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出航
トゥーデイズ・フィナーレ
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その後、ファースト・メインプールでの水遊びからは先に失礼して、上がらせて貰った。
自室に引き揚げてからシャワーを使ってサッパリとし、瞑想しようと思いたつ。
楽な服に着替えてクロノグラフで確認すると、6th・ステージの開始まで70分。
何か好さ気な瞑想アプリがないものかと検索を掛けたら、面白そうなものを見付けた。
それから40分が経過して、アラーム・タイマーより先にインター・コールが来訪者を告げる。
「…タイマー停止…どうぞ…」
入室したのは、カウンセラーだった。
「失礼します。艦長、そろそろブリッジへ…!…」
驚きの反応と共に言葉が止まる。
「やあ、ありがとう、ハンナ。少し待ってくれ。今支度するから…」
そう言いながら半跏趺坐を解いて立ち上がる。
「…アドルさん…これは…何ですか? 」
そう訊きながら彼女は、私の隣で浮かんでいる水色のホログラム球体を珍しそうに観る。
「ああ、ブレイン・ティザーだよ。サマリナス5で開発された瞑想アプリでね。瞑想とパズル・ゲームを組み合わせたものだ。なかなか面白いよ…やってみるかい? 」
「…お願い…します…」
「よし。じゃあ、半跏趺坐で座って? まぶたを閉じても球体イメージは脳内視野に投影される。勿論、目を開けた状態でやっても好い。パズル・ゲームとしては、このホログラム球体の色を単色に仕上げられたら、上がりだ…深呼吸して…背筋を真っ直ぐにして安定させる…大きく吸って、ゆっくりと吐く…手は気にならない場所に置いて…」
そう言いながら半跏趺坐で座ったハンナの両肩に両手を置く。
「コンピューター、セカンド・プレイヤーにコントロールを移譲する…」
【コンプリート】
同時に手を離し、傍に立って腕を組んで見守る。
球体のイメージ構築は30秒程で仕上げられたが、配色には難儀しているようだ。様々な色味が混じり合って乱れている。球体が震えて虹色に輝いたかと思うと、パッと割れて霧散した。
「…どうも…私には難しいです…」
「何事も慣れだ。君なら慣れれば私以上に安定してコントロール出来るようになるよ…少し待ってくれ。直ぐに着替えるから…」
そう言うと着替えのジャケットを持って脱衣所に入り、手速く済ませて出る。
ハンナが艦長の襟章を持って来て、右襟に付けてくれた。
手を離したハンナを優しく抱き寄せて、優しい接吻を交わした。
「好し、行こう」
顔を赤らめるハンナの右手を右手で引いて、ブリッジに向かう。
『ディファイアント』・ブリッジ・
「6thステージ開始まで、あと7分! 」
「既に全員が、第1戦闘配置です! 」
ハル・ハートリーが報告した。
「了解だ。全員、そのままで聞いてくれ。ステージが始まったら、艦首正面に近い方位で1隻か2隻が顕れるだろう。本艦はそのまま全速発進して、正面の敵艦に対して集中全力攻撃を仕掛ける。敵艦がシールドアップしたら、そのまま至近を擦り抜けて離脱する。その後は最大限加速を続行して充分に距離を取り、夕食休憩時間に入る。基本方針としては以上だ…」
「了解しました…」
「夕食休憩時間までは? 」
「35分です」
「分かった」
それからそのまま5分が経過した。
「6th・ステージ、開始されます! 」
「総員で対空監視! 」
シエナ・ミュラーが号令を掛ける。
「模擬敵艦6隻出現しました! 艦首正面近似方位に2隻! 第3戦闘距離の135%! 」
「衝突コースで両舷全速最大出力発進! 指向し得る全兵装で全力集中連続攻撃開始! 」
その40秒後。
「対象2艦、シールドアップして左右に変針! 損傷率28%! 他の4艦は接近中、間も無く射程距離です! 」
「その中央を全速で通過! 操艦とコース選定は任せる! 敵艦群との相対距離が第5戦闘距離の100倍以上に離れる迄、全速航行を続行! 離れたら、エンジン停止して僅かに取舵! 」
「了解! 」
「副長、それまでここは任せる。控室にいる」
「分かりました」
私は控室に入り、深煎りコーヒーを出させてデスクに着く。
