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地上界にて…
リアル・バラエティ・ライヴ・ショウ『サバイバル・スペースバトルシップ・キャプテン・アンド・クルー』3/5 …2…
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「……さて…ここまで……『ディファイアント』初出航の模様をご覧頂きましたが……ここでコメントを頂きましょう……ジョン・ドーフマンさんは、エンジニアリング・プロデューサーとしてのお立場から、どのように捉えられましたか? 」
「……はい……私が先ず感心したのはアドル・エルク主宰が、運営推進本部から貸与されたゲームフィールド内専用携帯端末を利用して、同盟に参画するメンバーだけが利用できる秘密専用会議室を、登録・設置・設定した事です……登録したメンバーだけに入力と閲覧が許されるよう、幾つかのアクセス・コードを設定して……メンバー個人の生体情報も登録しているのでしょう……これにより共闘同盟は、外部の誰にも傍受されない秘密回線を持ちました……」
「……分かりました、ドーフマンさん……これにより、何が考えられるのでしょう? 」
「……このゲームでのフィールド内に於ける通信体系には、何の制限も掛けられておりません……アドル主宰はこれを確認した時に、通信そのものを戦術支援として利用しようと考えたのでしょう……」
「……例えば? 」
「……本当の指示や情報の遣り取りは秘密回線で行い、通常回線では欺瞞情報を発信して敵を撹乱・陽動・誘導も出来るでしょうね……」
「……なるほど……分かりました…ありがとうございました……それでは、アーミセンさんにも伺いましょう……これまでのご紹介で、どのように受け取られましたか? 」
「……私がすごいと思いましたのは……ブリッジ・スタッフの優秀さと言いますか、練度の高さですね……おそらく3回は撮影セットの見学にも入られたのでしょうし……ゲームマニュアルの読み込みに於いても……随一と思えるレベルなのでしょう……それが証拠に、アドル艦長自身は殆ど指示を出していませんでしたから……」
「……確かにそうですね……発進シークエンス開始の指示をシエナ・ミュラー副長に出してからは『ディファイアント』が離岸するまで、彼女が指示を出していましたからね……ありがとうございました……その他、発進シークエンスの手順等で気になる処はありませんでしたか? 」
「……特にはありませんでしたね……そんなに事細かに確認し合わなくても、了解し合えていれば問題は無いでしょうから……」
「……なるほど……分かりました……ありがとうございました……それでは、ニール・マッキーン准将にもお伺いしましょう……『ディファイアント』初出航の模様をご覧頂きましたが、どのように捉えられましたでしょうか? 」
「…(笑)…先ずアランシス・カーサーさん……ここは階級名の呼称が必要な場所でもありませんので…准将と呼ばなくても結構ですよ……ニールでもマッキーンでも、呼び易い方で呼んで下さい……」
「……分かりました……恐縮です……ご配慮にも感謝致します……それでは改めまして…マッキーンさんはどのように受け取られましたでしょうか? 」
「……そうですね……アドル主宰からは心理動向データベースと訓練プログラムプランについての言及がありました……心理動向データベースと言うのは……ご自分で選任したクルー1人1人の心理動向データベースを、カウンセラーを中心に作成されて、プリントした物を持ち込まれたのでしょう……繰り返しますが、クルー1人1人の心理動向データベースを事前に作成して艦内に持ち込むと言うのは、かなりのスキルが無いと出来ません……これだけでも特筆されるべきですが……それ以上に驚異的だと感じたのが、訓練プログラムプランを事前に作成されていたと言う事です……1隻だけでの訓練プログラムプランでも多岐に渡るでしょうに、おそらく主宰は複数隻での訓練プランも非常に多岐に渡って練り上げられたと思われます……特に私はこの事について……驚きを禁じ得ません……」
「……そう言えばアドル主宰は、最初のゲームフィールドを途轍も無い広さであると予測されましたが、見事に的中されましたね? 」
「……そうでしたね……それも瞠目に値します……アドル・エルクさんの才能と思考こそ、驚異的なものなのではないかと考え始めています……」
「……ほう……流石に准将に迄昇って、参謀次官の職責に就いただけの事はある……こりゃあ我が国の正規軍も、主宰の才能に食指を動かし始めるかな……」
と、Wサイズベッドの左側に横たわって、自分に上体を凭せ掛けているローズ・クラークの身体を右腕で抱きながら、ハイラム・サングスターは言った。
「……でも、あの訓練プログラムプランは、マスターを含めた艦長3人の案をアドル主宰がまとめて書き上げたものですよね? 」
