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地上界にて…
ホテル『クライトン・グラードサルマン』35F スペシャル・スイート
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日頃から業務提携支援関係の深い賓客を招き、迎えての接待を目的としたディナーパーティーは終了した。
ホテルの正面玄関で迎えのリムジンに乗り込み、帰途に就く賓客の皆様を頭を下げつつ見送った我々は、取り敢えずまた2階のラウンジ・バー『パール・オーシャン』に戻って労をねぎらい合う事にした。
全員でお互いの顔がよく観えるように、また大テーブルに陣取る。
今度はリサとシエナが、すかさず私の両隣に座る……エイミーとアシュリーもそうしようとしたのだが、今回は及ばずにリサの左隣とシエナの右隣に座った。
「……皆さん、今夜は本当にお疲れ様でした。ご苦労様でした。特にお手伝いに来て下さった皆さんには、感謝の言葉もありません……ありがとうございました……少しこちらで寛いで、お話など交わしながら休んで頂きましたら……お帰りの手配については、お申し付け下さい……どちらへでもお送りさせて頂きます……何かお飲みになりますか? 」
「……甘くなく軽いソーダ水をお願いします……常務、今夜のような接待はどの程度の頻度で考えていますか? 」
「……そうですね……理想を言えば、半年に1度程度がベストでしょうか……」
「……また今夜と同じような形態でやるんでしたら、次は男性艦長達も呼びますよ……私ばっかり喋るってのは、もう勘弁して欲しいですから……」
「……アドルさん……今夜は上手に話す事も、ろくにお手伝いも出来ずに申し訳ありませんでした……次回にも呼んで頂ければきっとお役に立ちますので、どうかお許し下さい……」
メアリー・ケイト・シェルハート副長が、申し訳なさそうに頭を下げる。
「……いやいや、そんな……頭を上げて下さい、シェルハート副長……今夜は来て下さっただけでも感謝に堪えません……大丈夫ですよ……そんなに無茶な事は言われませんでしたから……本当にありがとうございました……お疲れ様でしたね……今は寛いで、感想などお聞かせ下さい……」
「……あの、アドル主宰……私こそ何もお手伝い出来ずに申し訳ありませんでした……私だって同盟に参画する艦長なのに……私だって接待の席でお客様を持て成した経験は何度もありましたのに……今夜は何故か何も出来ませんでした……本当に申し訳ありませんでした……何だかその……アドル主宰のお話を、ただ感動するような……痺れるような感覚で聴いていただけでした……すみませんでした……また次の機会にでも呼んで頂ければ、私もきっとお役に立ちますので、今夜はお許し下さい……」
「……アシュリー艦長……本当に大丈夫ですから、気にしないで下さい……貴女が居てくれたからこそ、無茶な事も言われませんでした……貴女の存在と、その魅力のお陰です……感謝しています……今日はお疲れ様でした……今はリラックスして、寛いで下さい……ああ、そうだ……パーティーの中ではご紹介出来ませんでしたね……遅くなってしまって申し訳ありません……こちらが営業本部チーフ・ディレクターのエリック・カンデル……そしてあちらが、営業本部長のハーマン・パーカー常務です……常務、チーフ・カンデル……こちらがアシュリー・アードランド艦長……宣伝・広告代理店『フィニアス・ファーヴ』にお勤めです……」
「……は、あの…初めまして。ご挨拶が遅くなりました……アシュリー・アードランドです……今夜はあの……差し出がましくお手伝いに参上致しました…が、何も出来ずに申し訳ありませんでした……アドル主宰の下で【『ディファイアント』共闘同盟】に参画させて頂いております『カレドン・カサンドラ』の艦長です……ですが普段は、宣伝・広告代理店『フィニアス・ファーヴ』にて広告営業プレゼンスの主任として勤務しております……今回頂きました、この貴重なご縁に感謝申し上げますと共に、これからより善い業務上のお付き合いも宜しければお願いしたいと思いまして、ご挨拶を申し上げます……宜しくお願いします……」