飲みながらPADで会議室『DSC24GF』にアクセスするとタイムラインに入り、『ディファイアント』はナイト・タイムに入り次第仕舞い作業に掛かり、それが終わり次第入港シークエンスに移行して入港する。同盟に参画する僚艦も、出来れば早目に入港して帰宅して欲しい。このチャレンジ・ミッションが例えどのような結果に終わったとしても、貴重で得難い経験になる。それは必ず2週目から活用されるであろうと確信している。そう書き込んで出た。
殊更にゆっくりとコーヒーを飲む。
何か自分でも急いでいるきらいは自覚している。
早く入港して帰りたい気持ちが強くなっている。
もうこの2日間で、やれる事もやるべき事もやり切った。
『ディファイアント』にとってはもう蛇足の領域であり、蛇足の時間でしかない。
飲み終わったカップを洗って片付けるとソファーに寝転んで、両脚を右のアームレストに乗せて目を閉じた。
撮っているのだろうが、構いはしない。あまり眠るつもりは無かったのだが、1分もしない内に意識が消えた。
どのくらい眠っていただろうか? 断続するインターコールと携帯端末の着信音とドアを叩く音で目覚めた。
「どうぞ! 」
ドアが開いてシエナとフィオナが跳び込んでくる。
「艦長! 大丈夫ですか!? 」
「…ああ、すまない…大丈夫だよ。眠っていたんだ。気が付かないで悪かった…」
「…いいえ…こちらこそ、驚かせてしまってすみません…が、もう充分に離れましたので…」
「分かった。行くよ」
そう応え、3人で一緒にブリッジに戻って席に着く。
「報告を頼む」
「敵艦群とは相対して第5戦闘距離の127倍迄離れました。エンジンは停止して僅かに変針。ロストの筈です。夕食休憩時間迄は5分です」
「…うん…もしも私が控室で眠っていて応答が無かった場合でも、諸君のアクセス承認コードをコンピューターに音声で入力すればドアは開けられるから、次回からはそうしてくれ。リーア、控室に独自でモニター・カメラを設置して、メイン・ビューワにリンクさせて置いてくれ。それで中の様子はいつでもブリッジから確認出来るから…」
「…はい、了解しました…」
「…ちょっと心配になってしまって、申し訳ありませんでした💦」
シエナ副長が申し訳無さそうに言う。
「いいよ、好いよ。心配してくれてありがとう…往く往くは、全乗員の生命反応を医療部で総合的にモニター出来るようなシステムを、構築した方が好いのかも知れないな(笑)…」
最後は幾らか冗談めかしたニュアンスで言ったつもりだったのだが、笑いは無かった。
やがて総ての表示が唐突に、突然に凍り付く。夕食休憩時間に入ったのだ。
「よ~し。皆、本当にご苦労さん。好くやってくれたね(笑)それじゃ、いよいよ艦内でも最後の食事だ。次は今度の土曜日迄待たなきゃならないんだから、味わって頂くとしようか? 」
そう言いながらセンサー・チームの3人が床に降りるのを、4人で手伝う。
「…さて、マエストロ・ラウレンティス料理長は、いったいどんなご馳走で我々の胃袋を掴んでくれるのかな? 」
そう言いながら全員で意気揚々とラウンジに向かう。
ラウンジに入って席に着いた私達に厨房スタッフ達が供してくれたのは、言わば究極の夕食。
究極に熟成された最高級ランプ肉(ビーフ)を用いた超絶のステーキ・ディナーであった。
スープ、前菜、サラダ、付け合わせのソテー、ワイン、ライスに至るまで、最高の素材を最高の調理で供してくれる。
最早言葉は要らないし、どのような表現も陳腐に聞こえるだけだろう。
グラスを掲げて皆の顔を無言の笑顔で見渡す。湛えられているのも究極の赤ワインだ。
香りを楽しんで一口含み、またグラスを掲げて笑顔で見渡す。
もう一口呑んで、今度はグラスを皆のそれとも触れ合わせる。それから本格的な夕餉の会食が始まる。
「素晴らしいですね。それしか言葉が出ませんが…」
ハンナ・ウェアー。
「全くだね。このディナーに言葉は不要だよ…」
「何を言っても陳腐に聞こえそうで言えません…」
ハル・ハートリー。
「解るよ。笑顔で、噛み締めて、良く噛んで、素晴らしい味わいを堪能すれば好い…」
「艦長、入港直前にも曲を流しますか? 」
マレット・フェントンだ。
「お、好いセン云ってるね。補給支援部長。そのつもりでいるよ…」
「宜しければ、曲名は? 」
ミーシャ・ハーレイだ。何か企画しているのかな?
「『リアン・ビッシュ』の『SERENATO』だけど? 何か企画でもあるのかな? 生活環境支援部長? 」
「実は提案なのですが、『リアン・ビッシュ』と『ミーアス・クロス』のコラボレーションで『SERENATO』を生で全宙域に流します。如何でしょう? 」
リーア・ミスタンテだ。発案は彼女かな?
