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・・・『始動』・・・
帰宅
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4人を最寄りのステーションで降ろした私は、以前帰宅する前に寄った生花店で10種類の花を指定して花束を作って貰い、その次に寄った生菓店では生クリームストロベリー・・生クリームフルーツ・・生クリームフルーツタルト・・チョコレートガナッシュ・・ベイクドチーズ・・マスカルポーネモンブラン・・生クリームブルーベリー・・生チョコレートフルーツデコレーションの8種類のホールケーキをそれぞれクォーターカットで購入して、2つのバラエティクォーターカットホールにして貰った・・。
花束とケーキをトランクを開けて丁寧に収納してから自宅に向けてエレカーを走らせる・・運転しながらハンズフリーで妻に通話を繋ぐ・・妻は自宅のリビングで、娘は学校のカフェテリアで友達と昼食を摂りながら、中継生配信で壮行会を観ていたようだ・・あと、妻の妹が来ているとの事だ・・クレア・ウォレス・・アリソンとは3才年下で、アリソンはよく連絡を執っているようだが、私は8ヶ月振りぐらいに会う・・フルーツと香菜を買って来て欲しいとの事なので、青果店とマーケットに寄る・・フルーツと香菜も結構な種類と分量で買う・・30人以上に声を掛けられて、20人以上にサインを書いてあげて、16人とセルフィーを撮る・・変装していないからこんなものだろう・・。
帰宅するとアリシアはもう帰って来ていた・・演劇サークルの練習は昨日、かなり時間を掛けて行ったので今日は休みなんだそうで、激励壮行会を受けて急遽開かれた親衛隊の会合も短時間で切り上げて解散したので、早く帰って来れたとの事だ・・2つのバラエティ・クォーターカット・ホールケーキをアリシアに渡し、フルーツバスケットと香菜を入れた袋をクレアに渡すと、私は花束を背に隠してアリソンに歩み寄って軽いキスを交わしてから渡した・・。
花束はアリソンとクレアとで3つの花瓶に分けて活けられ、リビングのテーブルとダイニングテーブルと玄関に飾られた・・。
一週間振りに我が家に帰ったのだから妻とはもっとベタベタしたいのだが、クレアが居る手前では抑えざるを得ない・・私が艦長に選ばれてリアリティ・ライブショウへの出演が決まった事で、どんな風に言われたとかどんな評判が立っているかとか興奮気味にクレアは話し続ける・・私にも根掘り葉掘り訊いて来たが、機密に触れる情報については、それは機密だからと断りを入れた上で、話せる範囲で話した・・。
シャワーを浴びて部屋着に着替え2階のベランダで一服点けていると、クレアもベランダに出て来た・・手に持っているグラスに入っているのは、多分彼女の好きなパインサワーだ・・。
「・・お義兄さん・・そろそろ煙草、辞めたら・・?・・」
そう言ってパインサワーを一口飲む・・。
「・・そうだね・・もうそろそろとは思っているよ・・クレア・・色々と評判とか聞かせてくれてありがたいとは思うんだけど・・もしかして君は、僕や『ディファイアント』にブックメイクしてるの・・?・・」
「・・うん・・やってるよ・・でも、勿論それはストレスにならない・・やれる範囲での事だから心配しないで良いよ・・義兄さん・・」
と、もう一口飲んで少し時間を置いてそう応える・・。
「・・うん・・ストレスにならない、やれる範囲でならギャンブルもまあ良いと思うけど、あくまで個人でやった方が良いと思うよ・・グループでやっていると、面倒臭い事になる可能性が高くなるからね・・」
「・・分かっているわよ、お義兄さん・・相変わらず心配性ね・・面倒な事になる前に、辞めちゃうから大丈夫・・ありがとう、心配してくれて・・それにしても義兄さんの弾き語り、久し振りに観て聴いたけど相変わらず上手いわね・・あんなの観せちゃったら、女子社員が大変なんじゃないの・・?・・」
そう言ってまた二口飲む・・グループでブックメイクしている事を否定しなかったのは気になるが、今はそれ以上追求してもあまり良い結果は望めないかな・・?・・。
