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からあげ弁当④
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店に戻った正義とカルディナ。
今日は店休日にしているので、後はゆったりと過ごすだけだ。
「これ、どこに飾ります?」
そう言って正義が掲げたのは招き猫。
ガイウルフから「店がさらに上手くいくように」とプレゼントされたのだ。
最初は狼の頭を持つ獣人ということで驚いたことが申し訳なくなるほど、今ではすっかりガイウルフのことが好きになってしまった正義だった。
「カウンターの右端かな。ドアを開けてすぐ目に入るし」
言われた通り招き猫を置く正義。
そのタイミングで店のドアが開いた。
今日は店は休みです――と言いかけた正義だったが、入ってきた人物を見てすぐに笑顔になる。
「チョコちゃん! こんにちは」
「こんにちはマサヨシお兄ちゃん」
「今日はどうしたの? 店は休みだし、チラシ配りはしなくても――」
「私が呼んだんだよ」
言葉途中でカルディナが答える。
どうやら正義の知らない間に連絡していたらしい。
「カルディナお姉ちゃん。大事な話があるって言ってたけど何……?」
「大事な話?」
疑問符を頭に浮かべる二人を見て、カルディナはフッと柔らかい笑みを浮かべながらチョコに近付く。
そしてチョコの肩に手を置き、目線を彼女に合わせてから続けた。
「チョコちゃん。良かったらうちに住まない?」
ぽかんと、口を開けたまま固まるチョコ。
同じく目を丸くしたまま固まる正義。
沈黙がしばしの間、店の中を支配して――。
「え……? ええええええええええええっ!?」
チョコの困惑と驚嘆の声が、店内に大きく響き渡った。
「す、住むって、私が、こ、ここに?」
「うん」
「カルディナお姉ちゃんとマサヨシお兄ちゃんと、一緒に暮らすってこと……?」
「うん」
チョコの質問に真剣な顔で頷くカルディナ。
冗談ではないとわかったチョコは、嬉しいような困ったような、なんとも複雑な表情をしていた。
「……本当はね、もっと前から考えてたの。ここがまだ食堂だった頃から。でも――その時はうちにもお金がなかったから、とてもじゃないけどそんな提案できなかった」
「…………」
正義がここに来る前から、カルディナはチョコに食料や料理を分け与えていたという。
いや、もっと前。カルディナの両親が健在だった頃から続けていたと言っていた。
「だけどマサヨシのおかげで店も軌道に乗って、お金もある程度貯まってきて――ようやく堂々と迎えられるほどにはなった。あとはチョコちゃんの気持ち次第だよ」
「わ、私……」
チョコは今にも泣き出してしまいそうだ。
だがそれは、悲しみからくる表情ではないと正義もカルディナもすぐにわかった。
「ほ、本当にいいの……?」
「もちろん」
「うぅ……」
ついに彼女の両目から涙が溢れてしまう。
カルディナは指とそっと涙を拭ってあげると、優しく彼女の頭を撫でた。
「よ、よろしく……お願いしますっ……!」
そして言葉を詰まらせながら、チョコはカルディナの提案を受け入れたのだった。
「そういうわけでマサヨシ。確認が後になっちゃったけどいいかな?」
「この状況で断るわけないじゃないですか!? 俺も居候させてもらってる身なんで偉そうなことは言えませんが、チョコちゃんならもちろん大歓迎ですよ」
「良かった。2階の物置にしている空き部屋を使おうと思うんだ。後で掃除するから手伝ってほしいな」
「あ、あの部屋ですね。わかりました」
「なんか、家族みたいで嬉しい……」
ぽつりとチョコが洩らしたひと言に、正義とカルディナは同時に目を見開いた。
身寄りのない者同士、三人。
それでも一緒に暮らしていけば、そのうち本当の家族のようになれるかもしれない。
元々血の繋がった家族を知らない正義にとって、二人の存在はこれからさらに温かいものになる予感がした。
(いや、でも待てよ……。この場合、俺とカルディナさんが夫婦ってことになるんじゃ――)
今まで考えもしなかったことが頭に浮かんだせいで、急に小っ恥ずかしくなる。
カルディナの方も似たようなことを考えていたらしく、露骨に顔が赤くなっていた。
「そ、そうだね! 家族みたいだね! 私はチョコちゃんのお姉さんってことだよね! か、可愛い妹ができて嬉しいなぁ! あはっ、あははははは」
「そ、そうですよね! ついに俺もお兄さんになってしまったってわけか。あはははははは」
「…………?」
いきなり不自然に笑い出した二人を、きょとんと見つめるばかりのチョコ。
「そ、そうだチョコちゃん。からあげっていう、珍しい調味料を使ったお肉料理が新しくできたんだよ。正式な弁当のメニューにするのは当分先になりそうだけど、ひと足先に食べてみる?」
「カルディナお姉ちゃんの新しい料理!? うん! 食べてみたい!」
露骨に話題を変更したカルディナに気付いた正義だったが、おかげで助かった。
今は新しく家族に迎えたこの可愛い少女に、美味しいからあげを食べさせてあげることに全力を出さねばならない。
「せっかくだから皆で作ろう? その方がきっと楽しいよ」