「好いね。素晴らしいものになりそうだ。了解したよ。許可します…」
「…ありがとうございます。夕食が終わったら、早速準備に入ります…」
「それじゃ、落ち着いて好い準備が出来るように、敵艦群との距離をもっと拡げて時間を稼ぐとしようか? エマさん? 」
「はい、分かりました。了解です…」
「と、言う訳なんでね。ワインはとても美味しいんだけれども、酔わないでくれよ? 」
「は~い…」
「生中継が終わったら、各部所での日誌とレポートをまとめてくれ? 上がったら副長乃至は参謀に提出。副長、参謀、参謀補佐、カウンセラーでそれらを取りまとめて最終の報告書を作成し、私のPADに送ってくれ? 好いかな? 」
「了解しました」
「承知しました」
「彼女達の衣装等は、大丈夫なのかな? 」
「大丈夫だそうですよ。統一コンセプトでの衣装も数着、持ち込んで来ているそうなので…」
マレット・フェントンだ。好いお姉さん役、と言ったところかな?
「分かったよ…それにしても、エマとフィオナじゃどっちが速いのか、最後まで分からなかったよ…」
そう言いながら、2杯目のワインを飲み干す。カリーナがボトルを取って注ごうとしたが、私は右手でそれを制した。
「…フィオナは何を演っても、フォームがとても綺麗なんです。高飛び込みとかスイム・ダンスを演らせたら、もう最高です。私はまあ、パワーはありますけど性格がガサツなので速いかも知れませんが、綺麗には出来ません…」
エマがワイングラスを置いて、フィオナを観ながらそう言う。私は食べる手を止めてエマの顔を観る。
「…エマ・ラトナー…君の…友達を想い遣って、そう評するその心根こそが、綺麗なんだよ…」
エマは5秒で顔を歪ませると、唇を震わせて涙をひとつだけ零した。右隣のアリシアがハンカチを差し出して宥めたので、程無く笑顔には戻ったが。
「ああ、ごめんなさい。悪かった。泣かせるつもりじゃ無かったんだ。申し訳無かったね。ごめんなさい…」
「今の言葉は…最強の破壊力でした…2人きりだったらイッてます…こんな言葉をほぼ無自覚に言ってくれますから、アドルさんは最高ランクでの要警戒人物なんです…」
私に対しての評定では、マレット・フェントンのそれが最も的確で適性値も高いだろう。故に私自身としては、返す言葉も無い。
「…ああ、そうだ。デザイナーのエタンス・ミード氏に連絡を執って、会えるように取り計らってくれないか? ここまで好意的にして貰っていて、私の口から直接にお礼を言えていないのが心苦しい。それに彼は以前から君達の仲間でもあるし、挨拶だけは早目に済ませて置きたいからね…ところで、ヴィヴィアン・カークランド艦長と彼はお互いを認識しているのかな? 」
「…さあ、どうでしょう? 彼には女性デザイナーとの交流が、ほぼ無いと思います。同じファッション・デザイナーと言っても、デザインの嗜好と傾向は違いますから。でも存在は、認識しているでしょう…」
シエナ・ミュラーが冷静に応える。今の説明で彼がどのような男か、少し判ったような気がする。まあ実際に会ってみれば、よりはっきりとは判るだろうが。
「…入港したら、皆はどうやって帰るんだ? 自分で来たクルーは自分で帰れるんだろうけど、送って貰って来たクルーは、迎えに来て貰えるのかな? 」
「…アドルさん、送って貰って来た若いクルーと言っても、全員20才は越えていますので大人です。夜中とは言え帰る方法はありますし、連絡先だって幾らでもあるでしょう…」
ハル・ハートリー参謀は冷静だ。
「そうだね。取り越し苦労だったようだ。まあ無事に帰着してくれれば、それで好いよ…」
そう応えながらふと感じて厨房を見遣ると、マエストロ・サルヴァトーレ・ラウレンティス料理長が、シェフキャップを脱いで左手にしながら、1人で歩み寄って来る。
私は口を拭い、立ち上がって居住まいを正し、左胸に右手を置いて迎える姿勢を執った。
同じテーブルに着いているメンバーは勿論、近隣のテーブルに着いているクルー達も立ち上がって、私に倣って同じ姿勢を執る。
「…これは、マエストロ・ラウレンティス。わざわざお立ち寄りを頂きまして、ありがとうございます。マエストロ渾身のディナーを噛み締めて、味合わせて頂いております…」
「…いえいえ、喜んで召し上がって頂いているようで、何よりです。私共と致しましても、感謝に耐えません。如何ですかな? ステーキ・ディナーの出来栄えは? 」
