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・・・『始動』・・・
・・フィオナ・コアー・・カリッサ・シャノン・・
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・・翌日(2/18)(水)・・
・・いつもの時間に出社した私は、ラウンジのカウンターで自分のコーヒーを淹れながら、スペシャル・ランチ・バスケット・クーポンのチケットを1枚切り取る・・。
・・ちょうどカウンターの中に誰もいなかったので声を掛けようとしたら、1人のウェイトレスがヒョイと顔を出したので、手招きした・・。
「・・おはよう!・・これ、頼むね・?!・・」
「・・おはようございます!・・分かりました!・・今日も頑張って下さい!・・」
・・ライト・ブラウンの髪をショート・ボブにした愛くるしい感じの若い娘が、明るい笑顔で挨拶してチケットを受け取ってくれる・・。
「・・ありがとう!・・」
・・そう応えてソーサーごとカップを持ち、4人が座っているテーブルに行って座る・・。
「・・おはよう・・皆、早いな・・一服良いか・・?・・」
「・・良いですよ、先輩・・お早うございます・・今日は早朝ミーティングですからね・・さっきカウンターで先輩からチケットを受け取った彼女、新人ですね・・昨日からいましたよ・・」
「・・お前、女の娘の事は目敏いよな・(笑)・それより2通目の手紙を準備しておけよ・・」
・・煙草を取り出して一本咥え、火を点ける・・。
「・・え~・?・脈、あるんですかね・・?・・」
「・・お前が脈を掴めるかどうかは、2通目の手紙に掛ってると思うぞ・・」
「・・分かりました・・書き始めます・・」
「・・お早うございます、アドルさん・・考えはまとまりましたか・・?・・」
・・と、リサさんがカバーカップから立ち昇る湯気を、顎に当てながら訊く・・。
「・・うん、まとまったよ・・その前に一つ報告する事もあるから、楽しみにしてて・・?・・」
・・コーヒーを飲みながら紫煙を燻らす・・。
「・・私には、まだ難しいですね・・よく分からない処もあります・・」
・・と、ズライ・エナオがミントティーを飲みながら眉を寄せる・・。
「・・まあね・・一昨日始まったばかりのプロジェクトだから、急展開も無いからさ・・暫くは皆の話をよく聴いて、自分なりに考えをまとめていけば好いと思うよ・・」
「・・分かりました・・ありがとうございます・・」
「・・まあ、一昨日の昨日ですからね・・3社合同トップ会談の、日程ぐらいは決まったんじゃないスかね・・」
・・そう言ってスコットが、自作のコーヒーを飲み干す・・。
「・・うん・・まあそんな処だろうな・・スコット・・お前も読めるようになってきたな・(笑)・・」
「・・伊達に3年半もの間、先輩の教えを賜わってないですからね・(笑)・」
「・・今日の昼飯・・バスケットだけじゃ足りないだろうから、何でも頼んで好いぞ・・」
「・・おありがとうございます・・」
「・・あのターリントンさん・・アドル係長に馴れ馴れしいですね・・と言うか、執着してるみたい・・」
・・マーリー・マトリンが熱いストレートティーに息を吹き掛けながら言う・・。
「・・俺は憶えていなかったんだけど、彼女は俺が営業本部に来てすぐの歓迎会に出ていたんだよ・・あの時4曲、弾き語りで歌ったからな・・」
「・・私もその歓迎会、出たかったですう・♡・・」と、マーリー・・。
「・・だから、アドル係長が艦長になる前からファンだったって言ってたんですね・・」と、ズライ・・。
「・・どおりで、先輩を観る女性社員の目が最初から多かったんだよな・・」
・・そう言って冷水も飲み干すスコットだった・・。
「・・さ、内輪の話はまた今度にして、そろそろ上がろう・・朝礼が始まるぞ・・」
・・そう言い、カップ・ソーサーを持って立ち上がる・・。
