上 下
46 / 293
・・・『集結』・・・

面会と懇談・・

しおりを挟む
翌日(2/10・水)昼食休憩前、20分・・私とリサ・ミルズとドリス・ワーナー女史が、1階・カフェラウンジの入口脇に並んで待っている・・本社警備棟の来客受付にて手続きを済ませ、PIDメディアカードを胸に・・本社来客ゲストパスを首から下げた我が『ディファイアント』メインスタッフの全員が、私の視界に入って歩み寄って来る・・全員微妙にデザインは違うがパンツスーツでネクタイを細く締め、男装麗人のように見事に着こなしている・・全員が入口に着くとワーナー女史が歩み出て深く一礼した・・。

「・・『ディファイアント』メインスタッフの皆様・・こんにちは、初めまして・・ようこそ弊社においで頂きました・・心より歓迎を申し上げます・・私は秘書課のドリス・ワーナーと申します・・どうぞ、宜しくお願い致します・・それではこれより懇談会場へご案内致しますので、ご一緒においで下さい・・」

ワーナー女史の挨拶を受け、シエナさんが歩み出て返礼する。

「・・ご丁寧なお出迎えをありがとうございます・・『ディファイアント』で副長を務めます、シエナ・ミュラーです・・本日は宜しくお願い致します・・」

返礼を受けて微笑みを返したワーナー女史が、踵を反して歩き出す・・見事なロングヘアがふわっと拡がり、彼女だけの香りを残す・・直ぐ後にシエナさんとリサさんが続き、他のメンバーを先に行かせた私はリーアさんと並んで後ろに続く・・歩きながらリーアさんがカードの束を私に手渡して囁いた・・。

「・・凄い美人ですね・・リサさんの上司の方ですか・・?・・」

「・・そうですね・・」

そう応えてカードを観ると全員のメディアカードだ・・一つ頷いて内ポケットに仕舞う・・。

6番リフトは最も大きいリフトで、人間だけなら50人は乗れる・・9階に着くとウェイターの出迎えを受けてそのままスカイラウンジに通される・・ラウンジでは最も大きい円卓が中央に設えられて既に実行委員会メンバー11名が着席していたが、私達の入室を観て全員が立ち上がった・・。

「・・『ディファイアント』メインスタッフの皆さん・・本日はようこそ弊社においで頂きました・・ご来社を心より歓迎させて頂きます・・私は弊社役員と激励壮行会実行委員長を兼任しております、ハーマン・パーカーです・・先ずどうぞご着席下さい・・」

促されて私は左端に座り、その右にリサさん・・その右に副長が座り、後は三々五々に着席した・・。

「・・先にこちらの実行委員を紹介しましょう・・先ず副実行委員長を務めます・・エスター・アーヴ女史・・弊社総務部長です・・次に弊社営業本部にてファーストセクション・チーフディレクターを務める、ミスター、エリック・カンデル・・更に営業本部で私の補佐を務めてくれている、次長のミスター、ジェア・インザー・・続きまして総務副部長を務めます、ゲネル・ヴィット女史・・その隣が人事部のミスター、ザーヒル・タニーン・・更に営業本部からミスター、イスマイル・ガスパール・・そして、宣伝部からミスター、アグシン・メーディエフ・・続いて広報部からミスター、マスード・カーン・・更に先程皆さんをお迎えにあがりました、秘書課渉外主任のドリス・ワーナー女史・・後の2人は福利厚生部、相互共済課からジーン・ヴィッツ女史と、メッツェン・ウーハー女史の・・計12名です・・精一杯頑張って務めますので・・宜しくお願い致します・・」

パーカー常務がメンバーを1人ずつ紹介する度毎に、全員が深く一礼して着席していく・・最後の1人を紹介して言葉を切ると、常務は私の前にカードホルダーを一つ置いて着席した・・私はそれを副長の前に置いて立ち上がると、続けてこちら側の全員も立ち上がる・・副長を見遣ると、柔らかく微笑んで私に頷く・・。

「・・ご丁寧なご紹介をありがとうございます・・改めまして、『ディファイアント』の激励壮行会に全クルーの参加を許可して頂き、また、それに先立ち激励壮行会実行委員の皆さんと、『ディファイアント』メインスタッフとの面会と懇談がこのような形で実現しました事に、心からの感謝を申し上げます・・それでは、我が『ディファイアント』のメインスタッフが、それぞれ自己紹介致します・・」

「・・初めまして、・・『ディファイアント』の副長としてアドル・エルク艦長を補佐し、司令部を運用します・・シエナ・ミュラーです・・宜しくお願い致します・・」

「・・初めまして、・・『ディファイアント』の作戦参謀として司令部に対し、戦略的・戦術的な助言を行います・・ハル・ハートリーです・・宜しくお願い致します・・」

「・・初めまして、・・『ディファイアント』のカウンセラーとして司令部に対し、クルーのストレス状況・士気・心理動向について報告と助言を行います・・ハンナ・ウェアーです・・宜しくお願い致します・・」

