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地上界にて…
歓迎昼食会
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今日の昼食はセット料理でもコース料理でもなく、大皿で10種類の一品料理が並べられて、食客それぞれの前には取り皿、ライス、コンソメかコーンスープ、ライトビアか野菜ジュースが選べるようになっている。
舌平目のムニエルと香草蒸し揚げ……サーモンのバターソテー・ステーキ……たっぷりのシーザー・サラダ……ビーフシチュー……ロースト・ポーク……若鶏の餡掛け揚げ……卵料理3種類……等が並べられている……ウェイターがこの10種類の料理を少しずつ取り分けてくれて、歓迎昼食会がスタートした。
「……それじゃあ、始めましょうか……ヤンセン艦長、乾杯の音頭をお願いします……」
「…おっ、ようやくご指名ですね! 畏まりました……それでは皆さん、どうぞグラスをお持ち下さい……今日の新たな出逢いを歓迎して祝い…【『ディファイアント』共闘同盟】の、更なる充実と発展を祈念して…乾杯! 」
「…乾杯!! 」
「…ありがとうございました、ヤンセンさん……さあ、皆さん…頂きましょう……」
「……アドルさん……すごく豪華な昼食ですね……御社の皆さんは、いつもこんなに豪華で美味しい昼食を摂られているのですか? 」
「……いやいや…クマール艦長……今日は皆さんが来社されると言う事で…特別です……こんなメニュー、いつもは無いですよ……皆さんの為に、シェフの方々も頑張って下さいました……」
「……本当に豪華なメニューで美味しいですし、食材の新鮮さも素晴らしいですね……私も御社の皆さんが羨ましいです……」
「……ありがとうございます…ネヘマイヤさん……ウチの本社は第3棟のビルまでありまして、いずれも1階にはラウンジ・キャフェテリアが入っていますし……9階にはこのようなスカイ・ラウンジがあり……15階には部長職以上の幹部社員専用となる、ラウンジ・レストランがあります……ネヘマイヤさんの農園で栽培されている生鮮野菜を、これら各所の厨房で定期購入するように、ウチのハーマン・パーカー常務に提案しますよ……」
「……アドルさん…身に余るお気遣いをありがとうございます……もしも宜しければ私からも常務様に、ご挨拶がてら最初のお話をさせて頂きたいのですが……」
「……分かりました……P I Dメディアカードのコピーを頂けますか? 次に常務に会った時、メディアカードをお渡しするのと同時に、私からの提案とネヘマイヤさんのご意思をお伝えしますので……」
「……分かりました……重ね重ねにありがとうございます……是非、宜しくお願い致します……」
そう応えながらネヘマイヤさんは、自分のメディアカードを私にくれる。
「……アドルさん…それは私から常務にお渡ししましょうか? 」
「…ありがとう、リサさん……でもこの件は責任上僕から常務に手渡して、提案もするから……」
「……そうですか…分かりました……」
「……アドル係長…でしたらそれは、私が預かります……ネヘマイヤさん…私のメディアカードを差し上げます……私はパーカー常務の上司でもありますので…今後、業務上の話し合いは私とパーカー常務とネヘマイヤさんとで行いましょう……宜しいでしょうか? 」
「……承知致しました……カーライル副社長のご随意に、お任せ致します……」
話が付いたようなので、内ポケットに仕舞ったカードをグレイス艦長に手渡し、代わりに受け取った彼女のカードをネヘマイヤさんに手渡した。
「……アシュリーさんは常務とカード交換、しましたよね? 」
「……ええ、はい…させて頂きました……」
「……そうでしたね……それでは、そちらの話し合いはそちらのペースで…宜しくお願いします……チーフ・ディレクターのエリック・カンデルも入ると思いますので……」
「……分かりました…お気遣いをありがとうございます……」
「……どう致しまして……ところで…グラスコットさん…メイナードさん…ホーガンさん……『マーズテリア』のアーリング・ハーランド艦長は知っていますか? 」
「……知っているも何も……彼に脅迫されましたよ……」
そう応えてブライアン・メイナード艦長は、少し顔をしかめた。
「……思い出させてしまってすみません……実は初出航記念艦内親睦パーティーの最中に彼と交信しましてね……内容は、感情的な挑発と挑戦通告でした……これは今夜の配信でも紹介されるでしょうが……彼とだけは…決着を付ける事になるでしょうね……」
「……アドルさん…あんな奴との関わりで、貴方の手は煩わせません……『トルード・レオン』が『ディファイアント』の足元にも近寄らせませんので、ご安心下さい……」
