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★ピタラス諸島第二、コトコ島編★
321:いったい何人が生き残れるかなゲーーームッ!
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お屋敷の壁と外塀の間、幅わずか30センチの超極細道を、俺は全速力で走る。
腕にはあの、破邪の刀剣という大層な名前を持つ、どこからどう見ても使い物にならなさそうな錆びた短剣が入った小箱を抱えて。
本当は、お屋敷の中を通って、玄関の扉から外に出れば良かったんだろうけど……
お屋敷の中は広い上に通路が入り組んでいるだろうし、何よりそこかしこに張り巡らされたお札が不気味すぎる。
真昼間とはいえ、とてもじゃないが、一人でそこを迷いながら走り抜ける勇気は俺にはないっ!
志垣のところで思わずノンビリしてしまったから、結構時間が経っているはずだ。
急がなければ……、勉座のみならず、グレコにだって怒られちゃうぞっ!?
太陽はもう随分と、空高くまで登っている。
急げっ! 急げっ!! 急げぇっ!!!
ようやくお屋敷の表側まで辿り着いた俺は、キョロキョロと辺りを見渡す。
あれ!? みんないないぞっ!??
どこ行ったんだっ!?!?
そのままお庭を突っ切って、玄関口の扉まで戻ろうと……、したけど、俺は急ブレーキで止まった。
そこにいる者達を目にした俺は、命の危険を感じるほどの恐怖を、一瞬で抱いてしまったのである。
やっべぇえ~……、怖ぇえぇぇっ!!!
ササッと、近くの植木の陰に隠れる俺。
視線の先にいらっしゃるのは、玄関の扉の前で、かな~り不機嫌な……、いやもう、はっきり言うと、この世の終わりかと思うほどにガチギレの勉座とグレコが、揃って腕組みをし、仁王立ちしている姿だった。
二人とも、玄関の扉をジーっと睨み付けて、相当苛立っているのか、片足がカタカタと揺れている。
あ、あんなのののの……、あんな所に行けないぃっ!
でも、これ以上遅くなったら、余計に怒られちゃう……
でもでも!! 今行っても瀕死っ!!?
あわあわとしながら、どうするべきかと悩む俺。
二人の放つ威圧感に気圧されているのか、ギンロと砂里は、少し離れた場所にある岩に腰掛けている。
ギンロは無の境地っていう感じの顔で、真っ直ぐ前だけを見据えて、勉坐とグレコの気に触れないように、まるで気配を消している。
砂里はというと、少々不安気な表情ながらも、勉坐とグレコの様子をチラチラと横目で確認しているが……
砂里の場合はもしかしたら本当に、お得意の呪力とやらで、二人の思考から自分の存在を消しているのかも知れないな。
あああああっ!?
俺はいったい、どうすればぁあぁっ!??
為す術なく悶えていると、何やら不気味な声が頭に響いてきた。
『親愛なる鬼族の諸君、御機嫌よう』
「わぁああぁっ!?」
なんだなんだぁあっ!??
あまりに突然の出来事に、俺は驚いて植木の陰から飛び出してしまった。
勉坐とグレコに見つかったか!? と思ったけれど……、二人の様子がおかしい。
腕組みと仁王立ちをやめて、驚いた表情で、辺りをキョロキョロと見回している。
いや、二人だけではない、ギンロも砂里も、同じように辺りを警戒し始めた。
『まずは自己紹介から……。我が名はハンニ。魔界ではおよそ四十の魔軍団を率いていた、名高い将軍である』
なっ!? ハンニだってぇっ!??
『わけあって、ここ数百年はこの地に縛り付けられているが……。平和ボケしている諸君に今日は、スリルと言う名のプレゼントを贈らせてもらおう』
何言ってんだ!?
てか、どこにいるんだっ!??
どうなってんだぁあぁっ!?!?
『名付けて、いったい何人が生き残れるかなゲーーームッ! きひひひひ……。ルールは簡単だ。これから私が放つ刺客に対し、生き残った者の勝ちだ!! 制限時間はなしっ!!! 相手が死ぬか、自分が死ぬかのデスゲーーームッ!!!!』
デスゲーム!?
