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冒険者Dと近隣国
前世の記憶4〜キューティとアンナ
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QTは孤児として生きてきた。偶然にもDと出逢う事で孤児から冒険者となり、出自が判明してからは侯爵令嬢となった。
でも、気持ちの上では孤児の矜持を忘れない。それは誰も頼るなと言う事だ。
自分の事は自分で決める、頼るな、曲げるな、流されるなと言う事が出来ないと死に直結したからだ。
現にヨークゼンの浮浪者は年齢問わず良く死んだ。
育ての親のメリーゼは他人を容易く信用することを戒めた。だからハニー家の遺児だと言う事は秘密にして本名を名乗らずQTと称するように言ったのだ。他人は信用ならないがDには効かなかった。
粗暴でありながら優しい男、いい加減なのに気配りの出来る男だった。
ヨークゼンにいる目の濁った男達とは全然違った。QTに声を掛けて来た時も一緒に遊ぼうぜといった子供目線に感じたのだ。Dには隠してきたハニー家の遺児であることを知られたのに恐れを抱かなかった。浮浪者に声を掛けてDの下に送り込んでもワルイコトにならないだろうと感じていた。
もちろんDが何をしているのかなんて知りもしなかったが。そんなDの生まれた場所を訪れるのはまるで父親の故郷に帰るような気分だった。
Dの言う森に入ると不思議な気分になった。そして過去世というものを知った。
QTの過去世は弓月国の市民だった。小綺麗な服を着て調べ物をしたり遠く離れた人と話をするための魔道具を一人一人が持っていた。道は地面だけでなく高い場所にも走り、沢山の人達を乗せる魔導列車が都市と都市を繋いでいた。
そんな都市の中で『鳴神美樹』として学生をしていた。父親の鳴神豪悦は有名な魔導工学者で魔導人形の大家と言われていた。美樹と豪悦は余り顔を合わせる事も少なかったが豪悦は美樹を溺愛歯ていたし、美樹は豪悦を尊敬していた。
美樹の18歳の誕生日には父親の調整が入った最新の護衛自動二輪(ガーディアンバイク)を贈られ、友人達とツーリングに出掛けたのだった。弓月国は山間部が多く若者の間ではツーリングに行くのが流行っていたのだ。
魔導工学者の最高峰が調整した護衛自動二輪は美樹の仲間が必死で喰らいつかないと付いて行けない程の速さと安定性を持って美樹を楽しませた。だから美樹が事故る筈が無かった。
対向車線をはみ出して美樹の護衛自動二輪を踏み付けるように自動運転巨大運搬車が走行して来たのは故意としか思えなかった。無論のこと護衛自動二輪は衝突の寸前に自動変形をして美樹の身体を護ったのだが跳ね飛ばしたその護衛自動二輪の上に自動運転巨大運搬車100tの重量が伸し掛り無慈悲に押し潰したのだった。
確かにアンナ•ハサイエルは恋をしていた。相手は王子様だ。
ゴードウィン•サリ•マジェント王太子と言い、マジェント共和王国の第一王子でグレイの髪にライトブルーの瞳を持つとても可愛い10歳の男の子だった。
アンナが8歳と小さい頃に婚約者となった。子供心にときめいた事を覚えている。慣れ親しむと共にトキメキは陰を潜め、学園で隣に立つのは当たり前になってしまった。
もちろん将来の王妃となる為にアンナは学業も魔法も手を抜いた事は無い。かと言ってゴードウィンよりも目立つのは不味いので彼の次の成績に納めた事は言うまでも無い。
婚約者より劣る王子であっては沽券に拘わるからだ。だけれど、あの男爵の女が入って来てからゴードウィンはおかしくなってしまった。メリー•アントワーヌ男爵令嬢と言うクグツ•アントワーヌ男爵の娘だ。他人を悪く言いたくは無かったけどあの女は女の子らしかったというか、余りに裏表があり過ぎた。
ピンクブロンドの巻毛に濃い碧色の瞳は美しいというより可愛らしい容姿をして男を惹きつける力があった。あれはスキルの力では無かっただろうか。禁忌のスキル『魅惑』若しくは『洗脳』だ。
疑惑が確信に変わったのは学園の友達が全てあたしの敵になった事であたしはお父様に伝えたけれど、もっと前から疑っていた者達に依ってあたしは護られた。
政変にまで及んだ事件で沢山の人達が処罰されあたしは王都から離された。そしてDと言う運命と出会った。そして、その過去世と言う運命をDの生まれた村ハイドゥンで知ったのだ。
アンナの過去世はクリスティア•ヨドンナ•セントレール、セントレール帝国の王女だった。
セントレール帝国は小国ながら戦闘に特化した国だった。その中で女王は特にスキル『武芸百般』が尖っていた。だから父帝から直接に武闘訓練を受けたのだ。お陰で親衛騎士団長よりも強くなってしまったのだ。
だが、悲しいかな女性であることが災いして実際の戦闘ではスタミナ不足で使い物にならなかった。
ある時、セントレール帝国が滅ぼしたスミナス王国の王子を捕虜として捕まえた。それがクリスティアよりも一つ年下のゼオン•スミナスだった。
クリスティアはゼオンの絶望の風貌を気に入り、殺さず専属の奴隷として使った。ゼオンにはスキル『無双』があり、自分だけでなく他者にも無限の体力を与えたのだ。
その為クリスティアは誰にも負けない力を手に入れ近郊諸国を攻め滅ぼした。