・・朝礼が終って10分後には、本社第1棟ビル3階A大会議室の大型円卓に、私達は着いていた・・エリック・カンデルチーフが立ち上がる・・ハーマン・パーカー常務は来ていない・・リサさんは私の右隣に、スコットは私の左に、マーリーはスコットの左に、ターリントン女史は私の対面に座っている・・。
「・・皆さん、お早うございます・・プロジェクトミーティング・セカンドです・・今回から私が議長を務めます・・先ず、ファーストからの経緯を報告し、説明します・・一昨日の午前中に常務と本部次長と私とで両社に対して連絡を執りまして、このビジネスプランについての説明をさせて頂き、宣伝と販売に於いて3社合同での業務提携をしませんかと申し入れました・・そして、この件について3社合同でのオンライン・リアルタイム・ビデオ・ミーティングを開催しましょうとも提案して、申し入れました・・更にその際当社としては、社長・副社長が陣頭に立って会談に臨みますとも申し上げました・・結果、両社からはともに好意的な対応を頂きました・・合同ミーティングについても、非常に好意的に受諾して頂きました・・直ぐに会談の日時についてもすり合わせを行いまして、明日の午前10時半の開始で、第1回目の会談を行いましょうと言う事での合意形成に至りました・・その際には是非とも、アドル・エルク係長にも同席して頂きたいとの要望を、両社からとも頂きました・・昨日までの経緯については以上です・・こちら側として明日の合同ミーティングの会場は、本社第1棟の第一役員待機室に設置します・・常務と本部次長と私から、アドル・エルク係長とリサ・ミルズ専任秘書に対して、合同会談への同席を要請します・・私からの最初の発言は以上です・・続いてアドル係長にお願いします・・」
・・チーフが座ったので、代わりに立ち上がる・・。
「・・皆さん、お早うございます・・お話に入ります前に、1つご報告します・・昨日『ディファイアント』の機関部長から報告がありまして、機関部の全員で『ディファイアント』撮影セットの見学を行ったそうです・・その際に案内を頂いた、マルセル・ラッチェンスマスタープロデューサーから、総ての個室にアイソレーション・タンクベッドを設置する事になったんだけれども、どこに置いたら好いだろうかとの助言を求められたそうです・・具体的な動きが加速しつつあるようだと感じました・・次に合同会談についてですが、喜んで同席させて頂きます・・私が出席する事で少しでもスムーズに物事が進められそうな可能性があるのでしたら、何時でも何にでも何処にでも出席させて頂くつもりでおります・・開幕まではこのアドル・エルクを何にでも使い倒して下さい・(笑)・・少しお待ちを・・」
・・そう言って座ると、デスクから持って来たPADに自分の携帯端末を接続し、携帯端末にダウンロードしておいた3社の株価動向データリンクをPADにダウンロードさせ、新たに3社の営業損益データリンクをブラウジングして表示させた上で、この会議室にある総てのPADと自分のPADを同期させた・・。
「・・今、同期させて頂きました・・6つのデータリンクが皆さんのお手許にも表示されて、内容をご確認頂けていると思います・・これらを踏まえ、基としてお話させて頂きます・・先ずこのビジネスプロジェクトの目的は、我が社として利益を挙げていくと言う事以上に、配信番組を出来得る限り長期化させていくと言う事と、アイソレーション・タンクベッド販売獲得シェアの拡大にあります・・これらに於ける理由については、ファーストの時にも関連してお話させて頂きました・・つまり、アイソレーション・タンクベッドを導入すれば参加20隻がファーストシーズンを全艦で生き延びられる可能性が高くなります・・生き延びられれば配信番組は、ほぼ確実にフォースシーズンまで続くでしょう・・視聴取率は高水準で推移を続けるでしょうし、『ディファイアント』と『ロイヤル・ロード・クライトン』が撃沈されるまではタンクベッドのCМも配信され続けますから、販売によってもたらされる利益を強く下支えし続けるでしょう・・そこで同期させて頂いた6つのデータリンクの表示内容を改めて踏まえますと、3社の中で資本力・資金力などの地力が強いのは、言うまでもなく我が社です・