「…言葉になりません。どのような言葉での表現も、不適格かつ不適切で陳腐に聴こえてしまいそうですので、テーブルに着いてからの私達はこのディナーについて一切、語れておりません。申し訳ありませんが私達の表現力では追い付きません。ご容赦下さい。それだけ私達には素晴らし過ぎる持て成しです…」
シエナ・ミュラーが、笑顔で真っ直ぐにマエストロの目を直視しながら、そう言う。この言葉だけでも彼女の非凡さを充二分に顕すものだ。心の中で拍手した。
「…いや、この老体に対してこれ程迄に過分なお褒めのお言葉をありがとうございます。喜びと共に恐縮であります。この私めも『ディファイアント』の戦果に幾分でも貢献出来たと思えば、この胸も僅かながら張れると言うものです。どうぞ、心往くまでこのディナーをお楽しみ下さい。そして入港後には、どうかお気を付けてお帰り頂きますように…」
そう言い終えるとマエストロは、深々と腰を折ってから顔を上げて、笑顔で皆を見渡した。
「…マエストロ。どうぞ、ご安心下さい。艦長として誓約致します。必ずこの『ディファイアント』を安全に入港させ、全乗員を無事に退艦させます…ご心配なく…」
マエストロは再び私達に対して会釈を施し、笑顔のままで踵を反す。私達は彼の後姿をそのままの姿勢と尊敬の念で見送った。
「…本艦での1番の功労賞は、マエストロに贈られるものだね。それを改めて、今更ながらに確信したよ…」
着席して、水を一口飲んでからそう言う。
「…全く同感です…」
カウンセラーも神妙にそう応じた。
そろそろ皆も食べ終わる頃合いだ。
冷たい食後酒とスイーツのデザートと、コーヒーポットとストレートティーのポットが運ばれて来る。
「…エマ…夕食休憩時間が終わって再開されたら更に加速して、第5戦闘距離の200倍まで拡げてエンジン停止。コラボレート・ステージ・ライヴの準備に掛かってくれ…」
「了解」
「…何だかもう直ぐ終わるとなると、あっという間だったな。単艦での訓練は録に出来なかったが、成果は充分に挙がっただろう。各部所でチャレンジ・テストとして遣り残している事があったら、それもレポートに含めて記載してくれ…」
「分かりました」
そう応えてハル・ハートリーは食後酒のグラスを半分まで空ける。
私も食後酒を飲みながらデザートを頂く。
お互いに顔を見て頂きながら、静かに時を過ごす。
「まあ残念だったのは、同盟の僚艦に逢えなかった事だな。今度の土日には、逢えるだろうと思うがね…逢えればまた、新しい交流も拡がるだろう…」
食後酒を飲み干して、デザートも食べ終えた。
「…コーヒーを頼む…副長、休憩時間の終わる10分前になったら、携帯端末で私をコールしてくれ。まあ、控室か自室のどちらかには居るだろう…」
「分かりました」
そう応えながらシエナ・ミュラーは、私にコーヒーを注いでくれる。
「…それで? 何か他に感想はあるかい? 」
「…もっと…皆と一緒に…居たいです…」
マレットだ。ほんの一瞬、縋るような目で私を観た。
「…凄く楽しくて充実していました。もう終わりだなんて残念ですし、信じられません。土曜日が待ち遠しいです…」
カリーナだ。
「凄くエキサイティングで忙しかったですし、疲れもしましたけれどもまだまだやりたいです。まだ終わりたくないです…」
エドナだ。よく分かるよ。
「私は、パーティーが1番楽しかったです。またやりたいです。今度は必ずアドルさんの右隣に座って動きません…」
やれやれ、ハンナ・ウェアーはどこまで本気なのかが、まだ今ひとつ判らない。
「…私はアドルさんと仲間達のおかげで、新しい本当の自分に生まれ変われました。本当に大いなる感謝の2日間でした。ありがとうと何回言っても足りません。特にアドルさんには、私の総てで感謝を捧げ続けます…そしてこれからは、保安部長としての私の総てを以って皆を守り、支えます。特にアドルさんへのマッサージは、私にお任せ下さい(笑)」
いやはや、こちらもやれやれだ。フィオナの本気さはハンナと違って、何処までも底が観えない。
「…好し…分かった。皆もこの2日間を充分に充実して楽しんで、興奮もして忙しくて疲れもしたけれども、好い経験が出来て有意義な時間であったと感じてくれた事については、改めて私から君達に感謝を申し上げたい。本当にありがとう。それを踏まえて、今度の土日も宜しくお願いします…」
そう言い終えると私はコーヒーを飲み干し、水を飲んで口を拭ってから立ち上がった。