「……初めまして、アシュリー・アードランド主任……弊社常務のハーマン・パーカーです……そしてこちらがエリック・カンデル・チーフ・ディレクター……含めまして、これからも宜しくお願い致します……今夜はお手伝いに来て頂きまして、誠に感謝しております……お疲れ様でした……暫く寛がれて落ち着かれましたら、お帰りの手配をさせて頂きます……この場ではひと先ず、連絡先の交換をさせて頂きまして……後日ご連絡を頂いた上で、お話を伺う事と致しましょう……それで宜しいでしょうか? 」
「……あ、はい。ご丁寧なご挨拶をありがとうございます……改めまして、ご連絡させて頂きます……今夜はお会い出来て本当に良かったです……感謝申し上げます……ありがとうございました……また、引き合わせて下さいましたアドル・エルク主宰にも感謝申し上げます……本当にありがとうございました……」
彼女からPIDカードのコピーを2枚貰い、チーフ・カンデルに手渡す……チーフ・カンデルは常務からカードを貰い、自分のそれと併せて私にくれたので、そのまま彼女に手渡した。
「……それで? どうでしたかね、今夜は……成功ですかね? 」
「……充分に成功ですわね……全く問題ないと思いますよ……」
「……そりゃ好かった。グレイス艦長のお墨付きが貰えたなら、安心ですよ……いやそれにしても……トップコアメンバーが6人もいらっしゃったとはね……これは予想を超えていましたね……ついでにトップコアの真意を訊いてみれば好かったかな? 案外、ノリで答えてくれたかもね……」
「……トップコアの真意については、いずれ明らかになるでしょう……色々な方面からも聴こえて来るでしょうから……その……リサさんからも聞きましたが、サイン・バードさん? の方面からも、ね……」
「……それで、どうする、アドル? 帰るのか? 」
「……いや…えらい疲れたんで、今夜はここに泊まりたいんですけど好いスか? 」
「……好いだろ? アドル主宰が泊まってくれるとなれば、取って置きの部屋を用意してくれるだろ? 」
「……別にどこの部屋でも好いですけどね……それでね……やって貰える人が居たら頼みたいんだけど……詳しい内容はテキストメッセージで送るから、明日追加で艦内に持ち込む私物を提出するんだよ……それらを揃えてまとめて、持ち出しやすいように整えて欲しいんだけど……誰かやってくれる? 」
「……すみません…今夜はちょっと……」
「……好いよ、リサさん。無理しないで……」
シエナとハンナとリーアが顔を見合わせる。
「……では、私とハンナとリーアで……」
「……私も行きます! 」
「私も! 」
「私も参ります…」
「私もお手伝い致します……」
それらの声がほぼ同時にあがって4人の女性の手が挙がる……観ると、カーラ・ブオノ・マルティーヌ副長にローズ・クラーク副長……メアリー・ケイト・シェルハート副長にトリッシュ・ヴァンサンティン副長だ。
「……あのさ……7人も行ってやる程の仕事じゃないし、もう時間も遅いから帰った方が良いんじゃないの? 」
「……大丈夫です……それに、アドル主宰が普段生活していらっしゃるお宅がどのような所か、興味がありますので……」
「……また、同盟に参画する副長として、主宰の居宅を確認するのは任務の一環であると認めます……」
「……ああ、はあ……やって頂けるんであれば、お願いします……7人でやって頂ければ、15分も掛からないでしょう……ナンバー・ワン、君の端末にテキストは送るから、着いたら手分けして頼む……終わったら、帰りの手配も頼むよ……」
「……シエナさん、これをお預けしますので使って下さい。フルにチャージしてあります……」
「……ありがとう、リサさん。お預かりします……」
そう言って、シエナはリサからビット・カードを受け取った。
「……あの…もしも宜しければ、私もここに泊まらせて頂きたいのですけれども……家が遠いものですから……」