・ですのでこの現状に鑑みれば、我が社がアイソレーション・タンクベッドの売り上げによる利益に固執して、高い利益率を主張する必要はありません・・先に申し上げました2つの目的を成さしめるために、こちらで主張する利益率は低いレベルで設定した方が好いと思われます・・それでは、私から具体的な利益率を提案させて頂きます・・配信番組のファーストシーズンが終わるまでは15%・・セカンドシーズンが終わるまでは10%・・サードシーズンが始まって以降は5%・・と、このような変移利益率制で提案致します・・何故、ファーストシーズンを15%としたかと言いますと、開幕早々に戦艦や重巡宙艦と遭遇してしまった場合には、敢え無く撃沈されてしまう可能性が高くあります・・その場合には元が取れなくなりますので、最初だけ15%とさせて頂きました・・私からの提案はひとまず以上です・・」
・・そう言い終えると座って小さく咳払いをする・・水が欲しいな・・。
・・大きくはないが拍手が湧き起こる・・ウチのフロアのメンバーとアンバーさんは強く手を叩いていたが、2分程で静まる・・不意に会議室のメインモニターが点灯して、ハーマン・パーカー常務の姿が映し出される・・(やはり観ていたな)・・。
「・・皆さん、お早うございます・・参加はしておりませんでしたが、失礼して聴かせて頂いておりました・・ただいまのアドル係長の提案ですが、大変に感銘を受けました・・エリック・カンデルチーフも含めましてメンバーの皆さんに於かれては、考えて来て頂いた自分の意見を総て出し合って討議して頂きたいのは勿論ですが・・私からも提案させて頂けるのであれば、アドル係長の提案を敲き台として討議して頂ければ、とも思います・・外野から突然に割り込んでしまって申し訳ありませんでした・・ではチーフ・・宜しくお願いします・・」
・・言い終えて映像は切れた・・(・・事実上の支持表明かな・・?・・これで皆が話しずらくならなきゃ好いんだが・・)
・・チーフ・カンデルが、改めて立ち上がると同時に手を挙げる・・。
「・・アドル君・・」
「・・はい、改めて申し上げるまでもないと思いますが、メンバー全員の意見を出しましょう・・意見や主張を戦わせるのも、総合的に勘案するのも結構です・・私が最初に立ったのは、私の立場や役割として皆さんに報告すべき事もあったからです・・ですから、先ずは意見を出し合いましょう・・」
・・それだけ言って座ると、チーフ・カンデルが立ち上がる・・。
「・・私が言いたかったのも、アドル係長の発言とほぼ同じだ・・先ずは意見を出し合おう・・合同トップ会談は明日だが、今日の午前中はこの会議を続けても良い・・だから意見を出し合って、それを基に討議しよう・・」
・・それだけ言うとチーフも座る・・私はまた手を挙げて立たずに言った・・。
「・・それじゃあ、ラウンジに言って飲み物を持って来て貰いましょう・・私の端末でテキストエディターを出して廻しますから、飲み物と名前を入力して下さい・・戻って来たらそのままラウンジに向けてメッセージします・・喋りっ放しじゃ喉が渇きますからね・・それじゃ行きますよ・・」
・・そう言いながら飲み物と自分の名前を入力して、右隣のリサさんに渡す・・。
「・・アンヴローズ・ターリントン女史の意見を伺おう・・意見の説明が終ったら、次の人を指名して下さい・・」
・・と、チーフ・カンデルが座ったまま指名した・・。
「・・指名して頂きまして、ありがとうございます・・私は最初から最後まで10%の固定利益率制で提案します・・アドル係長はサードシーズン以降、5%で提案されましたが・・5%の利益率では宣伝・販売・輸送・配達の事務・実務コストを上回れない可能性が高くなります・・つまり、利益が出ない場合も出て来ると思います・・なので、10%の固定利益率制と言う事で提案します・・次は、リサ・ミルズさんにお願いします・・」
・・アンヴローズ・ターリントン女史は立ち上がって淀み無く説明し、リサさんを指名して着席した・・。