「・・分かっているなら、まあ良いよ・・ウチの女性社員達が俺の事をどう観るかについては、そんなに心配しなくても良いよ・・遣り過し方は幾らでもあるからさ・・そんな事より、まだロマンチックな話は無いのかい・・?・・」
そう訊くとクレアも一服点け、深く喫って吐いた・・。
「・・アドル義兄さんもキツいわね・・私が義兄さんの事好きだった・・いえ、今でも好きなのは知ってるでしょ・・?・・」
「・・もっと若くて将来性があって好い男が、ウチの会社にも一杯いるぜ・?・紹介するよ・・?・・」
「・・本当にありがとう・・でも、もう暫くは大丈夫よ・・お義兄さん・・・」
そこで会話は途切れた・・私は左手で持っていた灰皿で自分の煙草を揉み消すと、暫くしてからクレアの方に差し出す・・。
クレアは右手で私の左手首を握って固定してから、自分の煙草を揉み消した・・。
キッチンではアリソンとアリシアが夕食の準備と朝食の下拵えをしている・・。
「・・パパ・・今日は無理かもって言ってたけど、早く帰れて良かったね・・?・・」
「・・ええ、そうね・・でもあんな風にまた持て囃されちゃって、もっと有名になっちゃったから、また大変になるかもね・・?・・」
「・・パパが弾き語りで歌うのって初めて観たし、あんなに上手いなんて知らなかったから、皆んなからどうしてあんなに上手いの?格好好いの?って訊かれたけど、分らないとしか答えられなくて、悔しかったし恥ずかしかったから直ぐに今日の会合は終わりにしちゃって解散しちゃったわよ・!・・」
「・・あらあら、親衛隊長さんも大変ね・・(笑)・・」
「・・ママはパパの歌、聴いた事あるんでしょ・・?・・」
「・・そりゃあるわよ、結婚前からもね・・」
「・・ズルイし悔しい・!・パパに聴かせてってお願いしなくちゃ・・」
「・・そうね・・でもパパはここにギターを置いてないから、買いに行ってからだわね・・」
「・・そうなんだ・・残念・・」
「・・でも好いんじゃない・・?・・パパとアリシアと、ギターに詳しいアリシアの友達と一緒に楽器店にギターを観に行って、パパに似合うギターを見立てて貰ったら・・?・・」
「・!・ママ、ありがとう・!・そのナイスアイデアは頂きます・・」
「・・パパと友達の予定は、よく確認するのよ・・?・・」
「・・了解・・クレア伯母さんもパパの歌は、聴いた事あるよね・・?・・」
「・・あるわよ・・初めてパパが聴かせてくれた時、クレアも一緒だったから・・」
「・・そう・・クレア伯母さんがパパを観る眼が何だか嫌らしくて、私嫌だな・・」
「・・そう・・クレアもパパの事、好きだったからね・・もしかしたら今でも、かな・・?・・」
「・!・えー!・・それじゃ心配だよね・・?・・」
「・・(笑)・全然大丈夫よ、アリシア・(笑)・だってパパはね・・これからクレアより綺麗で魅力的でセクシーな50人以上の女優さん達と、毎週末を過ごすのよ・・そっちの方が心配じゃない・?・それに『ディファイアント』にクルーとして乗り組む女優さん達は・・皆、多分パパのことが大好きなのよ・・それは今日観た壮行会の様子を観ても判らない・?・でもパパはね、ちゃんとここに帰って来てくれるのよ・・もっと自分の父親を信頼しなさい・・?・・」
「・・分かりました・・」
「・・クレアにはそれとは別にちょっと危なっかしい処があるから、それはパパと相談するからね・・?・・」
「・・はい・・」
夕食はとても均等に良く焼けた、サーロインステーキ・ウェルダン・・付け合わせはソテーされたキャロット、ホウレン草、ポテト、オニオン・・タップリの温野菜サラダと少な目のライスと、特製具沢山スープだ・・ワインは飲まない・・。
アリシアの親衛隊は、学校職員からも入隊志願者が出て来ていて日毎にメンバーが増えているとの事だ・・クレアの職場や友人関係の中でも、彼女が妻の妹であると言う事もあってか、私と『ディファイアント』は好意的に観られているようだ・・アリソンもクレアのギャンブル趣味には、姉として苦言を呈して嗜めていたが、クレアは軽くあしらって受け流している・・アリシアはハンナ・ウェアーカウンセラーから論文を贈られて、少しずつ読み進めているが理解するには時間が掛かりそうだと言う・・でもその内容は、演劇サークルでの実践の中でも役に立ち始めているとも言う・・。
