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 ルイスの寝室にて、ルイスは自分の胸の上に顔を乗せ涎を垂らしながら眠っているコハルの頭を撫でながら微笑んでいた。

 何だろうこの匂い、一番好きな匂いだなー。それに暖かくて気持ちが良い。むにゃむにゃ。顎痒い。

コハルは自分の涎により顎が痒くなり目を覚ました。徐に目を開けると、ルイスの腕の中にいる状況に驚く。自分の寝相が悪く彼に乗っていること、彼の服を自分の涎でビショビショにしてしまっている事に驚愕した。

「ご、ごめんなさい!涎!わたしっ」

あわあわと顎についた涎を手で拭きながら慌てるコハル。ルイスは大丈夫だよ言いながら優しく頭を撫で続けてくれた。

「洗わなきゃ!ルイスさん脱いでください」
「私はこれで構いませんよ?」
「私が気にします!」

コハルの懇願にルイスは服を脱いだ。上半身裸になったルイスは筋肉質でとてもかっこいい。

コハルは涎の付いた服を持ち、そのまま部屋を出て行こうとした。咄嗟にルイスがコハルの手首を掴み止める。こんな時間にどこへ?ルイスが問うた。

「せめて水に付けようと思って」
「・・・いい。そばに居て下さい」

ルイスはベッドの上で横向きに寝そべり、布団を上げてコハルに中へ入るよう促す。コハルは持っていた服を畳みテーブルへ乗せ大人しくそれに従う。

「あ、あの、せめて服着ませんか?」
「一番好きなんでしょ?俺の匂い」

っーー!?

てっきり夢の中の事だと思っていたが、コハルはルイスに顔を埋めながら寝言で一番好きな匂いと言っていたのだ。それをしっかりと聞いていたルイスは嬉しくなっていた。コハルは羞恥の情が込み上げ布団で顔を隠す。そんな彼女の行動が可愛くて、ルイスは頭を撫でたあと彼女の頭にキスを落とした。とても紳士的なルイスの滅多にしない行動に驚く。

「すみません。手は出さないと約束したのに貴女が可愛くてつい」

ルイスはそう言うと少し距離をあけてしまった。それがコハルには少し寂しく思えた。布団から顔を出して彼と目を合わせる。

「嫌じゃないので離れないで下さい・・・い、今のは忘れて下さい!」

言った後で恥ずかしくなり後悔した。あのルイス相手に何を言っているんだ。いつも優しくて、頼もしくって、かっこいい彼に離れないでなんて、恥ずかしすぎる。

眉間に皺を寄せたり、恥ずかしそうにしたりと表情が変わるコハルが可愛い。離れないでと言われた事がこんなにも、心が温かくなるなんて思わなかった。

ルイスは嬉しそうに笑いながらコハルに近づき彼女が安心して眠れるよう頭を撫で続けた。

少し時間が経ち、ルイスはコハルが眠ったか確認をする。

「コハル、眠りました?」

コハルは上半身裸のルイスに緊張してしまい眠れていない。だがここは寝たふりをした。彼は返事がないコハルの髪を手ですくいキスをする。サラサラと流れ落ちる髪を見ながらルイスは微笑んだ。

「私は・・・俺は、貴女といると自分じゃないみたいに色々な感情が溢れ戸惑います。

毎日どこにいてもコハルの事で頭がいっぱいになる。

貴女が居なくなった時は胸が抉られ死んでしまう程に苦しかった。毎日どれ程探し回ったか。

貴女と出会って俺は変わった。貴女が誰かを大切に思う気持ちを育んでくれた。例え貴女が誰かのものになっても、俺は貴女を想い続けます。

心から、コハルを愛しています」


ルイスの告白は寝たふりをしていたコハルにしっかりと届いていた。突然の告白に最初は驚いたが、どんどん恥ずかしくなり、嬉しい気持ちになる。

「起きているのは分かっていますよ」

彼の言葉にぎょっとし目を開けた。ルイスはコハルが起きていたのを分かっていて愛の告白をしたのだ。

「俺の気持ち、伝わりました?」

コクコクと首を小さく縦に振った。

「よかった。緊張しましたっ」

ルイスはそう言いながら枕に顔を埋めてしまった。はあっとゆっくりと深呼吸をしている彼がいつもと違くて可愛らしい。

「ルイスさんでも緊張するんですね」

ルイスは仰向けに体勢を変え、腕で目を隠した。

「・・・当たり前じゃないですか。返事は結構です。正直、聞くのが怖い。コハルにふられるかと思うと怖いです。・・・でも、言えてよかった。スッキリしました」

・・・私がふると思うのか?私が好きな人のことを?

