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地上界にて…2…
3月10日(火)…4…
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クライトン国際総合商社、本社第1棟営業本部、営業第3課、セカンドセクション、ファーストフロア。
午後の業務では、その総てをデスクワークで過ごした…問合せや打合せが必要な場合に於いても、席からは立たずにマルチバース・メッセージの遣り取りだけで対応した…スピードはパワーモードの1.8倍をメインに…立て込んでいた40分間だけ、スーパー・モードまで上げて処理した…定時のチャイムが鳴ったので止めて…見渡して確認して保存する…報告書のフォーマットに入力して、フロア・チーフに送信してから固定端末を落とした。
後を片付けて清掃し明日の準備も終えると、コートを着てバッグを取り、同僚達に挨拶して1階まで降りる…ガード・ステーションでスマート・スターターを受け取り、自分の車に乗る。
リサ・ミルズとは業務中にメッセージを遣り取りして、最寄りのパブリック・ステーションで待ち合わせる予定にしていた。
発車して5分30秒でパブリック・ステーションのロータリー・エントランスに入り、左端のポーズ・スペースに着ける…直ぐに助手席側のドアが開き、リサ・ミルズが滑り込んで座った。
「…はい、アドルさん…マンデリン、ホット…砂糖ひとつです…」
そう言いながらカップを渡してくれる。
「…ああ…ありがとう。飲みたかったんだよ…ラウンジにいたら、皆から声を掛けられて…ゆっくりできなかったろうからね…」
発車させて通りに出てからふた口飲む。
「…リサ…悪いけど、公園に入って一服するから…ハーブ・ショップを入力してくれるかな? 」
「…分かりました…」
それからまた5分で公園のパーキングに車を停め、外に出るとコーヒーを飲みながら一服点けた。
先に煙草を喫い終えて、残っているコーヒーを飲み干し…車に乗る…モーターを始動させ、リサと抱き合い…久し振りに7秒舌を絡め合わせてから、発車させた。
「…ハーブ・ショップまでは? 」
「…30分程です…」
「…了解…」
その後は寄り道せずにハーブ・ショップを目指し、35分でその店のパーキングに滑り込んだ。
店内では、一通りの素材を買い物カゴに入れていく……ローズヒップ…ペパーミント…タイム…カモミール…ラベンダー…レモングラス…シナモン…ローズマリー…を入れたところで手が止まった。
「…このくらいにしておきましょう…会計します…」
ビット・カードを取り出した私の手を押さえて、自分のカードで支払った…それだけでその店からは出る。
走り出したエレカーの助手席から、自分のマンションの座標を入力する…40分…結構距離がある。
「…どこで、手の平が反ると思いますか? 」
唐突な質問だが、訊きたい事は解る。
「…問題にされるとしたら、俺が指示した戦術か…スタッフ・クルーに対する接し方、だろうね…これはこっちが幾ら気を付けていても…穿つような姿勢で観られれば、どのようにでも受け取られてしまうから…仕方ないところだろうな…だから気にしない…社内で何か聴こえてる? 」
「…いえ、それはまだ何も…」
「…それなら、まだ大丈夫だね…」
その後、渋滞にも捕まったので45分でマンションが観えた…前回に停めたゲスト・スペースに入れる。
妙に緊張して来たが、今煙草を喫うのはマズい。
38階迄上がる…この階にある家は3棟だけだ。
ドアの前に立つと人感センサーがインターコールを鳴らして、横滑りに開く。
リサが先に入り、後に続く…玄関が広い。
「…こんばんは! ごめんください! 」
「…こんばんは…ようこそ、いらっしゃいませ…」
迎えて下さったのはトーマス・クライトン社長の奥様、ナンシー・クライトンさんだ。
ああ…良かった…生気闊達…顔色も好い…退院されたのが良かったんだな…
「…アドル・エルクです…お見舞いにあがるのが遅くなりまして、申し訳ありません…」
「…いえいえ…ようこそおいでくださいました…宅の者も喜びますので…どうぞ、お上がりになって下さい…」
