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・・・『始動』・・・

・・『ディファイアント』・・5・・

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「・・さて皆さん・・こちらが、天体精密測定観測室と総合精密分析室と士官室のデッキです・・ブリッジのセンサーシステムで、不審な現象を捉えて種々様々なデータを採取し、分析を加えて表示させたとしても、その現象の詳細を直ぐには解明できなかった場合に、この天体精密測定観測室のシステムで改めて現象を捉え直してデータを採取し直し、隣の総合精密分析室で改めて分析し直す事で、捉えた現象の詳細な解明を試行します・・」

・・マルセルさんはそこで言葉を切ったので、私が後を引き取る形で口を開いた・・。

「・・正式名称では長いですので、天体測定ラボと・・単に分析室と呼ぶ事にします・・そしてここの責任者になる人が、今日はまだ来ていませんがパティ・シャノン天体観測室長です・・ここはまあ、レベルを上げただけの観測と分析の施設ですので、あまり説明できる事も無いでしょう・・それよりもこの士官室なのですが・・士官室と呼ぶのもどうかと思いますが・・この殺風景さはどうにかしたいので・・どうしようかな・・そうだ・!・今日は曲がりなりにも初めて全員が集まる日ですので、私の同僚達も入れさせて貰って集合写真を撮りましょう・・その画像を大き目のプリントパネルに仕上げて、こことラウンジとブリッジと機関室にも飾りましょう・・」

「・・それは好いアイデアですね・・今日は私達が初めて全員集合した日ですから、しっかりと記憶にも記録にも残すようにしましょう・・」

・・アーレン・ダール医療部長に褒められた・(笑)・・マルセルさんも傍に来て言う・・。

「・・私も好いアイデアだと思います・・見学が終わって会見が始まるまでに、『ディファイアント』の皆さんが全員集合されたら、こちらからカメラマンを差し向けますので好い画像を撮りましょう・・」

「・・ありがとうございます・・お気遣いに感謝します・・」

「・・それでは、次のデッキに移動しましょうか・・?・・」

「・・そうですね・・行きましょう・・」

「・・デッキ5・・」

「・・さて、医療活動と医療研究に従事される皆さんに於かれては、お待たせしました・・この第5デッキの総てが医療部です・・皆さんの1人1人それぞれに、オフィス・・診療室・・処置室・・手術室・・研究室があります・・共有の施設としては、会議室・・休憩室・・実験室・・仮眠室があります・・アシスタントクルーには共有ですが、休憩室・・待機室・・仮眠室・・オフィスがあります・・その他には、救命救急処置室と・・ICUを含む入院病棟です・・どうぞ、お入りになって存分に観られて触られて動かしてみて下さい・・パワーが来ておりませんので、機械設備や機器は動かせませんが・・パネルは通電させられますので・・皆さんのオフィスや診療室の固定端末やメインパネルの初期設定ぐらいは出来ます・・どうぞ、ごゆっくり観られて下さい・・」

「・・マルセルさん、そこまで説明して下さって、どうもありがとうございます・・私はどうも、医療施設には明るくないもので・・」

「・・いや、アドルさん・・このくらいの説明は、私達に共通のマニュアルにも書いてあります・・もっとレベルの高い医療情報は、彼らそれぞれに割り当てられた各種の端末に収められていて・・それは我らが読んだとしても、解らないでしょう・・」

・・アーレン・ダール医療部長を先頭に、全員が施設に入って実に細々(こまごま)と観て廻っている・・もうそれぞれに専用のオフィスも施設も決められているようだ・・彼らの表情を秘かに伺っていると、驚嘆されているような節が多い・・診察希望者の待合室は、さっき観た士官室よりも広くて暖かい雰囲気だ・・紙コップを取り、ドリンクディスペンサーに水を出させると手近なベンチに座る・・皆も思い思いに座ったが、私の右にシエナが座ると左にリサが座る・・ハンナは私の右前に・・ハルは私の左後ろに・・フィオナは私の真後ろに座った・・。

「・・僕はこれで3回目の見学だけど・・何だか観る度毎に充実していくよね・・ゲームの安全プロトコルを考えるなら、こんなに充実した多種多様な最新の施設や設備・・こんなに優秀な人達がこの人数で本当に必要なのかどうか・・甚だ疑問にも思うんだけどね・・これもまあ、備えあれば何とやらって事なんだろうかな・・?・・」

