十人十色の強制ダンジョン攻略生活

ほんのり雪達磨

文字の大きさ
上 下
13 / 296

室内爆散の公開記録 - 祝ってくれ

しおりを挟む

 やった。
 俺はやった。
 パンドラボックス、絶対無理やろコースと思ったら第一の関門突破に一歩前進したぞの巻ぃ!

 褒めろ!
 褒めろ!!!

 俺を褒めて称えてくれっ!!!

 いやポイントは発生してないんだけどね。倒したわけじゃないから。

 しかし絶対強化無しじゃ――いや強化されてもビームっぽいのは無理では? って思ってたけど、少なくとも俺の方は攻略法があったという事だ。
 これ前進じゃね? 前進だろ。前進って言えぶっ殺すぞ!!!
 ごめんぶっ殺すは言いすぎた。

 ちなみに第一関門の門番であるビームモンスターには今回、コミュ障ビッグアイと名前をつけることにした。
 そう、ビーム? 飛ばしモンスターはコミュ障? だったのだ。コミュ障というか、対人恐怖症みたいな? なんかそんな感じ。響き的にコミュ障が言いやすいし、おびえたいのも恐怖しているのもこっちだしって思ったからとりあえずコミュ障で。

 いや、モンスターがコミュ障ってなんだよ。

 というツッコミはよくわかるけど、だってそうなんだもん!

 つーか、攻略法――っていうか初手ビーム回避手段があったほうがそりゃいいとはいえ、やっぱクソでしょ。
 改めて思うわ。攻略法があったらクソゲじゃ無くねって思うかもしれないけど、誰が一発で頭か体全体かボン! させるようなモンスターから目をそらそうと思うんだよ。

 そう、初手ビームを回避するには相手を見てはならない、というのです。

 普通は無理。俺凡人だから本当に無理。
 死はトラウマのまんまでしょ、何回繰り返してもそうよ。
 それを確定してくるやつがそこにいて、いろいろとやってみることはあっても、

 よーし! じゃあ目をそらしてみよう!

 なんて考えるやつは気狂いすぎると思うの。
 だって思考の流れおかしいやんそんなの。凡人的に考えて。

 他に色々やっては見たのよ。

 目がきゅるぽ! って出てくる前に突進しよう!
 →高速きゅるぽ! からのピッカァ! うあー!

 距離を保ったらきゅるぽ! しないのでは!?
 →視認した時点できゅるぽ! する。ピッカァ! うあー!

 目がわかりやすい弱点になっているのでは?
 →容器(日替わりのゴミ)を投擲だ! 当たる当たらない以前に確認する前にピッカァ! うあー!

 目が合うときまずいから目をそらそう(これは一応やってた。頭おかしくなるのが極まってきてた
 →意味ねぇじゃんうわー!

 等々。

 だったんだよ。何回死んで何回部屋で立ち直りに時間かけてんのって話。記憶に空白があるんは気のせい気のせい。
 チャレンジ精神も折れようというものだ。むしろよくここまで頑張ってない?
 いうても、これ100m進んでないんだよ?
 だって毎回ちょっと進んでちょっと曲がった小部屋っぽいとこの入り口にスタンバってるもん。
 ランダム配置にしろよそこは。固定配置おいしいですできるような環境じゃねぇんだよこっちは。ちくしょうめええええええ!!!

 一歩進んだら死ぬゲームは覚えゲーですらないクソゲ―でしょ!!!

 バグですか? パッチはよ。
 クリア挫折するゲーのそれと似たようなもんやぞ。しかもそれが現実だからね。もうだめだねってなるでしょ。

 しかし、ゲームと違って投げだしてどうにかなるもんでもないっていう。
 もうね。
 クソゲの掲示板で見かけなくなる人の多さとその速度の理由がわかるよって話。
 よっぽどの人でもここまで簡単に死に続けるってだけで心折れるからね。
 慣れて、いつか楽になるっていうんならまだもうちょっと人がいるかもしれないけど、そういう話でもないってのがなんとなくわかっちゃうしね。
 死なないようにしたいのに、それをできそうなきっかけすらつかめないんだから、そりゃ折れるしかない。
 折れても楽には決して慣れないけど、恐怖と絶望がまさってどうしようもなくなる。
 完全な発狂はできなくとも、それに近づきすぎてもそれは直されない。いやらしいシステムだこと。
 恐怖もトラウマも消えてくれない。
 何も考えない、とういう状態に俺たちを置いては決してくれない。死に何も覚えないほどの廃人の状態にはしてくれない。
 ただ、心は折れることができる。できてしまう。
 クソだろこれは。
 掲示板で見かけなくなった人だって、一日中何も考えずにって状態にはなれてないはず。
 震え続けて、おびえ続けて、空腹に苦しんで、水がない渇きに苦しみ続けてるんだろう。
 それを感じない状態には決してならない。それを確信できる。
 俺が完全に折れないのは、止まったらわかっていてもそっち側に行きそうだからというだけの話だ。


 とかいうダウナー感はともかく。


 ある日……そう、ある日のことだ……今日だ……
 曲がって見えるって時に震えた手がゴミ……もとい武器を落としてしまったのだ!

 なんという失態! 攻撃力0っぽいとはいえ唯一の俺の(毎回変わるお弁当容器こと)相棒が!

 と思って、半ば反射的にしゃがんで拾おうとしてしまったのだ!

 はっとした。

 だめだ、ここはもう直線の範囲内!!!

 きゅるぽ! ピッカァ! が来る!!!

