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・・『開幕』・・

・・インタビューと対談と・・2・・

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・・唇に何か軟らかいものが触れて、微妙に動いている感覚で目が覚める・・目を開けるとリサが私にキスしていたのだが、私が目覚めたのを気取って直ぐに離れた・・。

「・・時間ですよ・・アドルさん・・」   「・・了解!・・」

・・勢いよく起きてバスルームに入り、身体に活を入れるように熱いシャワーを浴びる・・備え付けのシェーバーで髭を軽く当り、熱いお湯で洗い流して直ぐに出る・・服は完璧にプレスされていて、まるで卸したてのようだ・・」

「・・ありがとう、リサさん・・」

「・・どう致しまして・・ネクタイもプレスしたのですが、ちょっと地味かな、とも思ったので・・2本買って来ました・・どれを使いますか・・?・・」

「・・どうもありがとう、リサさん・・今日持って来たネクタイはよく考えないで選んじゃったから、本当に助かったよ・・これで恥をかかずに済む・・それじゃあ、君が選んで・・?・・」

「・・あっ、はい・・それじゃあ・・このパールピンクの柄の方で行きましょう・・お洒落です・・」

「・・ありがとう・・」

・・そう言ってネクタイを素早く首に廻し、ノットを出来るだけ小さくまとめて細身に締め込む・・上着を着てコートを着込み、バッグを左手にランチ・バスケットを右手で持って・・。

「・・よし、行こう・・」   「・・はい・・」

・・車を出して『トゥーウェイ・データ・ネット・ストリーム・ステーション』社に向かう・・2時間だけの睡眠でも、感心するくらい頭がスッキリしている・・やはり睡眠不足だったようだ・・体の疲れもある程度取れているようだ・・『トゥーウェイ・データ・ネット・ストリーム・ステーション』社の正門からエレカーを乗り入れたのが12:10・・左脇のガードステーションの前に横付けして降りる・・出て来た警備員に2人ともPIDカードを提示すると、彼は直ぐに諒解して連絡を執った・・。

・・バッグをリサに預けてスマートキーを彼に預けた私はランチバスケットを持って2人で歩いて行き、正面出入口から中に入ると2人で座っている受付嬢の前に、ランチバスケットを置いてPIDカードを見せる・・。

「・・こんにちは、アドル・エルクです・・今日は配信番組出演の為に来ました・・少しお昼の時間を過ぎてしまって申し訳ありませんが、これはスタッフの皆さんへの差し入れです・・皆さんで分けられると少なくなってしまいますが、そこはご容赦下さい・・私達も昼食がまだですので、こちらのラウンジにお邪魔させて頂きます・・ラウンジの場所は分かっておりますので、大丈夫です・・こちらの差し入れを出来れば早急にプロデューサーの方にお渡し下さい・・それでは・・」

・・そう言ってランチバスケットを置いたままラウンジに向かう・・途中ですれ違うこちらの社員やスタッフ達が、皆さん笑顔で会釈してくれる・・もうお昼時でもあってラウンジはかなり混んでいる・・今日はビュッフェスタイルのようで色々様々な一品料理をフリーチョイス出来るようだ・・私達も彼らの列に並んでトレイを取って料理を選んでいく・・なかなか美味しそうな料理が並んでいて、結構迷う・・この頃には皆さんも私達に気付いて会釈してくれたり挨拶してくれたり、握手してくれたり肩を叩いてくれる人もいる・・トレイが結構大きめなので一品料理を2点選んで他にブレッドを取り、オレンジジュースとコーヒーを取った・・リサも一品料理を2つ選び、ライスと紅茶を採る・・2人で席を探していると皆さんが詰めてくれたので余裕で座れるようになる・・対面で座って食べ始めた処で、アナウンスが流れる・・。

・・つい先程に到着された私からランチバスケットが差し入れられた旨が知らされると、歓声と拍手が湧き起こってまた次々と握手を求められる・・中には料理の皿を選んで私達の傍に置く人もいる・・食べ切れないからと言って断っても、食べ切れなかったら自分達で食べるから心配ないと言う・・そして口々にこう言ってくれる・・自分達は最後まで貴方を応援しているから、と・・胸が熱くなってなかなか食べられない・・。