「……パネッティーヤ艦長……それには私の『サライニクス・テスタロッツァ』も1枚噛ませて貰おう……あのような礼儀知らずの跳ねっ返りに、いつまでも彷徨いていて欲しくない……あの交信があと5秒続いていたら、割り込んで一喝してやったところだ……」
「……全く同感ですね…サングスター艦長……」
「……パネッティーヤ艦長…サングスター艦長…私の『カレドン・カサンドラ』も噛ませて下さい……私もあともう少しで怒鳴り付けてやるところでした……あんな無礼者は許して置けません……露として、払ってしまいましょう……」
「……これは…また……頼もしい限りですね……分かりました……彼についてはお三方と、他にも有志でいらっしゃれば…その方とも含めて、お任せします……5個の敵性集団が、どのような陣形で接近しつつあるのかが確認出来ないと、最終的な迎撃プランの構築には至りませんので……もしかしたら、私と彼との決着に拘っていられなくなるかも知れませんのでね……」
「……アドルさん……マルセル・ラッチェンス…マスター・プロデューサーへは、私から連絡しましょうか? 」
「……そうだね……じゃあ、リサさんにお願いします……もしも揉めるようなら、私と代わって下さい……」
「……分かりました……」
「……アドルさん…明日は 08:00 に艦への搭乗が解禁されますが……何時までに出航を完了させるようにとか……指示は出されますか? 」
「……そうですね……先ず、注意喚起の発言をありがとう…アレクシア・ランドール副長……今ここには25隻から代表者が集っていますから、ここで指示を出します……今日中にこのソリッド・ロッドを挿してのシステム・セットアップと、データの共有及びにある程度の下拵えを終わらせられるのなら、明日のプレ・フライトチェックは然程時間を割かなくても終わるでしょう……なので…09:00 には全艦出航を完了して下さい……メアリー・ケイト・シェルハート副長……このソリッド・ロッドの中のデータは総て既に、会議室『D S C 24』のタイムラインに貼付されています……昨日面談した『ヘルヴェスティア』のマグナス・ハンセン艦長と『レディ・ブランチャード』のヘラ・ヒルマー艦長にもこの事を伝えて、先程の指示も伝えて下さい……宜しいですか? 」
「…了解しました。お任せ下さい……」
「……頼みます……ナンバー・ワン……お客様方から携帯端末をお預かりして、通話アカウントとメッセージアカウントの同期を頼む……リサさん……トリッシュ・ヴァンサンティン副長……ラクウェル・アンスパッチ副長……アルレーン・ラングトリー副長……お客様方に四つの会議室についての総てを説明して…食べながらでも結構ですから…両掌の掌紋データをスキャンして収集して下さい……」
「……分かりました……」
「……頼みます……」
「……アドル主宰……その……明日からの…戦いは……勝てそうですか? 」
「……お気持ちは充分に解ります……ですが、ご安心下さい…アウリィ・グナディ艦長……勝つ為の算段は責任を持って立てますので、後はご協力を頂ければ必ず勝てますよ……勝てるように構築しますので、ご安心下さい……」
「……分かりました……お任せ致します……」
「……皆さん…同盟各艦の集結行動中には、それぞれで選抜したクルーに交代で、シャトルの操縦訓練をやって貰って下さい……今回は同盟各艦の協同行動以上に、シャトル編隊の効果的かつ適切な運用が重要になります……そして…20隻に於ける副長の皆さんには、持てる演技力を存分に発揮して貰って、敵集団を欺き、翻弄して、逆方向に誘導する為の欺瞞通信をお願いします……これで可能な限り時間を稼ぎ…我々は迎撃準備を進めます……メアリー・ケイト・シェルハート副長……この事は昨日の両艦長にも伝えて下さい……」
「……分かりました……」
「……アドルさん……本当にお願いします……出向と言う形でも結構ですから、ウチの艦隊に来て下さい……私はもうすぐ退官ですし…海のならず者共はまだ沢山います……貴方が来てくれれば、5年で全員摘発できます……」
「……ハイラムさん……私がこのように出来るのは、これがゲームだからです……実際なる現実の中では、ビビりまくりで醜態を晒すだけですよ……」
「……ここにまで来てご謙遜は似合いませんよ、アドルさん……是非とも考えて下さい……カーライル副社長にもお願いします……パーカー常務にも伝えて頂いて…御社の役員会でも、是非ご検討の程をお願い致します……」
「……まあ…ね……役員会の意向は私としても、ある程度は尊重しますが……」
「……ハイラム艦長……お話は取り敢えず持ち帰ります……後程に役員会の意向は示しますので、お待ち下さい……」