夕食後の片付けには全員で取り組み、記録的な速さで終えると妻にはロシアンティー、娘にはホットミルクココア、クレアにはミルクティー、自分にはマンデリンを淹れて、また食卓に着く・・。
「・・義兄さんのミルクティーが、私の知る限りでは最高の一杯ね・・猛烈に飲みたくなる時が、たまにあるわ・・」
夫婦仲を邪魔するのも悪いから、明日の昼前には帰るとクレアは言う・・ゲストルームはアリソンが準備した・・。
アリシアも自室に入ったので、今は夫婦2人で寝室にいる・・妻が座って髪を梳いている後姿を、グラスに3分の1まで入れた琥珀の液体に透かして眺めている・・。
「・・クレアのギャンブル癖は昔からあったかな・・?・・」
「・・あったけど、ブックメイクをやり始めたのはこの2年くらいね・・」
「・・あれは、グループメイクをやってるな・・」
「・・そうね・・負けて損失が出て、うちに泣き付いて来ても、突っ撥ねる積もりでいるわよ・・」
「・・いや、俺が会社から預かっている支度金があるからそれで清算して、その後何年かは家に来ないように言い含めれば良いだろう・・」
「・・貴方はそれで良いの・・?・・」
「・・良いよ・・数少ない親族を無下にもできないさ・・」
「・・ありがとう、貴方・・愛しているわよ・・」
「・・俺も愛しているよ、アリソン・・」
そう言って私は寝室の防音レベルを9まで上げて・・2人は愛の交歓に入る・・午前3時頃まで繰り返し続けていたので、その後はアイソレーション・タンクベッドに入って睡眠を摂った・・。
目覚めたのは午前6時半・・スッキリと目覚める・・妻と一緒にシャワーを浴びてサッパリすると、ゆったりとした部屋着を着て自室で座具を整えて座り、瞑想に入る・・徹底的に安定して座り、徹底的にリラックスした状態に自分の心身を置き、自分の内面の中心・お腹の中央部に光る存在を想像して置いて、それをゆったりとストレス無く追求しないで拘らないで観察を続ける・・この徹底した安定と、徹底したリラックスと、ストレスや無理の無い集中した観察の3つを、バランス良く保っていられなくなるまで続けて、保つのが辛くなってきたら慈悲の瞑想を10分程行って、目を開けて立ち上がる・・。
時刻を確認すると、8時少し前だった・・ダイニングに入ると皆、朝食の席に着いている・・。
「・・遅くなってゴメン・・」
「・・ン・・良かったの・・?・・」
「・・うん、すごく良かったよ・・」
妻は私が時折り朝に瞑想することを知っている・・。
「・・あ~あ・・自分で淹れると何でこんなに美味しくないんだろう・・」
アリシアがそう言ってココアを飲む・・。
「・・それ、ホントにそうだよね・・?・・」
クレアもそう言ってミルクティーに口を着ける・・。
苦笑いしながら自分のマンデリンを淹れ、グラスミルクも用意して席に着く・・朝食は夕食の残り物をアレンジした賄い料理に一品を加えたものだ・・それでも栄養素のバランスは完璧だし、何より美味しいので問題は無い・・。
「・・ねぇ、アリシア・・昨夜の話だけど、今日か明日でも良いんじゃないの・・?・・」
と、食べながらアリソンがアリシアに言う・・。
「・・!?・そうか・!・ママ、ありがとう!・・これを『善は急げ』って言うんだね・!?・・パパ!、お願いがあるんだけど、聞いてくれる・?・・」
「・・何の話だい・・?・・」
と、耳を傾けてひと通り聞いてから・・。
「・・そんなら何も、わざわざ友達に来て貰わなくたって、ギターくらいパパは自分て選べるからさ・・でもどうしても友達を呼びたいんなら良いよ・・その代わりに今日行こう・・お昼もご馳走するから昼前に合流するって事で、友達に連絡してくれるかな・?・親衛隊長・・?・・」
「・・!?・パパ、本当にありがとう!・感謝します!・了解しました・・ご馳走様でした!・・今から連絡を取るので少し待って下さい・・直ぐに戻ります!・・」
そう言うと席を立って自室に戻ろうとする処で・・・
「・アリシア!・パパが行くと騒がられるだろうけど、それでも良いかって訊いてな!?・・」
「・了解!・・ありがとう!・・」
ペコっと頭を下げて自室に入る・・。
「・・若い子はフットワークが軽くて好いわね・・?・・」
と、クレアが食べながら言う・・。
「・・何言ってるの・?・あなただってそんな歳でもないでしょう・・?・・」
アリソンも食べながら応じる・・。
