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初デート(1)

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「さてと……伯爵の意思も確認できたし、僕は他の仕事があるから後は二人でよろしくね~」
 
 ジュリアスはヘンリーに細かい指示をすると、他にも予定があるとかで忙しそうに退室してしまった。
 二人きりになると、ヘンリーはクリスティーナに頭を下げた。

「申し訳ありません。驚きましたよね? 殿下は偽名で代理を務めておりましたから、あの日、伯爵に伝えることが出来ず……」
「気になさらないでください。立場上、当然のことですよ! それに偽名を使ったのは、きっと私のせいですし」

 領主代理が第二王子だと知られれば、領地に注目が集まる。当然、本来の領主は誰かと話題になるだろう。偽名を使っていたのはジュリアスの配慮なのだろう。
 それにヘンリーが話さなかったのも当然だ。いくらクリスティーナに話す相手がいない引きこもりだったとしても、ヘンリーの裁量で第二王子の秘密を話すはずがない。彼はジュリアスの信頼を受けた付き人なのだから。

「殿下が領主代理になった時、僕は貴女の存在を知りました。殿下は詳しくは教えてくださらなかったけれど、貴女のことを『領主の見込みがある』っておっしゃっていました」
「え!? そうなのですか?」
「はい。それで僕も貴女のことが気になっていたのです。母から結婚のプレッシャーをかけられた時、貴女のことを思い出して……衝動的に訪ねてしまいました」

 ヘンリーは力なく肩を落とした。急な訪問を申し訳なく思っているようだった。

(もう気にしなくて良いのに。それにしても……なんだかヘンリー様可愛い。お母様の話になると少し弱気になるのね)

 思わず笑ってしまいそうになるのを抑えるために、クリスティーナは顔に力を入れた。
 その表情が困っているように見えたのだろう。ヘンリーは心配そうにクリスティーナの手を取った。

「伯爵、確認なのですが……伯爵であることを公表して領主を務めるのは、僕に協力してくれるため。……と捉えて良いですか?」
「はい。そのつもりです」

 クリスティーナが力強く頷くと。ヘンリーの表情はパッと晴れやかになった。

「良かった……半ば無理矢理お願いしたので、実は心配だったんです」
「ふふっ、ヘンリー様の迫力、スゴかったです」
「帰ってから少し反省しました。あんな風に誘うつもりじゃなかったのにって」
「そうなんですか? 実は私もヘンリー様が帰った後、少し自分の発言を反省していました。なんで引き受けちゃったのかって。でも、今は引き受けて良かったと思っています」

(不思議……人と話すのは苦手だったのに、なんでヘンリー様にはこんなにお話出来るのだろう)

 ヘンリーが真っ直ぐに話してくれるからだろうか、クリスティーナは自分の気持ちを正直に話すことが出来た。

「あんな無茶なお願いだったのに……ありがとうございます」

 キラキラとした笑みを浮かべてお礼を言うヘンリーが眩しくて、クリスティーナは少し俯いた。

(笑顔が素敵すぎるっ。前が見れない……)

 クリスティーナが俯いたまま黙っていると、ヘンリーは握っていた手に少し力を込めた。
 そしてクリスティーナの顔を覗き込んだ。

「伯爵、この後デートしませんか?」
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