「…(笑)…まあ、そこまでは分からないだろうからな……ローズ……携帯端末を何時でも取れるように近くに置いてくれ……主宰から連絡が入るような気がする……」
「……分かりました……」
「……それと…分かっているとは思うが…主宰との通話が繋がっている間は、私をマスターとは呼ぶなよ?……」
「……分かっています……マスターは、グレイス・カーライル副社長を愛していらっしゃるのですか? 」
「……うん、好きだよ……まだ何の約束もしてないがね……3回程デートしたら4回目の時に、正式に交際して欲しいと言うつもりだ……ローズ……君は私の弟よりも若い……君を結婚相手として考えるのは、不適切だ……私の将来は観えている……私より若く、バイタリティと意欲にも溢れ、将来性の高い男が必ずいるよ……ああ……アドル主宰か……彼は私よりマズイだろう……取り巻きの美女史達が多過ぎる……」
「……そうですね……あの方達は皆さん、主宰とSEXしたがっています……」
「……まあ……あの美女史達と主宰との関係がどうなろうとも、アドルさんの家庭が壊れるような事は……世間に晒されない限りは起きないだろう……私が温めているアイディアを、同盟に参画する全艦の司令部で協議して貰おうと思うんだ……つまり……ファースト・シーズン終了後に開催する……超大規模な祝勝会だよ……」
「……楽しみにしています……」
「……さて……それでは…プロゲーマーのおふたりからも、感想を頂きましょう……これまでご覧になられて、どのように受け取られましたでしょうか? 」
「……はい…では、私から……」
と、ハーヴェイ・カイテル氏が先に口を開いた。
「……私達は皆、先日初めて行われたゲーム推移の模様をラッシュで観させて頂いてから、ここに座っているのですが……個人的に私は直ぐ、アドル・エルク艦長のファンになってしまいました……前置きを並べますとくどいですので、ひとつずつ採り上げてアドル氏の魅力をご紹介したいと思います……先ずアドル艦長の初めてのスピーチ……プレ・フライトチェックの前ですね……そこでアドル艦長は、チェックに入る前までの流れを必要最小限の言葉で説明しました……その発言の適切さ・的確さ・スムーズさは、まるで事前に書き上げた原稿を暗唱していたかのようでした……これは…未経験ではないにしても、とても素人のゲーマーとは思えませんし、観えません……職業軍人…現役の艦長とも見紛う程です……次にスタッフ・クルーをリラックスさせようとする粋な計らい……私もお酒は好きでよく呑みますが、サンクロスト・トラッシュの20年物をスタート・アップに全員で酌み交わすと言う発想は、私でも出て来ません……そして撃沈には拘らないと言う言葉で…無理はしなくて好いと強調しました……スタッフ・クルーをリラックスさせて安心させる……指揮官として最高のレベルだと思いました……まだメリッサさんからの感想もありますので私からはひとまず、ここまでとします……」
「……はい、メリッサ・エクスタインです……私が観させて頂いて感じた想いや…伝えたい意見でも…ハーヴェイさんのそれと重なる部分はありますけれども……それ以外にもお伝えしたい想いがありましたので、お話します……先程紹介されました中で私が1番感動しましたのが……アドル・エルク艦長が『ディファイアント』のクルーでもある『リアン・ビッシュ』の『ARIA』を、ゲームフィールドの全域に流された事でした……これは『リアン・ビッシュ』に対しても共闘同盟の全艦に対しても、更にはゲームフィールド全域に対しても衝撃的で粋で感動的な計らいであったと思います……『リアン・ビッシュ』の4人は当然ながら……ここでは紹介されませんでしたが、『ミーアス・クロス』の4人も泣いていましたし……実は私も貰い泣きしていました……本当に素晴らしく感動的なセレモニーでした……あとひとつ…これはハーヴェイさんも感じられたと思いますが、ゲームフィールドに於けるアドル主宰の予測が的中した事です……これには、本当に驚きました……」
「……そう! 加えてアドル主宰はそれも観越して単艦での訓練プログラムプランを、事前に同盟参画全艦に向けて通達しました……この先見性? 予測力? 洞察力? 並のゲーマーじゃありません……」
「……いや……やれやれと言うか……いやはやと言うか……こんなに褒められるとくすぐったくてしょうがない……この手の平がいつどんな形で返されるんだろうかな……」
ソファに座って脚を組んだまま、左手で顔を撫でる……グラスを取り上げて一口含んだ。
「……あなたは……皆さんとの関係をスッパ抜かれないようにして下さい……」
「……はい……それは充分に気を付けます……」
厳粛に神妙に応えた後で、携帯端末に手を伸ばす。
「……何だか褒め過ぎだよね……ちょっと気持ち悪い……」
と、マレットがドライヤーで髪を乾かし始める。
「……昨夜の事がスッパ抜かれたら、あっと言う間に手の平が返って袋叩きだろうね……」
と、エドナがグラスにライトビアを注いで口を付ける。
