上 下
455 / 800
★ピタラス諸島第三、ニベルー島編★

444:ドッカーーーーーン!!!

しおりを挟む
「消えたっ!? 透化魔法でござるかっ!??」

   カサチョの言葉に、そこにいる白薔薇の騎士団の全員に緊張感が走る。

「いや、魔法じゃなさそうだぞ。魔力の流れが全く感じられねぇ……」

   いつになく真剣な顔で、髭をピンと伸ばしながら、カービィが呟いた。
   その時だった!

   ドッカーーーーーン!!!

「わわっ!? なんだっ!??」

   どこからか物凄い爆破音が鳴り響き、足元がグラグラと大きく揺れた。
   慌てて階段の柵に掴まる俺。
   カービィ達は、みんな揃ってその場に伏せた。

   揺れは数秒後に収まったものの、何やらとても嫌な予感がする……

「ポポ!? モッモちゃん! 無事ポッ!??」

   一番最初に俺の身を案じてくれたのはノリリアだった。
   そのお顔は、可愛らしい円らな瞳がいつもより少しだけ腫れていて、沢山泣いた後だと分かるものだった。

「だっ! 大丈夫っ!! それより、メラーニアと……、あ、あとメイクイとポピーが」

   ドゥオッ……、カァーーーーーーン!!!!!

「きゃあっ!?!?」

   ぬぉおっ!? なんだぁあっ!??

   再度鳴り響く爆音。
   それと同時に、二階の製造室の、あの頑丈そうな扉が勢いよく吹っ飛んで、宙を舞った。
   製造室の中では炎が上がっているようで、もくもくと黒い煙が流れ出てくる。

「くっそ、あの親父……、城を崩壊させるつもりだ! 全員急いで退去!!」

   カービィが号令をかけるも、

「待つポ! メイクイとポピーの救出をするポッ!! モッモちゃん、二人はどこにっ!??」

   さすがはノリリア、だてに白薔薇の騎士団副団長を名乗ってないな。
   責任感半端ないっ!

「ふっ、二人はそっちの! 研究室の中にっ!! でも」

「こっちポねっ!? みんな行くポよっ!!」

   俺の言葉が終わらぬうちに、ノリリアが号令をかける。
   岩人間のブリックが、研究室の重い扉を拳一つで破壊する。  
   そして騎士団のみんなは、次々と研究室へと駆け込んで行った。

   あぁっ!? 待って!!
   研究室の中ではあるけれど、更にその……、壁の中のね!!?
   うぅ、説明出来ないっ!!!!
   さっきまで俺がいた場所……、お化けテジーのいたあの狭い小部屋は、一体何なんだっ!?!!?

   しかしながら、俺の心配を他所に、アイビーがポピーを抱えて、すぐさま研究室から出てきたではないか。
   その後には、メイクイをおぶったブリックが続いた。

   おぉっ!? どうなってんだ!??
   まさかノリリアたち、すぐにあの部屋を見つけたのかっ!?!?
   すっげぇええぇっ!!!!!
   
「モッモ、大丈夫!?」

   救出されたメイクイとポピーに視線が釘付けになっている俺に、グレコとギンロが駆け寄ってきた。
   なんだか、とっても久しぶりに二人に会えたような気になって、ホッとして……
   俺の目には一瞬で、ブワッ! と涙が溜まった。

「グッ!? ギッ!?? こ、怖かっ……、いや! 大丈夫っ!!」  

   溢れ出そうになる涙を両手で隠し、俺はあえてそう言った。
   本当はめちゃくちゃ怖かったけど……、でも何とかなった!
   だから泣かないぞっ!!

「良かった無事で……。ねぇ、メラーニアを知らない? こっちにはゴリラーンだけが戻ってきたんだけど……??」

「あっ! メラーニア!! そうだよ、メラーニアを助けないとっ!!!」

   三階の玉座の間で、黒い檻の中に閉じ込められたままのメラーニアを思い出し、俺は慌てて上階を指差した。
   するとまた!

   ドカンッ! ドカンッ!! ドッカァーーーン!!!

   城の何処かで、立て続けに三度、爆発が起きた。
   足元は大きく揺れて、壁や床に亀裂が走る。

「ここは長くないでござるな……? ノリリア殿! 拙者の空間魔法で皆を外へ運ぶでござるよっ!! 杖を拝借したいっ!!!」

   研究室内に向かって、カサチョが叫ぶ。

「まだポ! 生存者が複数いるポね!! 見捨ててはいけないポ!!!」

   研究室の中から、ノリリアはそう答えた。
   生存者とは恐らく、研究室に無数にあった、あの檻の中に捕らえられている様々な種族の者達の事だろう。
   俺の記憶が正しければ、もはやみんな衰弱しきっていて、虫の息だったはずだけど……、そんな見ず知らずの相手でも、ノリリアはきっと見捨てはしない。

