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冒険者Dと近隣国

わちゃわちゃ

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「どういう事だ?」
俺はアンナに言うがさっきまでべっとりだったアンナが身を縮こませて俯いている。ダリアに説明を求めようとダリアを見ると他所を向いたままゆっくりと逃げようとしていた。

こら、説明せよ!だぞ。仕方無いからアンナに言う。
「アンナ、どういう事だ?」

俺が焼き鳥を口にしながら聞くと少し拗ねたような声を出した。
「わたしの姿を見て分からなかった?」

言われる前から少し貴族のお嬢様然とした金の掛かってそうな服を着て、装飾が増えているなとは思った。こんな場末の飲み屋に来る恰好ではねえなとは思ったよ。
「お前、かなり身分の高い貴族だったのかよ」

俺が貴族と分かったからか顔を上げて俺を見て言った。
「そうよ。ハサイエル侯爵の長女アンナ•ハサイエルが本当の名前なの。」

ハサイエル侯爵かよ。マジェント共和王国の宰相じゃねえか。
国の王族に次ぐ権力者だぞ。場合に依っては王族だって頭が上がらないんじゃねえかな。その娘を抱いていたのか。
知らないって怖いな。まぁ良いんじゃねえかな。
今更だし。
「んで、こんなところまで俺を追ってきたのかよ。」

俺が貴族であることを受入れたと思ったのかアンナはさっきまでの気まずさを消して喜色満面で俺に言った。
「もちろん!一応対外的な対面は保ってるわ。」

道理で沢山の女達が居る訳だ。
女達を見回すとQTとユキが何故か楽しそうに話をしている。QTの反対側ではダリアが興味深そうにユキの話を聞いている。どうしてあいつはしれっと混じってんだよ。

俺の隣でアンナがどうやって画策して国外に出て巡って来たかを熱心に語ってる。
適当に相槌を打っていると腿を抓られた。
「もう、Dったらちゃんと聞いてない!」

まあな。
俺を追ってベラーシまで追ってくるなんて怖いくらいだが、そんな情熱的な女も嫌いじゃない。俺の視線がチラチラとユキに向いているのに気づいたのかアンナが突然言い出した。
「あの女、Dのここで見つけた女なのね」

どう言い訳しょうかと考えたら動揺が出たらしい。
「あ、まあな」

仕方無いからそのまま認めてユキを呼んだ。ユキは何の気負いもなく俺の横に座るとしなだれ掛かった。
「呼んだ?」
「あんた、誰よ!」

ユキの行動に呆気に取られたアンナが尖った言い方をして問い詰める。
「ユキ」

名前しか言わないユキに頭にきたのか俺に説明を求めて来た。
仕方無いから錬金術師ランドルトを襲ったアロシア帝国の暗殺団『月牙ムーンファング』の一員で999人を暗殺して1000人目で俺に破れ、俺が身体ごと落とした事を教える。
アロシア帝国の言葉が出たせいで和やかに呑んでいたみんなが身構えたのは笑えた。
「大丈夫なのよね?」

暗殺者と聞いてアンナが身構えるがユキは呑気に俺の串焼きを食べてる。
「元暗殺者。今はDの女、しかもD級冒険者」

と言って懐から冒険者証を出して見せた。
「お前、いつの間にそんな物を取ったんだ」

俺が呆れてユキに言うと
「Dが冒険者ギルドでギルマスを脅している時」

と答えやがった。
俺がひとりで頑張ってたのにお前そんな事してたの?
「まぁ、こいつの事は大丈夫だ。俺が保証するから」

疑心暗鬼な胡乱な目でユキをアンナは見ていたが、殺気も無いのんびりしているユキに対抗するのを諦めたようだ。

何処に宿を取ってあるとか何をしているのかとか何処に行っていたのかとか煩く聞くので適当に答えているとアンナは自分の宿泊しているホテルにこのまま行くと言い出した。

アンナがごね出すとユキはまたもや、いつの間にかQT達と談笑しながら食ってやがった。呑んだ後はユキとしけ込む積りだったが無理そうだ。

散々食い散らかしたのを俺が精算してアンナに引かれるままにホテルに向かった。港街からホテルまでは馬車をアンナが出していたのでそれに乗り込む。
連れていた冒険者達には歩かせてQTと自分は馬車に乗ってきたのだ。さすが貴族様だぜ。
容赦ねえ。

ホテルはあのバラナビィーチグランドホテルだったよ。ミリュエルと懇ろになった場所だから少し居心地が悪いな。スイートルームだから設備は文句ないんだけどな。
そういや、あの黒服の男達は何だったんだろ。後から聞いたら守衛ふたりを倒して入り込んだらしいが。その後もミリュエルは何ともない顔して受付嬢していたからな。まぁ何となく分からんでも無いけど、何処かのスパイだろうさ。

それはさておき、アンナの部屋にアルマも来た。話があるらしいから良いとしよう。でも、しれっとユキもスキルを使って忍び込んでいるのは何でだ。馬車に乗る時に今夜は相手をしてやれんぞと言った筈なんだが。

最上階のスイートルームじゃないがかなり豪華な部屋の応接室に着いたらアンナが酔い醒ましに紅茶を入れてくれたぞ。まぁ全然俺は酔ってなんかいないんだかな。酔うどころじゃなかったと言う感じだな。

俺とアンナとアルマが席に座り、一息着いた所で俺はアルマに声を掛けた。
「それで、俺に話しておきたい事があるとは何だ?」







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