 前ちらってして隠れたらどうやら貫通して食らったしもう引き返してもアウトだ!

 ゴミ拾おうとして死亡とかいう見られたら別の意味でも立ち直れない展開の奴!

 死にそなえるように目をぎゅっとつぶる俺!

 震える事も止められない俺!

 ゴミがかたかたいう。この野郎お前のせいだこの野郎。

 ……?

 飛んでこないビーム。

 死なない俺。

 ん? ってなる俺。

 思わず顔を上げてしまう俺。

 きゅるぽ!

 目と目が合った瞬間、僕たちは――



 リスポーン!!



----精神状態復帰中----



 ん?
 ……んん?
 なんか、おかしかったよな?
 だいぶ遅れてた。
 タイミング的には、顔を上げた時に来た。
 下を向いてた時にはこなかった……?
 曲がり角に向ける前に向いていた形だった?

 となったわけである。

 確認しようと思い返した。

 曲がり角→浮いている球体をこちらが視認する→向こうが目を生み出す→攻撃される。

 そこで思った。
 ……もしかしたら、一回こっちが姿を視界に入れる形で認識してなければ目が形成されないんじゃ? って。
 顔を上げるまで攻撃しないということは、目を形成しないと、攻撃されないのでは? って。
 形成条件は『こっちが見る』という行動がいるのでは? と。

 何か解決した、というわけではなかったが、俺は気付けば泣いていた。
 わんわん泣いた。
 すごく泣いた。
 赤ちゃんVS俺の泣き対決でも勝てるんじゃないかと思うくらいずっと泣いてた。
 なんかちょっと進んだ気分になれたからだ。


 まとめ

 私モンスター! 目があうと照れてビーム発射しちゃうの☆
 キャッ☆


 ぶ ち 殺 す ぞ !!! (涙目



 さーて、でもこれで近づけたところで、こいつそもそもどうやって攻撃すれば?
 ゴミ容器攻撃って効くの?
 見ないで攻撃ってどうすればいいんだ!

 って問題がでてきたぞー。
 わはは。
 はぁ。
 昨日の俺よりましになったと納得すべきそうすべき。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どこかで見たような異世界物語

PIAS
ファンタジー
現代日本で暮らす特に共通点を持たない者達が、突如として異世界「ティルリンティ」へと飛ばされてしまう。 飛ばされた先はダンジョン内と思しき部屋の一室。 互いの思惑も分からぬまま協力体制を取ることになった彼らは、一先ずダンジョンからの脱出を目指す。 これは、右も左も分からない異世界に飛ばされ「異邦人」となってしまった彼らの織り成す物語。

魔人に就職しました。

ミネラル・ウィンター
ファンタジー
殺気を利用した剣術の達人である男、最上 悟(さいじょう さとる)。彼は突然、異世界に転移してしまう。その異世界で出会った魔物に魔人と呼ばれながら彼は魔物と異世界で平和に暮らす事を目指し、その魔物達と共に村を作った。 だが平和な暮らしを望む彼を他所に魔物達の村には勇者という存在が突如襲い掛かるのだった――― 【ただいま修正作業中の為、投稿しなおしています】

半分異世界

月野槐樹
ファンタジー
関東圏で学生が行方不明になる事件が次々にしていた。それは異世界召還によるものだった。 ネットでも「神隠しか」「異世界召還か」と噂が飛び交うのを見て、異世界に思いを馳せる少年、圭。 いつか異世界に行った時の為にとせっせと準備をして「異世界ガイドノート」なるものまで作成していた圭。従兄弟の瑛太はそんな圭の様子をちょっと心配しながらも充実した学生生活を送っていた。 そんなある日、ついに異世界の扉が彼らの前に開かれた。 「異世界ガイドノート」と一緒に旅する異世界

【ヤベェ】異世界転移したった【助けてwww】

一樹
ファンタジー
色々あって、転移後追放されてしまった主人公。 追放後に、持ち物がチート化していることに気づく。 無事、元の世界と連絡をとる事に成功する。 そして、始まったのは、どこかで見た事のある、【あるある展開】のオンパレード! 異世界転移珍道中、掲示板実況始まり始まり。 【諸注意】 以前投稿した同名の短編の連載版になります。 連載は不定期。むしろ途中で止まる可能性、エタる可能性がとても高いです。 なんでも大丈夫な方向けです。 小説の形をしていないので、読む人を選びます。 以上の内容を踏まえた上で閲覧をお願いします。 disりに見えてしまう表現があります。 以上の点から気分を害されても責任は負えません。 閲覧は自己責任でお願いします。 小説家になろう、pixivでも投稿しています。

俺のスキルが無だった件

しょうわな人
ファンタジー
 会社から帰宅中に若者に親父狩りされていた俺、神城闘史(かみしろとうじ)。  攻撃してきたのを捌いて、逃れようとしていた時に眩しい光に包まれた。  気がつけば、見知らぬ部屋にいた俺と俺を狩ろうとしていた若者五人。  偉そうな爺さんにステータスオープンと言えと言われて素直に従った。  若者五人はどうやら爺さんを満足させたらしい。が、俺のステータスは爺さんからすればゴミカスと同じだったようだ。  いきなり金貨二枚を持たされて放り出された俺。しかし、スキルの真価を知り人助け(何でも屋)をしながら異世界で生活する事になった。 【お知らせ】 カクヨムで掲載、完結済の当作品を、微修正してこちらで再掲載させて貰います。よろしくお願いします。

日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊

北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

処理中です...