「・・ティーンエイジャーには負けるわよ・・あっ、義兄さん・出掛ける時で良いから、最寄りのステーションまで送ってくれる・・?・・」
「・・ああ、良いよ・・」
「・・ありがとう・・姉さん、半年振りくらいで直に顔を観たけど・・また随分女っぷりが上がったわね・・艶っぽさって言うのかな・?・ふくよかな女性らしい美しさが増して来てるわね・・」
「・・何よ、急に・・何も出ないわよ・・太ったって言いたいなら、まあそれはある程度認めるわよ・・さ・ご馳走様・・」
「・・僕もご馳走様だ・・ありがとう、美味しかったよ、アリソン・・」
「・・皆で作ったんだから・・あたし1人じゃないわよ・・」
「・・そうか、クレアもありがとう・・」
「・・どう致しまして・・」
「・・何か、軽く飲むかい・・?・・」
「・・そうね・・爽やか系の一杯で口直しってどうかしら・・?・・」
「・・お任せを・・」
そう言って私は、細身のグラス3つに氷を2個入れて、2つにタンカレー・ジン小量にライムジュースを半分と少し、更にクリアソーダで満たして、最後にスライスライムを一枚ずつ入れ、軽くステアして2人の前に置く・・。
「・・どうぞ、召し上がれ・・」
「・・頂きます・・」
無言で二口飲んで2人ともグラスを置く・・。
「・・義兄さんはどこでバーテンダーやっても、めっちゃ女性客が従くと思うわ・・」
「・・ありがとう、あなた・・」
私は笑顔で右手を左胸に当てて一礼する・・。
3つ目のグラスにはアリシアの為に、ライムジュースを半分にクリアソーダで満たし、スライスライムを一枚入れて軽くステアして置く・・。
キッチンに入って食器を洗い始めた処でアリシアが戻ってくる・・。
「・・パパ、連絡が執れました・・友達4人とステーションで待ち合わせ・・」
「・・ご苦労さん、口直しの一杯が出来てるよ・・」
アリシアは立ったままグラスを取り上げて一息で半分近くまで飲むと、ふうっと息を吐く・・。
「・・お父さん、大好き・・」
花束とケーキをトランクを開けて丁寧に収納してから自宅に向けてエレカーを走らせる・・運転しながらハンズフリーで妻に通話を繋ぐ・・妻は自宅のリビングで、娘は学校のカフェテリアで友達と昼食を摂りながら、中継生配信で壮行会を観ていたようだ・・あと、妻の妹が来ているとの事だ・・クレア・ウォレス・・アリソンとは3才年下で、アリソンはよく連絡を執っているようだが、私は8ヶ月振りぐらいに会う・・フルーツと香菜を買って来て欲しいとの事なので、青果店とマーケットに寄る・・フルーツと香菜も結構な種類と分量で買う・・30人以上に声を掛けられて、20人以上にサインを書いてあげて、16人とセルフィーを撮る・・変装していないからこんなものだろう・・。
帰宅するとアリシアはもう帰って来ていた・・演劇サークルの練習は昨日、かなり時間を掛けて行ったので今日は休みなんだそうで、激励壮行会を受けて急遽開かれた親衛隊の会合も短時間で切り上げて解散したので、早く帰って来れたとの事だ・・2つのバラエティ・クォーターカット・ホールケーキをアリシアに渡し、フルーツバスケットと香菜を入れた袋をクレアに渡すと、私は花束を背に隠してアリソンに歩み寄って軽いキスを交わしてから渡した・・。
花束はアリソンとクレアとで3つの花瓶に分けて活けられ、リビングのテーブルとダイニングテーブルと玄関に飾られた・・。
一週間振りに我が家に帰ったのだから妻とはもっとベタベタしたいのだが、クレアが居る手前では抑えざるを得ない・・私が艦長に選ばれてリアリティ・ライブショウへの出演が決まった事で、どんな風に言われたとかどんな評判が立っているかとか興奮気味にクレアは話し続ける・・私にも根掘り葉掘り訊いて来たが、機密に触れる情報については、それは機密だからと断りを入れた上で、話せる範囲で話した・・。
シャワーを浴びて部屋着に着替え2階のベランダで一服点けていると、クレアもベランダに出て来た・・手に持っているグラスに入っているのは、多分彼女の好きなパインサワーだ・・。
「・・お義兄さん・・そろそろ煙草、辞めたら・・?・・」
そう言ってパインサワーを一口飲む・・。
「・・そうだね・・もうそろそろとは思っているよ・・クレア・・色々と評判とか聞かせてくれてありがたいとは思うんだけど・・もしかして君は、僕や『ディファイアント』にブックメイクしてるの・・?・・」