「…ありがとうございます…それでは、お言葉に甘えまして、お邪魔させて頂きます…」
深く頭を下げて靴を脱ぎ、上がらせて頂いた。
トーマス・クライトン社長のお宅を訪問したのだが…家の内部の様子は、あまり記憶に残っていない…大会社の社長のお宅にしては、質素な印象を受けた記憶が残っている。
「…お母さん…パメラ叔母さんとアマーリエは? 」
「…今は、2人とも家に戻っているのよ…お父さんが思ったよりも元気に退院して、帰って来たからね…」
「…そうなんだ…お母さん…これ、お土産に買って来たから…」
「…あら…お気遣いをありがとうございます、アドルさん…」
「…いや、購入したのはリサさんなので…」
「…さ、待っておりますので…こちらへどうぞ…」
「…ありがとうございます…失礼して、お邪魔致します…」
奥様に案内されて、リビングに通される。
「…やあ、アドル艦長…いらっしゃい…よく来てくれましたね…暫くでした…配信は観ていますし、話も聞いていますよ…大変な活躍で…会社を預かる者としては、感謝の言葉もありません…」
「…いや、そんな…社長…先ずは退院、おめでとうございます…やはり社長には、まだ社長で居て頂かないと…立ち行きません…まだまだ、宜しくお願いします…」
「(笑)ありがとう…私もまだ退任する気は無いからね…まだまだ頑張りますよ…」
「…ありがとうございます…社長…その意気です…そのお言葉を聴けて、私も安心しました…」
その時に奥様とリサがティーポットやカップやお茶菓子などを持って来て置き、そのままソファーに座った。
「…今日もお疲れ様でした、アドルさん…おひとつ、どうぞ? 」
「…は、恐縮です…頂きます…」
白磁のティーポットから注がれたのは、ほんの少し緑がかった琥珀のお茶…ゆっくりとカップを上げて薫りを観る。
「…何とも…幸せになる薫りですね…」
「…ありがとうございます…これは家族全員が初めて絶賛してくれたブレンドでしたので、お出ししました…」
「…そんなに素晴らしいブレンド・ハーブティーを、私の為にありがとうございます…」
「…いいえ、どう致しまして…楽しんで頂ければ幸いですわ…」
「…恐縮です…」
「…ときにアドル艦長…リサは上手くやっているかね? 」
「…はい…私が今、ここでこのようにあるのは…彼女のおかげだと言っても過言ではありません…彼女がいなかったら、潰れています…」
「…(笑)父親の前だからって…そんなに褒めなくても良いよ…」
「…いいえ…これは私の率直な考えです…」
「…ありがとう、アドル艦長…君への正式な内示は木曜日の内にはあるだろう…月末までには社内でも告知されて、スタッフの募集が始まる…来月の1日が水曜日だから、そこで対外的にも発表される流れだろうな…課長研修の日程も出るだろうし、社内でもかなり忙しくなる…リサひとりで大丈夫かね? 」
「…私なら大丈夫です…既に準備は整っています…」
初めて彼女が発言した…自信を感じさせる声がリラックスさせてくれる。
「…アドルさん…今後の事で、何か要望はありますか? 」
「…ゲーム明けの月曜日が大変なので…少なくとも半休になってしまうと思うんですが…そうなると有給休暇が無くなってしまうのが、目下の悩みですね…課長になったら会社に来ない訳にもいかないでしょうし…対策としては、毎週ゲームに参加するのは諦めて…参加しても21:30には入港しようと考えています…その他の活動についても、出来る範囲で尽力しますが…我儘な話に聴こえてしまったら、申し訳ないのですが…運転手さんを就けて頂けると、有り難いです…」
「…実は、アドル艦長…貴方の月曜日を総て特別功労休暇としてはどうか? と言う検討案が今、役員会で継続審議されています…」
「…社長…それはマズイですよ…今の私は2重雇用されていると言われても、明確に反論できない状態です…その上私だけが破格の待遇を施されるとなれば…私自身は馬耳東風でも構いませんが…会社が何と言われるか…」