「……セキュリティチェックで異常は無かったよ……」
言いながらスキン・ローションを手に取って馴染ませるフィオナだ……同時にシエナの携帯端末から着信音が流れる……会議室『DSC24』内での通話リンクだ……スピーカーに切り替える。
「……はい、シエナです……」
「……ナンバー・ワン……このリンクを基点として20隻の艦長と副長の端末にマルチ・リンク・ネットワークを形成し、マルチ・コミュニケーション・アレイを設定……呼び出して総ての応答を共有できるように設定してくれ……出来上がったら連絡を頼む……」
「……了解しました……暫くお待ち下さい……」
「……宜しく……」
「……何の話なんだろうね? 」
と、エマ・ラトナー。
「……さあ?……」
応えつつシエナは作業を進める。
「……どんなお話なの? あなた……」
「……ん…まあ、基本的な事だよ……杞憂で終わるだろうとは思うけどね……」
シエナ・ミュラーは作業を進めつつ38名全員を呼び出し、マルチ・リンク・ネットワークを形成してマルチ・コミュニケーション・アレイを設定した……準備完了までに15分を要した。
「……アドル艦長…準備完了しました……全員聴いていますし、応答も共有できます……」
「……ありがとう……皆も観ていると思うが、観ながらで好いから聴いてくれ……発言も自由に、いつでも好いから話してくれ……今日と明日の配信ではおそらく、20隻の基本的な紹介……あの2日間での親睦パーティーも含めた艦内での動向……トピックとして紹介できるような戦闘記録映像……2日間での最終的な戦果…等が紹介されるだろうと思う……艦内での記録映像は主にブリッジ…バーラウンジ…機関室…格納庫…エクササイズ・デッキでの模様が使われるだろう……観られて揚げ足を取られるようなアクションやリアクションも無かったと思えるのなら、何も心配する必要は無いが……この先…何かの行為や行動…発言などの言葉尻等…が捉えられて……根拠のある論理的な批判を展開された場合……自信があるのなら、即時の論理的かつ冷静な反論を許可する……即時に出来る自信が無いようなら……後日に正式な反論を回答すると、表明するだけでも好い……明らかにいわれや根拠のない批判・非難・中傷を被ったと感じられた場合は…基本的にはスルーして欲しい……それでもしつこく呼び掛けられたり回答を要求されたりした場合には、そちらの主張・質問・批判には根拠が無いので回答する必要を認めない、と表明するか……ルールには違反も抵触もしていないので、単なる見解の相違である、と表明するだけでも好い……付随になるが、このマルチ・コミュニケーション・アレイの中でのマルチ・リンク・ネットワークは今後も活用するので、保存しておいて欲しい……何かあるかな? 」
「……アドル主宰……ザンダーです……報告が今になってしまって、本当に申し訳ありませんでした……実は、私とヤンセン艦長とエイミー艦長とアシュリー艦長の4人とで手分けをしまして……あの2日間…それぞれの艦内がどのような様相であったのか、雑駁な聴き取りを行いました……結果は私に集約すると言う事にしていましたので、内容は総て受け取ってはいたのですが……主宰への報告は今となってしまいました……重ねて、申し訳ありませんでした……それで…集約された聴き取り内容は読了したのですが……観られて揚げ足を取られるような内容と言いますか、事実関係は観受けられませんでした……ですので……今日と明日の配信の中に於いては、大丈夫であろうと思います……」
「……そうですか……ザンダー艦長……ご苦労様でした……その聴き取り内容は今日中にウチの副長に送って下さい……彼女の目に於いても確認して貰います。それと……今後そのような発案は、先ず私か副長に提案して下さい……宜しいですか? 」
「……分かりました……今後は確実にそのようにします……」
「……結構……他には何かありますか? 」
誰も言葉を発しなかった。
「……好いでしょう……では最後に……明日いっぱいで、次の出航直後から取り組んで頂きたいアクション・マニュアルファイルを、テキストでここのタイムラインにアップしますので……艦長と副長は全員、明後日朝の搭乗までに読了して下さい……こちらで同じ内容をプリントして艦内に持ち込み、スキャンして取り込んだものを『GFDSC24』のタイムラインにもアップします……シエナ副長……サイン・バードさんに連絡を執って…ニューバージョン・シークレットチャンネルの、スタートセットアップ・システムプログラム・データファイルが出来上がっているかどうかを、問い合わせて下さい……出来上がっているのなら早急に貰って、それもここのタイムラインに載せる必要がありますから……」
「……シエナです……了解しました。今日中に連絡を執ります……」
「……ありがとう…宜しく頼みます……質問やその他としても…ありますか? 」
「……アドルさん、リサです……シエナさんと一緒にいます……アクションマニュアル・テキストファイルは私にも送って下さい……私の処でプリントアウトします……」
