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セカンド・ゲーム
……砲撃応酬……そして終結へ……
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……軽巡宙艦『オーギュスト・アストリュック』……
……艦長…シャルル・ウォルフ……
「……あの28隻が『同盟』か? ……うん? あれは『ラムール・ハムール』? 『同盟』に入ったのか? いや、違うな……ブラッドフォード・アレンバーグ……何処で嗅ぎ付けた? 『ディファイアント』は……あそこか……すごいディフェンス・フォーメーションだな……」
……軽巡宙艦『フェリックス・ラトゥーシュ』……
……艦長…ジョルジュ・ライエ……
「……敵の司令艦5隻に対して5グループに分かれ、輪形陣でディフェンス・フォーメーションを採りながら攻撃を集中する……やはりアドル・エルクと言う人は普通じゃない……敵に2正面作戦を強いているのに、まだ分が悪い……あの5隻に攻撃を集中して…離脱させる作戦だな……」
……軽巡宙艦『グラード・サマルカンド』……
……艦長…エドワード・ピッカリング……
「……飛ばしている岩ふたつで、挟んで潰してやれば良いだろうに……『ディファイアント』と『ラムール・ハムール』が撃っている艦から始めるか……」
『アーキペラゴ多島海』での戦域に3方向から侵入した3隻……『ディファイアント』と『ラムール・ハムール』が斉射砲撃を加えている『マラク・ターウース』に向けて主砲の照準を採ると…スムーズに接近しながら、同じタイミングで主砲による斉射連撃を開始した。
……『マラク・ターウース』……
……艦長…アジズ・アズナー……
「……うっ! 何だ? 急に?! 」
「…アズナー! 損傷率20%! 超えたぞ! 」
「…シールドアップ! 反撃させろ! 」
「…岩のエンジンはどうする?! 」
「…その前にこっちが沈められちまうだろうが!! 」
……『ディファイアント』……
「……敵艦、シールドアップ! 92%! 」
「…動きを止めずに接近して攻撃続行! 突破して更に集中せよ! 」
「…了解! 」
「……あの3隻…取り敢えず味方してくれるのか……均衡が破れれば草刈りもままならないからかな? ひよっとして……いや、まさかな……カリーナ……侵入艦3隻に対し『救援に感謝する』と発光信号で発信……」
「…了解! 」
……『トルード・レオン』……
…シャロン・ヒューズ副長…
「…ヤンセン艦長! 侵入艦3隻は、我々に協力しています! 」
「……そうか…取り敢えず、心配は要らないようだね……それにしてもあの3隻……いや、まさかね……こちらはこのまま、目標艦に集中攻撃続行! 」
「…了解! 」
……『ディファイアント』……
…カリーナ・ソリンスキー…
「……『マラク・ターウース』……シールド・パワー、12%! ……消失しました! 」
「…損傷率40%を超えたら、『ラキア・ヴィロン』に目標を遷移! 」
「…了解! 」
それと同時に『ディファイアント』…『ラムール・ハムール』…『オーギュスト・アストリュック』…『フェリックス・ラトゥーシュ』…『グラード・サマルカンド』…からの砲撃が『マラク・ターウース』に集中する。
……『マラク・ターウース』……
「…もうダメだ! 損傷率48%! 」
「…砲撃停止! 降伏の信号弾、撃て! 」
砲撃だったから、まだ良かった……ハイパー・ヴァリアントだったらもう爆散させてしまっていただろう。
「…降伏の信号弾、確認……」
「……『ラキア・ヴィロン』に目標を遷移! 」
「…了解! 」
…カリーナ・ソリンスキー…
「……『マラク・ターウース』の集団も…砲撃を停止して、転舵・離脱コースに入ります……」
「…了解……質量誘導弾制御艦に連絡して、離脱艦には接近させないように…」
「…分かりました…」
『ラキア・ヴィロン』に集中した砲撃は、まるでかの艦を白熱火球に閉じ込めたかのように観せて、展開されたシールドは130秒で消え失せた。
…艦長…エムジェイ・アンダーソン…
「…もう駄目だ…砲撃停止…降伏信号弾発射! 」
……その後は……残りの3艦を降伏させるのに……6分も掛からなかった……降伏発光信号弾の輝きが宙域を照らし出す中で……砲撃の応酬は唐突に止まった。
5隻の司令艦に与えた損傷率は、平均でも50%……航行不能に陥る寸前だった……司令艦を除いての、355隻に於ける損傷率平均値も35%であって……継戦能力は、ほぼ奪ったと言えるだろう。
