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2章

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水中にグレンの紺色の髪が踊ってる。その奥には鼻を摘んで水面を睨んでるヤック。巣は外に置いてきたみたいだ。
水面を見上げると真上に魔力の塊が5つ。兵隊蜂はまだ諦めてない。
まだダメなんだけど、でも、もう息が続かないっ。
グレンがぎゅうっと抱きしめてくる。
もう無理。もう無理ぃぃ。

ガシっと頭を掴まれて俯けてた顔を無理矢理上げられる。薄ら開けた視界いっぱいにグレンの顔が見えて唇が強く重ねられた。

あ、空気…でも、もう

気が遠くなりかけたとき、兵隊蜂を蹴散らすように眩しい魔力の塊が飛んできて、兵隊蜂達は俺達の真上からいなくなった!
グレンが俺を引き上げる。

「カイト!」
「はあっっ!はぁっ、はぁっ」
「なんだったんだろな」
「はあっ…あれ、ピヨちゃんだ。俺の仲良しの鳥」
「「はっ?」」

魔王領にいたときに生まれた雛で、餌をあげてたら大きくなっても懐いてくれてるんだよな。黄色の羽毛がかわいい雛だったのが成長したらすごく大きくなってビックリした。

池の縁に座り込んで息を整えてたらピヨちゃんが戻ってきた!

「ピヨちゃん!ありがとうなー。助かったよ」
「ギュッ、ギュッ、グゥ」

ピヨちゃんの定位置は雛の時から俺の頭の上。だいぶ大きくなっちゃったけど上手くバランスをとって今も座ってくる。大き過ぎて肩には乗せれないから丁度いい。
魔王領からの手紙もいつもピヨちゃんが運んで来てくれるんだけど、今日は足には何もついてないから遊びに来ただけだな。

「カイト、それ…大丈夫か?」
「襲われたら蜂どころじゃなさそうだけど…」
「ピヨちゃんは雛の時から友達だから襲ってきたりしないよ!ほら、早くギルドに巣を持って行こう」
「…そうだな」
「…カイトだもんな」

放り出してた鞄を回収してギルドに向かう。ヤックが池に入る前に縁に置いた巣もどこも壊れず無事だった。

ジワジワ実感が湧いて来て横目でヤックを見るとヤックもニヤニヤしてる。いつも無表情なグレンも嬉しそう。
3人で顔を見合わせるともう我慢出来なかった!

「やったー!!」
「俺達サイコー!」

びしょ濡れのままギルドに向けて走り出す。
あー!すごい!俺達だけで作戦を考えて、蜂の巣を採れたんだ!
早くギィに話したい!!

その勢いのまま門を走り抜ける。
しょっちゅう通ってるから今はもう顔パスなんだ!

「そんなに濡れて大丈夫かー!?」
「大丈夫ですー」
「俺達急いでるんで、また今度!」
「失礼しますっ」

大通りも駆け抜けてギルドの入り口に飛び込む!

「!!?」

ギルドの中はまだ混み合う時間帯ではないはずなのにかなりの数の冒険者がいて、カウンターの前に俺を迎えに来ただろうギィとなぜかギルド長、副長、ダスさんが立っていた。

「カイト!何があった!」
「ギィ!見て!見て!」

慌てたように声を上げるギィに駆け寄ってヤックの抱えている蜂の巣を指差す。
ギィは一緒ぎゅっと俺を抱きしめてあちこち確認した後、魔法で乾かしてくれて何度も俺の髪を漉いた。

「あー、それは…大黄黒蜂の巣か?」
「はい!ギルド長!俺達3人で採って来ました!」
「なるほどな…。あー、お前ら、集まってくれたが大丈夫だったみたいだから解散だ」
「ダス、皆に一杯奢ってくれ」
「おぃお前ら。ギィの奢りだ。飲んでけ」

ギルド内にいた冒険者達がゾロゾロ食堂へ移動して行く。みんな何をしてたんだ?