「……分かりました。お願いします……他には? 」
「……あのう……『バトゥ・ウルス』のメアリー・ケイト・シェルハートです……」
「……やあ、シェルハート副長…どうしました? 」
「……実は……開幕日がネヘマイヤ艦長の誕生日でしたので……ブリッジスタッフ全員で盛り上がってしまいまして……艦長の顔中に全員でキスしてしまって……顔中をキスマークだらけにしてしまいました……これは……良くなかったでしょうか? 」
「……ハッハ(笑)……それは大丈夫でしょう……問題ないと思いますよ……もしも何か言われるようでしたら…『お祝い事ですから』と言って、後はスルーして下さい……それ以上しつこく問い質すような物言いは唯の野暮ですから、そんな野暮な物言いには何も応えられませんと、突っ撥ねて下さい……それで大丈夫です……」
「……分かりました…ありがとうございます……」
「……どう致しまして……他にはありますか? 」
誰も発言しなかった。
「……皆さん……ゲームとは言え2日間……80名ものクルーと一緒に……まあパーティー等もありましたけれども……緊迫し続けた状況をやっとの想いで乗り切ったのです……その中で……様々な思い違い・行き違い・勘違い・感情等のすれ違いから、口論やちょっとした喧嘩に発展してもおかしくはありませんでした……掴み合いや殴り合いの喧嘩でなければ…許容範囲であろうと考えますし…そのように主張する事も許可します……他に報告しておくべきであろうと思える事案が無ければ……このマルチ・リンク・ネットワークは解消しますが……マルチ・コミュニケーション・アレイの設定は、保存して下さい……マルチ・コミュニケーションへのご協力に感謝します……アドル・エルクより…以上……」
そうは言い終えたが、端末は何の操作もしないでテーブルに置いた……何か通話があれば、直ぐに応答できるようにだ……ゲストとして呼ばれた芸能人達からのコメントが続いている……然して問題としてこちらが採り上げるべきような…コメント・指摘・主張は無かった……批評・話題とする対象は『ディファイアント』だけには留まらず、他の19隻に於いても搭乗からプレ・フライトチェック……発進から出航完了に至るまでが掻い摘んで紹介されて……それぞれに於いて、印象や感想や解説が表明され、説明されていく……ゲーム大会の開幕から20隻が初出航を完了させる迄の冒頭部分に於いて、殊更に問題とさせられるようなアクションやリアクションも私の眼では観受けられなかった……気が付けば配信終了迄、もうあまり時間が無い……このままで終われば明日の配信ではおそらく……各艦のチャレンジ・ミッションにトライしていた模様と、初出航記念艦内親睦パーティーの模様を紹介する……だけで終わるだろうな……端末を取り上げて耳に当てる……まだ繋がっている。
「……ナンバー・ワン……話せるか? 」
「……大丈夫です…どうぞ……」
「……ザンダー艦長から送られたファイルは、今日中に確認してくれ……バードさんへの連絡と確認も頼む……それとまだ繋がっているから、明日の面談に参加できるメンバーを確認して…リサさんに伝えてくれ……」
「……分かりました…お任せ下さい……おやすみなさい……」
「……君達も充分に休んでくれな……おやすみ……」
話を終えて通話を切り、会議室からも出た……初回の配信は……総論・各論でも総評をまとめ、構築して発表した……最後に軽く感想を言い合い、明日の配信内容を簡単に紹介して…幕を閉じた。
「……あなた……主宰らしくなってきたわね……特に同盟の皆さんと話している時……そう観えるわ……」
「……そうか? ありがとう……」
そう言って昨夜渡された2種類のサプリを、グラスに残っていたモルトで飲み下す……アリシアはまだ眠っていないようだが、別に構わなくても好いだろう。
「……じゃあ、行こう……明日も早いからさ……」
立ち上がって妻を促す……微笑んで私と腕を絡めた妻と、一緒に寝室に入った……寝室の遮音フィールドをlevel 9で設定する……妻とのセックスで時間に余裕がある場合……そのパターンはあまり大きくは変わらない……アリシアが帰る前に行った愛の交歓と、手順や内容に於いても然程大きくは変わらなかった……但し密度に於いては更に濃厚となり…注力の程度に於いても、更に強くなっていた……ひとつの体位で情交する時間も…2割から3割程長くなり、終わってみれば射精は同じ4回だったが……掛かった時間は160分だった……息を荒げながら妻から身体を離して観ると…彼女は完全に失神していて、意識が無かった……妻を右横臥位にしてベッドの中央部に寝かせて……呼吸が楽になるように枕を使い、掛け布団と毛布2枚をしっかりと掛けた……全体を確認して私はバスルームでシャワーを使い、出るとアイソレーション・タンクベッドのアラームタイマーを3時間でセットし、裸のままでタンクに入った……鼻と耳にウィスパーを詰める……ソフト・シュノーケルとソフト・ゴーグルを着ける……寝湯よりも温液量は多い……横たわれば…比重の大きいエプソム・ソルト温水溶液の中では、身体は軽く浮き上がる……四肢を伸ばして呼吸を整え、眼を閉じれば30秒で眠りに落ちた。
