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寝言(1)
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クリスティーナが突然気を失って倒れた。
ヘンリーは急いで医者を手配し、クリスティーナを家へと運んだ。
馬車の中では寝かせておくわけにもいかなかったので、ヘンリーが横抱きにして抱えていた。
腕の中でぐったりとしているクリスティーナは、まるで眠り姫のようだった。
(どうか無事でいてください……)
ヘンリーには祈ることしか出来なかった。
「う……んん」
馬車が大きく揺れるたび、クリスティーナから微かな声が聞こえてくる。そのことがヘンリーを少し安心させた。彼女は無事なのだと。
クリスティーナの家に着くと、すぐに待機していた医者が容態を確認した。
彼女のそばにいたかったが、診察される姿を見るのは憚られたので、廊下で待たせてもらった。彼女の執事には入っても良いと言われたが、婚約者という立場が偽りである以上、そうすることは出来なかった。
そして医者が帰った後、ヘンリーは執事に頭を下げた。
「突然お邪魔して申し訳ありませんでした。僕がついていたのに、クリスティーナの異変に気づけず……」
「いえいえ、ヘンリー様のお手を煩わせてしまいましたね。お医者様によると過労、睡眠不足、栄養不足とのことでした。お嬢様の健康管理が出来なかった我々の責任でもあります」
丁寧な言葉遣いでヘンリーに頭を下げる執事は、ヘンリーを全く責めず、ただただクリスティーナのことを心配している様子だった。
「しばらく彼女のそばにいても構いませんか?」
「もちろんです。いつまででも構いません。ヘンリー様がおそばにいてくださると、お嬢様も安心するでしょう」
「そうでしょうか……」
「もちろんですとも」
執事に案内されて、クリスティーナの寝室に入る。
彼女は眠っているようだった。
「んん……」
クリスティーナは気持ち良さそうな寝息を立てていたが、目の下の隈が痛々しかった。
(働き過ぎに睡眠不足……僕のせいだろうな)
クリスティーナが仕事にのめり込んだ原因は、ヘンリーを避けるためでもあっただろう。今では良好な関係に戻ってはいたが、原因の発端を作ってしまった罪悪感で、ヘンリーは申し訳なくなった。
「本当に申し訳ありません……」
ヘンリーがクリスティーナの手をそっと握ると、彼女の瞼がわずかに動いた。
「んう……ヘン、リー?」
「クリスティーナ、気がつきましたか?」
クリスティーナは薄っすらと目を開けた。だが、顔がトロンと蕩けて、ぼんやりとしている。
(これは……まだ眠っているのか?)
「まだ寝ていてくださいね」
ヘンリーがそっと瞼を下ろしてやると、クリスティーナは口元に笑みを浮かべて再び寝息を立て始めた。
「ヘンリー……すきよ。ごめんね……ここに、いて……?」
「っ……!!」
眠ったはずのクリスティーナから聞こえてきた言葉は、ヘンリーをひどく動揺させた。
「い、今なんと……?」
「ぅん?……んん」
「……僕も貴女のことが好きですよ」
そう呟いてみたが、クリスティーナはただ嬉しそうな顔ですやすやと眠るだけだった。
「本当に貴女は不思議な人ですね」
ヘンリーは急いで医者を手配し、クリスティーナを家へと運んだ。
馬車の中では寝かせておくわけにもいかなかったので、ヘンリーが横抱きにして抱えていた。
腕の中でぐったりとしているクリスティーナは、まるで眠り姫のようだった。
(どうか無事でいてください……)
ヘンリーには祈ることしか出来なかった。
「う……んん」
馬車が大きく揺れるたび、クリスティーナから微かな声が聞こえてくる。そのことがヘンリーを少し安心させた。彼女は無事なのだと。
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彼女のそばにいたかったが、診察される姿を見るのは憚られたので、廊下で待たせてもらった。彼女の執事には入っても良いと言われたが、婚約者という立場が偽りである以上、そうすることは出来なかった。
そして医者が帰った後、ヘンリーは執事に頭を下げた。
「突然お邪魔して申し訳ありませんでした。僕がついていたのに、クリスティーナの異変に気づけず……」
「いえいえ、ヘンリー様のお手を煩わせてしまいましたね。お医者様によると過労、睡眠不足、栄養不足とのことでした。お嬢様の健康管理が出来なかった我々の責任でもあります」
丁寧な言葉遣いでヘンリーに頭を下げる執事は、ヘンリーを全く責めず、ただただクリスティーナのことを心配している様子だった。
「しばらく彼女のそばにいても構いませんか?」
「もちろんです。いつまででも構いません。ヘンリー様がおそばにいてくださると、お嬢様も安心するでしょう」
「そうでしょうか……」
「もちろんですとも」
執事に案内されて、クリスティーナの寝室に入る。
彼女は眠っているようだった。
「んん……」
クリスティーナは気持ち良さそうな寝息を立てていたが、目の下の隈が痛々しかった。
(働き過ぎに睡眠不足……僕のせいだろうな)
クリスティーナが仕事にのめり込んだ原因は、ヘンリーを避けるためでもあっただろう。今では良好な関係に戻ってはいたが、原因の発端を作ってしまった罪悪感で、ヘンリーは申し訳なくなった。
「本当に申し訳ありません……」
ヘンリーがクリスティーナの手をそっと握ると、彼女の瞼がわずかに動いた。
「んう……ヘン、リー?」
「クリスティーナ、気がつきましたか?」
クリスティーナは薄っすらと目を開けた。だが、顔がトロンと蕩けて、ぼんやりとしている。
(これは……まだ眠っているのか?)
「まだ寝ていてくださいね」
ヘンリーがそっと瞼を下ろしてやると、クリスティーナは口元に笑みを浮かべて再び寝息を立て始めた。
「ヘンリー……すきよ。ごめんね……ここに、いて……?」
「っ……!!」
眠ったはずのクリスティーナから聞こえてきた言葉は、ヘンリーをひどく動揺させた。
「い、今なんと……?」
「ぅん?……んん」
「……僕も貴女のことが好きですよ」
そう呟いてみたが、クリスティーナはただ嬉しそうな顔ですやすやと眠るだけだった。
「本当に貴女は不思議な人ですね」
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