「…アドル艦長…人的資源としての貴方は、もはや役員と同じレベルです…これは全役員に共通の認識でもあります…ですが、流石に貴方を一足跳びに昇格させる事も出来ない…ですのでまあ、これは時期を観ながら適宜に行いますが…貴方に施す待遇は、これからもどんどん厚くしていきます…外からの反響は色々とあるでしょう…ですが我が社も貴方と同じように、馬耳東風でいきます…あまり煩くなるようなら、対外広報を出して説明します…それと…貴方専属の運転手さんについては、直ぐに手配しましょう…」
「…良いんですか? そこまでして下さって…」
「…当然ですよ、アドル艦長…今回は課長への昇進ですが、シーズンとシーズンの間のインターバルに入れば、貴方はまた昇進します…これは憶えて置いて下さい…」
「…そうなんですか…まあ…運転手さんを就けて頂けるだけでも、私としては有り難いです…」
「…毎週月曜日の件については間も無く決まるでしょうから、決まったら直ぐにお知らせします…他にはありますか? 今後の活動予定に絡めてでも構いませんよ? 」
「…まあ、ますます忙しくなりますけれども…社宅にもアイソレーション・タンクベッドが入りましたので、睡眠による体力の回復については大丈夫だと思います…また何かありましたら、要望は上げさせて頂きます…」
「…分かりました…宜しく頼みます…」
「…アドルさん、お夕食は如何ですか? 」
せっかくのお誘いだが、これ以上お邪魔するのは社長を疲れさせるだけだろう…ここは辞退して、お暇するのが正しいだろう。
「…奥様…せっかくのお誘いですがこれ以上お邪魔してしまいますと、社長の身体に障りますので、これでお暇致します…本当に美味しいお茶を、ありがとうございました…今日はご挨拶とお見舞いと、お話も出来て本当に良かったです…いずれまた伺わせて頂きますので、その際にはまた宜しくお願い致します…」
供されたお茶を丁寧に飲み干し、社長と奥様に深く頭を下げて立ち上がる。
「…今日は来てくれてありがとう…改めて君と話せて良かったよ…今度は是非、食事を共にしよう…私ももう直ぐ出社するからね…アドル艦長…いずれ必ず手の平は反るだろう…だが、何も気にする必要は無い…お互いに馬耳東風で居れば良い…度の過ぎた誹謗・中傷にはこちらで対処・対応するから、君は何も反応しないでくれ…それが1番良いからね…」
「…分かりました…仰る通りにします…」
「…気を付けて帰って下さい…ご家族の皆さんにも、宜しくお願いします…」
「…こちらこそ、ありがとうございました…まだお大事になさって下さい…それでは、失礼します…」
会釈して、ゆっくり退室する…リサさんも付いて来る…ご両親とも、何も言わないので、私も何も言えなかった。
最後にもう一度頭を下げて、玄関から辞した…リサさんは、先に出ている。
「…どうされますか? 」
「…腹が減ってきてるからね…途中で何か食べて帰るよ…」
「…もし…宜しければ、ウチで夕食にしませんか? 」
「…君の手料理が食べられるの? 」
「…はい…恥ずかしいですが…」
「…へえ…そりゃ願っても、またと無い機会だね…お邪魔しても構わないんだったら、喜んで頂きます…」
「…ありがとうございます…本当に恥ずかしいんですけれども…どうぞ…」
通路を歩いてリフトに乗って、彼女の家のある15階まで降りる。
「…お暇しようとした時…おふたりとも、何も言わなかったね…」
「…私の家で、打ち合わせでもするんだろうと思っているんでしょう…ハイ、どうぞ、お上がり下さい…」
「…ありがとう…お邪魔します…」
「…お疲れ様でした。上着はこちらでお預かりします…」
「…ありがとう…」
脱いで渡すと、ハンガーに掛けてポール・ラックに吊るした。
「…座って、ゆっくりして下さい…恥ずかしいんですけれども…コーヒーとミルクティーを、今の最大スペックで淹れますので、評価をお願いします…」
「…責任重大だね…力まなくて好いから力を抜いて、思い遣りの気持ちで淹れれば好いよ…」
「…分かりました…」
ダイニングテーブルに着いて、落ち着いて待つ…特に何も考えなかった。
ほぼ同じ時間で、コーヒーとミルクティーが2杯ずつテーブルに置かれる…2人分だな…彼女はテーブルの右脇に座った。
「…じゃあ、頂きます…」
ミルクティーをふた口飲み、コーヒーもふた口飲む…ふたつとも置いて、味を確認して把握する。