と、エイミー・カールソン艦長。
「……私も出来ればお願いします……公共の交通機関がもう厳しいもので……」
と、アシュリー・アードランド艦長。
「……私は、明朝のお世話係として宿泊します……」
と、マレット・フェントン補給支援部長。
「……私も同様にお世話係として残ります……」
と、エドナ・ラティス砲術長。
「……私は保安部長として、宿泊される艦長方の警護を致します……」
と、フィオナ・コアー保安部長。
常務が左の内ポケットから何かを取り出して、リサさんに手渡した。
「……リサ・ミルズさん、これを使って宿泊の決済とお帰りの手配を頼みます。明日、返してくれれば好いですから……」
「……はい……これは? 」
「……ビット・ディスケンサー……まだ一般には出回ってないけどね……」
「……分かりました。お借りします……」
「……では、皆さん……長々とお引き留め致しまして、誠に申し訳ありませんでした……もう夜も更けて遅いですので、どうぞお気を付けてお帰り下さい……皆さんの宿泊並びにお帰りの手配は、こちらでつつがなく調えさせて頂きますので、どうぞご心配なさらずに……繰り返して申し上げますが、今回のご協力には本当に感謝致します……また何時でもお気軽に、弊社をお訪ね下さい……挙って歓迎させて頂きます……では、好い夢でお休み下さい……それではまた……」
そう言い終えてハーマン・パーカー常務は立ち上がり、一礼を施した。
私も立ち上がって一人一人と握手を交わし、労った。私の社宅へと向かう7人には特に気を付けるようにと言い含め、その注意を促した。
「……常務……今日は呼んで頂いて、ありがとうございました。リサさん……明日はここから出社するんで、車を廻して下さい……チーフ……明日は同盟に参画希望の艦長達を面談して、終わり次第退社しますので……後は宜しく……グレイス艦長、カーネル副長、フローレンス参謀……明日の面談では、同席をお願いします……ハル参謀……今日来てくれた皆の、帰りの手配を確認して下さい……スタッフ・クルーの皆! 今夜は手伝ってくれて、本当にどうもありがとう! 必ず時間を作って皆一人一人のご家族、関係者の皆さんに対しての挨拶をしに行くよ……今日は気を付けて帰って下さい。本当に、どうもありがとう……」
改めて一人一人とハグを交わして送り出す……リサとは、握手を交わして別れた。
その20分後……ホテル『クライトン・グラードサルマン』の35階……ラクシュリイ・ラウンジ・ホール。
「……アドルさん、スペシャル・スイート3502 確認しました。安全です……」
「……ありがとう、フィオン。しかし、すごいホテルだね……初めて観たよ……」
「……私もです……」
「……いつか、アリソンと泊まりたいな……」
「……分かります……」
「……君の部屋は? 」
「……こちらの直下です……両隣がエイミー・カールソン艦長と、アシュリー・アードランド艦長のお部屋となっています……」
「……分かった。ここで一服してから、部屋に入るよ……」
「……分かりました。私は直下に居ますので、何かあれば端末に……」
「……分かったよ、お疲れ様……」
私達はお互いに歩み寄り、抱き合って3秒キスを交わし、フィオナは笑顔で離れてリフトに乗った。
ホールのDD(ドリンク・ディスペンサー)にコーヒーを出させる。凄く熱いコーヒーが出た。
ソーサーごと持って、灰皿スタンドの近くに座る。凄く柔らかいソファーだ。
美味い! DDに出させたコーヒーとしては、1番美味いと感じた。
マスター・グレード・プレミアム・シガレットを取り出して咥え、点ける。
誰かと通話を繋ぐには、もう遅い時間だ。シエナの端末にテキスト・メッセージはもう送った。仲良くやってくれれば好いな。
アリソンとアリシアの事を考える。次の出航までに短時間でも好い。自宅に戻らないと。
10分間、コーヒーとシガレットを楽しんだ。カップとソーサーを返して、部屋に入る。広くて豪華だが、華美ではない。