「……はい……私が先ず感心したのはアドル・エルク主宰が、運営推進本部から貸与されたゲームフィールド内専用携帯端末を利用して、同盟に参画するメンバーだけが利用できる秘密専用会議室を、登録・設置・設定した事です……登録したメンバーだけに入力と閲覧が許されるよう、幾つかのアクセス・コードを設定して……メンバー個人の生体情報も登録しているのでしょう……これにより共闘同盟は、外部の誰にも傍受されない秘密回線を持ちました……」
「……分かりました、ドーフマンさん……これにより、何が考えられるのでしょう? 」
「……このゲームでのフィールド内に於ける通信体系には、何の制限も掛けられておりません……アドル主宰はこれを確認した時に、通信そのものを戦術支援として利用しようと考えたのでしょう……」
「……例えば? 」
「……本当の指示や情報の遣り取りは秘密回線で行い、通常回線では欺瞞情報を発信して敵を撹乱・陽動・誘導も出来るでしょうね……」
「……なるほど……分かりました…ありがとうございました……それでは、アーミセンさんにも伺いましょう……これまでのご紹介で、どのように受け取られましたか? 」
「……私がすごいと思いましたのは……ブリッジ・スタッフの優秀さと言いますか、練度の高さですね……おそらく3回は撮影セットの見学にも入られたのでしょうし……ゲームマニュアルの読み込みに於いても……随一と思えるレベルなのでしょう……それが証拠に、アドル艦長自身は殆ど指示を出していませんでしたから……」
「……確かにそうですね……発進シークエンス開始の指示をシエナ・ミュラー副長に出してからは『ディファイアント』が離岸するまで、彼女が指示を出していましたからね……ありがとうございました……その他、発進シークエンスの手順等で気になる処はありませんでしたか? 」
「……特にはありませんでしたね……そんなに事細かに確認し合わなくても、了解し合えていれば問題は無いでしょうから……」
「……なるほど……分かりました……ありがとうございました……それでは、ニール・マッキーン准将にもお伺いしましょう……『ディファイアント』初出航の模様をご覧頂きましたが、どのように捉えられましたでしょうか? 」
「…(笑)…先ずアランシス・カーサーさん……ここは階級名の呼称が必要な場所でもありませんので…准将と呼ばなくても結構ですよ……ニールでもマッキーンでも、呼び易い方で呼んで下さい……」
「……分かりました……恐縮です……ご配慮にも感謝致します……それでは改めまして…マッキーンさんはどのように受け取られましたでしょうか? 」
「……そうですね……アドル主宰からは心理動向データベースと訓練プログラムプランについての言及がありました……心理動向データベースと言うのは……ご自分で選任したクルー1人1人の心理動向データベースを、カウンセラーを中心に作成されて、プリントした物を持ち込まれたのでしょう……繰り返しますが、クルー1人1人の心理動向データベースを事前に作成して艦内に持ち込むと言うのは、かなりのスキルが無いと出来ません……これだけでも特筆されるべきですが……それ以上に驚異的だと感じたのが、訓練プログラムプランを事前に作成されていたと言う事です……1隻だけでの訓練プログラムプランでも多岐に渡るでしょうに、おそらく主宰は複数隻での訓練プランも非常に多岐に渡って練り上げられたと思われます……特に私はこの事について……驚きを禁じ得ません……」
「……そう言えばアドル主宰は、最初のゲームフィールドを途轍も無い広さであると予測されましたが、見事に的中されましたね? 」
「……そうでしたね……それも瞠目に値します……アドル・エルクさんの才能と思考こそ、驚異的なものなのではないかと考え始めています……」
「……ほう……流石に准将に迄昇って、参謀次官の職責に就いただけの事はある……こりゃあ我が国の正規軍も、主宰の才能に食指を動かし始めるかな……」
と、Wサイズベッドの左側に横たわって、自分に上体を凭せ掛けているローズ・クラークの身体を右腕で抱きながら、ハイラム・サングスターは言った。
「……でも、あの訓練プログラムプランは、マスターを含めた艦長3人の案をアドル主宰がまとめて書き上げたものですよね? 」
「…(笑)…まあ、そこまでは分からないだろうからな……ローズ……携帯端末を何時でも取れるように近くに置いてくれ……主宰から連絡が入るような気がする……」
「……分かりました……」
「……それと…分かっているとは思うが…主宰との通話が繋がっている間は、私をマスターとは呼ぶなよ?……」
「……分かっています……マスターは、グレイス・カーライル副社長を愛していらっしゃるのですか? 」