「…うん…僕が淹れるのと殆ど変わらないね…ほぼ同じと言っても良い…もう少し蒸らしを効かせれば、もっと旨くなると思うよ…」
「…ありがとうございます…嬉しいです…かなり緊張しました…」
息を吐いてホッとした様子で微笑む…それがとても可愛い。
立ち上がって抱き寄せようとする衝動に駆られたが、この時は堪えた…今のこの微笑をもっと観ておきたい気持ちの方が優っていたからだ。
夕食は、ボリュームたっぷりの肉野菜炒めに白身魚のソテーがメインディッシュで…ライスにライトビアだったのだが、充分に満足した…満腹までご馳走になった。
「…ご馳走様でした…本当に美味しかった…久し振りに満腹まで堪能したよ…じゃあ、片付けよう…」
ふたりで片付け、洗って拭き上げて収納する…終えてシャツの袖を戻していると、リサが後ろから私を抱き締めた。
「…アドルさん、お願いです…今夜は泊まって行って下さい…」
「…いや…ここでは止めておくよ…このマンションに社長の居宅があって、今日僕が訪問した事は…おそらくもう知られている…それに…君の事も…そろそろ知られる頃だろう…僕が明日の朝、ここから出て行くのはマズイよ…」
「…分かりました…」
「…君との関係をこれより先に進めるには…先ず社長が復帰する事…そして…アリソンの妊娠を確認してからにしたい…」
「…はい…」
「…それが出来て…もっと落ち着いたら…もっと違う場所でね? 」
「…ありがとうございます…」
リサの腕を解いて軽く抱き合い、15秒程のキスを交わした。
ふたりで一緒に地下駐車スペースまで降りる。
「…早く寝るんだよ? 」
「…はい…」
車をスタートさせて社宅を目指し、100分と少しで帰着した。
丹念にシャワーを浴び、上がってからコーヒーを点てて飲む。
『ディファイアント』艦内に追加で持ち込む私物を準備する。
明日の終業後に『運営推進本部』の受付に預けられるよう、梱包して車のトランクに収める。
ベランダで1本を喫い、オレンジ・ジュースを飲み干して、タンク・ベッドに入った。
午後の業務では、その総てをデスクワークで過ごした…問合せや打合せが必要な場合に於いても、席からは立たずにマルチバース・メッセージの遣り取りだけで対応した…スピードはパワーモードの1.8倍をメインに…立て込んでいた40分間だけ、スーパー・モードまで上げて処理した…定時のチャイムが鳴ったので止めて…見渡して確認して保存する…報告書のフォーマットに入力して、フロア・チーフに送信してから固定端末を落とした。
後を片付けて清掃し明日の準備も終えると、コートを着てバッグを取り、同僚達に挨拶して1階まで降りる…ガード・ステーションでスマート・スターターを受け取り、自分の車に乗る。
リサ・ミルズとは業務中にメッセージを遣り取りして、最寄りのパブリック・ステーションで待ち合わせる予定にしていた。
発車して5分30秒でパブリック・ステーションのロータリー・エントランスに入り、左端のポーズ・スペースに着ける…直ぐに助手席側のドアが開き、リサ・ミルズが滑り込んで座った。
「…はい、アドルさん…マンデリン、ホット…砂糖ひとつです…」
そう言いながらカップを渡してくれる。
「…ああ…ありがとう。飲みたかったんだよ…ラウンジにいたら、皆から声を掛けられて…ゆっくりできなかったろうからね…」
発車させて通りに出てからふた口飲む。
「…リサ…悪いけど、公園に入って一服するから…ハーブ・ショップを入力してくれるかな? 」
「…分かりました…」
それからまた5分で公園のパーキングに車を停め、外に出るとコーヒーを飲みながら一服点けた。
先に煙草を喫い終えて、残っているコーヒーを飲み干し…車に乗る…モーターを始動させ、リサと抱き合い…久し振りに7秒舌を絡め合わせてから、発車させた。
「…ハーブ・ショップまでは? 」
「…30分程です…」
「…了解…」
その後は寄り道せずにハーブ・ショップを目指し、35分でその店のパーキングに滑り込んだ。
店内では、一通りの素材を買い物カゴに入れていく……ローズヒップ…ペパーミント…タイム…カモミール…ラベンダー…レモングラス…シナモン…ローズマリー…を入れたところで手が止まった。
「…このくらいにしておきましょう…会計します…」