コートと上着を脱いで吊るし、キッチンに入って色々と観る。うん……一通りには揃っている。
色々と取り出しながら、フィオナに通話を繋ぐ。
「……ああ、俺だよ……全員、この部屋に集合だ……ミルクティーを淹れるよ……」
ホテルの正面玄関で迎えのリムジンに乗り込み、帰途に就く賓客の皆様を頭を下げつつ見送った我々は、取り敢えずまた2階のラウンジ・バー『パール・オーシャン』に戻って労をねぎらい合う事にした。
全員でお互いの顔がよく観えるように、また大テーブルに陣取る。
今度はリサとシエナが、すかさず私の両隣に座る……エイミーとアシュリーもそうしようとしたのだが、今回は及ばずにリサの左隣とシエナの右隣に座った。
「……皆さん、今夜は本当にお疲れ様でした。ご苦労様でした。特にお手伝いに来て下さった皆さんには、感謝の言葉もありません……ありがとうございました……少しこちらで寛いで、お話など交わしながら休んで頂きましたら……お帰りの手配については、お申し付け下さい……どちらへでもお送りさせて頂きます……何かお飲みになりますか? 」
「……甘くなく軽いソーダ水をお願いします……常務、今夜のような接待はどの程度の頻度で考えていますか? 」
「……そうですね……理想を言えば、半年に1度程度がベストでしょうか……」
「……また今夜と同じような形態でやるんでしたら、次は男性艦長達も呼びますよ……私ばっかり喋るってのは、もう勘弁して欲しいですから……」
「……アドルさん……今夜は上手に話す事も、ろくにお手伝いも出来ずに申し訳ありませんでした……次回にも呼んで頂ければきっとお役に立ちますので、どうかお許し下さい……」
メアリー・ケイト・シェルハート副長が、申し訳なさそうに頭を下げる。
「……いやいや、そんな……頭を上げて下さい、シェルハート副長……今夜は来て下さっただけでも感謝に堪えません……大丈夫ですよ……そんなに無茶な事は言われませんでしたから……本当にありがとうございました……お疲れ様でしたね……今は寛いで、感想などお聞かせ下さい……」
「……あの、アドル主宰……私こそ何もお手伝い出来ずに申し訳ありませんでした……私だって同盟に参画する艦長なのに……私だって接待の席でお客様を持て成した経験は何度もありましたのに……今夜は何故か何も出来ませんでした……本当に申し訳ありませんでした……何だかその……アドル主宰のお話を、ただ感動するような……痺れるような感覚で聴いていただけでした……すみませんでした……また次の機会にでも呼んで頂ければ、私もきっとお役に立ちますので、今夜はお許し下さい……」
「……アシュリー艦長……本当に大丈夫ですから、気にしないで下さい……貴女が居てくれたからこそ、無茶な事も言われませんでした……貴女の存在と、その魅力のお陰です……感謝しています……今日はお疲れ様でした……今はリラックスして、寛いで下さい……ああ、そうだ……パーティーの中ではご紹介出来ませんでしたね……遅くなってしまって申し訳ありません……こちらが営業本部チーフ・ディレクターのエリック・カンデル……そしてあちらが、営業本部長のハーマン・パーカー常務です……常務、チーフ・カンデル……こちらがアシュリー・アードランド艦長……宣伝・広告代理店『フィニアス・ファーヴ』にお勤めです……」
「……は、あの…初めまして。ご挨拶が遅くなりました……アシュリー・アードランドです……今夜はあの……差し出がましくお手伝いに参上致しました…が、何も出来ずに申し訳ありませんでした……アドル主宰の下で【『ディファイアント』共闘同盟】に参画させて頂いております『カレドン・カサンドラ』の艦長です……ですが普段は、宣伝・広告代理店『フィニアス・ファーヴ』にて広告営業プレゼンスの主任として勤務しております……今回頂きました、この貴重なご縁に感謝申し上げますと共に、これからより善い業務上のお付き合いも宜しければお願いしたいと思いまして、ご挨拶を申し上げます……宜しくお願いします……」