えぇえっ!??
……なんか、イゲンザ島でもデスゲームに巻き込まれた記憶があるんだけど。
またなのぉおっ!?!?
『さぁ武器を取れっ! 戦うのだっ!! 己の命を賭けて、敵の首を討ち取るが良いっ!!! ギャハハハハ!!!!』
気の狂ったような笑い声を最後に、頭の中に響く声はなくなった。
い、いったい……、なん……?
「あっ!? モッモ!!?」
庭の端っこの方で混乱する俺を、グレコが見つけた。
「ぬ!? モッモ貴様、今まで何をしていたぁあっ!??」
ひぃいぃぃっ!?
お願い勉坐、怒らないでぇえぇぇっ!!!
「そんな事より、今の声は!? みんなも聞こえた!??」
「我には聞こえたぞ。悪魔ハンニと名乗っていたな」
「私も……、デスゲームっていったい……」
グレコの問い掛けに頷くギンロと砂里。
「我ら紫族に対し刺客を放つなどとは……。愚かな奴め! すぐさま部隊を編成し、返り討ちにしてやるっ!!」
メラメラと怒りに燃える勉坐。
……ほっ、良かった。
俺に対する怒りは何処かへ行ったようだね。
「その手に持っている箱はなんだモッモ!?」
ひぃっ!? まだ怒ってる!??
ビシィッ! という効果音が似合いそうな、キレのいい指差しで、俺が抱えている小箱を指差す勉坐。
「こっ、これがっ! 志垣に貰った!! 破邪の刀剣が入ってるっ!!!」
ビクつくあまり、片言で変な説明をしてしまう俺。
しかし、その意味は伝わったらしい。
「なにっ!? その小さな箱の中に破邪の刀剣がっ!?? ……見せてみろっ!!!!」
「はぃいぃぃっ!!!」
全速力で勉坐の元まで走り、小箱を手渡す俺。
素早くそれを受け取った勉坐は、勢いよく蓋を開く。
そして、中を凝視して……、固まってしまった。
ややや、やっぱり……、おかしいよねっ!?
そんなに小さな短剣が、破邪の刀剣だなんて……
おかしいよねっ!??
でも……、俺は悪くないから……、お願い!!!! 怒らないでぇっ!!!!!
ドキドキと、勉坐の言葉を待つ俺。
同じくらいドキドキしている顔で、固唾を飲んで見守るグレコとギンロと砂里。
すると、勉坐は静かに小箱の蓋を閉めて……
「モッモ……、貴様というやつは……」
あぁあっ!?
怒られるぅうっ!??
条件反射のように、手で頭を覆った俺。
だがしかし……
「よくやった! これこそ真の破邪の刀剣に違いないっ!!」
……はへ?
勉坐は、満面の笑みで、俺の頭をガシガシと撫でた。
例によってゾワゾワが身体中を駆け巡ったが、今はそれすら気にならないほどに俺は驚いている。
まさか、ちんけな短剣だと思っていたそれが、本当の本当に、本物の破邪の刀剣だっただなんて……
いやまぁ、あの志垣が持っていたんだから、偽物だなんて事はないだろうけどさ!
でもさ……、その見た目じゃあ、ねぇ?
「これで奴を倒す算段が立った。悪魔ハンニめ……、刺客を仕向けるなどと、ふざけた事をぬかしおって……。行くぞっ! 皆の者!! 即刻祢笛を探し出し、その馬鹿げたゲームとやらが始まる前に、ハンニを踏み潰してやろうぞっ!!!」
小箱を抱きかかえた勉坐は、一目散に走り出した。
グレコと砂里は、目を見合わせて頷き合い、勉坐の後に続いた。
「えっ!?ちょっ!?? まっ……、うわぁっ!???」
今の今まで、俺と勉坐の遣り取りを静観していたギンロが、何の前触れもなく、俺の体をひょいと持ち上げて、そのまま小脇に抱えて走り出す。
「行くぞモッモ! 戦うのだっ!!」
ギンロの言葉に俺は、驚愕の表情を浮かべる。
戦うっ!?
……え、俺もっ!??
俺も戦うのっ!?!?
……いや、無理!!!