結果が決まっているようなルイスの言葉に疑問を抱いた。公爵家で男三人を愛し、過ごしたコハルの考え方はすっかりと変わったのだ。複数人を好きになる事が許されるこの世界で、せっかく好きな人に告白してもらえたのに断る理由がない。

コハルはルイスの肩をちょんちょんと指で叩き、彼の体を自分の方向へ向かせた。コハル自身もルイスへ向き合う。真剣にルイスの瞳を見つめた。

「ルイスさんが好きです。私は、ルイスさんの事が好き・・・だから、その、怖がらなくて大丈夫ですよ?」

最後に彼の頭を撫でた。心配しなくても大丈夫という気持ちを込めて。

ルイスは破顔し頭を撫でているコハルの手を大きな手で包み込んだ。

「うれしい。コハル、ありがとう」

あまりにも嬉しそうな可愛らしい笑顔を向けられ、コハルの胸にルイスの笑顔最高という名の矢が刺さった。

「ここに、唇を重ねてもいいですか」

ルイスは手を伸ばし、親指でコハルの下唇を撫でた。その行動に胸が高鳴り期待を抱く。上半身裸のルイスの引き締まった筋肉を見て喉が鳴った。

「私、ルイスさんのこと襲っちゃいそうです」

コハルの意外な言葉にルイスはきょとんとした後愛おしいそうに笑いながら彼女の顔を撫でる。

「貴女に襲われるなら、本望です」

ルイスは徐に顔を近づけ、コハルの唇に口を重ねた。触れるだけの唇は離れて、また角度を変えて触れる。甘い、甘くて痺れる。舌を絡め心地の良い刺激に頭が蕩けそうになる。

いつの間にかルイスはコハルに被さっていた。

彼が顔を離し、見つめ合う。ルイスの表情は獲物が目の前にあるのに我慢している狼そのもの。今にも食べられてしまいそうな表情に胸が高鳴った。こんな表情もするのかとドキドキしてしまう。

だが彼は下唇を噛み締めた後隣へ移動をし、仰向けに寝転がってしまった。両手で顔を隠し何か呪文を唱えている。

いい雰囲気なのにどうした事かとコハルは体を起こし、四つん這いになりルイスの顔を覗き込んだ。

「ルイスさん?どうしました?」

ルイスは心に決めていた事がある。それは、婚前交渉はしないと言う事だ。コハルに好きだと言われ、浮かれて危うく手を出してしまいそうになった自分を情けなく思う。硬くなった息子を落ち着かせる為に騎士道精神の心得を呟いている。

だがコハルも経験を積んだ女だ。騎士団寮に戻ってから一度もやっていないので欲求不満である。

コハルはルイスの耳朶を食べてみた。驚いたルイスは顔を隠していた手を離しコハルを見た。

あれ?耳は感じないのかな?これならどうかな。

今度はルイスの下唇を食べ甘噛みをする。はむはむと柔らかいルイスの下唇はとっても美味しい。チラッと上目遣いで彼を見ると、なんとあのルイスの顔が赤くなっているのだ。思わず顔を離しまじまじと見つめてしまった。ルイスはバツが悪そうに顔を逸らす。

かわっかわいい・・・!

その仕草に心臓を鷲掴みにされていると、彼はコハルを動かし、自分の胸にコハルの顔を乗せ頭を撫でた。素早い彼の行動にきょとんとしてしまうコハルだが、耳に当たる彼の胸から聞こえる鼓動が激しく聞こえ動けなくなる。

あのルイスをここまでドキドキさせる事が出来たなんてと何故か達成感が込み上げ満足してしまったコハルはこれ以上の事はせず、幸せを噛み締めながら眠りについた。

ルイスが一晩中騎士道精神の心得を唱えて一睡も出来なかった事は知らずに。

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