「……承知致しました…カーライル副社長……お待ちします……無理を言いました……」
「……最後に…あまり細かく言うと辟易されるかも知れませんのでひとつだけ……機関部長の皆さんに指示します……各艦に積載されている中継発信ビーコンの全機に…アポジ・モーターとlevel 3 のスラスターと、アンチ・センサージェルシステムと各種センサーアレイを組み込んでおいて下さい……相当数、使います……」
その後は特に指示めいた話はせず、雑談を楽しみながら食べていく……お客様方にも訊いてみたが『ディファイアント』でのパーティーは、興味深く観賞して頂いたようだ。
「……アドル主宰は、歌や楽器の演奏もすごくお上手なんですね……聴き惚れてしまいました……」
「……ありがとうございます……マルレーネ・ラントルート副長……またいつか、披露できる時もあるでしょう……」
「……どう致しまして…私の事はマルレーナとお呼び下さい……」
「…分かりました…じゃ、僕の事はアドルでね? 」
「…はい…」
「……アドル主宰がお上手なのは、歌や楽器演奏だけではありません……」
と、ハンナ・ウェアー。
「……そうです……アドル主宰はお料理やスイーツ製作やカクテルも、とても美味しく綺麗に作られます……」
と、エマ・ラトナー。
「……中でも特に素晴らしく美味しいのが、ミルクティーです……」
と、エドナ・ラティス。
「……すごいですね、アドルさん……私もミルクティーが好きでして、自分でも淹れてよく飲むのですが……宜しければ一度、主宰のお手前で頂きたいです……」
「(笑)…ありがとうございます。パルッツィ参謀……私自身はコーヒーの方が好きなんですが…ミルクティーの点て方にも拘りがありましてね……」
「……分かりました……是非、機会を見付けて一度、宜しくお願いします……それと、私の事はロミナとお呼び下さい……」
「…分かりました…ありがとうございます……それではですね……もうすぐお昼も食べ終わって、デザートが供されますので……それに併せて私からも皆さんに、一杯のお茶を振る舞わせて頂きます……アレクシア・ランドール副長……皆さんからご所望の一杯を訊いて、私の端末に送って下さい……私はあと数分で厨房に入ります……」
その後6分で、一旦食べるのを止めて厨房に入る……訊けばカップ・ソーサーのセットは充分にある……端末に送られた注文を確認し…厨房のスタッフにも手伝って貰い…シナモンとアンゴスチュラ・ビターズもほんの少しだけ使って…人数分のミルクティーとストレートティーとレモンティーと…ロシアン・ティーとコーヒーを仕上げて、応援を呼ぶ。
6人に手伝って貰って、希望者の前にご所望のお茶を配した……私は自分のコーヒーを持って席に戻る……デザートはフルーツ・クリームパフェだった……うん…このコーヒーにもよく合う味わいだ。
「……如何ですか? ロミナさん……」
「……とても…あの…すごく…美味しいです……二口目で震えが来ます……レシピは……いえ、今は訊きません……」
「……とても素敵で…不思議な……素晴らしい味わいですわね……何故だか癖になりそうです……」
「……ありがとうございます…グラスコット艦長……」
「……ロレインと呼んで下さい……」
「……分かりました……」
「……気のせいかも知れませんが……微かにシナモンの香りが…? 」
「……ええ、そうなんです…ウィックス機関部長……ほんの少しを、隠し味的に使いました……」
雑談にも花が咲き、その後の10分足らずでデザートも含め、食後酒とアフター・ティーも食べ尽くされて、飲み干された。
水を飲み、口を拭って立ち上がる。
「……ご馳走様でした……今日皆さんと一緒に、昼食を共にできて本当に嬉しいです……これで同盟は、27隻と言う陣容で新しくスタートします……何度も申し上げますが、これから宜しくお願い致します……お気付きの点…疑問・質問…意見・提案・直言は…いつでも歓迎ですので、遠慮なく伝えて下さい……お土産をお渡ししてから、弊社の社員とセキュリティ・ガードスタッフがお車までお送り致しますので、お気を付けてそれぞれの艦に向かって下さい……搭乗後に疑問・質問がありましたら、本艦のリーア・ミスタンテ機関部長に通話にてお訊き下さい……それでは……明朝07:45 に、スターティング・セレモニーホールにてお会いしましょう……お気を付けておいで下さい……本当に今日は、ありがとうございました…以上を以て解散と致します……」