死んじゃうよぅっ!!!!
言葉にならない叫びを残したまま、俺たちはお屋敷を後にした。
腕にはあの、破邪の刀剣という大層な名前を持つ、どこからどう見ても使い物にならなさそうな錆びた短剣が入った小箱を抱えて。
本当は、お屋敷の中を通って、玄関の扉から外に出れば良かったんだろうけど……
お屋敷の中は広い上に通路が入り組んでいるだろうし、何よりそこかしこに張り巡らされたお札が不気味すぎる。
真昼間とはいえ、とてもじゃないが、一人でそこを迷いながら走り抜ける勇気は俺にはないっ!
志垣のところで思わずノンビリしてしまったから、結構時間が経っているはずだ。
急がなければ……、勉座のみならず、グレコにだって怒られちゃうぞっ!?
太陽はもう随分と、空高くまで登っている。
急げっ! 急げっ!! 急げぇっ!!!
ようやくお屋敷の表側まで辿り着いた俺は、キョロキョロと辺りを見渡す。
あれ!? みんないないぞっ!??
どこ行ったんだっ!?!?
そのままお庭を突っ切って、玄関口の扉まで戻ろうと……、したけど、俺は急ブレーキで止まった。
そこにいる者達を目にした俺は、命の危険を感じるほどの恐怖を、一瞬で抱いてしまったのである。
やっべぇえ~……、怖ぇえぇぇっ!!!
ササッと、近くの植木の陰に隠れる俺。
視線の先にいらっしゃるのは、玄関の扉の前で、かな~り不機嫌な……、いやもう、はっきり言うと、この世の終わりかと思うほどにガチギレの勉座とグレコが、揃って腕組みをし、仁王立ちしている姿だった。
二人とも、玄関の扉をジーっと睨み付けて、相当苛立っているのか、片足がカタカタと揺れている。
あ、あんなのののの……、あんな所に行けないぃっ!
でも、これ以上遅くなったら、余計に怒られちゃう……
でもでも!! 今行っても瀕死っ!!?
あわあわとしながら、どうするべきかと悩む俺。
二人の放つ威圧感に気圧されているのか、ギンロと砂里は、少し離れた場所にある岩に腰掛けている。
ギンロは無の境地っていう感じの顔で、真っ直ぐ前だけを見据えて、勉坐とグレコの気に触れないように、まるで気配を消している。
砂里はというと、少々不安気な表情ながらも、勉坐とグレコの様子をチラチラと横目で確認しているが……
砂里の場合はもしかしたら本当に、お得意の呪力とやらで、二人の思考から自分の存在を消しているのかも知れないな。
あああああっ!?
俺はいったい、どうすればぁあぁっ!??
為す術なく悶えていると、何やら不気味な声が頭に響いてきた。
『親愛なる鬼族の諸君、御機嫌よう』
「わぁああぁっ!?」
なんだなんだぁあっ!??
あまりに突然の出来事に、俺は驚いて植木の陰から飛び出してしまった。
勉坐とグレコに見つかったか!? と思ったけれど……、二人の様子がおかしい。
腕組みと仁王立ちをやめて、驚いた表情で、辺りをキョロキョロと見回している。
いや、二人だけではない、ギンロも砂里も、同じように辺りを警戒し始めた。
『まずは自己紹介から……。我が名はハンニ。魔界ではおよそ四十の魔軍団を率いていた、名高い将軍である』
なっ!? ハンニだってぇっ!??
『わけあって、ここ数百年はこの地に縛り付けられているが……。平和ボケしている諸君に今日は、スリルと言う名のプレゼントを贈らせてもらおう』
何言ってんだ!?
てか、どこにいるんだっ!??
どうなってんだぁあぁっ!?!?
『名付けて、いったい何人が生き残れるかなゲーーームッ! きひひひひ……。ルールは簡単だ。これから私が放つ刺客に対し、生き残った者の勝ちだ!! 制限時間はなしっ!!! 相手が死ぬか、自分が死ぬかのデスゲーーームッ!!!!』
デスゲーム!?
えぇえっ!??
……なんか、イゲンザ島でもデスゲームに巻き込まれた記憶があるんだけど。
またなのぉおっ!?!?
