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・・・『始動』・・・

・・アーネット芸能プロダクション・・3・・

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・・ウィル・アーネットは食堂奥の厨房で、サポートシェフ達と一緒に腕を振るっている・・私は屋上に出て、一服点けた・・風は無く晴れているので、体感温度はそれほど低く感じない・・シエナ・ミュラー、ハンナ・ウェアー、パティ・シャノン、カリーナ・ソリンスキー、エドナ・ラティス、ミーナン・ヘザーも一緒に屋上に出ていた・・。

「・・君達はどうして屋上にまで出て来ているんだ・・?・・寒いから中に入りなさい・・風邪を引くといけないから・・」

「・・アドルさん・・善い話をして下さって、ありがとうございました・・ウィルにアドルさんを引き会わせれば、彼が成長する切っ掛けになると思っていましたが・・これ程のお話をして頂けるとは思っていませんでした・・改めて、本当にありがとうございました・・これで彼も新しいアーネットの社長として、立ってくれるようになるでしょう・・」

・・そう言って、シエナが頭を下げる・・。

「・・大した話はしてないよ・・人を褒めて煽てて動かそうってのは、得意とする操作術だけどね・・もしかしてさっきの話、部屋の外にも聴こえていた・・?・・」

「・・ええ・・」・・と、ハンナが応える・・。

「・・やっぱりな・・それが判っていたら、もっと違う話し方をしたんだが・・」

「・・私達は、皆・・アドルさんに、惚れ直しました・・」

「・・ああ・・開幕したら、じっくりと俺の正体を見定めれば好いよ・・」

・・そう言うと、喫っていた煙草を携帯灰皿の中で揉み消して、コートのポケットに入れてから皆を振り向く・・。

「・・さあ、入ろう・!・寒い寒い・!・風邪ひいちまう・・」

・・そう言って皆を促して1階の食堂まで降りる・・。

「・・あー・寒かった寒かった!・・暖かいねえ、部屋の中は・・!・・ああ、そうだ、シエナ・・明日はエレインの誕生日なんだよ・・!?・・」

「・・エレイン・・?・・ああ、エレイン・ヌーン・!・機関部要員ですね・・?・・」

「・・そう・・だから、彼女も明日の面談昼食会に参加するように、リーアを通じて連絡を執ってくれ・・それと、VIPラウンジの厨房の人に、バースデーケーキを注文してくれ・・どんなケーキかは、君に任せるから・・それと、君とハンナとハルとで、全クルーの誕生日は記憶してくれ・?!・好いかな・・?・・」

「・・はい、分かりました・・」   「・・了解しました・・」

「・・誕生日プレゼントは、ちょっともう、何が好いか判らないから、発表会見が終わった後で彼女を連れて買い物に行こう・・それと、パティ・・3月1日は開幕して2日目なんだけど・・ミアの誕生日なんだよ・・?・・」

「・・ミア・?・ミア・カスバートですね・?・分析スタッフの・・?・・」

「・・そうだ・・そこで、初出航記念艦内親睦パーティーの実行員会に対して要請したい・・企画の一つとして、ミア・カスバートの誕生会を入れてくれ・・そして、バースデーケーキと誕生日プレゼントの用意もね・・頼めるかな・・?・・」

「・・はい、分かりました、お任せ下さい・・でも、アドルさん・・私が実行委員長って、よく判りましたね・・?・・」

「・・ああ、これも勘だ・・当てずっぽうだ・・詳しくは訊くな・・俺も明快には答えられない・・」

「・・アドルさん・・貴方はどうしてそんなに・・凄いと言うか、素晴らしいんですか・・?・・私達のリーダーとしても、異性としても・・最高の人です・・」

「・・ああ、分かったよ、ハンナ・・そんなに褒めても何も出ないからさ・・それより、3月8日はモアナの誕生日なんだけど、任せても好いな・・?・・」

「・・はい、分かりました・・お任せ下さい・・モアナ・セレン・・右舷のミサイルオペレーターですね・・分かりました・・しっかり準備します・・」

「・・頼んだよ・・」

・・そこまで言った時に、ウィリアム・アーネットシェフがワゴンを押して厨房から出て来た・・。

「・・お待たせ致しました、アドルさん・・今出来ましたので、どうぞお座り下さい・・どうぞ、ごゆっくりとご賞味ください・・」

「・・ああ、ありがとう、ウィル・・君の心が込められたもてなしだから、私も誠実に食べて味合わせて貰うよ・・だけど、皆は何を食べるんだい・・?・・私だけこんなに豪華な料理を振る舞われると、何だか気が引けるよ・・」