「・・安全性が高くなるなら、皆も安心して参加できますよね・・」

・・と、ハルが言う・・。

「・・たまに覘きに来ても、治療を受けに来ているクルーは外傷の患者だけで、それも軽い擦り傷・切り傷・打ち身や捻挫程度のものだったら、名立たるドクター達も暇を持て余すだろうかな・・?・・ああ・・今、思い付いたけど・・司令部と医療部で話をして、クルーの乗艦基準とか体調自己管理とか、こんな症状がある場合には医療室にて受診すべしとかなどの、ガイドラインと言うのかな・?・設定する必要があるだろうね・・朝起きて、熱が何度以上あったら・・お腹が痛くて倦怠感が酷かったら・・司令部の誰かに報告するとかね・・無理そうなら乗艦しない事を自分でも判断して、私なり副長なり参謀なりに連絡する・・具体的な手順だね・・医療部と話し合って、決める必要があるだろうね・・それで・・改めて君達5人に頼みたい・・もう開幕迄時間が無いから、会談をセットアップして検討事項を煮詰めていくと言う事に時間を割けられない・・だから・・サイバークラウドスペースに、『ディファイアント』全乗員と、今日ここに来ている私の同僚達も参加する機密性の高い会議室をを設定してくれ・・と同時に同じ機密性の高さで、司令部メインスタッフ・・機関部・・保安部・・観測室・・センサーグループ・・補給支援部・・生活環境支援部・・砲術ミサイル管制部・・パイロット候補生グループ・・医療部・・厨房・・バーテンダーグループ・・それぞれにも独自の会議室の設定を頼む・・その上で、専門部同士で討議する場としての会議室をも、最上級の機密レベルで設定してくれ・・悪いと思うけど、これは明日の午前中一杯に頼む・・僕とリサは明日の朝一番から、3社合同でのオンライン・セカンド・トップミーティングがあるから・・それが終わったらリサを合流させる・・好いかな・・?・・」

「・・分かりました・・」 「・・了解です・・」 「・・任せて下さい・・」

「・・アドルさん・・それらとはまた別ですが、保安上の見地からも、安全プロトコルは検証する必要があると思います・・」

・・と、フィオナも言う・・。

「・・同感だね・・副長と医療部長と保安部長とで・・少しずつでも不定期にでも好いから、検証作業を進めて下さい・・」

「・・分かりました・・」

・・と、副長が応える・・。

「・・それと・・戦闘に因って被る艦のダメージレベルと・・それに対応して艦の内外で発生する具体的な被害の状況や現象に附いての想定と・・その想定に対しての検証を、参謀とセンサーと保安部とで少しずつでも進めて下さい・・言い方を換えれば・・艦の何処を撃ち抜かれたら、火災が発生するのか・?・誘爆が起こるのか・?・と言う事の想定と検証だね・・データが多岐・多様に亘るようなら、観測室と分析室を使っても良いから・・」

「・・分かりました・・」

・・と、これには参謀が応えた・・。

「・・皆、忙しくさせちゃって済まないね・・」

「・・大丈夫です・・1週間に2日間だけですから・・」

・・と、副長がそう言い・・、

「・・その2日間・・アドルさんと一緒に居られる事の方が嬉しいですし、大事です・・」

・・と、ハル参謀がそう応えた・・。

「・・皆・・本当にありがとう・・」

・・そう言って水を飲み干すと紙コップを潰して捨てる・・座り直して副長を軽く見遣ると、話を換えた・・。

「・・シエナ・・最近、思い出したんだけどさ・・?・・」

「・・はい・・?・・何でしょう・・?・・」

「・・『恋は不思議色』って、君のデビュー曲だったよね・・?・・」

「・・え?・・えっ??!・・どうして知ってるんですか・・?・・」

「・・いや、どうしてって・・俺、あの曲結構好きなんだよね・・でも君のデビュー曲だって思い出したのは、つい最近なんだよ・・あの頃の君ってハスキーな声だったんだね・・楽曲はアイドルポップスだったけど、歌詞とメロディーの結構切ない感じが好くて、今でも好きだよ・・今度、一緒に歌おうな・・?・・」

「・・え?・は・?・あの・・アドルさん・・今更デビュー曲は・・憶えてはいますけど・・歌うのは恥ずかしいですよ・・」

「・・いや・・今歌う方がシエナらしく、魅力的に艶っぽく歌えると思うよ・・今度ギターを持った時に、やってみよう・・?・・」

・・そう言うとシエナ・ミュラーには珍しく、かなり赤くさせた顔色を両手で隠して俯いた・・。

・・大体この位の頃合いで、医療部施設の中を様々に観て廻っていたドクター達と、アシスタントスタッフ達が待合室に出て来たので、私は立ち上がって彼らに席を空ける・・皆も立ち上がって席を空け、彼らには中央部に座って貰った・・。