ビット・カードを取り出した私の手を押さえて、自分のカードで支払った…それだけでその店からは出る。
走り出したエレカーの助手席から、自分のマンションの座標を入力する…40分…結構距離がある。
「…どこで、手の平が反ると思いますか? 」
唐突な質問だが、訊きたい事は解る。
「…問題にされるとしたら、俺が指示した戦術か…スタッフ・クルーに対する接し方、だろうね…これはこっちが幾ら気を付けていても…穿つような姿勢で観られれば、どのようにでも受け取られてしまうから…仕方ないところだろうな…だから気にしない…社内で何か聴こえてる? 」
「…いえ、それはまだ何も…」
「…それなら、まだ大丈夫だね…」
その後、渋滞にも捕まったので45分でマンションが観えた…前回に停めたゲスト・スペースに入れる。
妙に緊張して来たが、今煙草を喫うのはマズい。
38階迄上がる…この階にある家は3棟だけだ。
ドアの前に立つと人感センサーがインターコールを鳴らして、横滑りに開く。
リサが先に入り、後に続く…玄関が広い。
「…こんばんは! ごめんください! 」
「…こんばんは…ようこそ、いらっしゃいませ…」
迎えて下さったのはトーマス・クライトン社長の奥様、ナンシー・クライトンさんだ。
ああ…良かった…生気闊達…顔色も好い…退院されたのが良かったんだな…
「…アドル・エルクです…お見舞いにあがるのが遅くなりまして、申し訳ありません…」
「…いえいえ…ようこそおいでくださいました…宅の者も喜びますので…どうぞ、お上がりになって下さい…」
「…ありがとうございます…それでは、お言葉に甘えまして、お邪魔させて頂きます…」
深く頭を下げて靴を脱ぎ、上がらせて頂いた。
トーマス・クライトン社長のお宅を訪問したのだが…家の内部の様子は、あまり記憶に残っていない…大会社の社長のお宅にしては、質素な印象を受けた記憶が残っている。
「…お母さん…パメラ叔母さんとアマーリエは? 」
「…今は、2人とも家に戻っているのよ…お父さんが思ったよりも元気に退院して、帰って来たからね…」
「…そうなんだ…お母さん…これ、お土産に買って来たから…」
「…あら…お気遣いをありがとうございます、アドルさん…」
「…いや、購入したのはリサさんなので…」
「…さ、待っておりますので…こちらへどうぞ…」
「…ありがとうございます…失礼して、お邪魔致します…」
奥様に案内されて、リビングに通される。
「…やあ、アドル艦長…いらっしゃい…よく来てくれましたね…暫くでした…配信は観ていますし、話も聞いていますよ…大変な活躍で…会社を預かる者としては、感謝の言葉もありません…」
「…いや、そんな…社長…先ずは退院、おめでとうございます…やはり社長には、まだ社長で居て頂かないと…立ち行きません…まだまだ、宜しくお願いします…」
「(笑)ありがとう…私もまだ退任する気は無いからね…まだまだ頑張りますよ…」
「…ありがとうございます…社長…その意気です…そのお言葉を聴けて、私も安心しました…」
その時に奥様とリサがティーポットやカップやお茶菓子などを持って来て置き、そのままソファーに座った。
「…今日もお疲れ様でした、アドルさん…おひとつ、どうぞ? 」
「…は、恐縮です…頂きます…」
白磁のティーポットから注がれたのは、ほんの少し緑がかった琥珀のお茶…ゆっくりとカップを上げて薫りを観る。
「…何とも…幸せになる薫りですね…」
「…ありがとうございます…これは家族全員が初めて絶賛してくれたブレンドでしたので、お出ししました…」
「…そんなに素晴らしいブレンド・ハーブティーを、私の為にありがとうございます…」
「…いいえ、どう致しまして…楽しんで頂ければ幸いですわ…」
「…恐縮です…」
「…ときにアドル艦長…リサは上手くやっているかね? 」
「…はい…私が今、ここでこのようにあるのは…彼女のおかげだと言っても過言ではありません…彼女がいなかったら、潰れています…」
「…(笑)父親の前だからって…そんなに褒めなくても良いよ…」
「…いいえ…これは私の率直な考えです…」