「……うん、好きだよ……まだ何の約束もしてないがね……3回程デートしたら4回目の時に、正式に交際して欲しいと言うつもりだ……ローズ……君は私の弟よりも若い……君を結婚相手として考えるのは、不適切だ……私の将来は観えている……私より若く、バイタリティと意欲にも溢れ、将来性の高い男が必ずいるよ……ああ……アドル主宰か……彼は私よりマズイだろう……取り巻きの美女史達が多過ぎる……」
「……そうですね……あの方達は皆さん、主宰とSEXしたがっています……」
「……まあ……あの美女史達と主宰との関係がどうなろうとも、アドルさんの家庭が壊れるような事は……世間に晒されない限りは起きないだろう……私が温めているアイディアを、同盟に参画する全艦の司令部で協議して貰おうと思うんだ……つまり……ファースト・シーズン終了後に開催する……超大規模な祝勝会だよ……」
「……楽しみにしています……」
「……さて……それでは…プロゲーマーのおふたりからも、感想を頂きましょう……これまでご覧になられて、どのように受け取られましたでしょうか? 」
「……はい…では、私から……」
と、ハーヴェイ・カイテル氏が先に口を開いた。
「……私達は皆、先日初めて行われたゲーム推移の模様をラッシュで観させて頂いてから、ここに座っているのですが……個人的に私は直ぐ、アドル・エルク艦長のファンになってしまいました……前置きを並べますとくどいですので、ひとつずつ採り上げてアドル氏の魅力をご紹介したいと思います……先ずアドル艦長の初めてのスピーチ……プレ・フライトチェックの前ですね……そこでアドル艦長は、チェックに入る前までの流れを必要最小限の言葉で説明しました……その発言の適切さ・的確さ・スムーズさは、まるで事前に書き上げた原稿を暗唱していたかのようでした……これは…未経験ではないにしても、とても素人のゲーマーとは思えませんし、観えません……職業軍人…現役の艦長とも見紛う程です……次にスタッフ・クルーをリラックスさせようとする粋な計らい……私もお酒は好きでよく呑みますが、サンクロスト・トラッシュの20年物をスタート・アップに全員で酌み交わすと言う発想は、私でも出て来ません……そして撃沈には拘らないと言う言葉で…無理はしなくて好いと強調しました……スタッフ・クルーをリラックスさせて安心させる……指揮官として最高のレベルだと思いました……まだメリッサさんからの感想もありますので私からはひとまず、ここまでとします……」
「……はい、メリッサ・エクスタインです……私が観させて頂いて感じた想いや…伝えたい意見でも…ハーヴェイさんのそれと重なる部分はありますけれども……それ以外にもお伝えしたい想いがありましたので、お話します……先程紹介されました中で私が1番感動しましたのが……アドル・エルク艦長が『ディファイアント』のクルーでもある『リアン・ビッシュ』の『ARIA』を、ゲームフィールドの全域に流された事でした……これは『リアン・ビッシュ』に対しても共闘同盟の全艦に対しても、更にはゲームフィールド全域に対しても衝撃的で粋で感動的な計らいであったと思います……『リアン・ビッシュ』の4人は当然ながら……ここでは紹介されませんでしたが、『ミーアス・クロス』の4人も泣いていましたし……実は私も貰い泣きしていました……本当に素晴らしく感動的なセレモニーでした……あとひとつ…これはハーヴェイさんも感じられたと思いますが、ゲームフィールドに於けるアドル主宰の予測が的中した事です……これには、本当に驚きました……」
「……そう! 加えてアドル主宰はそれも観越して単艦での訓練プログラムプランを、事前に同盟参画全艦に向けて通達しました……この先見性? 予測力? 洞察力? 並のゲーマーじゃありません……」
「……いや……やれやれと言うか……いやはやと言うか……こんなに褒められるとくすぐったくてしょうがない……この手の平がいつどんな形で返されるんだろうかな……」
ソファに座って脚を組んだまま、左手で顔を撫でる……グラスを取り上げて一口含んだ。
「……あなたは……皆さんとの関係をスッパ抜かれないようにして下さい……」
「……はい……それは充分に気を付けます……」
厳粛に神妙に応えた後で、携帯端末に手を伸ばす。
「……何だか褒め過ぎだよね……ちょっと気持ち悪い……」
と、マレットがドライヤーで髪を乾かし始める。
「……昨夜の事がスッパ抜かれたら、あっと言う間に手の平が返って袋叩きだろうね……」
と、エドナがグラスにライトビアを注いで口を付ける。
「……セキュリティチェックで異常は無かったよ……」
言いながらスキン・ローションを手に取って馴染ませるフィオナだ……同時にシエナの携帯端末から着信音が流れる……会議室『DSC24』内での通話リンクだ……スピーカーに切り替える。
「……はい、シエナです……」
