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冒険者Dとダドンの街
塩漬け案件2-副街長ゴルバカ
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着替もせず受付の制服のままサブマスターのトンブリと冒険者ギルドの馬車で移動する。
何でも冒険者ギルドにあたしを指名で連れて来るように副街長のゴルバカ様から指示があったと言うのだ。街の正式な書類での指示である。
あたしになんの用なのだろう。昼前にマリリンから聞いた言葉が思い起こされる。
『そう言えばアンナさん、最近副街長のゴルバカ様に狙われているんですって?』
実際、親しくしている冒険者達からも少し前から話を聞いていたのだ。副街長のゴルバカがあたしの事を聞いて回っているらしいから気をつけろと。
多分自分の女にしようとしているんじゃないかとか噂されているらしい。
自分の我儘ボディが魅力的過ぎて男に迫られたり、襲われそうになったりした事があるので危機感さえ募らねば
「また、あたしに魅了されたのねぇ、うふ」
とか思っていられたのだがそうは行かないようだ。
あたしのスキルが警鐘を鳴らしているから行きたくないが正式な要請もそうだが、サブマスターのトンブリのせいである。
トンブリは仕事として一緒に行かないと査定に響くぞと暗に脅してきたからである。トンブリも一緒なのだから余り無茶な事はされないだろうとは思う。そうであって欲しい。
副街長ゴルバカがこのダゾンの街で権力を振るえているのは街長のマクレガー•モンタル男爵が王都に行ってずっと戻って来ないからだ。
マクレガー•モンタル男爵の一任を得て居るが故である。何か弱みでも握っているのかゴルバカの悪行状を密告しても梨の礫である。
ゴルバカの被害を受けている者は街を去るか我慢するしか無いのが現状なのだ。逆にゴルバカの権力に擦り寄り甘い蜜を啜る者も多いらしい。
副街長ゴルバカがなんの用なのか思案していると馬車が街庁舎に到着し、トンブリはさっと降りてしまった。
「全くレディファーストとか何も知らないんだから」
とアンナは思ったがトンブリは元冒険者だ。そんな貴族めいた行為なんて知るわけもないかとひとり納得する。
トンブリとアンナは誰の案内もなくさっさと副街長の執務室に直行する。ドアの前でトンブリが叩いて入室を訪うと中から喜々とした声がした。
入室して執務机に座る副街長ゴルバカの前でトンブリが手を揉みながら挨拶をした。
「それで、どのようなご要件でしょうか?ゴルバカ様」
平身低頭なトンブリを見ながらアンナは心のなかで軽蔑する。上の者には弱く下の者には横柄なトンブリがキモい。
「うむ、実はなそこのアンナ嬢に詳細を聴きたい事があってご足労願ったのだ。」
トンブリがアンナを振り返り顎をしゃくる。
アンナが一歩前に出て頭を下げるとゴルバカが鋭い視線をトンブリに投げる。トンブリはゴルバカに忖度して自分が今邪魔者になっている事を理解した。
「それでは私はこれで失礼致します。」
「うむ、ご苦労だった。トンブリ冒険者ギルドサブマスターは隣室で秘書と話をしてから帰ってくれ」
トンブリが頭を下げ、そそくさと部屋を出ていってしまった。
アンナが呆気に取られているとおもむろにゴルバカが立ち上がる。
執務机を回って隣に設えて合った一人用のソファに座り、アンナにも座るよう進める。タイミングを見計らっていたかのように若い男の秘書が紅茶を運び入れてアンナとゴルバカの前に置き、立ち去る。
部屋にはゴルバカとアンナだけになった。
無言で俯くアンナとは違い、舐めるようにアンナを見るゴルバカ。暫くして、ゴルバカがコホンと咳払いをする。
「実はなアンナ嬢、貴女に聴きたい事があってな。」
おもねるようなねっとりした声にアンナは首筋が寒くなった。
「え?私にどのような事を?•••私は唯の冒険者ギルド受付でしか無いのですが•••」
顔を上げてゴルバカを見詰める。
「その、何だ•••• 強奪王オレンの城塞を攻略した冒険者の事を教えて欲しい。」
紅茶を飲むとアンナにも勧める。
アンナが紅茶を飲み、喉を潤してから答える。
「Dの事でしたら冒険者ギルドの極秘事項ですから御教えできませんわ。」
幾ら副街長でも冒険者の個人情報は閲覧出来ない。当人から聞くか人を雇って調べるより他に無い。ましてや、受付嬢には黙秘義務がある。
受付嬢が有る事無い事ペラペラ話せないのだ。
冒険者が荒くれ者でどんな心情であろうと行為だけで評価される。依頼を短期間で、より困難な依頼を熟すかと言う成果主義なのだ。
冒険者の個人情報を閲覧出来るのは冒険者ギルド内でギルドマスターかサブギルドマスターだけである。
「彼はDと言うのか、一度高級料理店マンティアで会ったな。」
良く覚えて居たなとアンナは眉を顰めた。
何故か頭がくらりとした。
◆◆俺視点◆◆
ダゾンの街に向かって走りながら俺は覇王龍ズァークの記憶を精査していた。
覇王龍ズァークの記憶には面白い情報が凄く沢山有った。歴史的な事実もさることながら今まで産んだ子供達の情報は言うまでもなく、ダゾンの街についての情報も多かった。それから近郊の街の事もだ。
「クククッ いいぜ!」
「利用しがいがあるなぁ~」
