差ない。
   そう考えると、神様がくれた導きの腕輪は、本当に凄い性能だ。
   瞬き一つすれば、もう目的の場所にいるんだから。
   改めて、神様凄い! と俺は思うのだった。

   ……で、ここはどこなんだろう?

   部屋にあるのは、俺の寝転んでいる大きなベッドと、同じものが隣に一つ。
   カービィとメイクイとメラーニアが座っている椅子が三つと、窓が一つ。

   ……ん? 窓??

   不意に視線を向けた先にある窓の外は暗い。
   そして、キラキラと七色の光がちらついている。

「今こっちは夜なんだ。時差ってやつだな~」

   ヘラヘラと笑うカービィ。
   するとメイクイが立ち上がって、その窓を開けてくれた。

「ようこそ。魔法王国フーガの王都、フゲッタへ♪」

   ニヤリと笑うメイクイに誘われて、窓の外を見る俺。
   そこには……

「う……、うわぁああぁぁ~っ!!!!!」

   あまりにも幻想的な街並みが広がっていた。

   丸く青い月が輝く夜空の下、星々の煌めきに負けないほどに眩しい七色の光の数々に、俺の顔はほころぶ。
   色とりどりの屋根の、煉瓦造りの建物が並ぶこの町は、沢山の光に満ちている。
   立ち並ぶ街灯のオレンジ色の眩しい光。
   大きな街路樹から放たれる青く淡い光。
   それらを反射するのは、整備された石畳の道。
   道は、一見するとガラスのようにも見えるが、光沢があるだけであれはきっと石だと思われる。
   その石畳も、建物同様様々なパステルカラーで彩られており、町は鮮やかな色で溢れていた。

   なんじゃこりゃあっ!?
   イッツア、ベリーベリー、ファンタスティック!!!

   何あの街灯!?
   お洒落すぎじゃねっ!??
   ディテールめちゃアンティークで最高っ!!!

   それに、木っ!
   なにあの木っ!?
   なんで光放ってんの!??
   蛍? 蛍なの?? 違うよね???
  
   建物すっげぇ綺麗だしっ!
   いろんな色で可愛いしっ!!
   石畳すら可愛いしっ!!!
   てか……、やべぇええぇぇっ!!!!

   ……まぁ、俺の語彙力はさておきだ。
   魔法王国フーガの王都フゲッタは、想像通り……、いや、想像以上に幻想的で、美しい町だった。
   建物は、店を開いているものがほとんどで、そこに並べられている品々は、当たり前だが見た事のない物ばかりである。
   そして、そこに存在する者達も、見たことの無い姿の種族ばかり。
   ただ一つ彼らに共通しているのは、色や形は違えども、魔導師らしきローブを身につけている事。
   つまり、今俺の目の前にある光景は、とてつもなくファンタジーな世界だった。
   数多の魔導師がひっきりなしに行き交う王都、フゲッタは、空はもう真っ暗だというのに、明るい光と活気に満ち溢れていた。
   
   マジでやべぇ……
   俺、本当に来たんだ。
   世界一の魔法王国、フーガに。
   とうとう来たんだぁあっ!!!

   キラキラとした眼差しで、街並みを見つめる俺。
   どうやら俺が今いる場所は、比較的高地の建物の二階以上の部屋のようで、美しい王都の街並みがとても遠くまで見通せる。
   しばらくの間俺は、窓にかじりついたまま、外を眺めていた。

「ははは! 想像以上に良い反応するなぁ~!! ほんと、モッモは単純だよな!!!」

   必死な俺の様子に、メイクイが笑う。

「なははは! おいらも最初にここに来た時にゃ、そんな感じだったよ。世界的に見ても、王都フゲッタほど魅力的な町はねぇ!!」

   うんうんと頷くカービィ。

「あはは! 僕も最初は、あまりにも沢山周りに物があるから、世界がひっくり返ったのかと思ったよ!!」
  
   訳の分からない感想を述べるメラーニア。

「ねぇっ!? 外!! 外に行こうよっ!!?」

   テンションマックスで、カービィを誘う俺。
   しかしながら、その言葉を聞いた途端、今まで笑っていた三人が真顔になる。

「ねぇ! 外にっ!!」

   早く街に出たくて、そわそわとする俺。
   だけど……

「今は無理だ」

   色のない声で、カービィが静止する。

「え!? 無理っ!?? なんでっ!?!? てか……、ここはどこ??」

   ふと冷静になり、尋ねる俺。
   そういや、ノリリアもいないぞ……?

「ここは、白薔薇の騎士団のギルド本部の宿舎だ。そして、おいらとモッモは今……、この部屋に軟禁されてんだよ」

   いつも通りのヘラヘラ顔で、カービィはそう言った。
   
   な……、なん……、軟禁っ!?
   ななな、なんで軟禁んんんっ!??
 
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

捨て子の僕が公爵家の跡取り⁉~喋る聖剣とモフモフに助けられて波乱の人生を生きてます~

伽羅
ファンタジー
 物心がついた頃から孤児院で育った僕は高熱を出して寝込んだ後で自分が転生者だと思い出した。そして10歳の時に孤児院で火事に遭遇する。もう駄目だ! と思った時に助けてくれたのは、不思議な聖剣だった。その聖剣が言うにはどうやら僕は公爵家の跡取りらしい。孤児院を逃げ出した僕は聖剣とモフモフに助けられながら生家を目指す。

【完結】おじいちゃんは元勇者

三園 七詩
ファンタジー
元勇者のおじいさんに拾われた子供の話… 親に捨てられ、周りからも見放され生きる事をあきらめた子供の前に国から追放された元勇者のおじいさんが現れる。 エイトを息子のように可愛がり…いつしか子供は強くなり過ぎてしまっていた…

転生墓守は伝説騎士団の後継者

深田くれと
ファンタジー
 歴代最高の墓守のロアが圧倒的な力で無双する物語。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

スキル【アイテムコピー】を駆使して金貨のお風呂に入りたい

兎屋亀吉
ファンタジー
異世界転生にあたって、神様から提示されたスキルは4つ。1.【剣術】2.【火魔法】3.【アイテムボックス】4.【アイテムコピー】。これらのスキルの中から、選ぶことのできるスキルは一つだけ。さて、僕は何を選ぶべきか。タイトルで答え出てた。

役立たず王女のサバイバル生活〜島流しにされましたが今日も強く生きていきます!〜

●やきいもほくほく●
ファンタジー
──目が覚めると海の上だった!? 長年、虐げられてきた『役立たず王女』メイジーは異母姉妹であるジャシンスに嵌められて島流しにされている最中に前世の記憶を取り戻す。 前世でも家族に裏切られて死んだメイジーは諦めて死のうとするものの、最後まで足掻こうと決意する。 「く~~やぁ~しいいぃっ~~~~ばっかやろおぉぉっ!」 奮起したメイジーはなりふり構わず生き残るために行動をする。 そして……メイジーが辿り着いた島にいたのは島民に神様と祀られるガブリエーレだった。 この出会いがメイジーの運命を大きく変える!? 言葉が通じないため食われそうになり、生け贄にされそうになり、海に流されそうになり、死にかけながらもサバイバル生活を開始する。 ガブリエーレの世話をしつつ、メイジーは〝あるもの〟を見つけて成り上がりを決意。 ガブリエーレに振り回されつつ、彼の〝本来の姿〟を知ったメイジーは──。 これは気弱で争いに負けた王女が逞しく島で生き抜き、神様と運を味方につけて無双する爽快ストーリー! *カクヨム先行配信中です *誤字報告、内容が噛み合わない等ございましたら感想からどしどしとお願いいたします!

処理中です...