5個の集団が、全体としても粛々と転針・離脱して行く……予想外だったのはやはり、離脱艦が1隻も出なかった事……こちらがいくら大質量誘導弾を旨く動かしていたと言っても、離脱するぐらいは幾らでも出来た筈だ……司令艦を守ろうとしたと言うよりは、見捨てなかったと言う事だろう。
ファースト・ゲームで最大の経験値を叩き出した6隻中の4隻が…草刈りに来たのだろうに、黙って見送っている……既に戦う意思の無い相手を叩く気にはなれないのだ……当然だが。
……『ディファイアント』……
「……カリーナ……ノーマルチャンネル・フルオープン……」
「……はい……どうぞ……」
「……こちらは『ディファイアント』……艦長のアドル・エルクです……『ラタキア恒星系』…『アーキペラゴ多島海』に於ける会戦は終結しました……【『ディファイアント』共闘同盟】…27隻に敵対して来た360隻を…彼等が何と呼んでいたのかは判りませんが……我々はお互いに死力を尽くして戦いました……我々に対して降伏を表明したのは彼等ですが……1隻も離脱する事なく、最後まで戦い抜きました……それは尊敬に値します……願わくば……彼等の前途に幸運のあらん事を……そしてまた、将来彼等と舳先を並べて戦えるように……願います……最後に……救援に駆け付けてくれた、4隻の軽巡宙艦に対しては…深く感謝します……出来れば挨拶を交わしたいと思いますので、交信には喜んで応じます……おかげ様で、犠牲を出さずに済みました……これからも、良縁として恵まれればと思います……それでは、入港規定時刻まで後数時間ですので…これで失礼致します……重ねて、ありがとうございました……アドル・エルクより…以上です……」
……『ラムール・ハムール』……
「……ねぇ、ブラッド……やっぱりアドルさんって、凄く好い男だわ……勿論、あんたには惚れてるんだけどさ……1度は逢って、話してみたいね……」
「……そうか……まあ、確かにあれ程の男はなかなかいないだろうな……勤め先でもモテモテなんだろうし……奥さんが大変だな……」
「…えっ、アドルさん…結婚してるの?! 」
「……知らないのかよ……『同盟』の艦長達、20人の家族構成なんざ…とっくの昔に晒されてるぜ……」
「……そうなんだ……でも、まあ好いや……それよりブラッド……アドルさんに挨拶しなよ……このまま黙って別れるんじゃ、芸が無いし…失礼だろ? 」
「……それもそうだな……じゃあ、繋いでくれ……」
……『ディファイアント』……
「……ふう……入港規定時刻までは? 」
「……正味…4時間ですね……」
「…ありがとう…ナンバー・ワン……正直…このような幕引きは想定外だった……『ラムール・ハムール』を初めとして、想定外の応援が4隻来てくれたのも大きかったが……1番の要因は、5隻の司令艦を早く特定出来た事だな……これには…サイン・バードさんからの情報の存在が本当に大きかった……彼からの情報が無ければ…これ程に早くは終わらなかったよ……」
「……本当に…そうですね……」
「……艦長……敵の全体が『アーキペラゴ多島海』から離脱しました……それと……ブラッドフォード・アレンバーグ艦長から、ノーマル・チャンネルでコールです……」
「……分かった、カリーナ…繋いでくれ……」
「…了解……どうぞ……」
「……どうした、ブラッド? 救援には感謝するよ……草刈りはしなくて良いのか? 」
「……馬鹿やろう(笑)……やり合う気の無い相手を叩いたって…寝覚めが悪いだけだろうが……」
「……それもそうだがな……それで? これでお別れか? 世話になったな……今度会ったら、生で顔を突き合わせて一杯呑ろう……奢るよ……」
「……そいつぁ、有り難い申し出だな……次に会える迄の楽しみにして置くよ……ああ、そうだ……ウチの副長が一言挨拶したいそうなんだ…ちょっと代わるからな……」
(……えっ?! ちょっと! 何よ? ブラッド!?……)
少し強引に引っ張り出されたかのように観えたのは、ミディアム・ブラウンのロングヘアを緩く大きくカールさせた長身の女性で……虹彩の色はダークブラウンだ……ノースリーブで観せている腕は細かったが、スタイルは抜群だった。
「……あ…あの……初めまして…アドル・エルク艦長……『ラムール・ハムール』で副長を務めております…マリーナ・シェルトンです……宜しくお願いします……ウチの艦長が、ちょっと口の悪い人で申し訳ありませんでした……今回は、お手伝いが出来て良かったです……またご一緒できる時を楽しみにしております……それではこれで失礼…あっ!? 」
