なみだのぼうけん

まゆぽん

文字の大きさ
上 下
1 / 1

なみだのぼうけん

しおりを挟む
おかたづけをわすれた ユミちゃんは
ママにおこられて 泣いちゃいそうです。



「さぁいくぞ」

そのとき ユミちゃんの中から
ふしぎな声が きこえてきました。

みんなには きこえない
その小さな声は
ユミちゃんの目から とびだした なみだ。



その名も なみだくん です。

なみだくんに つづいて
おくびょうな妹の なみだちゃんが 出てきました。



なみだくんが「さぁおいで」と えがおで呼びかけると
なみだちゃんは おにいちゃんのむねに あんしんしてとびこみます。

つぎに あかちゃんを だっこした
おとうさん と おかあさんが でてきて

さいごに おじーちゃん が おばーちゃんを ささえながらでてくると
「ほかのかぞくに あいさつしてたら、
すっかり おくれてしまったわい」と わらいました。

さすがは おじーちゃん。
まわりへの気づかいも わすれません。



これでやっと かぞくみんなが そろいました。

なみだくんたちは 目のまえの けしきをみて 大はしゃぎ。



ずっと ユミちゃんのからだの中に すんでいたので
たくさんの色を見たのは はじめてです。

わくわくが いっぱいです。

なみだくんたちいがいの かぞくも ユミちゃんの からだから出てきて
「こんにちは」と あいさつします。



どんどん出てきて ユミちゃんのまわりは なみだで いっぱいになりました。

泣きつかれた ユミちゃんが ねむったころ
なみだくんたちは おへやのそとに でました。



ユミちゃんに おわかれすると

さぁ なみだくんたちの たびだちです。



みんな おうちのすきまを見つけて 外にでていきます。

いくばしょは きまっていません。

どこに行こうか 何に生まれかわろうか
じゆう なのです。



さいしょに おじーちゃんが言いました。
「わしらは このおうちが だいすきだから、
そこのトマトさんで ねかせてもらおうかの。なぁばーさん」

「ええ、ええ。そうですね、おじいさん」
おばーさんも だいさんせいです。



つぎに おとうさんが 言いました。
「じゃあ とうさんたちは
そのよこの きゅうりさんにたのもうか。
どうだい?かあさん」

「そうね あかちゃんもいるし、
みどりいっぱいのところで のんびり くらしたいわ」

あかちゃんも キャッキャッと よろこんで さんせいしています。

さいごに おとうさんは しんけんなかおで
なみだくん と なみだちゃんに 言いました。



「おまえたちは もうおとなだ。
いきたいところは、じぶんたちで かんがえて きめなさい」

たとえ かぞくのそばに いたくても
じぶんで きめることが たいせつなのです。

おとうさんは そのことを ユミちゃんの中で
いつも ふたりに おしえてきました。

すこしかんがえてから なみだちゃんが ゆうきを出して言いました。

「あのね あたしね お花さんのところへ 行ってみたいの。
お花さんを見たユミちゃんは いつもたのしそうに わらうから」



「じゃあ ぼくも いっしょに行くよ」

なみだくんも じぶんで きめました。

もちろんかぞくは みんな だいさんせいです。



なみだくんと なみだちゃんは
いっぱい手を ふりました。

今は さみしくても つぎに あうときは
もっとすてきに せいちょうした すがたで あえるかもしれません。

それがとても たのしみなのです。

すこしあるくと チューリップが さいていました。
ユミちゃんの だいすきな お花です。



「あたし、ここがいいな」

なみだちゃんが 目をかがやかせると
なみだくんも うなづきました。

「チューリップさん おじゃまします」



ふたりは きちんとあいさつして ゆっくりのぼります。

じかんをかけて のぼると 
空は あお から くろ に かわっていました。

てっぺんに すわると
きいろい お月さまが とてもきれいに見えます。



ふたりは てをつないで よりそい
すこし おしゃべりしてから
そのまま ねむることにしました。



チューリップのお花は よつゆを あびたいみたいに
キラキラと かがやいています。

つぎの日のあさ
トマトときゅうりの サラダをたべた ユミちゃんは
ふしぎと あたたかいきもちで いっぱいになりました。



そして さんぽに でかけると
だいすきな チューリップのお花が
ほほえみかけてくる きがしたのです。



「チューリップさん、きれいだね」

ユミちゃんが はなしかけると
ふたつの 小さなしずくが いっしょにすべりおち
土の中へと きえていきました。



ふたつのしずくは 土のえいようになって
ユミちゃんを いっぱい えがおにする お花をさかせる
おてつだいを するでしょう。


-おわり-
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

弟は、お人形さんになりました

るいのいろ
絵本
あるところに、お母さん、お父さん、お兄ちゃん、弟くんの4人で出来た、ごく普通の家庭がありました。 この家族は貧しくもなければ潤沢な訳でもなく、ごくごく普通の家庭でした。 お母さんは優しいし、お父さんはサラリーマン、お兄ちゃんはたくましい。 でも弟くんは、お人形さん。 【注】このお話は少しホラーテイストになっております。苦手な方は十分注意の上閲覧ください。

ぼく、スライム

くさなぎ秋良
絵本
ぼく、スライム。 今日も床にとろんとろんとろん。 立たせようとしたって無駄なのさ。 だって、ぼくは今、スライムだから。 ベリーズカフェでも公開中です。

うみのつき

はや衣鳥
絵本
クラゲはお月さまに触ってみたかった。 イルカはそれを叶えてあげたかった。

私の弟は、みんなの人気者

るいのいろ
絵本
お母さん、お父さん、おじいちゃん、おばあちゃん、みんなに可愛がられていた一人っ子のまひるちゃん。 ある日、まひるちゃんの家に、弟が産まれました。 すると、お母さんたちは弟の世話で手一杯。 おじいちゃんたちは、まひるちゃんよりも新しい赤ちゃんを可愛がりました。 まひるちゃんは、お母さんたちやおじいちゃんたちを取られて、さらに泣いてばかりの弟のことが嫌いになりました。

なつのおわり

高峰すず
絵本
夏の父との思い出を描く絵本とエッセイ。 『小さい頃、父の自転車の後ろに乗って、出かけるのが大好きだった』

勇気の指輪

森乃あかり
絵本
森の奥にあるお城に少しだけ臆病な王子様が住んでいました。王子様は自分より背の高い大人が怖くて、挨拶することができません。そんな王子様は、森で金色の指輪を見つけます。指輪をはめた王子様は、不思議と勇気が湧いてきました。 .・。.・゜✭・.・✫・゜・。. この絵本を読んだ王子様のお話「指輪を見つけた王子様」もあわせてお楽しみください。 ※表紙の画像はAIで生成しています。 ※挿絵はありません。

アンとアント

くぼた ひかる
絵本
ある日、お庭で出会ったアンとしゃべるアリのアントの物語

きらわれオオカミ

はや衣鳥
絵本
オオカミはいつも、ひとりぼっちでした。

処理中です...