『さぁ武器を取れっ! 戦うのだっ!! 己の命を賭けて、敵の首を討ち取るが良いっ!!! ギャハハハハ!!!!』
気の狂ったような笑い声を最後に、頭の中に響く声はなくなった。
い、いったい……、なん……?
「あっ!? モッモ!!?」
庭の端っこの方で混乱する俺を、グレコが見つけた。
「ぬ!? モッモ貴様、今まで何をしていたぁあっ!??」
ひぃいぃぃっ!?
お願い勉坐、怒らないでぇえぇぇっ!!!
「そんな事より、今の声は!? みんなも聞こえた!??」
「我には聞こえたぞ。悪魔ハンニと名乗っていたな」
「私も……、デスゲームっていったい……」
グレコの問い掛けに頷くギンロと砂里。
「我ら紫族に対し刺客を放つなどとは……。愚かな奴め! すぐさま部隊を編成し、返り討ちにしてやるっ!!」
メラメラと怒りに燃える勉坐。
……ほっ、良かった。
俺に対する怒りは何処かへ行ったようだね。
「その手に持っている箱はなんだモッモ!?」
ひぃっ!? まだ怒ってる!??
ビシィッ! という効果音が似合いそうな、キレのいい指差しで、俺が抱えている小箱を指差す勉坐。
「こっ、これがっ! 志垣に貰った!! 破邪の刀剣が入ってるっ!!!」
ビクつくあまり、片言で変な説明をしてしまう俺。
しかし、その意味は伝わったらしい。
「なにっ!? その小さな箱の中に破邪の刀剣がっ!?? ……見せてみろっ!!!!」
「はぃいぃぃっ!!!」
全速力で勉坐の元まで走り、小箱を手渡す俺。
素早くそれを受け取った勉坐は、勢いよく蓋を開く。
そして、中を凝視して……、固まってしまった。
ややや、やっぱり……、おかしいよねっ!?
そんなに小さな短剣が、破邪の刀剣だなんて……
おかしいよねっ!??
でも……、俺は悪くないから……、お願い!!!! 怒らないでぇっ!!!!!
ドキドキと、勉坐の言葉を待つ俺。
同じくらいドキドキしている顔で、固唾を飲んで見守るグレコとギンロと砂里。
すると、勉坐は静かに小箱の蓋を閉めて……
「モッモ……、貴様というやつは……」
あぁあっ!?
怒られるぅうっ!??
条件反射のように、手で頭を覆った俺。
だがしかし……
「よくやった! これこそ真の破邪の刀剣に違いないっ!!」
……はへ?
勉坐は、満面の笑みで、俺の頭をガシガシと撫でた。
例によってゾワゾワが身体中を駆け巡ったが、今はそれすら気にならないほどに俺は驚いている。
まさか、ちんけな短剣だと思っていたそれが、本当の本当に、本物の破邪の刀剣だっただなんて……
いやまぁ、あの志垣が持っていたんだから、偽物だなんて事はないだろうけどさ!
でもさ……、その見た目じゃあ、ねぇ?
「これで奴を倒す算段が立った。悪魔ハンニめ……、刺客を仕向けるなどと、ふざけた事をぬかしおって……。行くぞっ! 皆の者!! 即刻祢笛を探し出し、その馬鹿げたゲームとやらが始まる前に、ハンニを踏み潰してやろうぞっ!!!」
小箱を抱きかかえた勉坐は、一目散に走り出した。
グレコと砂里は、目を見合わせて頷き合い、勉坐の後に続いた。
「えっ!?ちょっ!?? まっ……、うわぁっ!???」
今の今まで、俺と勉坐の遣り取りを静観していたギンロが、何の前触れもなく、俺の体をひょいと持ち上げて、そのまま小脇に抱えて走り出す。
「行くぞモッモ! 戦うのだっ!!」
ギンロの言葉に俺は、驚愕の表情を浮かべる。
戦うっ!?
……え、俺もっ!??
俺も戦うのっ!?!?
……いや、無理!!!
死んじゃうよぅっ!!!!
言葉にならない叫びを残したまま、俺たちはお屋敷を後にした。
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