「…ありがとう、アドル艦長…君への正式な内示は木曜日の内にはあるだろう…月末までには社内でも告知されて、スタッフの募集が始まる…来月の1日が水曜日だから、そこで対外的にも発表される流れだろうな…課長研修の日程も出るだろうし、社内でもかなり忙しくなる…リサひとりで大丈夫かね? 」
「…私なら大丈夫です…既に準備は整っています…」
初めて彼女が発言した…自信を感じさせる声がリラックスさせてくれる。
「…アドルさん…今後の事で、何か要望はありますか? 」
「…ゲーム明けの月曜日が大変なので…少なくとも半休になってしまうと思うんですが…そうなると有給休暇が無くなってしまうのが、目下の悩みですね…課長になったら会社に来ない訳にもいかないでしょうし…対策としては、毎週ゲームに参加するのは諦めて…参加しても21:30には入港しようと考えています…その他の活動についても、出来る範囲で尽力しますが…我儘な話に聴こえてしまったら、申し訳ないのですが…運転手さんを就けて頂けると、有り難いです…」
「…実は、アドル艦長…貴方の月曜日を総て特別功労休暇としてはどうか? と言う検討案が今、役員会で継続審議されています…」
「…社長…それはマズイですよ…今の私は2重雇用されていると言われても、明確に反論できない状態です…その上私だけが破格の待遇を施されるとなれば…私自身は馬耳東風でも構いませんが…会社が何と言われるか…」
「…アドル艦長…人的資源としての貴方は、もはや役員と同じレベルです…これは全役員に共通の認識でもあります…ですが、流石に貴方を一足跳びに昇格させる事も出来ない…ですのでまあ、これは時期を観ながら適宜に行いますが…貴方に施す待遇は、これからもどんどん厚くしていきます…外からの反響は色々とあるでしょう…ですが我が社も貴方と同じように、馬耳東風でいきます…あまり煩くなるようなら、対外広報を出して説明します…それと…貴方専属の運転手さんについては、直ぐに手配しましょう…」
「…良いんですか? そこまでして下さって…」
「…当然ですよ、アドル艦長…今回は課長への昇進ですが、シーズンとシーズンの間のインターバルに入れば、貴方はまた昇進します…これは憶えて置いて下さい…」
「…そうなんですか…まあ…運転手さんを就けて頂けるだけでも、私としては有り難いです…」
「…毎週月曜日の件については間も無く決まるでしょうから、決まったら直ぐにお知らせします…他にはありますか? 今後の活動予定に絡めてでも構いませんよ? 」
「…まあ、ますます忙しくなりますけれども…社宅にもアイソレーション・タンクベッドが入りましたので、睡眠による体力の回復については大丈夫だと思います…また何かありましたら、要望は上げさせて頂きます…」
「…分かりました…宜しく頼みます…」
「…アドルさん、お夕食は如何ですか? 」
せっかくのお誘いだが、これ以上お邪魔するのは社長を疲れさせるだけだろう…ここは辞退して、お暇するのが正しいだろう。
「…奥様…せっかくのお誘いですがこれ以上お邪魔してしまいますと、社長の身体に障りますので、これでお暇致します…本当に美味しいお茶を、ありがとうございました…今日はご挨拶とお見舞いと、お話も出来て本当に良かったです…いずれまた伺わせて頂きますので、その際にはまた宜しくお願い致します…」
供されたお茶を丁寧に飲み干し、社長と奥様に深く頭を下げて立ち上がる。
「…今日は来てくれてありがとう…改めて君と話せて良かったよ…今度は是非、食事を共にしよう…私ももう直ぐ出社するからね…アドル艦長…いずれ必ず手の平は反るだろう…だが、何も気にする必要は無い…お互いに馬耳東風で居れば良い…度の過ぎた誹謗・中傷にはこちらで対処・対応するから、君は何も反応しないでくれ…それが1番良いからね…」
「…分かりました…仰る通りにします…」
「…気を付けて帰って下さい…ご家族の皆さんにも、宜しくお願いします…」
「…こちらこそ、ありがとうございました…まだお大事になさって下さい…それでは、失礼します…」
会釈して、ゆっくり退室する…リサさんも付いて来る…ご両親とも、何も言わないので、私も何も言えなかった。
最後にもう一度頭を下げて、玄関から辞した…リサさんは、先に出ている。
「…どうされますか? 」