「・・初めまして、・・『ディファイアント』の機関部長として全推進機関とエネルギー・パワーアセンブリの全般を統轄します・・リーア・ミスタンテです・・宜しくお願い致します・・」

「・・初めまして、・・『ディファイアント』の天体観測室長として観測ラボと分析システムを統轄し、精密な観測と分析により得たデータを司令部に報告します・・パティ・シャノンです・・宜しくお願い致します・・」

「・・初めまして、・・『ディファイアント』のメインセンサーオペレーターとして総てのセンサーシステムを統轄し、ゲームフィールド内の総てを正確に把握して的確に報告します・・カリーナ・ソリンスキーです・・宜しくお願い致します・・」

「・・初めまして、・・『ディファイアント』のメインパイロットとして艦の操舵・操縦系を統轄し、指示通りの操艦を最速で行います・・エマ・ラトナーです・・宜しくお願い致します・・」

「・・初めまして、・・『ディファイアント』の砲術長として艦の全砲撃部門を統轄し、指示された目標を正確・的確・最速で狙撃します・・エドナ・ラティスです・・宜しくお願い致します・・」

「・・初めまして、・・『ディファイアント』のメイン・ミサイルコントローラーとしてミサイルコントロール・オペレート部門を統轄し、指示通りのセット・プログラム・発射・狙撃を最速で行います・・アリシア・シャニーンです・・宜しくお願い致します・・」

「・・初めまして、・・『ディファイアント』の補給支援部長として消費物資・物品の残量監視・把握と、過不足の無い補給支援体制を統轄して運用します・・マレット・フェントンです・・宜しくお願い致します・・」

「・・初めまして、・・『ディファイアント』の保安部長として全保安システムと体制を統轄し、適確に運用して高い安全性を確保します・・フィオナ・コアーです・・宜しくお願い致します・・」

「・・初めまして、・・『ディファイアント』の生活環境支援部長として艦内での生活環境保持システムと、生活環境支援体制を統轄し、クルー1人1人の生活環境の保持・改善を支援します・・ミーシャ・ハーレイです・・宜しくお願い致します・・」

順番に1人1人が自己紹介をし、一礼して着席していく・・ミーシャ・ハーレイが自己紹介し、一礼して着席すると私とリサさんだけが立っていた・・。

「・・以上が私が選抜して任命した『ディファイアント』のメインスタッフです・・まだ医療部長とバーラウンジのマスター及び厨房メインシェフのポストが未定ですが、私にはこれらのポストに於ける任命権がありませんので、今回の激励壮行会には間に合いません・・と言う訳で、本日は私を含む13名でこの懇談会に参加します・・宜しくお願いします・・」

そう言って私は、リーアさんに渡されていた全員のメディアカードの束を内ポケットから取り出すと、常務の前に置いてリサさんと一緒に着席した・・。

代わって再び常務が起立する・・。

「・・アドル・エルクさん・・皆さんの素晴らしい自己紹介をありがとうございます・・自己紹介を伺っただけで、貴方が選抜されたこの皆さんが素晴らしい人材であることが分かります・・それでは、堅い挨拶はこれくらいにしまして昼食を頂きましょう・・お腹も空いておりますし、食べながら和やかに懇談とさせて頂きます・・」

そう言って私が置いたメディアカードの束を取り上げるとエスター・アーヴ総務部長に手渡し、ドリス・ワーナー女史を見遣る・・ワーナー女史は左手を挙げてウェイターに合図を送った・・。

最初に運ばれて来たのは、サラダに薄切り肉のソテーを数枚添えた前菜とコーンスープだ・・。

「・・この懇談会が終りましたら、本社の中をご案内致しましょう・・まだこのスカイラウンジしかご覧になって頂いておりませんが、印象は如何ですか・・?・・」

ハーマン・パーカー常務が、前菜とスープを少しずつ交互に摂りながら訊く・・。

「・・流石にクライトン国際総合商社の本社ですね・・外観を観てもここを観ても、機能的で美しいデザインだなと思いました・・後でご案内して頂くのが楽しみです・・」

と、シエナ・ミュラーも少しずつ食べながらそう応じる・・。

「・・アドル・エルク氏は営業本部の中でも非常に有能且つ優秀な社員でして、戦力として非常に期待されておりますし、将来も嘱望されております・・皆さんから観て氏は、どのような人物として映るのでしょうか・・?・・」

と、エリック・カンデルも食べながら訊く・・。

「・・私達『ディファイアント』の全クルーにとって、アドル・エルク氏は唯一無二の指揮官です・・私達を充全に率いる事が出来るのは、氏以外には在り得ないと考えております・・」