「ヤックとグレンは自分で乾かせ。ヤックはまずそれをマリに渡せ。エルに依頼の報告をしろ」

ギルド長の指示でカウンターに向かうヤックとグレンを見送ってギィを見上げる。

「納品依頼から帰って来ないと聞いて心配した」
「あぁ…ごめんなさい…。巣を採るのに夢中になってた…」
「無事でよかった」

頭に頬擦りをしてくるギィをそのままにして横に立つギルド長と副長を見上げる。

「ギルド長も副長も心配かけてごめんなさい」
「採取をこなして来たんだ、よくやった」
「ケガなく戻って来られて何よりです」

「カイトも達成報告をして来い。詳しい話はその後ゆっくり聞こう」

ギィがそっとつむじにキスをした。外ではキスはしない約束だったけど、今日は心配かけちゃったし、いいってことにしよう。

「うん!ギィに話したいことがいっぱいあるよ!」

査定の結果も気になるー!

「あんなに嬉しそうな顔をされると怒るに怒れないな、ギィ」
「はぁ…。取り乱してすまん」
「いいってことよ!説教はほどほどにしてやれよ」

「あら、ヤックさんもカイトさんもポイントが貯まったのでランクアップ出来ますよ。なさいますか?」

!!ほんとに!?

「カイト!やったな!俺達D級になれるぞ!」
「なります!ヤック、一緒にD級だ!」

遂に一歩進むぞ!うれしいーぃ!!

「あー待て待て、テストがあるぞ。カイトは登録ん時の模擬戦でもう合格出来てるが、ヤックは明日テストして、合格したらだ」
「えぇーっ。ギルド長のケチ」
「ヤックは明日テスト受ける?」
「おぅ!もち!」
「エルルーシアさん、俺もD級にするの明日にします。せっかくだしヤックと一緒にD級になります」
「カイト、いいのか?」
「うん!だって友達だろ?」
「当たり前だ!」
「…俺も」
「もちろんグレンも友達だって!」

やばい、嬉しすぎて飛び跳ねそう!

「あぁ、かわいい。眼福。…ほらほら、マリアンヌさんが査定してあげましたよー。こっち来なさいー」

次は査定結果だ!結構いいと思うんだけどなー。

「中にかなり蜂蜜が入ってたから依頼分の残りを3人で分けてもいい金額がつくわよ。買取にするか持ち帰りにするかはどうする?」

採集した物のうち余剰分はギルドに売ってお金に換えることも出来るし、そのまま自分のものにすることも出来る。

「俺は買取で」
「俺も」

ヤックとグレンは買取か。俺は蜂蜜食べてみたいんだよなー。

「俺、持ち帰りにします」
「了解。ヤックとグレンの分はこれよ。カイトの持ち帰り分は今から用意するからちょっと待っててね」
「はい」
「カイト、俺達先に帰るな。風見鶏に早く報酬持って行きたいし」
「うん。また明日!」
「おう!また明日な!」
「また」

ヤックとグレンは走って帰って行った。風見鶏のみんなも喜ぶだろうなー。

「ギィ、ちょっと食堂でお肉もらって来る。ピヨちゃんがね、今日助けてくれたんだ」

ピヨちゃんはギルドの中には連れて来ない約束になってる。ピヨちゃんは賢いからわかってて今日もギルドに入る時は頭から退いてた。

「あの鳥が?」
「兵隊蜂に追い掛けられて水の中に隠れたんだけど、なかなか諦めてくれなくて…ピヨちゃんが追い払ってくれなかったら息が出来なくて死んでたかもしれない」
「…あまり無茶はしないでくれ」
「うん。気をつける。心配かけてごめんね」

ダスさんにお肉を貰ってギルドの外でピヨちゃんにあげる。

「今日はありがとう。ほんと助かったよ」

ピヨちゃんはお肉を食べながらギィを睨んでた。なぜかギィは嫌われてるんだよな。ルークもあんまり好きじゃないみたい。なんでだろうなー。

マリアンヌさんに呼ばれて瓶に入った蜂蜜を受け取る。思った以上の量だ!

「ギィ、帰りにお肉買って部屋で食べよう。蜂蜜塗ったら美味しいかも。チーズももらったからあるし」

俺は蜂蜜をそのままでも食べてみたい。
パンにつけるとか。ミルクに入れてもいいかも?

「よし、じゃあ部屋で食事にするか。今日のお仕置きは食事の後だな。明日は昇級祝いもしないといけないし。な?」
「えっ。お仕置き!?」
「俺がどれほど心配したか、体感してもらわないとな?」
「えっ?体感?」
「蜂蜜を使ってもいいな」

甘くて蕩けるかもな。って囁かれたんだけど、俺どうなっちゃうんだろう。
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