「…どうだ? アドル? 佳い女だろう? 俺達は惚れ合っているんだからな…盗るんじゃねぇぞ!? 」
「…誰が盗るかよ、ブラッド! 勝手にやってろって! なあ、ブラッド……平日に俺と話を繋ぎたかったら、会社に通話を繋げてくれ……俺に繋がるようにはして置く……気を付けて入港しろよ……近い内に呑みに行こうぜ……ああ、そうだ……お前、もう『ガーデン』には入ってないのか? 」
「……入ってねぇな……はっきり言って、あそこはもうつまらねぇ……こっちでお前と遊んでる方が、30倍は面白ぇよ……」
「……ふん…俺がいなくなったもんだから、つまらなくなったんじゃないのか? 」
「…そこまで解ってるんなら、訊くんじゃねぇよ!? 」
「…ハッハ! 悪かったな……本当に連絡してくれよ? 呑みに行こう……気を付けて入港しろよ? それじゃあな? 」
「…ああ…お前もな……俺の方こそ、好いものを観せて貰ったよ……呑みに行く時は、奢りで頼むぜ……それじゃあな……あばよ! 」
交信は切れた……『ラムール・ハムール』は、加速を始めて離脱して行く。
「……艦長……後から来た3艦からも、ノーマル・マルチコミュニケーション・タスクで通話要請です……」
「……分かった…回線を接続……」
直ぐに3人の男性がメイン・ビューワに映し出され、向かって右の男性から口を開く。
「……初めまして…アドル・エルク艦長……『オーギュスト・アストリュック』のシャルル・ウォルフです……お目に掛かれて嬉しいです……私もファースト・ゲームでは頑張りましたが、貴方程の求心力は持ち得ませんでした……その点では尊敬しておりますし、勉強もさせて頂きました……これから宜しくお願いします……またお会い出来る時を楽しみにしております……それまでご壮健でお過ごし下さい……」
「……初めまして、アドル・エルク主宰……『フェリックス・ラトゥーシュ』のジョルジュ・ライエです……宜しくお願いします……今回、お手伝いが出来て光栄でした……貴方は『同盟』の主宰とならなければ、ファースト・ゲームにて7th・ステージ迄は確実にクリア出来ていた筈と、個人的には確信しております……またお手伝い出来る時が楽しみです……お元気で、お過ごし下さい……」
「……初めまして…アドル・エルク艦長……『グラード・サマルカンド』のエドワード・ピッカリングです……お初にお目に掛かります……ご無用かとも思いましたが、お手伝いにまかり越しました……叱責はご容赦下さい……貴方の示した戦略・戦術……それを実行する際の指揮・統率の様相には感銘を受けましたし、大変に大きい学びとなりました……またお手伝いの出来る場に恵まれたいと考えます……その時迄、お元気でご活躍下さい……ありがとうございました……」
「……初めまして……アドル・エルクです……シャルル・ウォルフ艦長……ジョルジュ・ライエ艦長……エドワード・ピッカリング艦長……今回は来て下さって、本当に有り難うございました……感謝に耐えません……誇り高い貴方方に対して……『同盟』に入って欲しいと願ってはいますが……今は何も申し上げますまい……ただ……また必ず舳先を並べて戦える時は来ると…確信しております……その時迄、どうぞお元気で……体調にも留意されて、お過ごし下さい……平日は会社員をしております……いずれ夕食やお酒も、共に楽しみたいものですね……お会い出来て、こちらこそ光栄でした……それでは、これにて失礼致します……気を付けて入港して下さい……では、また……」
3人はビューワの中で左胸に右手を当てて会釈し、そのまま画面から消えた。
「……3隻とも、発進して行きます……」
「……ああ…凄かったな……副長……各艦には警戒を解いて、自由に過ごすよう伝えてくれ……もう脅威は無いだろう……偵察機とファイター・ボマーの全機は、帰艦させてくれ……後4時間だ……飯を食って、暫く休んだら…入港準備に掛かろう……今から入港迄、ブリッジは総て任せる……俺は自室で一服してからラウンジで飯を食って…更に暫く休むよ……入港したら、教えてくれ……カリーナ…外から通話が繋がったら、俺の携帯端末に転送を頼む……」
「…分かりました…お疲れ様でした…お任せ下さい…」
「…頼むよ…カウンセラー……どうだった? 」
「…お疲れ様でした……ご苦労様でした……今日の出来事を総て自分の目と耳で感じ採れた事が信じられません……論文どころか、本が書けます……」
「……ありがとう…それじゃ、頼む……」