にやけながら声が出る。終いには大声で叫んでしまう。
走る速度も上がっていく。
あと少し、あと少しでアンナに会える。
そう思うと胸が高鳴った。
何でも冒険者ギルドにあたしを指名で連れて来るように副街長のゴルバカ様から指示があったと言うのだ。街の正式な書類での指示である。
あたしになんの用なのだろう。昼前にマリリンから聞いた言葉が思い起こされる。
『そう言えばアンナさん、最近副街長のゴルバカ様に狙われているんですって?』
実際、親しくしている冒険者達からも少し前から話を聞いていたのだ。副街長のゴルバカがあたしの事を聞いて回っているらしいから気をつけろと。
多分自分の女にしようとしているんじゃないかとか噂されているらしい。
自分の我儘ボディが魅力的過ぎて男に迫られたり、襲われそうになったりした事があるので危機感さえ募らねば
「また、あたしに魅了されたのねぇ、うふ」
とか思っていられたのだがそうは行かないようだ。
あたしのスキルが警鐘を鳴らしているから行きたくないが正式な要請もそうだが、サブマスターのトンブリのせいである。
トンブリは仕事として一緒に行かないと査定に響くぞと暗に脅してきたからである。トンブリも一緒なのだから余り無茶な事はされないだろうとは思う。そうであって欲しい。
副街長ゴルバカがこのダゾンの街で権力を振るえているのは街長のマクレガー•モンタル男爵が王都に行ってずっと戻って来ないからだ。
マクレガー•モンタル男爵の一任を得て居るが故である。何か弱みでも握っているのかゴルバカの悪行状を密告しても梨の礫である。
ゴルバカの被害を受けている者は街を去るか我慢するしか無いのが現状なのだ。逆にゴルバカの権力に擦り寄り甘い蜜を啜る者も多いらしい。
副街長ゴルバカがなんの用なのか思案していると馬車が街庁舎に到着し、トンブリはさっと降りてしまった。
「全くレディファーストとか何も知らないんだから」
とアンナは思ったがトンブリは元冒険者だ。そんな貴族めいた行為なんて知るわけもないかとひとり納得する。
トンブリとアンナは誰の案内もなくさっさと副街長の執務室に直行する。ドアの前でトンブリが叩いて入室を訪うと中から喜々とした声がした。
入室して執務机に座る副街長ゴルバカの前でトンブリが手を揉みながら挨拶をした。
「それで、どのようなご要件でしょうか?ゴルバカ様」
平身低頭なトンブリを見ながらアンナは心のなかで軽蔑する。上の者には弱く下の者には横柄なトンブリがキモい。
「うむ、実はなそこのアンナ嬢に詳細を聴きたい事があってご足労願ったのだ。」
トンブリがアンナを振り返り顎をしゃくる。
アンナが一歩前に出て頭を下げるとゴルバカが鋭い視線をトンブリに投げる。トンブリはゴルバカに忖度して自分が今邪魔者になっている事を理解した。
「それでは私はこれで失礼致します。」
「うむ、ご苦労だった。トンブリ冒険者ギルドサブマスターは隣室で秘書と話をしてから帰ってくれ」
トンブリが頭を下げ、そそくさと部屋を出ていってしまった。
アンナが呆気に取られているとおもむろにゴルバカが立ち上がる。
執務机を回って隣に設えて合った一人用のソファに座り、アンナにも座るよう進める。タイミングを見計らっていたかのように若い男の秘書が紅茶を運び入れてアンナとゴルバカの前に置き、立ち去る。
部屋にはゴルバカとアンナだけになった。
無言で俯くアンナとは違い、舐めるようにアンナを見るゴルバカ。暫くして、ゴルバカがコホンと咳払いをする。
「実はなアンナ嬢、貴女に聴きたい事があってな。」
おもねるようなねっとりした声にアンナは首筋が寒くなった。
「え?私にどのような事を?•••私は唯の冒険者ギルド受付でしか無いのですが•••」
顔を上げてゴルバカを見詰める。
「その、何だ•••• 強奪王オレンの城塞を攻略した冒険者の事を教えて欲しい。」
紅茶を飲むとアンナにも勧める。
アンナが紅茶を飲み、喉を潤してから答える。
「Dの事でしたら冒険者ギルドの極秘事項ですから御教えできませんわ。」
幾ら副街長でも冒険者の個人情報は閲覧出来ない。当人から聞くか人を雇って調べるより他に無い。ましてや、受付嬢には黙秘義務がある。
受付嬢が有る事無い事ペラペラ話せないのだ。
冒険者が荒くれ者でどんな心情であろうと行為だけで評価される。依頼を短期間で、より困難な依頼を熟すかと言う成果主義なのだ。
冒険者の個人情報を閲覧出来るのは冒険者ギルド内でギルドマスターかサブギルドマスターだけである。
「彼はDと言うのか、一度高級料理店マンティアで会ったな。」
良く覚えて居たなとアンナは眉を顰めた。
何故か頭がくらりとした。
◆◆俺視点◆◆
ダゾンの街に向かって走りながら俺は覇王龍ズァークの記憶を精査していた。
覇王龍ズァークの記憶には面白い情報が凄く沢山有った。歴史的な事実もさることながら今まで産んだ子供達の情報は言うまでもなく、ダゾンの街についての情報も多かった。それから近郊の街の事もだ。
「クククッ いいぜ!」
「利用しがいがあるなぁ~」
にやけながら声が出る。終いには大声で叫んでしまう。
走る速度も上がっていく。
あと少し、あと少しでアンナに会える。
そう思うと胸が高鳴った。
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