そう締め括って頭を下げる……『ディファイアント』のスタッフと同盟のメンバー達も立ち上がって同様に頭を下げる……ウェイターとウェイトレスが全員出て来て、全員にお土産を手渡していく……秘書課・総務課・庶務課の女性社員とセキュリティ・ガードスタッフも入って来て、参加者達1人1人に付き添い促していく……その1人1人と握手を交わし言葉を掛けて、明朝の再会を約する……気が付けば残っているのは、私と『ディファイアント』のスタッフ達とリサだけだった。
シエナ・ミュラーが私の目の前に立つ。
「……では、アドル艦長……後は私達に任せてお帰り下さい……明朝はタクシーで向かわれるのが宜しいかと思いますが? 」
「……そうだね……自分で運転して行くのも、結構疲れるからな……」
「……それでは、私が時間を計算してタクシーを差し向けましょう……」
「……ありがとう、リサさん…宜しく頼む……」
そう応えると、シエナが促してスタッフ達も出て行った。
「……秘書課の控室に…誰か居るかな? 」
「……居る筈です……この時間ですから……」
「……そうか……」
「……お気持ちは解ります……でも今は、我慢しましょう……奥様に注いで差し上げて下さい……」
「……分かったよ……君も先に行ってくれ……俺はもう一服点けてから帰るから……」
「……分かりました……お気を付けて……」
最後にリサは、1cmの近さにまで顔を寄せて応えてから、出て行った。
舌平目のムニエルと香草蒸し揚げ……サーモンのバターソテー・ステーキ……たっぷりのシーザー・サラダ……ビーフシチュー……ロースト・ポーク……若鶏の餡掛け揚げ……卵料理3種類……等が並べられている……ウェイターがこの10種類の料理を少しずつ取り分けてくれて、歓迎昼食会がスタートした。
「……それじゃあ、始めましょうか……ヤンセン艦長、乾杯の音頭をお願いします……」
「…おっ、ようやくご指名ですね! 畏まりました……それでは皆さん、どうぞグラスをお持ち下さい……今日の新たな出逢いを歓迎して祝い…【『ディファイアント』共闘同盟】の、更なる充実と発展を祈念して…乾杯! 」
「…乾杯!! 」
「…ありがとうございました、ヤンセンさん……さあ、皆さん…頂きましょう……」
「……アドルさん……すごく豪華な昼食ですね……御社の皆さんは、いつもこんなに豪華で美味しい昼食を摂られているのですか? 」
「……いやいや…クマール艦長……今日は皆さんが来社されると言う事で…特別です……こんなメニュー、いつもは無いですよ……皆さんの為に、シェフの方々も頑張って下さいました……」
「……本当に豪華なメニューで美味しいですし、食材の新鮮さも素晴らしいですね……私も御社の皆さんが羨ましいです……」
「……ありがとうございます…ネヘマイヤさん……ウチの本社は第3棟のビルまでありまして、いずれも1階にはラウンジ・キャフェテリアが入っていますし……9階にはこのようなスカイ・ラウンジがあり……15階には部長職以上の幹部社員専用となる、ラウンジ・レストランがあります……ネヘマイヤさんの農園で栽培されている生鮮野菜を、これら各所の厨房で定期購入するように、ウチのハーマン・パーカー常務に提案しますよ……」
「……アドルさん…身に余るお気遣いをありがとうございます……もしも宜しければ私からも常務様に、ご挨拶がてら最初のお話をさせて頂きたいのですが……」
「……分かりました……P I Dメディアカードのコピーを頂けますか? 次に常務に会った時、メディアカードをお渡しするのと同時に、私からの提案とネヘマイヤさんのご意思をお伝えしますので……」
「……分かりました……重ね重ねにありがとうございます……是非、宜しくお願い致します……」
そう応えながらネヘマイヤさんは、自分のメディアカードを私にくれる。
「……アドルさん…それは私から常務にお渡ししましょうか? 」
「…ありがとう、リサさん……でもこの件は責任上僕から常務に手渡して、提案もするから……」
「……そうですか…分かりました……」
「……アドル係長…でしたらそれは、私が預かります……ネヘマイヤさん…私のメディアカードを差し上げます……私はパーカー常務の上司でもありますので…今後、業務上の話し合いは私とパーカー常務とネヘマイヤさんとで行いましょう……宜しいでしょうか? 」
「……承知致しました……カーライル副社長のご随意に、お任せ致します……」
話が付いたようなので、内ポケットに仕舞ったカードをグレイス艦長に手渡し、代わりに受け取った彼女のカードをネヘマイヤさんに手渡した。
「……アシュリーさんは常務とカード交換、しましたよね? 」
「……ええ、はい…させて頂きました……」
「……そうでしたね……それでは、そちらの話し合いはそちらのペースで…宜しくお願いします……チーフ・ディレクターのエリック・カンデルも入ると思いますので……」
「……分かりました…お気遣いをありがとうございます……」