立ち上がってシートから降り、ブリッジから出て行った。
……艦長…シャルル・ウォルフ……
「……あの28隻が『同盟』か? ……うん? あれは『ラムール・ハムール』? 『同盟』に入ったのか? いや、違うな……ブラッドフォード・アレンバーグ……何処で嗅ぎ付けた? 『ディファイアント』は……あそこか……すごいディフェンス・フォーメーションだな……」
……軽巡宙艦『フェリックス・ラトゥーシュ』……
……艦長…ジョルジュ・ライエ……
「……敵の司令艦5隻に対して5グループに分かれ、輪形陣でディフェンス・フォーメーションを採りながら攻撃を集中する……やはりアドル・エルクと言う人は普通じゃない……敵に2正面作戦を強いているのに、まだ分が悪い……あの5隻に攻撃を集中して…離脱させる作戦だな……」
……軽巡宙艦『グラード・サマルカンド』……
……艦長…エドワード・ピッカリング……
「……飛ばしている岩ふたつで、挟んで潰してやれば良いだろうに……『ディファイアント』と『ラムール・ハムール』が撃っている艦から始めるか……」
『アーキペラゴ多島海』での戦域に3方向から侵入した3隻……『ディファイアント』と『ラムール・ハムール』が斉射砲撃を加えている『マラク・ターウース』に向けて主砲の照準を採ると…スムーズに接近しながら、同じタイミングで主砲による斉射連撃を開始した。
……『マラク・ターウース』……
……艦長…アジズ・アズナー……
「……うっ! 何だ? 急に?! 」
「…アズナー! 損傷率20%! 超えたぞ! 」
「…シールドアップ! 反撃させろ! 」
「…岩のエンジンはどうする?! 」
「…その前にこっちが沈められちまうだろうが!! 」
……『ディファイアント』……
「……敵艦、シールドアップ! 92%! 」
「…動きを止めずに接近して攻撃続行! 突破して更に集中せよ! 」
「…了解! 」
「……あの3隻…取り敢えず味方してくれるのか……均衡が破れれば草刈りもままならないからかな? ひよっとして……いや、まさかな……カリーナ……侵入艦3隻に対し『救援に感謝する』と発光信号で発信……」
「…了解! 」
……『トルード・レオン』……
…シャロン・ヒューズ副長…
「…ヤンセン艦長! 侵入艦3隻は、我々に協力しています! 」
「……そうか…取り敢えず、心配は要らないようだね……それにしてもあの3隻……いや、まさかね……こちらはこのまま、目標艦に集中攻撃続行! 」
「…了解! 」
……『ディファイアント』……
…カリーナ・ソリンスキー…
「……『マラク・ターウース』……シールド・パワー、12%! ……消失しました! 」
「…損傷率40%を超えたら、『ラキア・ヴィロン』に目標を遷移! 」
「…了解! 」
それと同時に『ディファイアント』…『ラムール・ハムール』…『オーギュスト・アストリュック』…『フェリックス・ラトゥーシュ』…『グラード・サマルカンド』…からの砲撃が『マラク・ターウース』に集中する。
……『マラク・ターウース』……
「…もうダメだ! 損傷率48%! 」
「…砲撃停止! 降伏の信号弾、撃て! 」
砲撃だったから、まだ良かった……ハイパー・ヴァリアントだったらもう爆散させてしまっていただろう。
「…降伏の信号弾、確認……」
「……『ラキア・ヴィロン』に目標を遷移! 」
「…了解! 」
…カリーナ・ソリンスキー…
「……『マラク・ターウース』の集団も…砲撃を停止して、転舵・離脱コースに入ります……」
「…了解……質量誘導弾制御艦に連絡して、離脱艦には接近させないように…」
「…分かりました…」
『ラキア・ヴィロン』に集中した砲撃は、まるでかの艦を白熱火球に閉じ込めたかのように観せて、展開されたシールドは130秒で消え失せた。
…艦長…エムジェイ・アンダーソン…
「…もう駄目だ…砲撃停止…降伏信号弾発射! 」
……その後は……残りの3艦を降伏させるのに……6分も掛からなかった……降伏発光信号弾の輝きが宙域を照らし出す中で……砲撃の応酬は唐突に止まった。
5隻の司令艦に与えた損傷率は、平均でも50%……航行不能に陥る寸前だった……司令艦を除いての、355隻に於ける損傷率平均値も35%であって……継戦能力は、ほぼ奪ったと言えるだろう。
5個の集団が、全体としても粛々と転針・離脱して行く……予想外だったのはやはり、離脱艦が1隻も出なかった事……こちらがいくら大質量誘導弾を旨く動かしていたと言っても、離脱するぐらいは幾らでも出来た筈だ……司令艦を守ろうとしたと言うよりは、見捨てなかったと言う事だろう。