と、ハンナ・ウェアーが応じる・・。

「・・副長のシエナ・ミュラーさんにお訊ね致します・・率直な感触で結構なのですが・・『ディファイアント』は、少なくともどの程度までの存続を目標とされているのでしょうか・・?・・」

と、ジェア・インザー次長が訊く・・。

シエナ・ミュラーが私の顔を見遣ったので、私は笑顔で頷いて見せる・・。

「・・少なくともリアリティ・ライブショウの中では、最後まで残る事を目標とするとして、私達は意思統一しております・・その後もゲーム大会は続きますが・・ゲーム大会全体の中でどこまで存続できるかについては、分かりません・・」

「・・それはとても心強いお話ですね・・我々としてもサポートのし甲斐があると言うものです・・」

そう応えて、ジェア・インザー氏は冷水のグラスを掲げる・・。

それを観たハーマン・パーカー常務が、急に思い付いたように立ち上がる・・。

「・・皆さん・・昼食懇談会と言う事で、皆さんにアルコール飲料を供するのは控えておりましたが・・私達の記念すべき出会いと懇談を、1回の乾杯も無しに終わらせてしまうのは、非常に心苦しく思います・・ですので、最初の一杯だけお付き合いを願えないものでしょうか・・?・・」

「・・まあ別に、一杯だけでしたら問題は無いでしょう・・」

私が鷹揚に応じると直ぐにウェイターに合図して、ライトビアが用意される・・。

エリック・カンデルが立ち上がって、ビアグラスを掲げる・・。

続けて全員が立ち上がり、グラスを掲げる・・。

「・・それでは皆さん・・私達の記念すべき出会いと、関係構築の開始を祝しまして、乾杯の音頭を取らせて頂きます・・我々の充全なるサポートの基に・・『ディファイアント』が最後まで華々しく活躍される事を祈念致しまして・・乾杯‼︎・・」

「・乾杯‼︎・・」

全員がグラスを掲げて口を付け、着席する・・喉が渇いていた事もあって、私は一口で飲み干した・・。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

『星屑の狭間で』(チャレンジ・ミッション編)

トーマス・ライカー
SF
 政・官・財・民・公・軍に拠って構成された複合巨大組織『運営推進委員会』が、超大規模なバーチャル体感サバイバル仮想空間・艦対戦ゲーム大会『サバイバル・スペースバトルシップ』を企画・企図し、準備して開催に及んだ。  そのゲーム大会の1部を『運営推進委員会』にて一席を占める、ネット配信メディア・カンパニー『トゥーウェイ・データ・ネット・ストリーム・ステーション』社が、配信リアル・ライヴ・バラエティー・ショウ『サバイバル・スペースバトルシップ・キャプテン・アンド・クルー』として、順次に公開している。  アドル・エルクを含む20人は艦長として選ばれ、それぞれがスタッフ・クルーを男女の芸能人の中から選抜して、軽巡宙艦に搭乗して操り、ゲーム大会で奮闘する模様を撮影されて、配信リアル・ライヴ・バラエティー・ショウ『サバイバル・スペースバトルシップ・キャプテン・アンド・クルー』の中で出演者のコメント付きで紹介されている。  『運営推進本部』は、1ヶ月に1〜2回の頻度でチャレンジ・ミッションを発表し、それへの参加を強く推奨している。  【『ディファイアント』共闘同盟】は基本方針として、総てのチャレンジ・ミッションには参加すると定めている。  本作はチャレンジ・ミッションに参加し、ミッションクリアを目指して奮闘する彼らを描く…スピンオフ・オムニバス・シリーズです。