「・・リサ・ミルズです・・先ず、合同会談に呼んで頂きましてありがとうございます・・僭越ですが微力を尽くします・・私はアドル係長の意見に賛成し、全面的に指示します・・配信番組のサードシーズン以降に利益率を5%に変移させると、コストを上回る利益が出ない場合があるとの意見がありましたが、そのような事にはならないと思います・・ゲーム大会と配信番組は開幕前にも拘わらず全世界から注目されており、日々配信されるニュースの15%はこれらに関連する報道です・・開幕を迎えれば、注目度・関心、興味・報道のレベルも更に増大・上昇する事は疑いありません・・その中で『ディファイアント』は存続し続けますので、視聴取率は高水準で推移し、私達が配信するタンクベッドのCМも多くの人が観ます・・この会議の議題は利益率についてですが、宣伝とアフターケアも含めた販売を3社合同での提携業務とするならば、タンクベッドの販売単価を下げる事も3社で合意できるでしょう・・そしてタンクベッドを装備した21隻が存続する様子を多くの人が観るならば、配信番組のセカンドシーズンが終わるまでには・・例え利益率を5%に変移させても、コストを上回る利益を維持できると確信します・・以上の理由説明で、アドル・エルク係長の提案を支持します・・次は、ダグラス・スコットさんにお願いします・・」
・・いつもの時間に出社した私は、ラウンジのカウンターで自分のコーヒーを淹れながら、スペシャル・ランチ・バスケット・クーポンのチケットを1枚切り取る・・。
・・ちょうどカウンターの中に誰もいなかったので声を掛けようとしたら、1人のウェイトレスがヒョイと顔を出したので、手招きした・・。
「・・おはよう!・・これ、頼むね・?!・・」
「・・おはようございます!・・分かりました!・・今日も頑張って下さい!・・」
・・ライト・ブラウンの髪をショート・ボブにした愛くるしい感じの若い娘が、明るい笑顔で挨拶してチケットを受け取ってくれる・・。
「・・ありがとう!・・」
・・そう応えてソーサーごとカップを持ち、4人が座っているテーブルに行って座る・・。
「・・おはよう・・皆、早いな・・一服良いか・・?・・」
「・・良いですよ、先輩・・お早うございます・・今日は早朝ミーティングですからね・・さっきカウンターで先輩からチケットを受け取った彼女、新人ですね・・昨日からいましたよ・・」
「・・お前、女の娘の事は目敏いよな・(笑)・それより2通目の手紙を準備しておけよ・・」
・・煙草を取り出して一本咥え、火を点ける・・。
「・・え~・?・脈、あるんですかね・・?・・」
「・・お前が脈を掴めるかどうかは、2通目の手紙に掛ってると思うぞ・・」
「・・分かりました・・書き始めます・・」
「・・お早うございます、アドルさん・・考えはまとまりましたか・・?・・」
・・と、リサさんがカバーカップから立ち昇る湯気を、顎に当てながら訊く・・。
「・・うん、まとまったよ・・その前に一つ報告する事もあるから、楽しみにしてて・・?・・」
・・コーヒーを飲みながら紫煙を燻らす・・。
「・・私には、まだ難しいですね・・よく分からない処もあります・・」
・・と、ズライ・エナオがミントティーを飲みながら眉を寄せる・・。
「・・まあね・・一昨日始まったばかりのプロジェクトだから、急展開も無いからさ・・暫くは皆の話をよく聴いて、自分なりに考えをまとめていけば好いと思うよ・・」
「・・分かりました・・ありがとうございます・・」
「・・まあ、一昨日の昨日ですからね・・3社合同トップ会談の、日程ぐらいは決まったんじゃないスかね・・」
・・そう言ってスコットが、自作のコーヒーを飲み干す・・。
「・・うん・・まあそんな処だろうな・・スコット・・お前も読めるようになってきたな・(笑)・・」
「・・伊達に3年半もの間、先輩の教えを賜わってないですからね・(笑)・」
「・・今日の昼飯・・バスケットだけじゃ足りないだろうから、何でも頼んで好いぞ・・」
「・・おありがとうございます・・」
「・・あのターリントンさん・・アドル係長に馴れ馴れしいですね・・と言うか、執着してるみたい・・」