「……どう致しまして……ところで…グラスコットさん…メイナードさん…ホーガンさん……『マーズテリア』のアーリング・ハーランド艦長は知っていますか? 」
「……知っているも何も……彼に脅迫されましたよ……」
そう応えてブライアン・メイナード艦長は、少し顔をしかめた。
「……思い出させてしまってすみません……実は初出航記念艦内親睦パーティーの最中に彼と交信しましてね……内容は、感情的な挑発と挑戦通告でした……これは今夜の配信でも紹介されるでしょうが……彼とだけは…決着を付ける事になるでしょうね……」
「……アドルさん…あんな奴との関わりで、貴方の手は煩わせません……『トルード・レオン』が『ディファイアント』の足元にも近寄らせませんので、ご安心下さい……」
「……パネッティーヤ艦長……それには私の『サライニクス・テスタロッツァ』も1枚噛ませて貰おう……あのような礼儀知らずの跳ねっ返りに、いつまでも彷徨いていて欲しくない……あの交信があと5秒続いていたら、割り込んで一喝してやったところだ……」
「……全く同感ですね…サングスター艦長……」
「……パネッティーヤ艦長…サングスター艦長…私の『カレドン・カサンドラ』も噛ませて下さい……私もあともう少しで怒鳴り付けてやるところでした……あんな無礼者は許して置けません……露として、払ってしまいましょう……」
「……これは…また……頼もしい限りですね……分かりました……彼についてはお三方と、他にも有志でいらっしゃれば…その方とも含めて、お任せします……5個の敵性集団が、どのような陣形で接近しつつあるのかが確認出来ないと、最終的な迎撃プランの構築には至りませんので……もしかしたら、私と彼との決着に拘っていられなくなるかも知れませんのでね……」
「……アドルさん……マルセル・ラッチェンス…マスター・プロデューサーへは、私から連絡しましょうか? 」
「……そうだね……じゃあ、リサさんにお願いします……もしも揉めるようなら、私と代わって下さい……」
「……分かりました……」
「……アドルさん…明日は 08:00 に艦への搭乗が解禁されますが……何時までに出航を完了させるようにとか……指示は出されますか? 」
「……そうですね……先ず、注意喚起の発言をありがとう…アレクシア・ランドール副長……今ここには25隻から代表者が集っていますから、ここで指示を出します……今日中にこのソリッド・ロッドを挿してのシステム・セットアップと、データの共有及びにある程度の下拵えを終わらせられるのなら、明日のプレ・フライトチェックは然程時間を割かなくても終わるでしょう……なので…09:00 には全艦出航を完了して下さい……メアリー・ケイト・シェルハート副長……このソリッド・ロッドの中のデータは総て既に、会議室『D S C 24』のタイムラインに貼付されています……昨日面談した『ヘルヴェスティア』のマグナス・ハンセン艦長と『レディ・ブランチャード』のヘラ・ヒルマー艦長にもこの事を伝えて、先程の指示も伝えて下さい……宜しいですか? 」
「…了解しました。お任せ下さい……」
「……頼みます……ナンバー・ワン……お客様方から携帯端末をお預かりして、通話アカウントとメッセージアカウントの同期を頼む……リサさん……トリッシュ・ヴァンサンティン副長……ラクウェル・アンスパッチ副長……アルレーン・ラングトリー副長……お客様方に四つの会議室についての総てを説明して…食べながらでも結構ですから…両掌の掌紋データをスキャンして収集して下さい……」
「……分かりました……」
「……頼みます……」
「……アドル主宰……その……明日からの…戦いは……勝てそうですか? 」
「……お気持ちは充分に解ります……ですが、ご安心下さい…アウリィ・グナディ艦長……勝つ為の算段は責任を持って立てますので、後はご協力を頂ければ必ず勝てますよ……勝てるように構築しますので、ご安心下さい……」
「……分かりました……お任せ致します……」
「……皆さん…同盟各艦の集結行動中には、それぞれで選抜したクルーに交代で、シャトルの操縦訓練をやって貰って下さい……今回は同盟各艦の協同行動以上に、シャトル編隊の効果的かつ適切な運用が重要になります……そして…20隻に於ける副長の皆さんには、持てる演技力を存分に発揮して貰って、敵集団を欺き、翻弄して、逆方向に誘導する為の欺瞞通信をお願いします……これで可能な限り時間を稼ぎ…我々は迎撃準備を進めます……メアリー・ケイト・シェルハート副長……この事は昨日の両艦長にも伝えて下さい……」
「……分かりました……」
「……アドルさん……本当にお願いします……出向と言う形でも結構ですから、ウチの艦隊に来て下さい……私はもうすぐ退官ですし…海のならず者共はまだ沢山います……貴方が来てくれれば、5年で全員摘発できます……」