【『星屑の狭間で』『パラレル2』(アドル・エルク独身編)】

トーマス・ライカー
SF
 舞台は、数多ある地球圏パラレルワールドのひとつ。  超大規模、超高密度、超高速度、超圧縮高度複合複層処理でのハイパー・ヴァーチャル・エクステンデッド・ミクシッド・リアリティ(超拡張複合仮想現実)の技術が、一般にも普及して定着し、ハイパーレベル・データストリーム・ネットワークが一般化した未来社会。  主人公、アドル・エルクは36才で今だに独身。  インターナショナル・クライトン・エンタープライズ(クライトン国際総合商社)本社第2棟・営業3課・セカンドセクション・フォースフロアで勤務する係長だ。  政・財・官・民・公・軍がある目的の為に、共同で構築した『運営推進委員会』  そこが企画した、超大規模ヴァーチャル体感サバイバル仮想空間艦対戦ゲーム大会。 『サバイバル・スペース・バトルシップ』  この『運営推進委員会』にて一席を占める、データストリーム・ネットワーク・メディア。  『トゥーウェイ・データ・ネット・ストリーム・ステーション』社が企画した 『サバイバル・スペースバトルシップ・キャプテン・アンド・クルー』と言う連続配信リアル・ライヴ・ヴァラエティショウが、民間から男性艦長演者10名と女性艦長演者10名を募集し、アドル・エルクはそれに応募して当選を果たしたのだ。  彼がこのゲーム大会に応募したのは、これがウォー・ゲームではなく、バトル・ゲームと言う触れ込みだったからだ。  ウォー・ゲームであれば、参加者が所属する国・団体・勢力のようなものが設定に組み込まれる。  その所属先の中での振る舞いが面倒臭いと感じていたので、それが設定に組み込まれていない、このゲームが彼は気に入った。  だがこの配信会社は、艦長役演者に当選した20名を開幕前に発表しなかった。  連続配信リアル・ライヴ・ヴァラエティショウが配信されて初めて、誰が選ばれたのかが判る仕掛けにしたのだ。  艦長役演者に選ばれたのが、今から90日前。以来彼は土日・祝日と終業後の時間を使って準備を進めてきた。  配信会社から送られた、女性芸能人クルー候補者名簿から自分の好みに合い、能力の高い人材を副長以下のクルーとして選抜し、面談し、撮影セットを見学し、マニュアルファイルを頭に叩き込み、彼女達と様々な打ち合わせや協議を重ねて段取りや準備を積み上げて構築してきた。  彼の目的はこのゲーム大会を出来る限りの長期間に亘って楽しむ事。  会社からの給与とボーナス・艦長報酬と配信会社からのギャラ・戦果に応じた分配賞金で大金持ちになる事と、自分が艦長として率いる『ディファイアント』に経験値を付与し続けて、最強の艦とする事。  スタッフ・クルー達との関係構築も楽しみたい。  運営推進委員会の真意・本当の目的は気になる処だが、先ずは『ディファイアント』として、戦い抜く姿を観せる事だな。

仮想空間のなかだけでもモフモフと戯れたかった

夏男
SF
動物から嫌われる体質のヒロインがモフモフを求めて剣と魔法のVRオンラインゲームでテイマーを目指す話です。(なれるとは言っていない) ※R-15は保険です。 ※小説家になろう様、カクヨム様でも同タイトルで投稿しております。

NPCが俺の嫁~リアルに連れ帰る為に攻略す~

ゆる弥
SF
親友に誘われたVRMMOゲーム現天獄《げんてんごく》というゲームの中で俺は運命の人を見つける。 それは現地人(NPC)だった。 その子にいい所を見せるべく活躍し、そして最終目標はゲームクリアの報酬による願い事をなんでも一つ叶えてくれるというもの。 「人が作ったVR空間のNPCと結婚なんて出来るわけねーだろ!?」 「誰が不可能だと決めたんだ!? 俺はネムさんと結婚すると決めた!」 こんなヤバいやつの話。

グラッジブレイカー! ~ポンコツアンドロイド、時々かたゆでたまご~

尾野 灯
SF
人類がアインシュタインをペテンにかける方法を知ってから数世紀、地球から一番近い恒星への進出により、新しい時代が幕を開ける……はずだった。 だが、無謀な計画が生み出したのは、数千万の棄民と植民星系の独立戦争だった。 ケンタウリ星系の独立戦争が敗北に終ってから十三年、荒廃したコロニーケンタウルスⅢを根城に、それでもしぶとく生き残った人間たち。 そんな彼らの一人、かつてのエースパイロットケント・マツオカは、ひょんなことから手に入れた、高性能だがポンコツな相棒AIノエルと共に、今日も借金返済のためにコツコツと働いていた。 そんな彼らのもとに、かつての上官から旧ケンタウリ星系軍の秘密兵器の奪還を依頼される。高額な報酬に釣られ、仕事を受けたケントだったが……。 懐かしくて一周回って新しいかもしれない、スペースオペラ第一弾!

【VRMMO】イースターエッグ・オンライン【RPG】

一樹
SF
ちょっと色々あって、オンラインゲームを始めることとなった主人公。 しかし、オンラインゲームのことなんてほとんど知らない主人公は、スレ立てをしてオススメのオンラインゲームを、スレ民に聞くのだった。 ゲーム初心者の活字中毒高校生が、オンラインゲームをする話です。 以前投稿した短編 【緩募】ゲーム初心者にもオススメのオンラインゲーム教えて の連載版です。 連載するにあたり、短編は削除しました。

ラビリンス・シード

天界
SF
双子と一緒にVRMMOうさー

忘却の艦隊

KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。 大型輸送艦は工作艦を兼ねた。 総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。 残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。 輸送任務の最先任士官は大佐。 新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。 本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。    他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。 公安に近い監査だった。 しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。 そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。 機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。 完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。 意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。 恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。 なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。 しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。 艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。 そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。 果たして彼らは帰還できるのか? 帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?

処理中です...