「…素晴らしい、ディナーでした。本当にご馳走様でした。私はこれで先に失礼するけれども、皆はゆっくりして下さい。じゃあ、休憩時間の終わる5分前ぐらいに、ブリッジで会おう…」
そう言い終えると私は右手を挙げてから、ラウンジを退室した。
自室に引き揚げてからシャワーを使ってサッパリとし、瞑想しようと思いたつ。
楽な服に着替えてクロノグラフで確認すると、6th・ステージの開始まで70分。
何か好さ気な瞑想アプリがないものかと検索を掛けたら、面白そうなものを見付けた。
それから40分が経過して、アラーム・タイマーより先にインター・コールが来訪者を告げる。
「…タイマー停止…どうぞ…」
入室したのは、カウンセラーだった。
「失礼します。艦長、そろそろブリッジへ…!…」
驚きの反応と共に言葉が止まる。
「やあ、ありがとう、ハンナ。少し待ってくれ。今支度するから…」
そう言いながら半跏趺坐を解いて立ち上がる。
「…アドルさん…これは…何ですか? 」
そう訊きながら彼女は、私の隣で浮かんでいる水色のホログラム球体を珍しそうに観る。
「ああ、ブレイン・ティザーだよ。サマリナス5で開発された瞑想アプリでね。瞑想とパズル・ゲームを組み合わせたものだ。なかなか面白いよ…やってみるかい? 」
「…お願い…します…」
「よし。じゃあ、半跏趺坐で座って? まぶたを閉じても球体イメージは脳内視野に投影される。勿論、目を開けた状態でやっても好い。パズル・ゲームとしては、このホログラム球体の色を単色に仕上げられたら、上がりだ…深呼吸して…背筋を真っ直ぐにして安定させる…大きく吸って、ゆっくりと吐く…手は気にならない場所に置いて…」
そう言いながら半跏趺坐で座ったハンナの両肩に両手を置く。
「コンピューター、セカンド・プレイヤーにコントロールを移譲する…」
【コンプリート】
同時に手を離し、傍に立って腕を組んで見守る。
球体のイメージ構築は30秒程で仕上げられたが、配色には難儀しているようだ。様々な色味が混じり合って乱れている。球体が震えて虹色に輝いたかと思うと、パッと割れて霧散した。
「…どうも…私には難しいです…」
「何事も慣れだ。君なら慣れれば私以上に安定してコントロール出来るようになるよ…少し待ってくれ。直ぐに着替えるから…」
そう言うと着替えのジャケットを持って脱衣所に入り、手速く済ませて出る。
ハンナが艦長の襟章を持って来て、右襟に付けてくれた。
手を離したハンナを優しく抱き寄せて、優しい接吻を交わした。
「好し、行こう」
顔を赤らめるハンナの右手を右手で引いて、ブリッジに向かう。
『ディファイアント』・ブリッジ・
「6thステージ開始まで、あと7分! 」
「既に全員が、第1戦闘配置です! 」
ハル・ハートリーが報告した。
「了解だ。全員、そのままで聞いてくれ。ステージが始まったら、艦首正面に近い方位で1隻か2隻が顕れるだろう。本艦はそのまま全速発進して、正面の敵艦に対して集中全力攻撃を仕掛ける。敵艦がシールドアップしたら、そのまま至近を擦り抜けて離脱する。その後は最大限加速を続行して充分に距離を取り、夕食休憩時間に入る。基本方針としては以上だ…」
「了解しました…」
「夕食休憩時間までは? 」
「35分です」
「分かった」
それからそのまま5分が経過した。
「6th・ステージ、開始されます! 」
「総員で対空監視! 」
シエナ・ミュラーが号令を掛ける。
「模擬敵艦6隻出現しました! 艦首正面近似方位に2隻! 第3戦闘距離の135%! 」
「衝突コースで両舷全速最大出力発進! 指向し得る全兵装で全力集中連続攻撃開始! 」
その40秒後。
「対象2艦、シールドアップして左右に変針! 損傷率28%! 他の4艦は接近中、間も無く射程距離です! 」
「その中央を全速で通過! 操艦とコース選定は任せる! 敵艦群との相対距離が第5戦闘距離の100倍以上に離れる迄、全速航行を続行! 離れたら、エンジン停止して僅かに取舵! 」
「了解! 」
「副長、それまでここは任せる。控室にいる」
「分かりました」
私は控室に入り、深煎りコーヒーを出させてデスクに着く。
飲みながらPADで会議室『DSC24GF』にアクセスするとタイムラインに入り、『ディファイアント』はナイト・タイムに入り次第仕舞い作業に掛かり、それが終わり次第入港シークエンスに移行して入港する。同盟に参画する僚艦も、出来れば早目に入港して帰宅して欲しい。このチャレンジ・ミッションが例えどのような結果に終わったとしても、貴重で得難い経験になる。それは必ず2週目から活用されるであろうと確信している。そう書き込んで出た。