「カサチョ、おいらの杖使え! モッモ、グレコさん、ギンロ!! 先に外に出ろっ!!!」

   カサチョに自らの杖を渡し、俺たちにこちらに来るようにと手招きするカービィ。
   杖を手にしたカサチョは、すぐさま袴の内側から魔道書を取り出して、何かの呪文を唱え始める。
   そして、二階の廊下の床に水色の魔法陣が浮かび上がったかと思うと、そこには同じ色の光る巨大な球が出現した。
   その玉は不思議な事に、どこかの風景を写している。
   見た事のある街並みと、大勢のケンタウロス達。
   あの光景は恐らく……、この城の真ん前だ。

   ポピーを抱えたアイビーは、すぐさまその玉の中へと入り込んだ。
   メイクイをおぶったブリックが後に続く。

   なるほど、あの玉は外と繋がってるんだな!
   あれが空間魔法ってやつか!?
   ……てか、そんなものが使えるなんて、やっぱり只者じゃないなカサチョめっ!!!

「けどカービィ! 上にメラーニアがいるらしいのっ!! 私達で助けに行くわっ!!!」

   勇ましく言い放つグレコ。

「分かった! ここで待ってる!!」

   カービィの言葉に、グレコはこくんと頷く。
   そして、慣れた手付きで俺をヒョイと抱え、小脇に挟んで、階段を猛ダッシュ!
   ギンロがその後に続く。

   あぁっ!? 下ろしてよぉっ!??
   階段くらい自分で上れるよぉおっ!!!!

   しかしながら、俺が階段を登り切るのにかかった時間の半分ほどで、グレコは三階へと辿り着いた。

   くそぅ……、これが、足の長さの違いってやつか!?

「こ……、ここ!? この中なのっ!!?」

   悲鳴にも近い声を、グレコが発する。
   するりとグレコの腕を抜け、自分の足で立った俺も、目の前の光景に絶句する。

   玉座の間へと続く入り口は、その形が大きく変形し、グニャリと曲がっていて……
   更には真っ赤な炎が、容赦なくメラメラと立ち上っているのだ。
   恐らく、さっきの三連続の爆発は、この中で起きたものなのだろう。

   だけど……、だけどこの中には……
   まだメラーニアがっ!?

「めっ!? メラーニアぁああっ!!?」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

アスタッテの尻拭い ~割と乗り気な悪役転生~

物太郎
ファンタジー
 “彼女”は死後、一枚のカードを手に取った。  そこに書かれていたのは「役:悪役令嬢」。 『いいかい? 君はそこに書かれた君の役目を果たせばいい。失敗すれば死。一つでも取りこぼせば死。分かった?』  彼女を転生させるという謎の少年はそう言った。  アルベラ・ディオールとして転生した彼女は時に頼れる仲間を作り、時に誰かを敵に回し、“悪役令嬢”という役を成し遂げるべく二度目の人生を奔走する。 ※「追放」「復讐」主体の話ではありません ※◆=イラストありページ ・「アスタッテ」って何? 転生の目的は何? をさくっと知りたい方は「65話」と「151話」をどうぞ 第一章、怪しいお薬 十歳偏  ―完―  5年後に迎える学園生活&悪役業に備えるべくアルベラは模索する。そんな中、10歳時のヒーロー達と出会ったり、父の領地で売られている怪しげな薬の事を知ったり、町で恐れられてるファミリーと出会ったり……。※少しずつ文章を修正中 第二章、水底に沈む玉 十三歳偏  ―完―  高等学園入学まであと2年。アルベラは行き倒れの奴隷の少年を見つける。それから少しして魔族の奴隷も拾い……。  彼らの出会いとアルベラの悪役令嬢としてのクエストが関わり何かが起きる? 第三章、エイヴィの翼 前編 学園入学編  高等学園の入学前に、とある他人種の少女と出会ったアルベラ。少女にもらった地図が切っ掛けで、学園一度目の長期休暇は十日前後の冒険に出ることに。  ヒロインやヒーローとも新たに出会い、自分を転生させた少年とも再会し、アルベラの悪役業も本番に。彼女の賑やかで慌ただし学園生活が始まる。 第三章、エイヴィの翼 後編 一年生長期休暇と冒険編  学園入学後の初の長期休暇。入学前に出会った他人種の少女の里観光を口実に、手に入れた地図を辿りお宝探しへ。その先でアルベラ達一行はダークエルフの双子の企てに巻き込まれる事に。

吸血鬼公爵に嫁いだ私は血を吸われることもなく、もふもふ堪能しながら溺愛されまくってます

リオール
恋愛
吸血鬼公爵に嫁ぐこととなったフィーリアラはとても嬉しかった。 金を食い潰すだけの両親に妹。売り飛ばすような形で自分を嫁に出そうとする家族にウンザリ! おまけに婚約者と妹の裏切りも発覚。こんな連中はこっちから捨ててやる!と家を出たのはいいけれど。 逃げるつもりが逃げれなくて恐る恐る吸血鬼の元へと嫁ぐのだった。 結果、血なんて吸われることもなく、吸血鬼公爵にひたすら愛されて愛されて溺愛されてイチャイチャしちゃって。 いつの間にか実家にざまぁしてました。 そんなイチャラブざまぁコメディ?なお話しです。R15は保険です。 ===== 2020/12月某日 第二部を執筆中でしたが、続きが書けそうにないので、一旦非公開にして第一部で完結と致しました。 楽しみにしていただいてた方、申し訳ありません。 また何かの形で公開出来たらいいのですが…完全に未定です。 お読みいただきありがとうございました。