ファースト・ゲームで最大の経験値を叩き出した6隻中の4隻が…草刈りに来たのだろうに、黙って見送っている……既に戦う意思の無い相手を叩く気にはなれないのだ……当然だが。
……『ディファイアント』……
「……カリーナ……ノーマルチャンネル・フルオープン……」
「……はい……どうぞ……」
「……こちらは『ディファイアント』……艦長のアドル・エルクです……『ラタキア恒星系』…『アーキペラゴ多島海』に於ける会戦は終結しました……【『ディファイアント』共闘同盟】…27隻に敵対して来た360隻を…彼等が何と呼んでいたのかは判りませんが……我々はお互いに死力を尽くして戦いました……我々に対して降伏を表明したのは彼等ですが……1隻も離脱する事なく、最後まで戦い抜きました……それは尊敬に値します……願わくば……彼等の前途に幸運のあらん事を……そしてまた、将来彼等と舳先を並べて戦えるように……願います……最後に……救援に駆け付けてくれた、4隻の軽巡宙艦に対しては…深く感謝します……出来れば挨拶を交わしたいと思いますので、交信には喜んで応じます……おかげ様で、犠牲を出さずに済みました……これからも、良縁として恵まれればと思います……それでは、入港規定時刻まで後数時間ですので…これで失礼致します……重ねて、ありがとうございました……アドル・エルクより…以上です……」
……『ラムール・ハムール』……
「……ねぇ、ブラッド……やっぱりアドルさんって、凄く好い男だわ……勿論、あんたには惚れてるんだけどさ……1度は逢って、話してみたいね……」
「……そうか……まあ、確かにあれ程の男はなかなかいないだろうな……勤め先でもモテモテなんだろうし……奥さんが大変だな……」
「…えっ、アドルさん…結婚してるの?! 」
「……知らないのかよ……『同盟』の艦長達、20人の家族構成なんざ…とっくの昔に晒されてるぜ……」
「……そうなんだ……でも、まあ好いや……それよりブラッド……アドルさんに挨拶しなよ……このまま黙って別れるんじゃ、芸が無いし…失礼だろ? 」
「……それもそうだな……じゃあ、繋いでくれ……」
……『ディファイアント』……
「……ふう……入港規定時刻までは? 」
「……正味…4時間ですね……」
「…ありがとう…ナンバー・ワン……正直…このような幕引きは想定外だった……『ラムール・ハムール』を初めとして、想定外の応援が4隻来てくれたのも大きかったが……1番の要因は、5隻の司令艦を早く特定出来た事だな……これには…サイン・バードさんからの情報の存在が本当に大きかった……彼からの情報が無ければ…これ程に早くは終わらなかったよ……」
「……本当に…そうですね……」
「……艦長……敵の全体が『アーキペラゴ多島海』から離脱しました……それと……ブラッドフォード・アレンバーグ艦長から、ノーマル・チャンネルでコールです……」
「……分かった、カリーナ…繋いでくれ……」
「…了解……どうぞ……」
「……どうした、ブラッド? 救援には感謝するよ……草刈りはしなくて良いのか? 」
「……馬鹿やろう(笑)……やり合う気の無い相手を叩いたって…寝覚めが悪いだけだろうが……」
「……それもそうだがな……それで? これでお別れか? 世話になったな……今度会ったら、生で顔を突き合わせて一杯呑ろう……奢るよ……」
「……そいつぁ、有り難い申し出だな……次に会える迄の楽しみにして置くよ……ああ、そうだ……ウチの副長が一言挨拶したいそうなんだ…ちょっと代わるからな……」
(……えっ?! ちょっと! 何よ? ブラッド!?……)
少し強引に引っ張り出されたかのように観えたのは、ミディアム・ブラウンのロングヘアを緩く大きくカールさせた長身の女性で……虹彩の色はダークブラウンだ……ノースリーブで観せている腕は細かったが、スタイルは抜群だった。
「……あ…あの……初めまして…アドル・エルク艦長……『ラムール・ハムール』で副長を務めております…マリーナ・シェルトンです……宜しくお願いします……ウチの艦長が、ちょっと口の悪い人で申し訳ありませんでした……今回は、お手伝いが出来て良かったです……またご一緒できる時を楽しみにしております……それではこれで失礼…あっ!? 」
「…どうだ? アドル? 佳い女だろう? 俺達は惚れ合っているんだからな…盗るんじゃねぇぞ!? 」