・・マーリー・マトリンが熱いストレートティーに息を吹き掛けながら言う・・。
「・・俺は憶えていなかったんだけど、彼女は俺が営業本部に来てすぐの歓迎会に出ていたんだよ・・あの時4曲、弾き語りで歌ったからな・・」
「・・私もその歓迎会、出たかったですう・♡・・」と、マーリー・・。
「・・だから、アドル係長が艦長になる前からファンだったって言ってたんですね・・」と、ズライ・・。
「・・どおりで、先輩を観る女性社員の目が最初から多かったんだよな・・」
・・そう言って冷水も飲み干すスコットだった・・。
「・・さ、内輪の話はまた今度にして、そろそろ上がろう・・朝礼が始まるぞ・・」
・・そう言い、カップ・ソーサーを持って立ち上がる・・。
・・朝礼が終って10分後には、本社第1棟ビル3階A大会議室の大型円卓に、私達は着いていた・・エリック・カンデルチーフが立ち上がる・・ハーマン・パーカー常務は来ていない・・リサさんは私の右隣に、スコットは私の左に、マーリーはスコットの左に、ターリントン女史は私の対面に座っている・・。
「・・皆さん、お早うございます・・プロジェクトミーティング・セカンドです・・今回から私が議長を務めます・・先ず、ファーストからの経緯を報告し、説明します・・一昨日の午前中に常務と本部次長と私とで両社に対して連絡を執りまして、このビジネスプランについての説明をさせて頂き、宣伝と販売に於いて3社合同での業務提携をしませんかと申し入れました・・そして、この件について3社合同でのオンライン・リアルタイム・ビデオ・ミーティングを開催しましょうとも提案して、申し入れました・・更にその際当社としては、社長・副社長が陣頭に立って会談に臨みますとも申し上げました・・結果、両社からはともに好意的な対応を頂きました・・合同ミーティングについても、非常に好意的に受諾して頂きました・・直ぐに会談の日時についてもすり合わせを行いまして、明日の午前10時半の開始で、第1回目の会談を行いましょうと言う事での合意形成に至りました・・その際には是非とも、アドル・エルク係長にも同席して頂きたいとの要望を、両社からとも頂きました・・昨日までの経緯については以上です・・こちら側として明日の合同ミーティングの会場は、本社第1棟の第一役員待機室に設置します・・常務と本部次長と私から、アドル・エルク係長とリサ・ミルズ専任秘書に対して、合同会談への同席を要請します・・私からの最初の発言は以上です・・続いてアドル係長にお願いします・・」
・・チーフが座ったので、代わりに立ち上がる・・。
「・・皆さん、お早うございます・・お話に入ります前に、1つご報告します・・昨日『ディファイアント』の機関部長から報告がありまして、機関部の全員で『ディファイアント』撮影セットの見学を行ったそうです・・その際に案内を頂いた、マルセル・ラッチェンスマスタープロデューサーから、総ての個室にアイソレーション・タンクベッドを設置する事になったんだけれども、どこに置いたら好いだろうかとの助言を求められたそうです・・具体的な動きが加速しつつあるようだと感じました・・次に合同会談についてですが、喜んで同席させて頂きます・・私が出席する事で少しでもスムーズに物事が進められそうな可能性があるのでしたら、何時でも何にでも何処にでも出席させて頂くつもりでおります・・開幕まではこのアドル・エルクを何にでも使い倒して下さい・(笑)・・少しお待ちを・・」
・・そう言って座ると、デスクから持って来たPADに自分の携帯端末を接続し、携帯端末にダウンロードしておいた3社の株価動向データリンクをPADにダウンロードさせ、新たに3社の営業損益データリンクをブラウジングして表示させた上で、この会議室にある総てのPADと自分のPADを同期させた・・。