「・・うん・・やってるよ・・でも、勿論それはストレスにならない・・やれる範囲での事だから心配しないで良いよ・・義兄さん・・」
と、もう一口飲んで少し時間を置いてそう応える・・。
「・・うん・・ストレスにならない、やれる範囲でならギャンブルもまあ良いと思うけど、あくまで個人でやった方が良いと思うよ・・グループでやっていると、面倒臭い事になる可能性が高くなるからね・・」
「・・分かっているわよ、お義兄さん・・相変わらず心配性ね・・面倒な事になる前に、辞めちゃうから大丈夫・・ありがとう、心配してくれて・・それにしても義兄さんの弾き語り、久し振りに観て聴いたけど相変わらず上手いわね・・あんなの観せちゃったら、女子社員が大変なんじゃないの・・?・・」
そう言ってまた二口飲む・・グループでブックメイクしている事を否定しなかったのは気になるが、今はそれ以上追求してもあまり良い結果は望めないかな・・?・・。
「・・分かっているなら、まあ良いよ・・ウチの女性社員達が俺の事をどう観るかについては、そんなに心配しなくても良いよ・・遣り過し方は幾らでもあるからさ・・そんな事より、まだロマンチックな話は無いのかい・・?・・」
そう訊くとクレアも一服点け、深く喫って吐いた・・。
「・・アドル義兄さんもキツいわね・・私が義兄さんの事好きだった・・いえ、今でも好きなのは知ってるでしょ・・?・・」
「・・もっと若くて将来性があって好い男が、ウチの会社にも一杯いるぜ・?・紹介するよ・・?・・」
「・・本当にありがとう・・でも、もう暫くは大丈夫よ・・お義兄さん・・・」
そこで会話は途切れた・・私は左手で持っていた灰皿で自分の煙草を揉み消すと、暫くしてからクレアの方に差し出す・・。
クレアは右手で私の左手首を握って固定してから、自分の煙草を揉み消した・・。
キッチンではアリソンとアリシアが夕食の準備と朝食の下拵えをしている・・。
「・・パパ・・今日は無理かもって言ってたけど、早く帰れて良かったね・・?・・」
「・・ええ、そうね・・でもあんな風にまた持て囃されちゃって、もっと有名になっちゃったから、また大変になるかもね・・?・・」
「・・パパが弾き語りで歌うのって初めて観たし、あんなに上手いなんて知らなかったから、皆んなからどうしてあんなに上手いの?格好好いの?って訊かれたけど、分らないとしか答えられなくて、悔しかったし恥ずかしかったから直ぐに今日の会合は終わりにしちゃって解散しちゃったわよ・!・・」
「・・あらあら、親衛隊長さんも大変ね・・(笑)・・」
「・・ママはパパの歌、聴いた事あるんでしょ・・?・・」
「・・そりゃあるわよ、結婚前からもね・・」
「・・ズルイし悔しい・!・パパに聴かせてってお願いしなくちゃ・・」
「・・そうね・・でもパパはここにギターを置いてないから、買いに行ってからだわね・・」
「・・そうなんだ・・残念・・」
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「・・了解・・クレア伯母さんもパパの歌は、聴いた事あるよね・・?・・」
「・・あるわよ・・初めてパパが聴かせてくれた時、クレアも一緒だったから・・」
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「・!・えー!・・それじゃ心配だよね・・?・・」
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「・・分かりました・・」
「・・クレアにはそれとは別にちょっと危なっかしい処があるから、それはパパと相談するからね・・?・・」
「・・はい・・」
夕食はとても均等に良く焼けた、サーロインステーキ・ウェルダン・・付け合わせはソテーされたキャロット、ホウレン草、ポテト、オニオン・・タップリの温野菜サラダと少な目のライスと、特製具沢山スープだ・・ワインは飲まない・・。