「…腹が減ってきてるからね…途中で何か食べて帰るよ…」
「…もし…宜しければ、ウチで夕食にしませんか? 」
「…君の手料理が食べられるの? 」
「…はい…恥ずかしいですが…」
「…へえ…そりゃ願っても、またと無い機会だね…お邪魔しても構わないんだったら、喜んで頂きます…」
「…ありがとうございます…本当に恥ずかしいんですけれども…どうぞ…」
通路を歩いてリフトに乗って、彼女の家のある15階まで降りる。
「…お暇しようとした時…おふたりとも、何も言わなかったね…」
「…私の家で、打ち合わせでもするんだろうと思っているんでしょう…ハイ、どうぞ、お上がり下さい…」
「…ありがとう…お邪魔します…」
「…お疲れ様でした。上着はこちらでお預かりします…」
「…ありがとう…」
脱いで渡すと、ハンガーに掛けてポール・ラックに吊るした。
「…座って、ゆっくりして下さい…恥ずかしいんですけれども…コーヒーとミルクティーを、今の最大スペックで淹れますので、評価をお願いします…」
「…責任重大だね…力まなくて好いから力を抜いて、思い遣りの気持ちで淹れれば好いよ…」
「…分かりました…」
ダイニングテーブルに着いて、落ち着いて待つ…特に何も考えなかった。
ほぼ同じ時間で、コーヒーとミルクティーが2杯ずつテーブルに置かれる…2人分だな…彼女はテーブルの右脇に座った。
「…じゃあ、頂きます…」
ミルクティーをふた口飲み、コーヒーもふた口飲む…ふたつとも置いて、味を確認して把握する。
「…うん…僕が淹れるのと殆ど変わらないね…ほぼ同じと言っても良い…もう少し蒸らしを効かせれば、もっと旨くなると思うよ…」
「…ありがとうございます…嬉しいです…かなり緊張しました…」
息を吐いてホッとした様子で微笑む…それがとても可愛い。
立ち上がって抱き寄せようとする衝動に駆られたが、この時は堪えた…今のこの微笑をもっと観ておきたい気持ちの方が優っていたからだ。
夕食は、ボリュームたっぷりの肉野菜炒めに白身魚のソテーがメインディッシュで…ライスにライトビアだったのだが、充分に満足した…満腹までご馳走になった。
「…ご馳走様でした…本当に美味しかった…久し振りに満腹まで堪能したよ…じゃあ、片付けよう…」
ふたりで片付け、洗って拭き上げて収納する…終えてシャツの袖を戻していると、リサが後ろから私を抱き締めた。
「…アドルさん、お願いです…今夜は泊まって行って下さい…」
「…いや…ここでは止めておくよ…このマンションに社長の居宅があって、今日僕が訪問した事は…おそらくもう知られている…それに…君の事も…そろそろ知られる頃だろう…僕が明日の朝、ここから出て行くのはマズイよ…」
「…分かりました…」
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「…はい…」
「…それが出来て…もっと落ち着いたら…もっと違う場所でね? 」
「…ありがとうございます…」
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動物から嫌われる体質のヒロインがモフモフを求めて剣と魔法のVRオンラインゲームでテイマーを目指す話です。(なれるとは言っていない)
※R-15は保険です。
※小説家になろう様、カクヨム様でも同タイトルで投稿しております。
【VRMMO】イースターエッグ・オンライン【RPG】
一樹
SF
ちょっと色々あって、オンラインゲームを始めることとなった主人公。
しかし、オンラインゲームのことなんてほとんど知らない主人公は、スレ立てをしてオススメのオンラインゲームを、スレ民に聞くのだった。
ゲーム初心者の活字中毒高校生が、オンラインゲームをする話です。
以前投稿した短編
【緩募】ゲーム初心者にもオススメのオンラインゲーム教えて
の連載版です。
連載するにあたり、短編は削除しました。
忘却の艦隊
KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。
大型輸送艦は工作艦を兼ねた。
総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。