「・・今、同期させて頂きました・・6つのデータリンクが皆さんのお手許にも表示されて、内容をご確認頂けていると思います・・これらを踏まえ、基としてお話させて頂きます・・先ずこのビジネスプロジェクトの目的は、我が社として利益を挙げていくと言う事以上に、配信番組を出来得る限り長期化させていくと言う事と、アイソレーション・タンクベッド販売獲得シェアの拡大にあります・・これらに於ける理由については、ファーストの時にも関連してお話させて頂きました・・つまり、アイソレーション・タンクベッドを導入すれば参加20隻がファーストシーズンを全艦で生き延びられる可能性が高くなります・・生き延びられれば配信番組は、ほぼ確実にフォースシーズンまで続くでしょう・・視聴取率は高水準で推移を続けるでしょうし、『ディファイアント』と『ロイヤル・ロード・クライトン』が撃沈されるまではタンクベッドのCМも配信され続けますから、販売によってもたらされる利益を強く下支えし続けるでしょう・・そこで同期させて頂いた6つのデータリンクの表示内容を改めて踏まえますと、3社の中で資本力・資金力などの地力が強いのは、言うまでもなく我が社です・・ですのでこの現状に鑑みれば、我が社がアイソレーション・タンクベッドの売り上げによる利益に固執して、高い利益率を主張する必要はありません・・先に申し上げました2つの目的を成さしめるために、こちらで主張する利益率は低いレベルで設定した方が好いと思われます・・それでは、私から具体的な利益率を提案させて頂きます・・配信番組のファーストシーズンが終わるまでは15%・・セカンドシーズンが終わるまでは10%・・サードシーズンが始まって以降は5%・・と、このような変移利益率制で提案致します・・何故、ファーストシーズンを15%としたかと言いますと、開幕早々に戦艦や重巡宙艦と遭遇してしまった場合には、敢え無く撃沈されてしまう可能性が高くあります・・その場合には元が取れなくなりますので、最初だけ15%とさせて頂きました・・私からの提案はひとまず以上です・・」
・・そう言い終えると座って小さく咳払いをする・・水が欲しいな・・。
・・大きくはないが拍手が湧き起こる・・ウチのフロアのメンバーとアンバーさんは強く手を叩いていたが、2分程で静まる・・不意に会議室のメインモニターが点灯して、ハーマン・パーカー常務の姿が映し出される・・(やはり観ていたな)・・。
「・・皆さん、お早うございます・・参加はしておりませんでしたが、失礼して聴かせて頂いておりました・・ただいまのアドル係長の提案ですが、大変に感銘を受けました・・エリック・カンデルチーフも含めましてメンバーの皆さんに於かれては、考えて来て頂いた自分の意見を総て出し合って討議して頂きたいのは勿論ですが・・私からも提案させて頂けるのであれば、アドル係長の提案を敲き台として討議して頂ければ、とも思います・・外野から突然に割り込んでしまって申し訳ありませんでした・・ではチーフ・・宜しくお願いします・・」
・・言い終えて映像は切れた・・(・・事実上の支持表明かな・・?・・これで皆が話しずらくならなきゃ好いんだが・・)
・・チーフ・カンデルが、改めて立ち上がると同時に手を挙げる・・。
「・・アドル君・・」
「・・はい、改めて申し上げるまでもないと思いますが、メンバー全員の意見を出しましょう・・意見や主張を戦わせるのも、総合的に勘案するのも結構です・・私が最初に立ったのは、私の立場や役割として皆さんに報告すべき事もあったからです・・ですから、先ずは意見を出し合いましょう・・」
・・それだけ言って座ると、チーフ・カンデルが立ち上がる・・。
「・・私が言いたかったのも、アドル係長の発言とほぼ同じだ・・先ずは意見を出し合おう・・合同トップ会談は明日だが、今日の午前中はこの会議を続けても良い・・だから意見を出し合って、それを基に討議しよう・・」
・・それだけ言うとチーフも座る・・私はまた手を挙げて立たずに言った・・。
「・・それじゃあ、ラウンジに言って飲み物を持って来て貰いましょう・・私の端末でテキストエディターを出して廻しますから、飲み物と名前を入力して下さい・・戻って来たらそのままラウンジに向けてメッセージします・・喋りっ放しじゃ喉が渇きますからね・・それじゃ行きますよ・・」
・・そう言いながら飲み物と自分の名前を入力して、右隣のリサさんに渡す・・。