殊更にゆっくりとコーヒーを飲む。
何か自分でも急いでいるきらいは自覚している。
早く入港して帰りたい気持ちが強くなっている。
もうこの2日間で、やれる事もやるべき事もやり切った。
『ディファイアント』にとってはもう蛇足の領域であり、蛇足の時間でしかない。
飲み終わったカップを洗って片付けるとソファーに寝転んで、両脚を右のアームレストに乗せて目を閉じた。
撮っているのだろうが、構いはしない。あまり眠るつもりは無かったのだが、1分もしない内に意識が消えた。
どのくらい眠っていただろうか? 断続するインターコールと携帯端末の着信音とドアを叩く音で目覚めた。
「どうぞ! 」
ドアが開いてシエナとフィオナが跳び込んでくる。
「艦長! 大丈夫ですか!? 」
「…ああ、すまない…大丈夫だよ。眠っていたんだ。気が付かないで悪かった…」
「…いいえ…こちらこそ、驚かせてしまってすみません…が、もう充分に離れましたので…」
「分かった。行くよ」
そう応え、3人で一緒にブリッジに戻って席に着く。
「報告を頼む」
「敵艦群とは相対して第5戦闘距離の127倍迄離れました。エンジンは停止して僅かに変針。ロストの筈です。夕食休憩時間迄は5分です」
「…うん…もしも私が控室で眠っていて応答が無かった場合でも、諸君のアクセス承認コードをコンピューターに音声で入力すればドアは開けられるから、次回からはそうしてくれ。リーア、控室に独自でモニター・カメラを設置して、メイン・ビューワにリンクさせて置いてくれ。それで中の様子はいつでもブリッジから確認出来るから…」
「…はい、了解しました…」
「…ちょっと心配になってしまって、申し訳ありませんでした💦」
シエナ副長が申し訳無さそうに言う。
「いいよ、好いよ。心配してくれてありがとう…往く往くは、全乗員の生命反応を医療部で総合的にモニター出来るようなシステムを、構築した方が好いのかも知れないな(笑)…」
最後は幾らか冗談めかしたニュアンスで言ったつもりだったのだが、笑いは無かった。
やがて総ての表示が唐突に、突然に凍り付く。夕食休憩時間に入ったのだ。
「よ~し。皆、本当にご苦労さん。好くやってくれたね(笑)それじゃ、いよいよ艦内でも最後の食事だ。次は今度の土曜日迄待たなきゃならないんだから、味わって頂くとしようか? 」
そう言いながらセンサー・チームの3人が床に降りるのを、4人で手伝う。
「…さて、マエストロ・ラウレンティス料理長は、いったいどんなご馳走で我々の胃袋を掴んでくれるのかな? 」
そう言いながら全員で意気揚々とラウンジに向かう。
ラウンジに入って席に着いた私達に厨房スタッフ達が供してくれたのは、言わば究極の夕食。
究極に熟成された最高級ランプ肉(ビーフ)を用いた超絶のステーキ・ディナーであった。
スープ、前菜、サラダ、付け合わせのソテー、ワイン、ライスに至るまで、最高の素材を最高の調理で供してくれる。
最早言葉は要らないし、どのような表現も陳腐に聞こえるだけだろう。
グラスを掲げて皆の顔を無言の笑顔で見渡す。湛えられているのも究極の赤ワインだ。
香りを楽しんで一口含み、またグラスを掲げて笑顔で見渡す。
もう一口呑んで、今度はグラスを皆のそれとも触れ合わせる。それから本格的な夕餉の会食が始まる。
「素晴らしいですね。それしか言葉が出ませんが…」
ハンナ・ウェアー。
「全くだね。このディナーに言葉は不要だよ…」
「何を言っても陳腐に聞こえそうで言えません…」
ハル・ハートリー。
「解るよ。笑顔で、噛み締めて、良く噛んで、素晴らしい味わいを堪能すれば好い…」
「艦長、入港直前にも曲を流しますか? 」
マレット・フェントンだ。
「お、好いセン云ってるね。補給支援部長。そのつもりでいるよ…」
「宜しければ、曲名は? 」
ミーシャ・ハーレイだ。何か企画しているのかな?
「『リアン・ビッシュ』の『SERENATO』だけど? 何か企画でもあるのかな? 生活環境支援部長? 」
「実は提案なのですが、『リアン・ビッシュ』と『ミーアス・クロス』のコラボレーションで『SERENATO』を生で全宙域に流します。如何でしょう? 」
リーア・ミスタンテだ。発案は彼女かな?