「……ハイラムさん……私がこのように出来るのは、これがゲームだからです……実際なる現実の中では、ビビりまくりで醜態を晒すだけですよ……」
「……ここにまで来てご謙遜は似合いませんよ、アドルさん……是非とも考えて下さい……カーライル副社長にもお願いします……パーカー常務にも伝えて頂いて…御社の役員会でも、是非ご検討の程をお願い致します……」
「……まあ…ね……役員会の意向は私としても、ある程度は尊重しますが……」
「……ハイラム艦長……お話は取り敢えず持ち帰ります……後程に役員会の意向は示しますので、お待ち下さい……」
「……承知致しました…カーライル副社長……お待ちします……無理を言いました……」
「……最後に…あまり細かく言うと辟易されるかも知れませんのでひとつだけ……機関部長の皆さんに指示します……各艦に積載されている中継発信ビーコンの全機に…アポジ・モーターとlevel 3 のスラスターと、アンチ・センサージェルシステムと各種センサーアレイを組み込んでおいて下さい……相当数、使います……」
その後は特に指示めいた話はせず、雑談を楽しみながら食べていく……お客様方にも訊いてみたが『ディファイアント』でのパーティーは、興味深く観賞して頂いたようだ。
「……アドル主宰は、歌や楽器の演奏もすごくお上手なんですね……聴き惚れてしまいました……」
「……ありがとうございます……マルレーネ・ラントルート副長……またいつか、披露できる時もあるでしょう……」
「……どう致しまして…私の事はマルレーナとお呼び下さい……」
「…分かりました…じゃ、僕の事はアドルでね? 」
「…はい…」
「……アドル主宰がお上手なのは、歌や楽器演奏だけではありません……」
と、ハンナ・ウェアー。
「……そうです……アドル主宰はお料理やスイーツ製作やカクテルも、とても美味しく綺麗に作られます……」
と、エマ・ラトナー。
「……中でも特に素晴らしく美味しいのが、ミルクティーです……」
と、エドナ・ラティス。
「……すごいですね、アドルさん……私もミルクティーが好きでして、自分でも淹れてよく飲むのですが……宜しければ一度、主宰のお手前で頂きたいです……」
「(笑)…ありがとうございます。パルッツィ参謀……私自身はコーヒーの方が好きなんですが…ミルクティーの点て方にも拘りがありましてね……」
「……分かりました……是非、機会を見付けて一度、宜しくお願いします……それと、私の事はロミナとお呼び下さい……」
「…分かりました…ありがとうございます……それではですね……もうすぐお昼も食べ終わって、デザートが供されますので……それに併せて私からも皆さんに、一杯のお茶を振る舞わせて頂きます……アレクシア・ランドール副長……皆さんからご所望の一杯を訊いて、私の端末に送って下さい……私はあと数分で厨房に入ります……」
その後6分で、一旦食べるのを止めて厨房に入る……訊けばカップ・ソーサーのセットは充分にある……端末に送られた注文を確認し…厨房のスタッフにも手伝って貰い…シナモンとアンゴスチュラ・ビターズもほんの少しだけ使って…人数分のミルクティーとストレートティーとレモンティーと…ロシアン・ティーとコーヒーを仕上げて、応援を呼ぶ。
6人に手伝って貰って、希望者の前にご所望のお茶を配した……私は自分のコーヒーを持って席に戻る……デザートはフルーツ・クリームパフェだった……うん…このコーヒーにもよく合う味わいだ。
「……如何ですか? ロミナさん……」
「……とても…あの…すごく…美味しいです……二口目で震えが来ます……レシピは……いえ、今は訊きません……」
「……とても素敵で…不思議な……素晴らしい味わいですわね……何故だか癖になりそうです……」
「……ありがとうございます…グラスコット艦長……」
「……ロレインと呼んで下さい……」
「……分かりました……」
「……気のせいかも知れませんが……微かにシナモンの香りが…? 」
「……ええ、そうなんです…ウィックス機関部長……ほんの少しを、隠し味的に使いました……」
雑談にも花が咲き、その後の10分足らずでデザートも含め、食後酒とアフター・ティーも食べ尽くされて、飲み干された。
水を飲み、口を拭って立ち上がる。