「…誰が盗るかよ、ブラッド! 勝手にやってろって! なあ、ブラッド……平日に俺と話を繋ぎたかったら、会社に通話を繋げてくれ……俺に繋がるようにはして置く……気を付けて入港しろよ……近い内に呑みに行こうぜ……ああ、そうだ……お前、もう『ガーデン』には入ってないのか? 」
「……入ってねぇな……はっきり言って、あそこはもうつまらねぇ……こっちでお前と遊んでる方が、30倍は面白ぇよ……」
「……ふん…俺がいなくなったもんだから、つまらなくなったんじゃないのか? 」
「…そこまで解ってるんなら、訊くんじゃねぇよ!? 」
「…ハッハ! 悪かったな……本当に連絡してくれよ? 呑みに行こう……気を付けて入港しろよ? それじゃあな? 」
「…ああ…お前もな……俺の方こそ、好いものを観せて貰ったよ……呑みに行く時は、奢りで頼むぜ……それじゃあな……あばよ! 」
交信は切れた……『ラムール・ハムール』は、加速を始めて離脱して行く。
「……艦長……後から来た3艦からも、ノーマル・マルチコミュニケーション・タスクで通話要請です……」
「……分かった…回線を接続……」
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「……初めまして…アドル・エルク艦長……『オーギュスト・アストリュック』のシャルル・ウォルフです……お目に掛かれて嬉しいです……私もファースト・ゲームでは頑張りましたが、貴方程の求心力は持ち得ませんでした……その点では尊敬しておりますし、勉強もさせて頂きました……これから宜しくお願いします……またお会い出来る時を楽しみにしております……それまでご壮健でお過ごし下さい……」
「……初めまして、アドル・エルク主宰……『フェリックス・ラトゥーシュ』のジョルジュ・ライエです……宜しくお願いします……今回、お手伝いが出来て光栄でした……貴方は『同盟』の主宰とならなければ、ファースト・ゲームにて7th・ステージ迄は確実にクリア出来ていた筈と、個人的には確信しております……またお手伝い出来る時が楽しみです……お元気で、お過ごし下さい……」
「……初めまして…アドル・エルク艦長……『グラード・サマルカンド』のエドワード・ピッカリングです……お初にお目に掛かります……ご無用かとも思いましたが、お手伝いにまかり越しました……叱責はご容赦下さい……貴方の示した戦略・戦術……それを実行する際の指揮・統率の様相には感銘を受けましたし、大変に大きい学びとなりました……またお手伝いの出来る場に恵まれたいと考えます……その時迄、お元気でご活躍下さい……ありがとうございました……」
「……初めまして……アドル・エルクです……シャルル・ウォルフ艦長……ジョルジュ・ライエ艦長……エドワード・ピッカリング艦長……今回は来て下さって、本当に有り難うございました……感謝に耐えません……誇り高い貴方方に対して……『同盟』に入って欲しいと願ってはいますが……今は何も申し上げますまい……ただ……また必ず舳先を並べて戦える時は来ると…確信しております……その時迄、どうぞお元気で……体調にも留意されて、お過ごし下さい……平日は会社員をしております……いずれ夕食やお酒も、共に楽しみたいものですね……お会い出来て、こちらこそ光栄でした……それでは、これにて失礼致します……気を付けて入港して下さい……では、また……」
3人はビューワの中で左胸に右手を当てて会釈し、そのまま画面から消えた。
「……3隻とも、発進して行きます……」
「……ああ…凄かったな……副長……各艦には警戒を解いて、自由に過ごすよう伝えてくれ……もう脅威は無いだろう……偵察機とファイター・ボマーの全機は、帰艦させてくれ……後4時間だ……飯を食って、暫く休んだら…入港準備に掛かろう……今から入港迄、ブリッジは総て任せる……俺は自室で一服してからラウンジで飯を食って…更に暫く休むよ……入港したら、教えてくれ……カリーナ…外から通話が繋がったら、俺の携帯端末に転送を頼む……」
「…分かりました…お疲れ様でした…お任せ下さい…」
「…頼むよ…カウンセラー……どうだった? 」
「…お疲れ様でした……ご苦労様でした……今日の出来事を総て自分の目と耳で感じ採れた事が信じられません……論文どころか、本が書けます……」
「……ありがとう…それじゃ、頼む……」
立ち上がってシートから降り、ブリッジから出て行った。
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ゲーム初心者の活字中毒高校生が、オンラインゲームをする話です。
以前投稿した短編