「好いね。素晴らしいものになりそうだ。了解したよ。許可します…」
「…ありがとうございます。夕食が終わったら、早速準備に入ります…」
「それじゃ、落ち着いて好い準備が出来るように、敵艦群との距離をもっと拡げて時間を稼ぐとしようか? エマさん? 」
「はい、分かりました。了解です…」
「と、言う訳なんでね。ワインはとても美味しいんだけれども、酔わないでくれよ? 」
「は~い…」
「生中継が終わったら、各部所での日誌とレポートをまとめてくれ? 上がったら副長乃至は参謀に提出。副長、参謀、参謀補佐、カウンセラーでそれらを取りまとめて最終の報告書を作成し、私のPADに送ってくれ? 好いかな? 」
「了解しました」
「承知しました」
「彼女達の衣装等は、大丈夫なのかな? 」
「大丈夫だそうですよ。統一コンセプトでの衣装も数着、持ち込んで来ているそうなので…」
マレット・フェントンだ。好いお姉さん役、と言ったところかな?
「分かったよ…それにしても、エマとフィオナじゃどっちが速いのか、最後まで分からなかったよ…」
そう言いながら、2杯目のワインを飲み干す。カリーナがボトルを取って注ごうとしたが、私は右手でそれを制した。
「…フィオナは何を演っても、フォームがとても綺麗なんです。高飛び込みとかスイム・ダンスを演らせたら、もう最高です。私はまあ、パワーはありますけど性格がガサツなので速いかも知れませんが、綺麗には出来ません…」
エマがワイングラスを置いて、フィオナを観ながらそう言う。私は食べる手を止めてエマの顔を観る。
「…エマ・ラトナー…君の…友達を想い遣って、そう評するその心根こそが、綺麗なんだよ…」
エマは5秒で顔を歪ませると、唇を震わせて涙をひとつだけ零した。右隣のアリシアがハンカチを差し出して宥めたので、程無く笑顔には戻ったが。
「ああ、ごめんなさい。悪かった。泣かせるつもりじゃ無かったんだ。申し訳無かったね。ごめんなさい…」
「今の言葉は…最強の破壊力でした…2人きりだったらイッてます…こんな言葉をほぼ無自覚に言ってくれますから、アドルさんは最高ランクでの要警戒人物なんです…」
私に対しての評定では、マレット・フェントンのそれが最も的確で適性値も高いだろう。故に私自身としては、返す言葉も無い。
「…ああ、そうだ。デザイナーのエタンス・ミード氏に連絡を執って、会えるように取り計らってくれないか? ここまで好意的にして貰っていて、私の口から直接にお礼を言えていないのが心苦しい。それに彼は以前から君達の仲間でもあるし、挨拶だけは早目に済ませて置きたいからね…ところで、ヴィヴィアン・カークランド艦長と彼はお互いを認識しているのかな? 」
「…さあ、どうでしょう? 彼には女性デザイナーとの交流が、ほぼ無いと思います。同じファッション・デザイナーと言っても、デザインの嗜好と傾向は違いますから。でも存在は、認識しているでしょう…」
シエナ・ミュラーが冷静に応える。今の説明で彼がどのような男か、少し判ったような気がする。まあ実際に会ってみれば、よりはっきりとは判るだろうが。
「…入港したら、皆はどうやって帰るんだ? 自分で来たクルーは自分で帰れるんだろうけど、送って貰って来たクルーは、迎えに来て貰えるのかな? 」
「…アドルさん、送って貰って来た若いクルーと言っても、全員20才は越えていますので大人です。夜中とは言え帰る方法はありますし、連絡先だって幾らでもあるでしょう…」
ハル・ハートリー参謀は冷静だ。
「そうだね。取り越し苦労だったようだ。まあ無事に帰着してくれれば、それで好いよ…」
そう応えながらふと感じて厨房を見遣ると、マエストロ・サルヴァトーレ・ラウレンティス料理長が、シェフキャップを脱いで左手にしながら、1人で歩み寄って来る。
私は口を拭い、立ち上がって居住まいを正し、左胸に右手を置いて迎える姿勢を執った。
同じテーブルに着いているメンバーは勿論、近隣のテーブルに着いているクルー達も立ち上がって、私に倣って同じ姿勢を執る。
「…これは、マエストロ・ラウレンティス。わざわざお立ち寄りを頂きまして、ありがとうございます。マエストロ渾身のディナーを噛み締めて、味合わせて頂いております…」
「…いえいえ、喜んで召し上がって頂いているようで、何よりです。私共と致しましても、感謝に耐えません。如何ですかな? ステーキ・ディナーの出来栄えは? 」
「…言葉になりません。どのような言葉での表現も、不適格かつ不適切で陳腐に聴こえてしまいそうですので、テーブルに着いてからの私達はこのディナーについて一切、語れておりません。申し訳ありませんが私達の表現力では追い付きません。ご容赦下さい。それだけ私達には素晴らし過ぎる持て成しです…」