残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。
輸送任務の最先任士官は大佐。
新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。
本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。
他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。
公安に近い監査だった。
しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。
そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。
機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。
完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。
意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。
恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。
なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。
しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。
艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。
そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。
果たして彼らは帰還できるのか?
帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
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セルリアン
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SF
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賞金稼ぎをすることとなったセルリアン・リップルは、
希少な資源を手に入れることに成功する。
しかし、突如として現れたカッツィ団という
魔界から独立を試みる団体によって襲撃を受け、資源の強奪をされたうえ、
賞金稼ぎの相棒を暗殺されてしまう。
人界の銀河連邦と魔界が一触即発となっている時代。
各星団から独立を試みる団体が増える傾向にあり、
無所属の団体や個人が無法地帯で衝突する事件も多発し始めていた。
リップルは強靭な身体と念力を持ち合わせていたため、
生きたままカッツィ団のゴミと一緒に魔界の惑星に捨てられてしまう。
その惑星で出会ったランスという見習い魔術師の少女に助けられ、
次第に会話が弾み、意気投合する。
だが、またしても、
カッツィ団の襲撃とランスの誘拐を目の当たりにしてしまう。
リップルにとってカッツィ団に対する敵対心が強まり、
賞金稼ぎとしてではなく、一個人として、
カッツィ団の頭首ジャンに会いに行くことを決意する。
カッツィ団のいる惑星に侵入するためには、
ブーチという女性操縦士がいる輸送船が必要となり、
彼女を説得することから始まる。
また、その輸送船は、
魔術師から見つからないように隠す迷彩妖術が必要となるため、
妖精の住む惑星で同行ができる妖精を募集する。
加えて、魔界が人界科学の真似事をしている、ということで、
警備システムを弱体化できるハッキング技術の習得者を探すことになる。
リップルは強引な手段を使ってでも、
ランスの救出とカッツィ団の頭首に会うことを目的に行動を起こす。
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