「・・やっぱり、ここで食べる事にして好かったね・・?・・」

「・・そうですね・・皆さんの温かい想いと言葉に感動しています・・」

・・一頻り盛り上がっていた騒ぎも収まって、ゆっくりと食事を楽しめるようになってくる・・落ち着いて食べてみると、ここのラウンジの料理も結構旨い・・ウチのラウンジの料理と比べても、それ程に遜色はない・・ここの厨房スタッフの腕も、かなり高いようだ・・デザレー・ラベル女史が左から来て会釈した・・。

「・・こんにちは、アドルさん・・おいで頂きまして、ありがとうございます・・そしてご協力にも感謝します・・」

・・そう言って、私の左隣に座る・・。

「・・どう致しまして・・まだ食べてるけど、すみませんね・・」

「・・とんでもありません・・どうぞ、ごゆっくりお食事なさって下さい・・それに、また差し入れをどうもありがとうございました・・一つだけ頂きましたが、とっても美味しいサンドイッチでした・・ご馳走様でした・・」

「・・どう致しまして・・皆さん、働き詰めですからね・・少しでも癒されて欲しいですから・・」

「・・本当にありがとうございます・・お食事が終わりましたら、控室の方にご案内致しますので・・」

「・・ありがとう・・お昼はもう食べたの・・?・・」

「・・いえ、まだなんですけれども・・あの通り、まだ混んでいるので・・」

・・そう言って彼女は、トレイを手にして並んでいる列を見遣る・・。

「・・でしたら、これ・・如何ですか・・?・・まだ手は付けてないですから・・いや、皆さんから料理のカンパが凄くてですね・・食べ切れないんですよ・・なので・・まだ食べてないんでしたら、食べて下さい・・私達より皆さんの体調の方が大事ですし、心配ですよ・・さっ、どうぞ・・」

・・そう言って一品料理の皿を3つ選んで彼女の前に置き、まだ使っていないフォークとスプーンを取って彼女に差し出す・・。

「・・ありがとうございます、アドルさん・・実はもう本当にお腹が空いていて・・食事をする暇も無い位に忙しいんです・・」

・・そう言って、フォークとスプーンを私から受け取る・・。

「・・そうなんでしょうね・・もうすぐ生配信も始まりますから・・さっき貴女が来た時に、少し足元が覚束なかったし・・顔色もあまり良くなかったですから、心配したんですよ・・血糖値も下がってるんでしょうね・・でしたら、先ずこれを飲んで下さい・・まだ手は付いていないですから・・」

・・そう言って、オレンジジュースで満たされたグラスも彼女の前に置く・・。

「・・ありがとうございます・・頂きます・・」

・・そう言うと彼女は、ジュースを一息で半分程飲んでから食べ始める・・。

「・・それで・・他の艦長達は、もう来てるんですか・・?・・」

「・・はい・・ハイラム・サングスター艦長と、ヤンセン・パネッティーヤ艦長と、ザンダー・パスクァール艦長が既にお見えになって、控室に入られています・・」

「・・4人目ね・・もう昼飯は食ったって・・?・・」

「・・はい・・済ませて来られた、との事でした・・」

「・・君が3人とも応対したの・・?・・」   「・・はい・・」

「・・そうですか・・プロデューサーもディレクターも、もっと人数を増やした方が良いね・・このままだと、誰かが倒れちゃうよ・・次にこちらの社長と話す機会があったら、言ってみますよ・・」

「・・ありがとうございます・・」

「・・僕等の控室は、10人で一緒なの・・?・・」

「・・いいえ、とんでもない・!・ちゃんと10部屋を用意させて頂いております・・!・・」

「・・あ・・いや、別に僕は10人一緒でも良かったんですよ・・話が出来るからね・・そう、僕は営業マンでもあるので、人との会話は好きな方ですから・・」

「・・そうでしたか・・」

・・その後は、取り立てて話もせずに食事を進めて、食べ終えた・・ナプキンで口を拭ってコーヒーに口を付ける・・ブレンドだが、結構旨い・・。

「・・こちらのラウンジの料理は、コーヒーも含めて結構美味しいですよね・・どうもご馳走様でした・・堪能させて頂きました・・」

「・・どう致しまして・・ありがとうございます・・楽しんで頂いて、良かったです・・それでは、控室の方にご案内させて頂きますね・・?・・」

「・・もう食べなくて好いんですか・・?・・私なら、大丈夫ですよ・・待ちますから・・」

「・・いえ、もう充分に頂きました・・お気遣いをどうもありがとうございます・・それでは、参りましょう・・」

・・3人とも立ち上がって自分の食器を返却口に返しに行こうとするのだが、人で混んでいてなかなか行けない・・すると、周りの人が私達の食器を受取って手渡しリレーで返却口まで返してくれた・・本当にここの人達は、気持ちの好い人達だと思う・・。