カルディナの提案に、正義もチョコも笑顔で頷くのだった。
今日は店休日にしているので、後はゆったりと過ごすだけだ。
「これ、どこに飾ります?」
そう言って正義が掲げたのは招き猫。
ガイウルフから「店がさらに上手くいくように」とプレゼントされたのだ。
最初は狼の頭を持つ獣人ということで驚いたことが申し訳なくなるほど、今ではすっかりガイウルフのことが好きになってしまった正義だった。
「カウンターの右端かな。ドアを開けてすぐ目に入るし」
言われた通り招き猫を置く正義。
そのタイミングで店のドアが開いた。
今日は店は休みです――と言いかけた正義だったが、入ってきた人物を見てすぐに笑顔になる。
「チョコちゃん! こんにちは」
「こんにちはマサヨシお兄ちゃん」
「今日はどうしたの? 店は休みだし、チラシ配りはしなくても――」
「私が呼んだんだよ」
言葉途中でカルディナが答える。
どうやら正義の知らない間に連絡していたらしい。
「カルディナお姉ちゃん。大事な話があるって言ってたけど何……?」
「大事な話?」
疑問符を頭に浮かべる二人を見て、カルディナはフッと柔らかい笑みを浮かべながらチョコに近付く。
そしてチョコの肩に手を置き、目線を彼女に合わせてから続けた。
「チョコちゃん。良かったらうちに住まない?」
ぽかんと、口を開けたまま固まるチョコ。
同じく目を丸くしたまま固まる正義。
沈黙がしばしの間、店の中を支配して――。
「え……? ええええええええええええっ!?」
チョコの困惑と驚嘆の声が、店内に大きく響き渡った。
「す、住むって、私が、こ、ここに?」
「うん」
「カルディナお姉ちゃんとマサヨシお兄ちゃんと、一緒に暮らすってこと……?」
「うん」
チョコの質問に真剣な顔で頷くカルディナ。
冗談ではないとわかったチョコは、嬉しいような困ったような、なんとも複雑な表情をしていた。
「……本当はね、もっと前から考えてたの。ここがまだ食堂だった頃から。でも――その時はうちにもお金がなかったから、とてもじゃないけどそんな提案できなかった」
「…………」
正義がここに来る前から、カルディナはチョコに食料や料理を分け与えていたという。
いや、もっと前。カルディナの両親が健在だった頃から続けていたと言っていた。
「だけどマサヨシのおかげで店も軌道に乗って、お金もある程度貯まってきて――ようやく堂々と迎えられるほどにはなった。あとはチョコちゃんの気持ち次第だよ」
「わ、私……」
チョコは今にも泣き出してしまいそうだ。
だがそれは、悲しみからくる表情ではないと正義もカルディナもすぐにわかった。
「ほ、本当にいいの……?」
「もちろん」
「うぅ……」
ついに彼女の両目から涙が溢れてしまう。
カルディナは指とそっと涙を拭ってあげると、優しく彼女の頭を撫でた。
「よ、よろしく……お願いしますっ……!」
そして言葉を詰まらせながら、チョコはカルディナの提案を受け入れたのだった。
「そういうわけでマサヨシ。確認が後になっちゃったけどいいかな?」
「この状況で断るわけないじゃないですか!? 俺も居候させてもらってる身なんで偉そうなことは言えませんが、チョコちゃんならもちろん大歓迎ですよ」
「良かった。2階の物置にしている空き部屋を使おうと思うんだ。後で掃除するから手伝ってほしいな」
「あ、あの部屋ですね。わかりました」
「なんか、家族みたいで嬉しい……」
ぽつりとチョコが洩らしたひと言に、正義とカルディナは同時に目を見開いた。
身寄りのない者同士、三人。
それでも一緒に暮らしていけば、そのうち本当の家族のようになれるかもしれない。
元々血の繋がった家族を知らない正義にとって、二人の存在はこれからさらに温かいものになる予感がした。
(いや、でも待てよ……。この場合、俺とカルディナさんが夫婦ってことになるんじゃ――)
今まで考えもしなかったことが頭に浮かんだせいで、急に小っ恥ずかしくなる。
カルディナの方も似たようなことを考えていたらしく、露骨に顔が赤くなっていた。
「そ、そうだね! 家族みたいだね! 私はチョコちゃんのお姉さんってことだよね! か、可愛い妹ができて嬉しいなぁ! あはっ、あははははは」
「そ、そうですよね! ついに俺もお兄さんになってしまったってわけか。あはははははは」
「…………?」
いきなり不自然に笑い出した二人を、きょとんと見つめるばかりのチョコ。
「そ、そうだチョコちゃん。からあげっていう、珍しい調味料を使ったお肉料理が新しくできたんだよ。正式な弁当のメニューにするのは当分先になりそうだけど、ひと足先に食べてみる?」
「カルディナお姉ちゃんの新しい料理!? うん! 食べてみたい!」
露骨に話題を変更したカルディナに気付いた正義だったが、おかげで助かった。
今は新しく家族に迎えたこの可愛い少女に、美味しいからあげを食べさせてあげることに全力を出さねばならない。
「せっかくだから皆で作ろう? その方がきっと楽しいよ」
カルディナの提案に、正義もチョコも笑顔で頷くのだった。
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