アリシアの親衛隊は、学校職員からも入隊志願者が出て来ていて日毎にメンバーが増えているとの事だ・・クレアの職場や友人関係の中でも、彼女が妻の妹であると言う事もあってか、私と『ディファイアント』は好意的に観られているようだ・・アリソンもクレアのギャンブル趣味には、姉として苦言を呈して嗜めていたが、クレアは軽くあしらって受け流している・・アリシアはハンナ・ウェアーカウンセラーから論文を贈られて、少しずつ読み進めているが理解するには時間が掛かりそうだと言う・・でもその内容は、演劇サークルでの実践の中でも役に立ち始めているとも言う・・。
夕食後の片付けには全員で取り組み、記録的な速さで終えると妻にはロシアンティー、娘にはホットミルクココア、クレアにはミルクティー、自分にはマンデリンを淹れて、また食卓に着く・・。
「・・義兄さんのミルクティーが、私の知る限りでは最高の一杯ね・・猛烈に飲みたくなる時が、たまにあるわ・・」
夫婦仲を邪魔するのも悪いから、明日の昼前には帰るとクレアは言う・・ゲストルームはアリソンが準備した・・。
アリシアも自室に入ったので、今は夫婦2人で寝室にいる・・妻が座って髪を梳いている後姿を、グラスに3分の1まで入れた琥珀の液体に透かして眺めている・・。
「・・クレアのギャンブル癖は昔からあったかな・・?・・」
「・・あったけど、ブックメイクをやり始めたのはこの2年くらいね・・」
「・・あれは、グループメイクをやってるな・・」
「・・そうね・・負けて損失が出て、うちに泣き付いて来ても、突っ撥ねる積もりでいるわよ・・」
「・・いや、俺が会社から預かっている支度金があるからそれで清算して、その後何年かは家に来ないように言い含めれば良いだろう・・」
「・・貴方はそれで良いの・・?・・」
「・・良いよ・・数少ない親族を無下にもできないさ・・」
「・・ありがとう、貴方・・愛しているわよ・・」
「・・俺も愛しているよ、アリソン・・」
そう言って私は寝室の防音レベルを9まで上げて・・2人は愛の交歓に入る・・午前3時頃まで繰り返し続けていたので、その後はアイソレーション・タンクベッドに入って睡眠を摂った・・。
目覚めたのは午前6時半・・スッキリと目覚める・・妻と一緒にシャワーを浴びてサッパリすると、ゆったりとした部屋着を着て自室で座具を整えて座り、瞑想に入る・・徹底的に安定して座り、徹底的にリラックスした状態に自分の心身を置き、自分の内面の中心・お腹の中央部に光る存在を想像して置いて、それをゆったりとストレス無く追求しないで拘らないで観察を続ける・・この徹底した安定と、徹底したリラックスと、ストレスや無理の無い集中した観察の3つを、バランス良く保っていられなくなるまで続けて、保つのが辛くなってきたら慈悲の瞑想を10分程行って、目を開けて立ち上がる・・。
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「・・遅くなってゴメン・・」
「・・ン・・良かったの・・?・・」
「・・うん、すごく良かったよ・・」
妻は私が時折り朝に瞑想することを知っている・・。
「・・あ~あ・・自分で淹れると何でこんなに美味しくないんだろう・・」
アリシアがそう言ってココアを飲む・・。
「・・それ、ホントにそうだよね・・?・・」
クレアもそう言ってミルクティーに口を着ける・・。
苦笑いしながら自分のマンデリンを淹れ、グラスミルクも用意して席に着く・・朝食は夕食の残り物をアレンジした賄い料理に一品を加えたものだ・・それでも栄養素のバランスは完璧だし、何より美味しいので問題は無い・・。
「・・ねぇ、アリシア・・昨夜の話だけど、今日か明日でも良いんじゃないの・・?・・」
と、食べながらアリソンがアリシアに言う・・。
「・・!?・そうか・!・ママ、ありがとう!・・これを『善は急げ』って言うんだね・!?・・パパ!、お願いがあるんだけど、聞いてくれる・?・・」
「・・何の話だい・・?・・」
と、耳を傾けてひと通り聞いてから・・。
「・・そんなら何も、わざわざ友達に来て貰わなくたって、ギターくらいパパは自分て選べるからさ・・でもどうしても友達を呼びたいんなら良いよ・・その代わりに今日行こう・・お昼もご馳走するから昼前に合流するって事で、友達に連絡してくれるかな・?・親衛隊長・・?・・」
「・・!?・パパ、本当にありがとう!・感謝します!・了解しました・・ご馳走様でした!・・今から連絡を取るので少し待って下さい・・直ぐに戻ります!・・」
