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★ピタラス諸島第三、ニベルー島編★

446:その後

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「う~ん……、むにゃむにゃ……、ん? んんん?? ……はっ!? ここはっ!??」

   寝心地の良いベッドの上で、枕をギュッと抱きしめた格好で、俺は目覚めた。

「あ、起きたわね~? も~いきなり倒れるんだから、びっくりしたわよ」

   すぐそばには、椅子に腰掛けて本を読むグレコの姿があった。

   ……おや? なんだろうな??
   このシュチュエーション、すっごく既視感があるぞ???
   デジャブだ、デジャブ。

   俺はゆっくりと身を起こし、頭をぽりぽりと掻く。
   そして不意に、光が差し込む窓の外に視線を向けて……、あぁ、終わったんだな……、と、心の中で呟いた。

   ここより少し離れた場所にあるフラスコの国。
   その全容は、以前のものと比べると、かなり変形してしまっている。
   国全体を覆っていた、精霊が通る事の出来ないあの摩訶不思議なフラスコの上半分ほどが、城で起きた大爆発の影響で粉々に砕け散ってしまったのだ。
   言い方があっているのかは分からないけれど……、実質、昨日までそこにあったはずのフラスコの国は、完全に滅びてしまったのだった。

   メラーニアを救出後、俺とグレコとギンロは急いで二階へと戻り、カサチョが行使していた空間魔法の玉の中を通って城外へと避難した。
   どこでもドア~♪ みたいな感じでちょっと楽しかった……
   ノリリアと騎士団のみんなは、監禁されていた者達全員をなんとか救い出し、城外へと無事に運んだ。
   その直後、更に大きな爆発が城内で起き、その爆風によって、国を覆っていた巨大フラスコに無数のヒビが入ったのだ。
   ノリリアの号令で、待機していたケンタウロス達が救出された者達を背負って国外へと運び出し、同時に俺たちも急いで国の外へと逃れた。
   その後はもう……、ドカンドカンの連続で……
   度重なる爆発によって城は崩壊し、城外にも引火して、国中が大火事となった。
   朝日が昇る頃にはもう、国全体が文字通り廃墟と成り果てていたのだった。
    
「モッモ、あなた丸一日眠ってたわよ。よっぽど疲れてたのね」

   そう言うグレコは、顔色も良いし機嫌も良さそうで……、元気そうで何よりですね、ほんと。
   しかし、丸一日も眠っていたとは……、通りで頭がぼんやりするわけだよ、完全なる寝過ぎだ。
   体は……、と、いろいろと動き回っていたから、肩と太腿辺りが筋肉痛だな、地味に痛い。
   
   ぽりぽりと頭を掻きながら、その後、何があったっけ? と俺は記憶を遡る。
   
   なんとか無事に戦いを終えて、生き延びた俺を待っていたのは、ノリリアの尋問タイムだった。
   尋問といってもまぁ、俺が悪い事をしたわけではないので、決して責められたりはしてないのだが……
   疲れ果てた体と頭での、数時間に及ぶ事情聴取はさすがにきつかった。
   けど、俺が話さない事には真実が何も分からない為に、俺は頑張って、ノリリアに全てを話して聞かせた。
   そして、全てを話し終えて、ようやく解放された俺は、この部屋に戻るなり、心配するグレコの目の前で意識を失ったのだった。

   ノリリアってばほんと……、真面目なのはいいけど、容赦が無いんだから全く……
   もはや、何を喋っていたのか、ほとんど覚えてないよ俺。
   ちゃんと本当の事話せてたのかなぁ?
   後で確認しに行こう、嘘付いてたらえらいこっちゃ。

   そんな事を考えながら、ふと視線をずらすと、隣のベッドで眠るカービィの姿が目に入った。
   大口開けて、いつもなら五月蝿い程のイビキをかくはずなのに、よっぽど疲れているのだろう、それすら忘れて爆睡している。

「カービィもずっと寝てるの? 確か……、僕が寝る前から寝てたよね??」

   カービィは、俺がノリリアに呼ばれる前に部屋へと戻ったはずだ。
   半放心状態で、疲労困憊って顔をして……、あんなに疲れ切ったカービィを見たのは、出会ってから初めてだった。

「あぁ、うんそうね。昨晩一度、お腹が空いて起きたんだけどね。食べたらまた寝ちゃったの」

   そっか……
   まぁ無理もないな、あのホムンクルスの大群相手に、カサチョと二人で奮闘して……、疲れて当然だよね。

   グレコの話だと、俺が製造室のレバーを操作した事によって、無事に城の鉄扉が開いたそうだ。
   しかしながら、騎士団のみんなが城の中へと雪崩れ込んだ時には、もう既にほとんどのホムンクルス達が石化していて、戦闘不能状態だったらしい。
   もちろん、その全てが、カービィの石化魔法によるものだった。

   そもそもカサチョは杖がなくて……、妙な術を使えるから、一応の戦力にはなっていたようだけど、ホムンクルスに石化魔法をかける事が出来なかった。
   だから、カービィはたった一人で、迫り来るホムンクルスの大群相手に、第一級禁呪魔法と言われる石化魔法を行使し続けたのだ。
   俺には魔法が使えないから、それがどれくらい大変な事なのかは分からないけれど……
   今ここで爆睡するカービィを見る限り、とても、とてもとても大変だったに違いない。

「ギンロは? 今どこに??」

「あぁ、ギンロはライラックの看病をしてるわ。ほら、手傷を負ってたでしょ? 命に別状はないし、もう随分と良くなったみたいだけど、まだ完全に腕が上がらないから、身の回りの世話をしてあげるって言って」

   おいおい、ギンロめ……
   身の回りの世話って、お前は彼女かよおい。
   優しいのは分かるけど、友情もそこまでいくと、ちょっと如何わしいな。
   
「他のみんなは? 何してるの??」

   騎士団の野営テントは、三子岩のすぐそばに設置されていて、周りはやけに静かなのだ。
   騎士団のみんなや、ケンタウロス達は何処へ?

「騎士団のみんなは、フラスコの国を調査してるわ。といっても、お城も街も全て崩壊してしまっているから、なかなか難航しているようだけど……。ケンタウロス達は里へと戻ったわ。メラーニアも一緒にね」

「そっか……。ホムンクルスは? 全滅したの??」

「今のところ、残党は見つかっていないって」

「そっか……。あ! メイクイとポピーは!? 目を覚ました??」

   俺の問い掛けに、グレコの表情が暗くなる。

「あ……、二人とも無事よ。けど、二人共もう、プロジェクトには残らないって……」

「え? ……な、なんで??」

「私にはよく分からないんだけど……。二人共、昨晩のうちに目を覚ましたのだけど、魔力が全く回復しないらしいのよ。だから魔法が使えなくなってて……」

「そんな……。え、じゃあ、二人は国に帰るの?」

「そうするって言ってたわ。魔力が戻らない以上、プロジェクトに参加するわけにはいかないって……、足手まといになるからって、本人達が決めたのよ」

   な、なんてこった……
   メイクイとポピーが、そんな……

   きっと、研究室のあの変な機械に何かされたせいだ。
   魔力が戻らないって事は、魔法が使えないって事で……
   まさか、この先もずっと……?

   俺は、なんだかとても悔しくて、下唇をギュッと噛み締めた。
   
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