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社交界デビュー(5)
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三人組のご令嬢達は、皆クリスティーナを睨んでいた。そしてクリスティーナが何かを言う前に一人の令嬢が言葉を続けた。
「本当に素敵なドレスですね。暗い色はおめでたい雰囲気には合いませんが……伯爵には本当によくお似合いですわ」
地味なドレスを着て一人だけ目立つな、ということだろう。
クリスティーナの素性は、良くも悪くも詳細が知られていない。ドレスくらいしか悪態をつける部分がなかったのだろう。
(さっきみたいな疑惑つきの軽蔑ではなく、確実な敵意ね)
これからはもっと酷い敵意が向けられることもあるはずだ。
女で伯爵なんて、ただでさえ叩かれやすい。その上、人気者との婚約や殿下からの信頼……よく思わない人は大勢いるはずなのだから。
クリスティーナは背筋を伸ばして口角を上げた。
「ありがとうございます。殿下にも褒めていただいたのに、素敵なお嬢様方にまで褒めていただけて光栄です。あっ失礼ですが、お名前を伺ってもよろしいですか? まだ皆様のことを存じ上げなくて」
笑顔を絶やさず、反論はしない。背筋を伸ばして前を向く。
クリスティーナは、ヘンリーやヴェラの助言を思い出しながら返答した。
失礼のないように相手の名前を聞いただけだったのだが、周囲には「名乗る前から失礼だ。ドレスを褒めた殿下を貶めるな」という意味に伝わったようだ。
クリスティーナを睨んでいた令嬢たちの顔色がみるみる悪くなっていく。
「いえ……名乗るほどの者ではありませんわ。では失礼っ!」
そう言い残して、慌ててどこかへと消えてしまった。
(一人で対応出来た……帰ったらヴェラにお礼を言わなくちゃ! ヘンリーにも……そういえば、本当にどこに行ったのかしら?)
もうヘンリーがいなくなってから大分時間が経っていた。
ぐるりと会場を探し歩いてみても姿はない。
誰かに尋ねようにも、また質問攻撃が始まると思うと話しかけづらかった。
(一人でいるとまた誰かに絡まれそうだし、もう帰ってしまおうかな。殿下へのご挨拶は終わったし、良いわよね?)
馬車を呼んで帰ろう。そう思って出口に向かっていると、背後から声がした。
「フェンネル伯爵、先程は見事な対応でしたね。ところで、どなたかお探しですか?」
「お気遣いありがとうございます。パートナーとはぐれてしまって……っ!!」
振り返りながらお礼を言ったクリスティーナは、声をかけてきた相手を見て心臓が止まりそうになった。
「驚かせてしまいましたか? 弟の付き人を探しているのでしょう?」
「ななな、なぜユリウス殿下が?」
声をかけてきたのは、この国の第一王子ユリウスだった。ジュリアスと同じ金色の髪が柔らかく揺れていて、見とれるほど美しい容姿だ。
「弟の生誕祭にいるのがそんなに不思議ですか?」
(そりゃあ、そうだけど! 急に驚かすのは止めてください!)
と文句を言う訳にもいかず、「申し訳ありません」と頭を下げるしかなかった。
ユリウスはクリスティーナの謝罪を気にも留めず、彼女の腕を引っ張った。
「こちらです。……ほら急いで。周囲の方々ににバレたら面倒ですから」
第一王子の腕を振りほどくなんて恐ろしくて出来ない。クリスティーナは大人しく引っ張られていくことにした。
「本当に素敵なドレスですね。暗い色はおめでたい雰囲気には合いませんが……伯爵には本当によくお似合いですわ」
地味なドレスを着て一人だけ目立つな、ということだろう。
クリスティーナの素性は、良くも悪くも詳細が知られていない。ドレスくらいしか悪態をつける部分がなかったのだろう。
(さっきみたいな疑惑つきの軽蔑ではなく、確実な敵意ね)
これからはもっと酷い敵意が向けられることもあるはずだ。
女で伯爵なんて、ただでさえ叩かれやすい。その上、人気者との婚約や殿下からの信頼……よく思わない人は大勢いるはずなのだから。
クリスティーナは背筋を伸ばして口角を上げた。
「ありがとうございます。殿下にも褒めていただいたのに、素敵なお嬢様方にまで褒めていただけて光栄です。あっ失礼ですが、お名前を伺ってもよろしいですか? まだ皆様のことを存じ上げなくて」
笑顔を絶やさず、反論はしない。背筋を伸ばして前を向く。
クリスティーナは、ヘンリーやヴェラの助言を思い出しながら返答した。
失礼のないように相手の名前を聞いただけだったのだが、周囲には「名乗る前から失礼だ。ドレスを褒めた殿下を貶めるな」という意味に伝わったようだ。
クリスティーナを睨んでいた令嬢たちの顔色がみるみる悪くなっていく。
「いえ……名乗るほどの者ではありませんわ。では失礼っ!」
そう言い残して、慌ててどこかへと消えてしまった。
(一人で対応出来た……帰ったらヴェラにお礼を言わなくちゃ! ヘンリーにも……そういえば、本当にどこに行ったのかしら?)
もうヘンリーがいなくなってから大分時間が経っていた。
ぐるりと会場を探し歩いてみても姿はない。
誰かに尋ねようにも、また質問攻撃が始まると思うと話しかけづらかった。
(一人でいるとまた誰かに絡まれそうだし、もう帰ってしまおうかな。殿下へのご挨拶は終わったし、良いわよね?)
馬車を呼んで帰ろう。そう思って出口に向かっていると、背後から声がした。
「フェンネル伯爵、先程は見事な対応でしたね。ところで、どなたかお探しですか?」
「お気遣いありがとうございます。パートナーとはぐれてしまって……っ!!」
振り返りながらお礼を言ったクリスティーナは、声をかけてきた相手を見て心臓が止まりそうになった。
「驚かせてしまいましたか? 弟の付き人を探しているのでしょう?」
「ななな、なぜユリウス殿下が?」
声をかけてきたのは、この国の第一王子ユリウスだった。ジュリアスと同じ金色の髪が柔らかく揺れていて、見とれるほど美しい容姿だ。
「弟の生誕祭にいるのがそんなに不思議ですか?」
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と文句を言う訳にもいかず、「申し訳ありません」と頭を下げるしかなかった。
ユリウスはクリスティーナの謝罪を気にも留めず、彼女の腕を引っ張った。
「こちらです。……ほら急いで。周囲の方々ににバレたら面倒ですから」
第一王子の腕を振りほどくなんて恐ろしくて出来ない。クリスティーナは大人しく引っ張られていくことにした。
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