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★ピタラス諸島第三、ニベルー島編★

445:んんんっんっ!!!

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   轟々と燃える赤い炎は、玉座の間の入り口を完全に塞いでしまっている。
   そのあまりの勢いに、俺はもちろん、グレコもギンロもたじろいでいた。

   ……と、またもや何処かで爆発音が鳴り響く。
   それも一発や二発ではない。
   四方八方から次々と、ドカンドカンと立て続けに聞こえてきて、その度に俺たちの足元はグラグラと揺れた。
   どうやらカービィの推測通り、この城は今まさに崩壊しようとしているようだ。
   それを裏付けるかのように、俺たち三人がいる三階の壁や床、天井にまでも無数の亀裂が走り、今にも全てが崩れ落ちてしまいそうなのだ。

「迷ってる場合じゃないわ! 行くわよっ!?」

「だぁっ!? 無理だよグレコ!!」

   玉座の間の入り口に立ち塞がる炎の壁へ、臆せず突っ込もうとするグレコを俺は必死に止める。
   いくらなんでも……、焦げちゃうよっ!?

「むむ……、何か方法はないのか……? む!? モッモよ、水の精霊を呼べば良いのではないかっ!??」
   
   ギンロにしてはナイスな閃きだけど……

「ここでは精霊呼べないんだっ!」

「何ですって!? そんなの……、やっぱり私が行くしかないじゃないのっ!!」

「やめてグレコ! 焦げちゃうよぉっ!!」

   今にも駆け出しそうなグレコの足に、俺は必死にしがみ付く。
   一応、小さな俺でも、衣服や荷物を足せば体重は10キロほどにはなる。
   さすがのグレコも、重くて足が上がらない……、はず!

「けど! メラーニアがこの中にいるんでしょっ!? なら早く助けないとっ!!!」

   仰る通りですけど、グレコを危険な目に遭わけるわけにはいかんのですっ!
   それにもしかすると、この炎の中では、メラーニアはもう……

「ぬぬ、消せぬのならば……、はっ! この身に炎を受けねば良いのだな!?」

   珍しく頭をフル回転させているらしいギンロが、何かを思いついたようにそう言った。
   そして……

「ぐぅ~……、うぬぬぬぬぬっ!!!」

   妙な呻き声を出しながら、両手の拳をギュッと握りしめて、ギンロは何かをしようとしている。
   だけどその姿は……、声もそうだけど、なんか……、でっかくて硬いウンコをきばっている様にしか見えない。
   まさかとは思うけど、今このタイミングで、ウンコを……?

   しかしながら、もちろん俺の予想は外れた。
   ギンロの握りしめていた拳の先が、薄っすらと何かに覆われ始める。
   最初は白く、そしてすぐさま透明となったそれは、氷だ。
   ギンロの拳は、透明な氷で覆われているのだ。
   そしてそれは徐々に全身へと広がって、たちまちのうちに、ギンロの体は完全に氷化してしまった。
   その姿はもはや別の生き物で、あまりの変貌ぶりに俺とグレコは恐れおののいた。

「なっ!? 何してるのっ!?? 何よそれっ!?!?」

「こっ!? ここっ!?? 凍ってるぅうっ!?!?」

   グレコと共に体を震わせ、全身が氷で覆われてしまったギンロを見つめる俺。
   だけど、俺たちの言葉に対して、ギンロが何かを答える事はなかった。

「んんんんん~!? んんんっんっ!!!」

   ばっ!? 馬鹿かギンロ!??
   氷で口が固められて、言葉が発せてないじゃないかっ!!!

   どんなコントだよっ!? と俺が突っ込む間も無く、全身を氷で覆ったギンロは、ガキガキと音を立てながら、目の前の炎の中へと突っ込んでいった。

「だっ!? 大丈夫かしら……??」

   心配するグレコが後を追わぬ様、俺は再び足にしがみ付く。
   
   大丈夫か大丈夫じゃないかで言ったら、きっと大丈夫じゃない。
   俺の耳には聞こえていたのだ。
   炎の中に突っ込んだ瞬間に、ギンロの全身を覆っていた氷がジュワ~っと溶けていった音が……
   
   行ったはいいけど、戻れるのか!?

   するとまた何処かで、ドカーーン! と爆発音が鳴り響いた。
   今度は近くで爆発が起きたらしく、床の一部が崩れて下階へと抜けてしまった。

   ここにいたらマズイぞっ!?
   早く避難しないとぉっ!!?

「あっ!? 出てきたっ!!?」

   グレコの言葉に、玉座の間の入り口を見やる俺。
   そこには、両手にメラーニアを抱えながら、全身の毛がちょっぴり燃えちゃったギンロの姿があった。

   やっぱり!?
   氷全部溶けたのかっ!??
   けど……、何故今は大丈夫なんだ???

   ギンロは、慌てるでも急ぐでもなく、ゆっくりと炎の中を歩いてくる。
   周りの炎はというと、どうしてだかギンロとメラーニアには届かない。

   なんだ? 何が起きてるんだ??

   その不思議な光景を前に、俺は両手で目を擦る。
   そして再度、目をよ~く凝らして見てみると、ギンロとメラーニアの周りには薄っすらと、光のバリアが張られているではないか。
   
   あれは確か……、メラーニアが悪魔テジーにやられそうになった時に、テジーのお化けたちが現れて、メラーニアを守ってくれたものだ。
   という事は、今あそこにあれがあるという事は……?

   不意に、視線を二人の頭上へと移す俺。
   するとそこには、宙に浮かびながら、二人を守る様に輪を成した、十人のお化けテジーの姿があった。
   その中の一人、おそらく本物のテジーだと思われる者と、俺は目が合った。

『あとは頼みますよ?』

   お化けテジーはそう言うと、ニコリと笑って、最初に出会った時の年老いた姿へと戻った。
   そして、ギンロが炎から抜け出た事を確認した後、他のお化けテジー達と共に、スーッとその場から姿を消してしまった。

「ギンロ! 大丈夫なのっ!?」

「少々熱かったが問題ない。メラーニア殿も無事だ」

   ギンロの腕に抱かれたメラーニアは、全身ボロボロながらも、どこか幸せそうな顔をして眠っていた。
     
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