シエナ・ミュラーが、笑顔で真っ直ぐにマエストロの目を直視しながら、そう言う。この言葉だけでも彼女の非凡さを充二分に顕すものだ。心の中で拍手した。
「…いや、この老体に対してこれ程迄に過分なお褒めのお言葉をありがとうございます。喜びと共に恐縮であります。この私めも『ディファイアント』の戦果に幾分でも貢献出来たと思えば、この胸も僅かながら張れると言うものです。どうぞ、心往くまでこのディナーをお楽しみ下さい。そして入港後には、どうかお気を付けてお帰り頂きますように…」
そう言い終えるとマエストロは、深々と腰を折ってから顔を上げて、笑顔で皆を見渡した。
「…マエストロ。どうぞ、ご安心下さい。艦長として誓約致します。必ずこの『ディファイアント』を安全に入港させ、全乗員を無事に退艦させます…ご心配なく…」
マエストロは再び私達に対して会釈を施し、笑顔のままで踵を反す。私達は彼の後姿をそのままの姿勢と尊敬の念で見送った。
「…本艦での1番の功労賞は、マエストロに贈られるものだね。それを改めて、今更ながらに確信したよ…」
着席して、水を一口飲んでからそう言う。
「…全く同感です…」
カウンセラーも神妙にそう応じた。
そろそろ皆も食べ終わる頃合いだ。
冷たい食後酒とスイーツのデザートと、コーヒーポットとストレートティーのポットが運ばれて来る。
「…エマ…夕食休憩時間が終わって再開されたら更に加速して、第5戦闘距離の200倍まで拡げてエンジン停止。コラボレート・ステージ・ライヴの準備に掛かってくれ…」
「了解」
「…何だかもう直ぐ終わるとなると、あっという間だったな。単艦での訓練は録に出来なかったが、成果は充分に挙がっただろう。各部所でチャレンジ・テストとして遣り残している事があったら、それもレポートに含めて記載してくれ…」
「分かりました」
そう応えてハル・ハートリーは食後酒のグラスを半分まで空ける。
私も食後酒を飲みながらデザートを頂く。
お互いに顔を見て頂きながら、静かに時を過ごす。
「まあ残念だったのは、同盟の僚艦に逢えなかった事だな。今度の土日には、逢えるだろうと思うがね…逢えればまた、新しい交流も拡がるだろう…」
食後酒を飲み干して、デザートも食べ終えた。
「…コーヒーを頼む…副長、休憩時間の終わる10分前になったら、携帯端末で私をコールしてくれ。まあ、控室か自室のどちらかには居るだろう…」
「分かりました」
そう応えながらシエナ・ミュラーは、私にコーヒーを注いでくれる。
「…それで? 何か他に感想はあるかい? 」
「…もっと…皆と一緒に…居たいです…」
マレットだ。ほんの一瞬、縋るような目で私を観た。
「…凄く楽しくて充実していました。もう終わりだなんて残念ですし、信じられません。土曜日が待ち遠しいです…」
カリーナだ。
「凄くエキサイティングで忙しかったですし、疲れもしましたけれどもまだまだやりたいです。まだ終わりたくないです…」
エドナだ。よく分かるよ。
「私は、パーティーが1番楽しかったです。またやりたいです。今度は必ずアドルさんの右隣に座って動きません…」
やれやれ、ハンナ・ウェアーはどこまで本気なのかが、まだ今ひとつ判らない。
「…私はアドルさんと仲間達のおかげで、新しい本当の自分に生まれ変われました。本当に大いなる感謝の2日間でした。ありがとうと何回言っても足りません。特にアドルさんには、私の総てで感謝を捧げ続けます…そしてこれからは、保安部長としての私の総てを以って皆を守り、支えます。特にアドルさんへのマッサージは、私にお任せ下さい(笑)」
いやはや、こちらもやれやれだ。フィオナの本気さはハンナと違って、何処までも底が観えない。
「…好し…分かった。皆もこの2日間を充分に充実して楽しんで、興奮もして忙しくて疲れもしたけれども、好い経験が出来て有意義な時間であったと感じてくれた事については、改めて私から君達に感謝を申し上げたい。本当にありがとう。それを踏まえて、今度の土日も宜しくお願いします…」
そう言い終えると私はコーヒーを飲み干し、水を飲んで口を拭ってから立ち上がった。
「…素晴らしい、ディナーでした。本当にご馳走様でした。私はこれで先に失礼するけれども、皆はゆっくりして下さい。じゃあ、休憩時間の終わる5分前ぐらいに、ブリッジで会おう…」
そう言い終えると私は右手を挙げてから、ラウンジを退室した。
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