そして歴史上初めてユニトリオン大陸を統一した国となった。
だが、ゼオンが病没すると内乱でクリスティアは殺されてセントレール帝国は瓦解した。
でも、気持ちの上では孤児の矜持を忘れない。それは誰も頼るなと言う事だ。
自分の事は自分で決める、頼るな、曲げるな、流されるなと言う事が出来ないと死に直結したからだ。
現にヨークゼンの浮浪者は年齢問わず良く死んだ。
育ての親のメリーゼは他人を容易く信用することを戒めた。だからハニー家の遺児だと言う事は秘密にして本名を名乗らずQTと称するように言ったのだ。他人は信用ならないがDには効かなかった。
粗暴でありながら優しい男、いい加減なのに気配りの出来る男だった。
ヨークゼンにいる目の濁った男達とは全然違った。QTに声を掛けて来た時も一緒に遊ぼうぜといった子供目線に感じたのだ。Dには隠してきたハニー家の遺児であることを知られたのに恐れを抱かなかった。浮浪者に声を掛けてDの下に送り込んでもワルイコトにならないだろうと感じていた。
もちろんDが何をしているのかなんて知りもしなかったが。そんなDの生まれた場所を訪れるのはまるで父親の故郷に帰るような気分だった。
Dの言う森に入ると不思議な気分になった。そして過去世というものを知った。
QTの過去世は弓月国の市民だった。小綺麗な服を着て調べ物をしたり遠く離れた人と話をするための魔道具を一人一人が持っていた。道は地面だけでなく高い場所にも走り、沢山の人達を乗せる魔導列車が都市と都市を繋いでいた。
そんな都市の中で『鳴神美樹』として学生をしていた。父親の鳴神豪悦は有名な魔導工学者で魔導人形の大家と言われていた。美樹と豪悦は余り顔を合わせる事も少なかったが豪悦は美樹を溺愛歯ていたし、美樹は豪悦を尊敬していた。
美樹の18歳の誕生日には父親の調整が入った最新の護衛自動二輪(ガーディアンバイク)を贈られ、友人達とツーリングに出掛けたのだった。弓月国は山間部が多く若者の間ではツーリングに行くのが流行っていたのだ。
魔導工学者の最高峰が調整した護衛自動二輪は美樹の仲間が必死で喰らいつかないと付いて行けない程の速さと安定性を持って美樹を楽しませた。だから美樹が事故る筈が無かった。
対向車線をはみ出して美樹の護衛自動二輪を踏み付けるように自動運転巨大運搬車が走行して来たのは故意としか思えなかった。無論のこと護衛自動二輪は衝突の寸前に自動変形をして美樹の身体を護ったのだが跳ね飛ばしたその護衛自動二輪の上に自動運転巨大運搬車100tの重量が伸し掛り無慈悲に押し潰したのだった。
確かにアンナ•ハサイエルは恋をしていた。相手は王子様だ。
ゴードウィン•サリ•マジェント王太子と言い、マジェント共和王国の第一王子でグレイの髪にライトブルーの瞳を持つとても可愛い10歳の男の子だった。
アンナが8歳と小さい頃に婚約者となった。子供心にときめいた事を覚えている。慣れ親しむと共にトキメキは陰を潜め、学園で隣に立つのは当たり前になってしまった。
もちろん将来の王妃となる為にアンナは学業も魔法も手を抜いた事は無い。かと言ってゴードウィンよりも目立つのは不味いので彼の次の成績に納めた事は言うまでも無い。
婚約者より劣る王子であっては沽券に拘わるからだ。だけれど、あの男爵の女が入って来てからゴードウィンはおかしくなってしまった。メリー•アントワーヌ男爵令嬢と言うクグツ•アントワーヌ男爵の娘だ。他人を悪く言いたくは無かったけどあの女は女の子らしかったというか、余りに裏表があり過ぎた。
ピンクブロンドの巻毛に濃い碧色の瞳は美しいというより可愛らしい容姿をして男を惹きつける力があった。あれはスキルの力では無かっただろうか。禁忌のスキル『魅惑』若しくは『洗脳』だ。
疑惑が確信に変わったのは学園の友達が全てあたしの敵になった事であたしはお父様に伝えたけれど、もっと前から疑っていた者達に依ってあたしは護られた。
政変にまで及んだ事件で沢山の人達が処罰されあたしは王都から離された。そしてDと言う運命と出会った。そして、その過去世と言う運命をDの生まれた村ハイドゥンで知ったのだ。
アンナの過去世はクリスティア•ヨドンナ•セントレール、セントレール帝国の王女だった。
セントレール帝国は小国ながら戦闘に特化した国だった。その中で女王は特にスキル『武芸百般』が尖っていた。だから父帝から直接に武闘訓練を受けたのだ。お陰で親衛騎士団長よりも強くなってしまったのだ。
だが、悲しいかな女性であることが災いして実際の戦闘ではスタミナ不足で使い物にならなかった。
ある時、セントレール帝国が滅ぼしたスミナス王国の王子を捕虜として捕まえた。それがクリスティアよりも一つ年下のゼオン•スミナスだった。
クリスティアはゼオンの絶望の風貌を気に入り、殺さず専属の奴隷として使った。ゼオンにはスキル『無双』があり、自分だけでなく他者にも無限の体力を与えたのだ。
その為クリスティアは誰にも負けない力を手に入れ近郊諸国を攻め滅ぼした。
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だが、ゼオンが病没すると内乱でクリスティアは殺されてセントレール帝国は瓦解した。
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