「……初めまして、アシュリー・アードランド主任……弊社常務のハーマン・パーカーです……そしてこちらがエリック・カンデル・チーフ・ディレクター……含めまして、これからも宜しくお願い致します……今夜はお手伝いに来て頂きまして、誠に感謝しております……お疲れ様でした……暫く寛がれて落ち着かれましたら、お帰りの手配をさせて頂きます……この場ではひと先ず、連絡先の交換をさせて頂きまして……後日ご連絡を頂いた上で、お話を伺う事と致しましょう……それで宜しいでしょうか? 」
「……あ、はい。ご丁寧なご挨拶をありがとうございます……改めまして、ご連絡させて頂きます……今夜はお会い出来て本当に良かったです……感謝申し上げます……ありがとうございました……また、引き合わせて下さいましたアドル・エルク主宰にも感謝申し上げます……本当にありがとうございました……」
彼女からPIDカードのコピーを2枚貰い、チーフ・カンデルに手渡す……チーフ・カンデルは常務からカードを貰い、自分のそれと併せて私にくれたので、そのまま彼女に手渡した。
「……それで? どうでしたかね、今夜は……成功ですかね? 」
「……充分に成功ですわね……全く問題ないと思いますよ……」
「……そりゃ好かった。グレイス艦長のお墨付きが貰えたなら、安心ですよ……いやそれにしても……トップコアメンバーが6人もいらっしゃったとはね……これは予想を超えていましたね……ついでにトップコアの真意を訊いてみれば好かったかな? 案外、ノリで答えてくれたかもね……」
「……トップコアの真意については、いずれ明らかになるでしょう……色々な方面からも聴こえて来るでしょうから……その……リサさんからも聞きましたが、サイン・バードさん? の方面からも、ね……」
「……それで、どうする、アドル? 帰るのか? 」
「……いや…えらい疲れたんで、今夜はここに泊まりたいんですけど好いスか? 」
「……好いだろ? アドル主宰が泊まってくれるとなれば、取って置きの部屋を用意してくれるだろ? 」
「……別にどこの部屋でも好いですけどね……それでね……やって貰える人が居たら頼みたいんだけど……詳しい内容はテキストメッセージで送るから、明日追加で艦内に持ち込む私物を提出するんだよ……それらを揃えてまとめて、持ち出しやすいように整えて欲しいんだけど……誰かやってくれる? 」
「……すみません…今夜はちょっと……」
「……好いよ、リサさん。無理しないで……」
シエナとハンナとリーアが顔を見合わせる。
「……では、私とハンナとリーアで……」
「……私も行きます! 」
「私も! 」
「私も参ります…」
「私もお手伝い致します……」
それらの声がほぼ同時にあがって4人の女性の手が挙がる……観ると、カーラ・ブオノ・マルティーヌ副長にローズ・クラーク副長……メアリー・ケイト・シェルハート副長にトリッシュ・ヴァンサンティン副長だ。
「……あのさ……7人も行ってやる程の仕事じゃないし、もう時間も遅いから帰った方が良いんじゃないの? 」
「……大丈夫です……それに、アドル主宰が普段生活していらっしゃるお宅がどのような所か、興味がありますので……」
「……また、同盟に参画する副長として、主宰の居宅を確認するのは任務の一環であると認めます……」
「……ああ、はあ……やって頂けるんであれば、お願いします……7人でやって頂ければ、15分も掛からないでしょう……ナンバー・ワン、君の端末にテキストは送るから、着いたら手分けして頼む……終わったら、帰りの手配も頼むよ……」
「……シエナさん、これをお預けしますので使って下さい。フルにチャージしてあります……」
「……ありがとう、リサさん。お預かりします……」
そう言って、シエナはリサからビット・カードを受け取った。
「……あの…もしも宜しければ、私もここに泊まらせて頂きたいのですけれども……家が遠いものですから……」
と、エイミー・カールソン艦長。
「……私も出来ればお願いします……公共の交通機関がもう厳しいもので……」
と、アシュリー・アードランド艦長。
「……私は、明朝のお世話係として宿泊します……」