優秀な姉の添え物でしかない私を必要としてくれたのは、優しい勇者様でした ~病弱だった少女は異世界で恩返しの旅に出る~

日之影ソラ
ファンタジー
前世では病弱で、生涯のほとんどを病室で過ごした少女がいた。彼女は死を迎える直前、神様に願った。 もしも来世があるのなら、今度は私が誰かを支えられるような人間になりたい。見知らぬ誰かの優しさが、病に苦しむ自分を支えてくれたように。 そして彼女は貴族の令嬢ミモザとして生まれ変わった。非凡な姉と比べられ、常に見下されながらも、自分にやれることを精一杯取り組み、他人を支えることに人生をかけた。 誰かのために生きたい。その想いに嘘はない。けれど……本当にこれでいいのか? そんな疑問に答えをくれたのは、平和な時代に生まれた勇者様だった。

愛されない花嫁は初夜を一人で過ごす

リオール
恋愛
「俺はお前を妻と思わないし愛する事もない」  夫となったバジルはそう言って部屋を出て行った。妻となったアルビナは、初夜を一人で過ごすこととなる。  後に夫から聞かされた衝撃の事実。  アルビナは夫への復讐に、静かに心を燃やすのだった。 ※シリアスです。 ※ざまあが行き過ぎ・過剰だといったご意見を頂戴しております。年齢制限は設定しておりませんが、お読みになる場合は自己責任でお願い致します。

【完結】聖女が世界を呪う時

リオール
恋愛
【聖女が世界を呪う時】 国にいいように使われている聖女が、突如いわれなき罪で処刑を言い渡される その時聖女は終わりを与える神に感謝し、自分に冷たい世界を呪う ※約一万文字のショートショートです ※他サイトでも掲載中

冷徹女王の中身はモノグサ少女でした ~魔女に呪われ国を奪われた私ですが、復讐とか面倒なのでのんびりセカンドライフを目指します~

日之影ソラ
ファンタジー
タイトル統一しました! 小説家になろうにて先行公開中 https://ncode.syosetu.com/n5925iz/ 残虐非道の鬼女王。若くして女王になったアリエルは、自国を導き反映させるため、あらゆる手段を尽くした。時に非道とも言える手段を使ったことから、一部の人間からは情の通じない王として恐れられている。しかし彼女のおかげで王国は繁栄し、王国の人々に支持されていた。 だが、そんな彼女の内心は、女王になんてなりたくなかったと嘆いている。前世では一般人だった彼女は、ぐーたらと自由に生きることが夢だった。そんな夢は叶わず、人々に求められるまま女王として振る舞う。 そんなある日、目が覚めると彼女は少女になっていた。 実の姉が魔女と結託し、アリエルを陥れようとしたのだ。女王の地位を奪われたアリエルは復讐を決意……なーんてするわけもなく! ちょうどいい機会だし、このままセカンドライフを送ろう! 彼女はむしろ喜んだ。

没落した元名門貴族の令嬢は、馬鹿にしてきた人たちを見返すため王子の騎士を目指します!

日之影ソラ
ファンタジー
 かつては騎士の名門と呼ばれたブレイブ公爵家は、代々王族の専属護衛を任されていた。 しかし数世代前から優秀な騎士が生まれず、ついに専属護衛の任を解かれてしまう。それ以降も目立った活躍はなく、貴族としての地位や立場は薄れて行く。  ブレイブ家の長女として生まれたミスティアは、才能がないながらも剣士として研鑽をつみ、騎士となった父の背中を見て育った。彼女は父を尊敬していたが、周囲の目は冷ややかであり、落ちぶれた騎士の一族と馬鹿にされてしまう。  そんなある日、父が戦場で命を落としてしまった。残されたのは母も病に倒れ、ついにはミスティア一人になってしまう。土地、お金、人、多くを失ってしまったミスティアは、亡き両親の想いを受け継ぎ、再びブレイブ家を最高の騎士の名家にするため、第一王子の護衛騎士になることを決意する。 こちらの作品の連載版です。 https://ncode.syosetu.com/n8177jc/

最弱テイマーの成り上がり~役立たずテイマーは実は神獣を従える【神獣使い】でした。今更戻ってこいと言われてももう遅い~

平山和人
ファンタジー
Sランクパーティーに所属するテイマーのカイトは使えない役立たずだからと追放される。 さらにパーティーの汚点として高難易度ダンジョンに転移され、魔物にカイトを始末させようとする。 魔物に襲われ絶体絶命のピンチをむかえたカイトは、秘められた【神獣使い】の力を覚醒させる。 神に匹敵する力を持つ神獣と契約することでスキルをゲット。さらにフェンリルと契約し、最強となる。 その一方で、パーティーメンバーたちは、カイトを追放したことで没落の道を歩むことになるのであった。

処理中です...