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視廻り旅・4ヶ月目・
女道騎士
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…それに先立つ三時前… 白茶斑柄の馬に乗って、若い女道騎士が村に入って来た。
俺が木に打ち付けた板を観留めると馬を寄らせて読み、ひらりと降りて革の鞄を開ける。
中から幾つかの包みを取り出してそれらを紐袋に入れると、紐を延ばして打ち付けた板の右下から伸びている小枝に括り付ける。
終わると、通りがかった行商人と少し話してからまたふわっと馬に跳び乗り、村の中に入って行った。
泉の畔に作った寝床に帰って来た俺は、先ず横になって眠った…目覚めると日没からニ時程だった。
今は気持ちが落ち着いているから、試してみよう…道剣を脇に置いて服を緩めると、安定的に座り直して深い瞑想に入り、魔物供の気配を探る。
一昨日と昨夜で結構片付けたから、今夜はそんなに彷徨き廻ってないだろう…案の定、感知出来たのは8匹だった…片付いたら、また隣村に行ってみようか…。
だがその前に、馬が近付いて来る…馬に乗る魔物はいないから、これは人間だ…しかしこの脚運びは?…紐帯を締め直して道剣の鞘を差し、ゆっくりと立ち上がった…。
フードを被っているが若い女だ…馬の白茶斑柄のパターンに見憶えがある…それに、馬の脚運びにも…。
「…久しぶりだね、シエン…結構様になってるじゃん…」
「…俺が出立して何ヶ月で、道騎士として独り立ちしたんだ? サリエナ? 」
「…二ヶ月だよ…先ずカイン伯父師に挨拶してからと思って寄ったら、アンタがここら辺りにいるんじゃないかって聞いたもんだからさ…」
そう応えながら馬から降りると、そのまま曳いて手綱を近くの木の幹に廻して留める。
こいつはサリエナ…同い年だが、産まれは俺より四ヶ月早い…カインお師の弟弟子に当る、ケイン叔父師の内弟子だ。
俺は捨子だったが、こいつは3歳半の時に両親を魔物に殺されて一人になったんで、ケイン叔父師が引き取った。
以来幼馴染でもあるし、修行仲間でもある…俺は間を読み取るのが得意なんだが、サリエナは鼻が利く…。
「…よくここが判ったな…」
「…アンタの匂いは6番目に憶えた匂いだからね…ホラ、カイン伯父師から預かって来た差し入れだよ…アタシからの差し入れは、アンタが打ち付けた板の下に括り付けておいたからさ…」
言いながら革の鞄を開けて長い紐の巾着袋を取り出すと、俺に手渡した。
「…悪いな、サリエナ。わざわざ差し入れまで…助かるよ。お師さんは元気にしていたかい? 」
「…ああ、元気だよ。矍鑠たるもんさ…尤も、アンタが産ませた3人の子供の世話で、てんてこ舞いだけどね…」
「…ああ、そうか…」
俺の血を引く3人の子供達の事を想うと、カインお師さんへの申し訳なさで、どうしても苦い表情になる。
「…まあ、でも…最近は近くの女衆が何くれとなく手伝ってくれてるから、そんなでもないけどね…」
「…そうか…悪いが今夜も魔物退治に行かなきゃならん…話はまた後でな、サリエナ? 」
「…好いよ…久しぶりに一緒にやろう…」
「…ああ…この辺りが片付いたら、隣村に脚を伸ばす…」
「…分かった…」
そう応えてサリエナはフード付きケープを脱ぐと馬の鞍に掛け、身に付けている袋を全て鞄に入れた。
俺もケープを脱いで寝床に敷き、持ち物袋も外してその上に置く。
顔を見合わせてお互いに頷くと、縮地歩術で歩き出した。
俺が木に打ち付けた板を観留めると馬を寄らせて読み、ひらりと降りて革の鞄を開ける。
中から幾つかの包みを取り出してそれらを紐袋に入れると、紐を延ばして打ち付けた板の右下から伸びている小枝に括り付ける。
終わると、通りがかった行商人と少し話してからまたふわっと馬に跳び乗り、村の中に入って行った。
泉の畔に作った寝床に帰って来た俺は、先ず横になって眠った…目覚めると日没からニ時程だった。
今は気持ちが落ち着いているから、試してみよう…道剣を脇に置いて服を緩めると、安定的に座り直して深い瞑想に入り、魔物供の気配を探る。
一昨日と昨夜で結構片付けたから、今夜はそんなに彷徨き廻ってないだろう…案の定、感知出来たのは8匹だった…片付いたら、また隣村に行ってみようか…。
だがその前に、馬が近付いて来る…馬に乗る魔物はいないから、これは人間だ…しかしこの脚運びは?…紐帯を締め直して道剣の鞘を差し、ゆっくりと立ち上がった…。
フードを被っているが若い女だ…馬の白茶斑柄のパターンに見憶えがある…それに、馬の脚運びにも…。
「…久しぶりだね、シエン…結構様になってるじゃん…」
「…俺が出立して何ヶ月で、道騎士として独り立ちしたんだ? サリエナ? 」
「…二ヶ月だよ…先ずカイン伯父師に挨拶してからと思って寄ったら、アンタがここら辺りにいるんじゃないかって聞いたもんだからさ…」
そう応えながら馬から降りると、そのまま曳いて手綱を近くの木の幹に廻して留める。
こいつはサリエナ…同い年だが、産まれは俺より四ヶ月早い…カインお師の弟弟子に当る、ケイン叔父師の内弟子だ。
俺は捨子だったが、こいつは3歳半の時に両親を魔物に殺されて一人になったんで、ケイン叔父師が引き取った。
以来幼馴染でもあるし、修行仲間でもある…俺は間を読み取るのが得意なんだが、サリエナは鼻が利く…。
「…よくここが判ったな…」
「…アンタの匂いは6番目に憶えた匂いだからね…ホラ、カイン伯父師から預かって来た差し入れだよ…アタシからの差し入れは、アンタが打ち付けた板の下に括り付けておいたからさ…」
言いながら革の鞄を開けて長い紐の巾着袋を取り出すと、俺に手渡した。
「…悪いな、サリエナ。わざわざ差し入れまで…助かるよ。お師さんは元気にしていたかい? 」
「…ああ、元気だよ。矍鑠たるもんさ…尤も、アンタが産ませた3人の子供の世話で、てんてこ舞いだけどね…」
「…ああ、そうか…」
俺の血を引く3人の子供達の事を想うと、カインお師さんへの申し訳なさで、どうしても苦い表情になる。
「…まあ、でも…最近は近くの女衆が何くれとなく手伝ってくれてるから、そんなでもないけどね…」
「…そうか…悪いが今夜も魔物退治に行かなきゃならん…話はまた後でな、サリエナ? 」
「…好いよ…久しぶりに一緒にやろう…」
「…ああ…この辺りが片付いたら、隣村に脚を伸ばす…」
「…分かった…」
そう応えてサリエナはフード付きケープを脱ぐと馬の鞍に掛け、身に付けている袋を全て鞄に入れた。
俺もケープを脱いで寝床に敷き、持ち物袋も外してその上に置く。
顔を見合わせてお互いに頷くと、縮地歩術で歩き出した。
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