「・・アンヴローズ・ターリントン女史の意見を伺おう・・意見の説明が終ったら、次の人を指名して下さい・・」
・・と、チーフ・カンデルが座ったまま指名した・・。
「・・指名して頂きまして、ありがとうございます・・私は最初から最後まで10%の固定利益率制で提案します・・アドル係長はサードシーズン以降、5%で提案されましたが・・5%の利益率では宣伝・販売・輸送・配達の事務・実務コストを上回れない可能性が高くなります・・つまり、利益が出ない場合も出て来ると思います・・なので、10%の固定利益率制と言う事で提案します・・次は、リサ・ミルズさんにお願いします・・」
・・アンヴローズ・ターリントン女史は立ち上がって淀み無く説明し、リサさんを指名して着席した・・。
「・・リサ・ミルズです・・先ず、合同会談に呼んで頂きましてありがとうございます・・僭越ですが微力を尽くします・・私はアドル係長の意見に賛成し、全面的に指示します・・配信番組のサードシーズン以降に利益率を5%に変移させると、コストを上回る利益が出ない場合があるとの意見がありましたが、そのような事にはならないと思います・・ゲーム大会と配信番組は開幕前にも拘わらず全世界から注目されており、日々配信されるニュースの15%はこれらに関連する報道です・・開幕を迎えれば、注目度・関心、興味・報道のレベルも更に増大・上昇する事は疑いありません・・その中で『ディファイアント』は存続し続けますので、視聴取率は高水準で推移し、私達が配信するタンクベッドのCМも多くの人が観ます・・この会議の議題は利益率についてですが、宣伝とアフターケアも含めた販売を3社合同での提携業務とするならば、タンクベッドの販売単価を下げる事も3社で合意できるでしょう・・そしてタンクベッドを装備した21隻が存続する様子を多くの人が観るならば、配信番組のセカンドシーズンが終わるまでには・・例え利益率を5%に変移させても、コストを上回る利益を維持できると確信します・・以上の理由説明で、アドル・エルク係長の提案を支持します・・次は、ダグラス・スコットさんにお願いします・・」
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吉谷新次
SF
銀河連邦軍の上官と拗れたことをキッカケに銀河連邦から離れて、
賞金稼ぎをすることとなったセルリアン・リップルは、
希少な資源を手に入れることに成功する。
しかし、突如として現れたカッツィ団という
魔界から独立を試みる団体によって襲撃を受け、資源の強奪をされたうえ、
賞金稼ぎの相棒を暗殺されてしまう。
人界の銀河連邦と魔界が一触即発となっている時代。
各星団から独立を試みる団体が増える傾向にあり、
無所属の団体や個人が無法地帯で衝突する事件も多発し始めていた。
リップルは強靭な身体と念力を持ち合わせていたため、
生きたままカッツィ団のゴミと一緒に魔界の惑星に捨てられてしまう。
その惑星で出会ったランスという見習い魔術師の少女に助けられ、
次第に会話が弾み、意気投合する。
だが、またしても、
カッツィ団の襲撃とランスの誘拐を目の当たりにしてしまう。
リップルにとってカッツィ団に対する敵対心が強まり、
賞金稼ぎとしてではなく、一個人として、
カッツィ団の頭首ジャンに会いに行くことを決意する。
カッツィ団のいる惑星に侵入するためには、
ブーチという女性操縦士がいる輸送船が必要となり、
彼女を説得することから始まる。
また、その輸送船は、
魔術師から見つからないように隠す迷彩妖術が必要となるため、
妖精の住む惑星で同行ができる妖精を募集する。
加えて、魔界が人界科学の真似事をしている、ということで、
警備システムを弱体化できるハッキング技術の習得者を探すことになる。
リップルは強引な手段を使ってでも、
ランスの救出とカッツィ団の頭首に会うことを目的に行動を起こす。
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