「……ナンバー・ワン……このリンクを基点として20隻の艦長と副長の端末にマルチ・リンク・ネットワークを形成し、マルチ・コミュニケーション・アレイを設定……呼び出して総ての応答を共有できるように設定してくれ……出来上がったら連絡を頼む……」
「……了解しました……暫くお待ち下さい……」
「……宜しく……」
「……何の話なんだろうね? 」
と、エマ・ラトナー。
「……さあ?……」
応えつつシエナは作業を進める。
「……どんなお話なの? あなた……」
「……ん…まあ、基本的な事だよ……杞憂で終わるだろうとは思うけどね……」
シエナ・ミュラーは作業を進めつつ38名全員を呼び出し、マルチ・リンク・ネットワークを形成してマルチ・コミュニケーション・アレイを設定した……準備完了までに15分を要した。
「……アドル艦長…準備完了しました……全員聴いていますし、応答も共有できます……」
「……ありがとう……皆も観ていると思うが、観ながらで好いから聴いてくれ……発言も自由に、いつでも好いから話してくれ……今日と明日の配信ではおそらく、20隻の基本的な紹介……あの2日間での親睦パーティーも含めた艦内での動向……トピックとして紹介できるような戦闘記録映像……2日間での最終的な戦果…等が紹介されるだろうと思う……艦内での記録映像は主にブリッジ…バーラウンジ…機関室…格納庫…エクササイズ・デッキでの模様が使われるだろう……観られて揚げ足を取られるようなアクションやリアクションも無かったと思えるのなら、何も心配する必要は無いが……この先…何かの行為や行動…発言などの言葉尻等…が捉えられて……根拠のある論理的な批判を展開された場合……自信があるのなら、即時の論理的かつ冷静な反論を許可する……即時に出来る自信が無いようなら……後日に正式な反論を回答すると、表明するだけでも好い……明らかにいわれや根拠のない批判・非難・中傷を被ったと感じられた場合は…基本的にはスルーして欲しい……それでもしつこく呼び掛けられたり回答を要求されたりした場合には、そちらの主張・質問・批判には根拠が無いので回答する必要を認めない、と表明するか……ルールには違反も抵触もしていないので、単なる見解の相違である、と表明するだけでも好い……付随になるが、このマルチ・コミュニケーション・アレイの中でのマルチ・リンク・ネットワークは今後も活用するので、保存しておいて欲しい……何かあるかな? 」
「……アドル主宰……ザンダーです……報告が今になってしまって、本当に申し訳ありませんでした……実は、私とヤンセン艦長とエイミー艦長とアシュリー艦長の4人とで手分けをしまして……あの2日間…それぞれの艦内がどのような様相であったのか、雑駁な聴き取りを行いました……結果は私に集約すると言う事にしていましたので、内容は総て受け取ってはいたのですが……主宰への報告は今となってしまいました……重ねて、申し訳ありませんでした……それで…集約された聴き取り内容は読了したのですが……観られて揚げ足を取られるような内容と言いますか、事実関係は観受けられませんでした……ですので……今日と明日の配信の中に於いては、大丈夫であろうと思います……」
「……そうですか……ザンダー艦長……ご苦労様でした……その聴き取り内容は今日中にウチの副長に送って下さい……彼女の目に於いても確認して貰います。それと……今後そのような発案は、先ず私か副長に提案して下さい……宜しいですか? 」
「……分かりました……今後は確実にそのようにします……」
「……結構……他には何かありますか? 」
誰も言葉を発しなかった。
「……好いでしょう……では最後に……明日いっぱいで、次の出航直後から取り組んで頂きたいアクション・マニュアルファイルを、テキストでここのタイムラインにアップしますので……艦長と副長は全員、明後日朝の搭乗までに読了して下さい……こちらで同じ内容をプリントして艦内に持ち込み、スキャンして取り込んだものを『GFDSC24』のタイムラインにもアップします……シエナ副長……サイン・バードさんに連絡を執って…ニューバージョン・シークレットチャンネルの、スタートセットアップ・システムプログラム・データファイルが出来上がっているかどうかを、問い合わせて下さい……出来上がっているのなら早急に貰って、それもここのタイムラインに載せる必要がありますから……」
「……シエナです……了解しました。今日中に連絡を執ります……」
「……ありがとう…宜しく頼みます……質問やその他としても…ありますか? 」
「……アドルさん、リサです……シエナさんと一緒にいます……アクションマニュアル・テキストファイルは私にも送って下さい……私の処でプリントアウトします……」
「……分かりました。お願いします……他には? 」
「……あのう……『バトゥ・ウルス』のメアリー・ケイト・シェルハートです……」
「……やあ、シェルハート副長…どうしました? 」