【緩募】ゲーム初心者にもオススメのオンラインゲーム教えて
の連載版です。
連載するにあたり、短編は削除しました。
忘却の艦隊
KeyBow
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新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。
大型輸送艦は工作艦を兼ねた。
総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。
残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。
輸送任務の最先任士官は大佐。
新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。
本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。
他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。
公安に近い監査だった。
しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。
そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。
機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。
完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。
意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。
恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。
なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。
しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。
艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。
そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。
果たして彼らは帰還できるのか?
帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?
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賞金稼ぎをすることとなったセルリアン・リップルは、
希少な資源を手に入れることに成功する。
しかし、突如として現れたカッツィ団という
魔界から独立を試みる団体によって襲撃を受け、資源の強奪をされたうえ、
賞金稼ぎの相棒を暗殺されてしまう。
人界の銀河連邦と魔界が一触即発となっている時代。
各星団から独立を試みる団体が増える傾向にあり、
無所属の団体や個人が無法地帯で衝突する事件も多発し始めていた。
リップルは強靭な身体と念力を持ち合わせていたため、
生きたままカッツィ団のゴミと一緒に魔界の惑星に捨てられてしまう。
その惑星で出会ったランスという見習い魔術師の少女に助けられ、
次第に会話が弾み、意気投合する。
だが、またしても、
カッツィ団の襲撃とランスの誘拐を目の当たりにしてしまう。
リップルにとってカッツィ団に対する敵対心が強まり、
賞金稼ぎとしてではなく、一個人として、
カッツィ団の頭首ジャンに会いに行くことを決意する。
カッツィ団のいる惑星に侵入するためには、
ブーチという女性操縦士がいる輸送船が必要となり、
彼女を説得することから始まる。
また、その輸送船は、
魔術師から見つからないように隠す迷彩妖術が必要となるため、
妖精の住む惑星で同行ができる妖精を募集する。
加えて、魔界が人界科学の真似事をしている、ということで、
警備システムを弱体化できるハッキング技術の習得者を探すことになる。
リップルは強引な手段を使ってでも、
ランスの救出とカッツィ団の頭首に会うことを目的に行動を起こす。
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