「・・如何でしたか、皆さん・?・『ディファイアント』の医療部は・・?・・」

「・・いや、申し分ありませんね・・アドルさん・・これ程に最新のシステムや機器を・・これ程コンパクトに機能的にまとめてレイアウトしている医療施設は、観た事がありません・・一つのデッキの中だけの医療施設ですけれども、どんな最新の総合病院にも匹敵する機能であり、性能でもあり、能力も持ち合わせていると観ました・・」

・・と、アーレン・ダール医療部長が感動したように応える・・。

「・・皆さんそれぞれに専用のオフィスや診療室などは如何でしたか・・?・・」

「・・これも全く申し分ありませんね・・あの個室が貰えて、この職場で働けるんでしたら、直ぐに家族と一緒に引っ越して来ますよ・・週に2日しかここに居られないのが、本当に残念です・・家族の写真位、オフィスのデスクに置けませんかね・・?・・」

・・と、アトゥール・ビリングス副部長が残念そうに言う・・。

「・・それぐらいは許可するように交渉しましょう・・」

・・と、マルセルさんが口添えを約束した・・。

「・・皆さんそれぞれに専用の固定端末とか、パネルの初期設定などは進みましたか・・?・・」

「・・はい・・ここに出て来るまでに、皆の状況を取りまとめました・・私達それぞれ専用に割り振られて宛がわれている、オフィス・・診療室・・処置室・・研究室の固定端末とメインパネルのOSと基本的なアプリの最上層初期設定は終わりましたが・・手術室のメインパネルには手を付けられませんでした・・また、共用施設の中の端末やパネルには、まだ全く手が付いていません・・」

「・・分かりました・・焦らなくても、慌てなくても、急かなくても大丈夫でしょう・・まさか出航早々にケガ人が出るとも思えませんし・・出たとしても、救急箱が一つあれば充分に対応できるでしょう・・しかしながら医療部長・・開幕して出航するまでに、基本的なクルーの医療的乗艦基準のガイドラインは設定したいのですが、如何せんもう討議に時間を割けそうにありません・・ですので・・明日、司令部が担当してサイバークラウドスペースに機密性のレベルを最高級に設定した会議室を、15個開設します・・その中の一つを使い、司令部と医療部でこのガイドラインに附いての討議を行いましょう・・明日の午前中には総ての会議室の設定が終わりますので、皆さんには先ず医療部の会議室に入って待機して頂き・・その後専門部門同士の会議室に皆さんをご招待しますので、その中に入って頂いて討議を始めましょう・・申し訳ないのですが、私は明日の午後14: 00から男性艦長10人に対してのインタビューとパネルディスカッションの生配信番組に出演しますので、討議の取りまとめは副長とリサさんと参謀に一任します・・顔を出せるようでしたら短時間でも出したいと思いますが、何卒宜しくお願いします・・」

「・・分かりました、アドルさん・・ご丁寧で詳細な段取りの説明をありがとうございます・・ご提案の通りに、会議室での討議に参加させて頂きます・・それと我々医療部としても、開幕して出航する前までに出来得る限りセットアップを進めたいと思っておりますので、こちらこそ宜しくお願いします・・」

・・と、医療部長はそう言い切って会釈した・・。

「・・ありがとうございます、ドクター・・他に現時点で言える質問・疑問・改善点・改良点・要望等はありますか・・?・・」

「・・先程副部長も申し上げましたが、写真はデスクに置きたいですね・・その他の私物の持ち込みに附いての要望はありませんので・・」

「・・分かりました・・その点に付いては交渉してみます・・」

・・と、マルセルさんが前向きに応える・・。

「・・宜しくお願いします・・」

「・・アーレン・ダール医療部長・・私は参謀のハル・ハートリーです・・宜しくお願いします・・」

「・・ご丁寧にありがとうございます・・ハル・ハートリー参謀・・こちらこそ、宜しくお願いします・・」

「・・これは司令部から医療部への要望なのですけれども、全クルーが定期的に健康診断を受けられる体制の構築・設定を宜しくお願いします・・出来れば半年に一回の頻度で受けられる体制を作って頂ければ嬉しいです・・」

「・・分かりました、ハル・ハートリー参謀・・鋭意検討して、早くその体制の構築・設定が終わるように取り組みます・・」

「・・ありがとうございます・・宜しくお願いします・・」

「・・それでは皆さん、そろそろ次のデッキに移動しましょう・・」

・・と、マルセルさんがそう言って、また全体として動き始める・・。

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