「……ご馳走様でした……今日皆さんと一緒に、昼食を共にできて本当に嬉しいです……これで同盟は、27隻と言う陣容で新しくスタートします……何度も申し上げますが、これから宜しくお願い致します……お気付きの点…疑問・質問…意見・提案・直言は…いつでも歓迎ですので、遠慮なく伝えて下さい……お土産をお渡ししてから、弊社の社員とセキュリティ・ガードスタッフがお車までお送り致しますので、お気を付けてそれぞれの艦に向かって下さい……搭乗後に疑問・質問がありましたら、本艦のリーア・ミスタンテ機関部長に通話にてお訊き下さい……それでは……明朝07:45 に、スターティング・セレモニーホールにてお会いしましょう……お気を付けておいで下さい……本当に今日は、ありがとうございました…以上を以て解散と致します……」
そう締め括って頭を下げる……『ディファイアント』のスタッフと同盟のメンバー達も立ち上がって同様に頭を下げる……ウェイターとウェイトレスが全員出て来て、全員にお土産を手渡していく……秘書課・総務課・庶務課の女性社員とセキュリティ・ガードスタッフも入って来て、参加者達1人1人に付き添い促していく……その1人1人と握手を交わし言葉を掛けて、明朝の再会を約する……気が付けば残っているのは、私と『ディファイアント』のスタッフ達とリサだけだった。
シエナ・ミュラーが私の目の前に立つ。
「……では、アドル艦長……後は私達に任せてお帰り下さい……明朝はタクシーで向かわれるのが宜しいかと思いますが? 」
「……そうだね……自分で運転して行くのも、結構疲れるからな……」
「……それでは、私が時間を計算してタクシーを差し向けましょう……」
「……ありがとう、リサさん…宜しく頼む……」
そう応えると、シエナが促してスタッフ達も出て行った。
「……秘書課の控室に…誰か居るかな? 」
「……居る筈です……この時間ですから……」
「……そうか……」
「……お気持ちは解ります……でも今は、我慢しましょう……奥様に注いで差し上げて下さい……」
「……分かったよ……君も先に行ってくれ……俺はもう一服点けてから帰るから……」
「……分かりました……お気を付けて……」
最後にリサは、1cmの近さにまで顔を寄せて応えてから、出て行った。
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事もございません。
また、転生物やデスゲームなどに変化することもございませんので、そのようなお話がお好みの方は読まれないほうが良いと思われます。

忘却の艦隊
KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。
大型輸送艦は工作艦を兼ねた。
総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。
残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。
輸送任務の最先任士官は大佐。
新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。
本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。
他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。
公安に近い監査だった。
しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。
そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。
機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。
完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。
意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。
恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。
なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。
しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。
艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。
そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。
果たして彼らは帰還できるのか?
帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?

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