そう言うと席を立って自室に戻ろうとする処で・・・
「・アリシア!・パパが行くと騒がられるだろうけど、それでも良いかって訊いてな!?・・」
「・了解!・・ありがとう!・・」
ペコっと頭を下げて自室に入る・・。
「・・若い子はフットワークが軽くて好いわね・・?・・」
と、クレアが食べながら言う・・。
「・・何言ってるの・?・あなただってそんな歳でもないでしょう・・?・・」
アリソンも食べながら応じる・・。
「・・ティーンエイジャーには負けるわよ・・あっ、義兄さん・出掛ける時で良いから、最寄りのステーションまで送ってくれる・・?・・」
「・・ああ、良いよ・・」
「・・ありがとう・・姉さん、半年振りくらいで直に顔を観たけど・・また随分女っぷりが上がったわね・・艶っぽさって言うのかな・?・ふくよかな女性らしい美しさが増して来てるわね・・」
「・・何よ、急に・・何も出ないわよ・・太ったって言いたいなら、まあそれはある程度認めるわよ・・さ・ご馳走様・・」
「・・僕もご馳走様だ・・ありがとう、美味しかったよ、アリソン・・」
「・・皆で作ったんだから・・あたし1人じゃないわよ・・」
「・・そうか、クレアもありがとう・・」
「・・どう致しまして・・」
「・・何か、軽く飲むかい・・?・・」
「・・そうね・・爽やか系の一杯で口直しってどうかしら・・?・・」
「・・お任せを・・」
そう言って私は、細身のグラス3つに氷を2個入れて、2つにタンカレー・ジン小量にライムジュースを半分と少し、更にクリアソーダで満たして、最後にスライスライムを一枚ずつ入れ、軽くステアして2人の前に置く・・。
「・・どうぞ、召し上がれ・・」
「・・頂きます・・」
無言で二口飲んで2人ともグラスを置く・・。
「・・義兄さんはどこでバーテンダーやっても、めっちゃ女性客が従くと思うわ・・」
「・・ありがとう、あなた・・」
私は笑顔で右手を左胸に当てて一礼する・・。
3つ目のグラスにはアリシアの為に、ライムジュースを半分にクリアソーダで満たし、スライスライムを一枚入れて軽くステアして置く・・。
キッチンに入って食器を洗い始めた処でアリシアが戻ってくる・・。
「・・パパ、連絡が執れました・・友達4人とステーションで待ち合わせ・・」
「・・ご苦労さん、口直しの一杯が出来てるよ・・」
アリシアは立ったままグラスを取り上げて一息で半分近くまで飲むと、ふうっと息を吐く・・。
「・・お父さん、大好き・・」
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しかし、突如として現れたカッツィ団という
魔界から独立を試みる団体によって襲撃を受け、資源の強奪をされたうえ、
賞金稼ぎの相棒を暗殺されてしまう。
人界の銀河連邦と魔界が一触即発となっている時代。
各星団から独立を試みる団体が増える傾向にあり、
無所属の団体や個人が無法地帯で衝突する事件も多発し始めていた。
リップルは強靭な身体と念力を持ち合わせていたため、
生きたままカッツィ団のゴミと一緒に魔界の惑星に捨てられてしまう。
その惑星で出会ったランスという見習い魔術師の少女に助けられ、
次第に会話が弾み、意気投合する。
だが、またしても、
カッツィ団の襲撃とランスの誘拐を目の当たりにしてしまう。
リップルにとってカッツィ団に対する敵対心が強まり、
賞金稼ぎとしてではなく、一個人として、
カッツィ団の頭首ジャンに会いに行くことを決意する。
カッツィ団のいる惑星に侵入するためには、
ブーチという女性操縦士がいる輸送船が必要となり、
彼女を説得することから始まる。
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魔術師から見つからないように隠す迷彩妖術が必要となるため、
妖精の住む惑星で同行ができる妖精を募集する。
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リップルは強引な手段を使ってでも、
ランスの救出とカッツィ団の頭首に会うことを目的に行動を起こす。
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