と、マレット・フェントン補給支援部長。
「……私も同様にお世話係として残ります……」
と、エドナ・ラティス砲術長。
「……私は保安部長として、宿泊される艦長方の警護を致します……」
と、フィオナ・コアー保安部長。
常務が左の内ポケットから何かを取り出して、リサさんに手渡した。
「……リサ・ミルズさん、これを使って宿泊の決済とお帰りの手配を頼みます。明日、返してくれれば好いですから……」
「……はい……これは? 」
「……ビット・ディスケンサー……まだ一般には出回ってないけどね……」
「……分かりました。お借りします……」
「……では、皆さん……長々とお引き留め致しまして、誠に申し訳ありませんでした……もう夜も更けて遅いですので、どうぞお気を付けてお帰り下さい……皆さんの宿泊並びにお帰りの手配は、こちらでつつがなく調えさせて頂きますので、どうぞご心配なさらずに……繰り返して申し上げますが、今回のご協力には本当に感謝致します……また何時でもお気軽に、弊社をお訪ね下さい……挙って歓迎させて頂きます……では、好い夢でお休み下さい……それではまた……」
そう言い終えてハーマン・パーカー常務は立ち上がり、一礼を施した。
私も立ち上がって一人一人と握手を交わし、労った。私の社宅へと向かう7人には特に気を付けるようにと言い含め、その注意を促した。
「……常務……今日は呼んで頂いて、ありがとうございました。リサさん……明日はここから出社するんで、車を廻して下さい……チーフ……明日は同盟に参画希望の艦長達を面談して、終わり次第退社しますので……後は宜しく……グレイス艦長、カーネル副長、フローレンス参謀……明日の面談では、同席をお願いします……ハル参謀……今日来てくれた皆の、帰りの手配を確認して下さい……スタッフ・クルーの皆! 今夜は手伝ってくれて、本当にどうもありがとう! 必ず時間を作って皆一人一人のご家族、関係者の皆さんに対しての挨拶をしに行くよ……今日は気を付けて帰って下さい。本当に、どうもありがとう……」
改めて一人一人とハグを交わして送り出す……リサとは、握手を交わして別れた。
その20分後……ホテル『クライトン・グラードサルマン』の35階……ラクシュリイ・ラウンジ・ホール。
「……アドルさん、スペシャル・スイート3502 確認しました。安全です……」
「……ありがとう、フィオン。しかし、すごいホテルだね……初めて観たよ……」
「……私もです……」
「……いつか、アリソンと泊まりたいな……」
「……分かります……」
「……君の部屋は? 」
「……こちらの直下です……両隣がエイミー・カールソン艦長と、アシュリー・アードランド艦長のお部屋となっています……」
「……分かった。ここで一服してから、部屋に入るよ……」
「……分かりました。私は直下に居ますので、何かあれば端末に……」
「……分かったよ、お疲れ様……」
私達はお互いに歩み寄り、抱き合って3秒キスを交わし、フィオナは笑顔で離れてリフトに乗った。
ホールのDD(ドリンク・ディスペンサー)にコーヒーを出させる。凄く熱いコーヒーが出た。
ソーサーごと持って、灰皿スタンドの近くに座る。凄く柔らかいソファーだ。
美味い! DDに出させたコーヒーとしては、1番美味いと感じた。
マスター・グレード・プレミアム・シガレットを取り出して咥え、点ける。
誰かと通話を繋ぐには、もう遅い時間だ。シエナの端末にテキスト・メッセージはもう送った。仲良くやってくれれば好いな。
アリソンとアリシアの事を考える。次の出航までに短時間でも好い。自宅に戻らないと。
10分間、コーヒーとシガレットを楽しんだ。カップとソーサーを返して、部屋に入る。広くて豪華だが、華美ではない。
コートと上着を脱いで吊るし、キッチンに入って色々と観る。うん……一通りには揃っている。
色々と取り出しながら、フィオナに通話を繋ぐ。
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