「……実は……開幕日がネヘマイヤ艦長の誕生日でしたので……ブリッジスタッフ全員で盛り上がってしまいまして……艦長の顔中に全員でキスしてしまって……顔中をキスマークだらけにしてしまいました……これは……良くなかったでしょうか? 」
「……ハッハ(笑)……それは大丈夫でしょう……問題ないと思いますよ……もしも何か言われるようでしたら…『お祝い事ですから』と言って、後はスルーして下さい……それ以上しつこく問い質すような物言いは唯の野暮ですから、そんな野暮な物言いには何も応えられませんと、突っ撥ねて下さい……それで大丈夫です……」
「……分かりました…ありがとうございます……」
「……どう致しまして……他にはありますか? 」
誰も発言しなかった。
「……皆さん……ゲームとは言え2日間……80名ものクルーと一緒に……まあパーティー等もありましたけれども……緊迫し続けた状況をやっとの想いで乗り切ったのです……その中で……様々な思い違い・行き違い・勘違い・感情等のすれ違いから、口論やちょっとした喧嘩に発展してもおかしくはありませんでした……掴み合いや殴り合いの喧嘩でなければ…許容範囲であろうと考えますし…そのように主張する事も許可します……他に報告しておくべきであろうと思える事案が無ければ……このマルチ・リンク・ネットワークは解消しますが……マルチ・コミュニケーション・アレイの設定は、保存して下さい……マルチ・コミュニケーションへのご協力に感謝します……アドル・エルクより…以上……」
そうは言い終えたが、端末は何の操作もしないでテーブルに置いた……何か通話があれば、直ぐに応答できるようにだ……ゲストとして呼ばれた芸能人達からのコメントが続いている……然して問題としてこちらが採り上げるべきような…コメント・指摘・主張は無かった……批評・話題とする対象は『ディファイアント』だけには留まらず、他の19隻に於いても搭乗からプレ・フライトチェック……発進から出航完了に至るまでが掻い摘んで紹介されて……それぞれに於いて、印象や感想や解説が表明され、説明されていく……ゲーム大会の開幕から20隻が初出航を完了させる迄の冒頭部分に於いて、殊更に問題とさせられるようなアクションやリアクションも私の眼では観受けられなかった……気が付けば配信終了迄、もうあまり時間が無い……このままで終われば明日の配信ではおそらく……各艦のチャレンジ・ミッションにトライしていた模様と、初出航記念艦内親睦パーティーの模様を紹介する……だけで終わるだろうな……端末を取り上げて耳に当てる……まだ繋がっている。
「……ナンバー・ワン……話せるか? 」
「……大丈夫です…どうぞ……」
「……ザンダー艦長から送られたファイルは、今日中に確認してくれ……バードさんへの連絡と確認も頼む……それとまだ繋がっているから、明日の面談に参加できるメンバーを確認して…リサさんに伝えてくれ……」
「……分かりました…お任せ下さい……おやすみなさい……」
「……君達も充分に休んでくれな……おやすみ……」
話を終えて通話を切り、会議室からも出た……初回の配信は……総論・各論でも総評をまとめ、構築して発表した……最後に軽く感想を言い合い、明日の配信内容を簡単に紹介して…幕を閉じた。
「……あなた……主宰らしくなってきたわね……特に同盟の皆さんと話している時……そう観えるわ……」
「……そうか? ありがとう……」
そう言って昨夜渡された2種類のサプリを、グラスに残っていたモルトで飲み下す……アリシアはまだ眠っていないようだが、別に構わなくても好いだろう。
「……じゃあ、行こう……明日も早いからさ……」
立ち上がって妻を促す……微笑んで私と腕を絡めた妻と、一緒に寝室に入った……寝室の遮音フィールドをlevel 9で設定する……妻とのセックスで時間に余裕がある場合……そのパターンはあまり大きくは変わらない……アリシアが帰る前に行った愛の交歓と、手順や内容に於いても然程大きくは変わらなかった……但し密度に於いては更に濃厚となり…注力の程度に於いても、更に強くなっていた……ひとつの体位で情交する時間も…2割から3割程長くなり、終わってみれば射精は同じ4回だったが……掛かった時間は160分だった……息を荒げながら妻から身体を離して観ると…彼女は完全に失神していて、意識が無かった……妻を右横臥位にしてベッドの中央部に寝かせて……呼吸が楽になるように枕を使い、掛け布団と毛布2枚をしっかりと掛けた……全体を確認して私はバスルームでシャワーを使い、出るとアイソレーション・タンクベッドのアラームタイマーを3時間でセットし、裸のままでタンクに入った……鼻と耳にウィスパーを詰める……ソフト・シュノーケルとソフト・ゴーグルを着ける……寝湯よりも温液量は多い……横たわれば…比重の大きいエプソム・ソルト温水溶液の中では、身体は軽く浮き上がる……四肢を伸ばして呼吸を整え、眼を閉じれば30秒で眠りに落ちた。
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