・・皆さんにお礼を述べてラウンジから退室した私達は、ラベル女史に案内されて私のネームタグがドアに貼られている控室(楽屋?)に通される・・。

「・・衣装は、今お召しになられているもので大丈夫ですか・・?・・」

「・・ええ、このまま出ます・・」

「・・分かりました・・それでは、13:10にメイクの者が参ります・・その後13:30か35の頃に迎えの者が参りまして、スタジオにご案内致しますので、どうぞ宜しくお願い致します・・」

「・・こちらこそ、宜しくお願いします・・」

・・一礼して彼女は退がる・・私はソファーに座ってプレミアム・シガーとライターを取り出す・・リサさんも対面のソファーに座る・・灰皿を引寄せて火を点け、最初の一服を燻らせる・・。

「・・メイクの人が来るまで、10分チョットか・・と言う事は、もう全員が集まってるんだろうね・・司会は多分、マルセルさんがやるんだろうな・・」

「・・今日集まる艦長さん達の中で、気になる人はいますか・・?・・」

「・・ハイラム・サングスター氏は別格だから除くとして・・その他で言うと・・やはり一度会った事のあるヤンセン・パネッティーヤ氏・・もう1人挙げるなら・・ザンダー・パスクァール氏かな・・?・・」

・・そう言って、一服喫って燻らせる・・。

「・・皆さんにもサングスターさんに対しては、別格意識があるでしょうか・・?・・」

「・・そりゃあ、あるだろうねえ・・国民的な英雄と言っても良い位の人だからね・・かと言って・・彼に対して阿るような感情的な雰囲気があるとも思えないが・・皆、超難関を突破して艦長の座を掴んだ・・運の強さだけなら自分が最強と言う自負はあるだろうから・・人に対して遠慮や阿りは無いと思うね・・」

「・・まとめられるでしょうか・・?・・」

「・・?・・まとめる必要もまとまる必要も無い・・まとめられるとも思ってない・・ただお互いに対抗せず邪魔をせず・・ほんの少し融通を効かせて・・ちょっとずつ協力し合えば、全員が儲かって得になる・・それだけ解って貰えれば好いよ・・」

・・そう言って、またもう一服喫って蒸した・・。

「・・やっぱり、貴方がリーダーになるべきなのではありませんか・・?・・」

「・・これはここだけの話だ・・リサ・・副長にも誰にも言わないでくれ・・?・・」

「・・はい・・言いません・・」

「・・もしもリーダーを立てる必要が出て来た場合にはやはり、ハイラム・サングスター艦長に立って貰おうと思う・・出来れば艦隊と言う体は採りたくないし、権威的な指揮統率系統を敷きたくはないんだ・・尊重と敬意で協力し合うのがベターだよ・・その中で俺はまあ、戦術立案を担当する参謀の端くれって処だな・・でもまあ、こればっかりは始まってみなけりゃ誰にも分らないよ・・だから今日のインタビューと対談が、その為の第一歩って訳だ・・な・・?・・」

・・そう言って、もう一服喫って蒸す・・。

「・・分かりました・・」

・・リサ・ミルズに、私の発言や意向を他人に洩らすつもりなど、毛頭にも無いのだが・・彼女はセカンド・トップミーティングの時から、私の発言を自分の携帯端末に録音している・・。

・・一本のプレミアム・シガーを喫い終って揉み消してから数分でドアがノックされ、応えるとメイクの人が道具を持って入って来る・・無言でのお任せタイムが始まる・・が・・それも数分で終わった・・。

(・・いよいよだな・・)

・・座り直して上体を直立させ、瞑想に入る・・落ち着かせて意識を明るく保つ為だ・・リサが何も言わないのは助かる・・そのまま暫く過ごしたが、またドアがノックされて中断を余儀なくされる・・入って来たのは若い女性スタッフだ・・。

「・・お待たせ致しました・・アドル・エルクさん・・予定の時刻には少し早いのですが、準備が整いましたのでこれからスタジオにご案内致します・・そこで本日司会を務めます、マルセル・ラッチェンスプロデューサーよりお話がございます・・それでは、こちらへどうぞ・・」

・・立ち上がって自分の状態を鏡に映して確認してから、彼女に続いてスタジオに向かう・・やはり5階でリフトからは降りて、両開きのドアを開いて中に入った・・。

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