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翌日から目まぐるしい日々が続きました。

あまり悠長にはしていられません。毎日毎日、お父様から早くシュカ様に会いに行けと怒鳴られますから。

「良い歳した娘が結婚もせずにダラダラと……恥だと思わんのか?」

ですって。昔はもう少し優しかった気がしますが、年々喧しくなるのですから嫌になります。私を金蔓とでも思っているのでしょう。

最近ではお母様も小煩くなってきています。

「私は結婚して良い暮らしを手に入れたのよ。あなたにもそうなって欲しいの……今よりも、もっと贅沢な暮らしがしたいでしょう?女は結婚して一人前になるのよ」

……もう、うんざりしてしまいます。私が結婚したら自分が贅沢出来るから、待ち遠しいのでしょうね。

お父様ともお母様とも考え方が合いませんね。なぜこの二人が私の親なのか、不思議なくらいです。


さっさと全て終わらせて、のんびり過ごしたいものだわ。





ようやく全ての準備が整ったのは五日後でした。

「一体いつになったらシュカ様に会いに行くのだ?!会いに行くと言ったのは嘘だったのか?言うことが聞けないのなら、お前はもう娘ではない!さっさと出て行け!」

とうとうお父様の堪忍袋の緒が切れたようです。

まったく短気な方ですね……。

「せっかくお父様が婚約の話をつけたのですから、シュカ様を待たせてはいけませんよ。早く挨拶に行ってきなさい!」

お母様も私に向かって急かします。

あぁ、なぜこんな人達のもとに生まれてしまったのでしょうか。私もこの人達と同じ価値観ならば、幸せに暮らしていけたのかもしれません。

けれど仕方がありません。私は私の幸せを掴むために、自由になります。




「お父様、お母様……お父様がおっしゃった通り、私はもうこの家の娘ではありません。出ていけと言われなくても出ていきますわ。今まで育てていただいた事には感謝いたしますが、今後、私の人生には関わらないでください」

私がそう伝えると、お二人は一瞬ポカンとした顔をしていましたが、徐々に怒り始めました。

「お前は何を言っているんだ?ふざけるな!冗談では済まされないぞ……!」

「アリス、あなた頭がおかしくなってしまったの?詭弁を弄してないで、お父様の言うことを聞きなさい!」

このまま私が何を言っても理解しないでしょうね。

早く来てくれないかしら……なんて考えていたら、タイミング良く玄関の戸が開きました。予想していた人ではありませんでしたが。

「アリス、遅くなって申し訳ありません。お迎えに上がりました」

「あら?執事を寄越すと仰っていたではありませんか、シュカ様」

シュカ様が直接来てくださるなんて予想外ですが、私の代わりに現状説明してくれる方が到着したのでホッとしました。

    
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