「・・アドルさん、ご心配には及びません・・弊社の厨房は、メイン・サブ・サイドメニューに至るまで充実しております・・そしてこの充実したメニューを支えるのが、父と私とで選び抜いた、全幅の信頼を寄せ得る調理陣なのです・・『食事が旨くないと仕事も上手くいかない』と言うのが、父の座右の銘でした・・そのお陰様も以ちまして、弊社所属の俳優・タレント・アーティストからの評価は、常時、高い水準で貰っております・・」

「・・へえ・・すごいな・・そうなのかい・・?・・」

「・・そうですよ・・はっきり言ってウチの食堂のメニューは、どれを取っても自慢です・・誰に対してもね・・」

・・そう言って、シエナやハンナも胸を張る・・私は微笑まし気に感嘆した・・。

「・・ほう~・・それじゃ今度ここにお邪魔させて貰った時には、皆のお奨めメニューを食べさせて貰う事にするよ・・でも、今はこれを頂きますね・・」

「・・ありがとうございます・・どちらからお召し上がり頂いても結構ですので、ご存分にご賞味ください・・」

・・そう言って、ウィルは退がった・・アクアコッタから頂く・・とても温まるスープ料理だ・・うん・・少し薄めたスープストックがベースだな・・使われている野菜や根菜やその他の具材もよく炒められているし、煮込まれてもいる・・味付けも程好いレベルだし、パンも充分に柔らかくなっている・・卵が入っている物を以前に食べた事があるが、これは使われていない・・パルミジャーラは、メランゼーネ・アッラ・パルミジャーラで・・食べるのはこれが2度目だ・・薄切りした茄子を揚げて、その上にも下にも中にもトマトソースとチーズを層状に乗せて、オーブンで焼いたものだ・・この料理は茄子の新鮮さが決め手だ・・新鮮でなければ旨味が出ない・・焼き加減も申し分ないし、当然ながら旨い・・そしてヴォンゴレ・・これはヴォンゴレ・ビアンコだ・・アサリとハマグリがふんだんに用いられている・・とても新鮮なものだ・・そしてパスタは、申し分のないアルデンテ・・アリソンのパスタの茹で加減とほぼ同じだ・・ウチの場合はアリシアが難色を示すので、オリーブオイルと塩の使用量は控え目にしているのだが、これは充分に使われているので茹で上がり時のパスタの締まり加減も、光沢のある艶に於いても充分なものだ・・あまり声は洩らさずに感嘆しながら食べていると、彼女達もメニューから選んで注文し、受け取って食べ始めている・・と・・ウィルが着換えて傍に来た・・。

「・・如何でしょうか?・アドルさん・?・久し振りの厨房でしたが、渾身に仕上げました・・」

「・・まあ座って、ウィル・・とても旨いよ・・それ以外の言葉も無いぐらいだよ・・どれを取ってもね・・これ程の腕なら、君はシェフとしても充分にマスターを張れる・・私が励ますまでもない・・余計なアドバイスだったな・・(笑)?・・」

「・・とんでもありませんよ、アドルさん・・アドルさんの言葉でやっと吹っ切れました・・本当にありがとうございました・・これからもご指導・ご鞭撻、宜しくお願いします・・」

「・・いや、俺はそんなに偉い者じゃないよ・・でも時々は寄らせて貰おうかな・?・ここのメインメニューに興味があるんでね・・ああそうだ・・家族3人で来ても良いかい・・?・・」

「・・勿論!・何時でも大歓迎ですよ、アドルさん・・予約して頂ければ、また渾身に腕を振るわさせて頂きますので・・どうぞ、ご期待ください・・」

「・・ありがとう・・家族とも相談して、予定を調整するよ・・」

「・・宜しくお願いします・・」

・・その時、1人の壮年の男性が2人の青年と1人の少年を連れて、食堂に入って来た・・。

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