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 第二騎士団の二人と公爵三人組が渋々帰宅をし、ロイドの執務室でコハルは騎士三人と一緒にいる。やっと会えた三人を前に嬉しい気持ちになっているコハルはずっとニコニコしている。そんなコハルに対しロイドとルイスは微笑んでくれているのだがウォルトだけは眉間に皺を寄せとても苦しそうな表情をしていた。

「ウォルト君どうしたの?」
「・・・パーティーの時、一番そばに居たのにコハルを守れなかった。本当に申し訳ございません!」

突然謝られ戸惑ってしまう。ウォルトが悪い訳では無いのに全ての罪を背負っているかの様な表情と態度に困ってしまった。ウォルトが頭を下げた位置までしゃがみこみ、彼の頭に手を当てた。

「ウォルト君は悪くないよ。それにこうして無事に会えたんだから。ね、もう顔上げて?」

「コハルっ!おれ、俺っ」

もう大丈夫だからと優しく微笑むとウォルトは片膝を床へつけ膝まづいた。

「ウォルト君!?」
「私は一生をかけてコハルを守り続けると誓います。どうか貴女のそばにいる事をお許しください」

いったいどうすれば良いのだろうか
ウォルトは膝をつき頭を下げ続けている。
慌てているコハルにルイスが優しく耳打ちをしてくれた。

「コハルが良ければ、許しますと言ってあげて下さい」

「ゆ、許します!許しますから顔上げて、ね?」

コハルも床へ両膝をついて懇願した。徐に顔を上げたウォルトは涙目になりながらもそれはそれは嬉しそうに微笑むものだから少しだけきゅんとしてしまった。

「ありがとうコハル。もう離さないと誓います」

イケメン美青年に真剣に言われ、きゅんが止まらなくなったのは内緒の話だ。



 その後私服に着替えた騎士三人とロイドの執務室でお酒を交わす事となった。コハルが戻ってきたお祝いだ。ルイスとウォルトはまだまだ余裕そうなのに、意外にもロイドが酔っているのだ。彼はまだ一杯目だというのに顔を赤らめ少し眠たそうにしている。

「ロイドさん、眠いなら横になった方がいいですよ?」

隣に座るロイドを心配するが彼はふるふると頭を横に振り、寝る事に対して否定をした。コハルはまだ飲み足りないのだがこのままではロイドが可哀想だと思いお開きにしようと提案をする。ルイスとウォルトが承諾してくれたので片付けをする為動こうとしたら肩にロイドの額が乗ってきた。

「・・・行かないでほしい」

これは酔っているな。しょうがないんだから。普段はかっこよくて頼りになる人なのにお酒に弱くて酔うと甘えん坊になるなんて可愛いではないか。

クスクスと笑うコハルにロイドは顔を上げ言葉を続けた。

「一緒に寝てほしい。そばにいないと不安なんだ。ダメだろうか」

最後にこてんと首を傾げるものだから可愛くて、普段とのギャップが凄くて、顔面の破壊力が凄い。コハルはロイドのイケメン破壊力に粉砕され、承諾した。

「手は出さないと約束する。・・・その、ありがとう」

っーー!!!

へにゃっと笑ったロイドに悶絶した。普段の彼の笑顔は微笑む程度だったりとてもクールなのにへにゃっと甘く笑ったのだ。余りにも可愛い彼の笑顔に空いた口が塞がらない。心臓の音だけが響いてうるさい。

「ロイド様、抜け駆けですか」
「私だってコハルと一緒に寝たいです!」

ルイスとウォルトが抗議を始めた。彼等は自分達のベッドを運んでくると言ったり何とかして一緒に寝ようと二人で案を出し合っている。

「・・・俺のプライバシーはどうなる」

コハルの肩にこめかみを置きジト目で二人を睨むロイド。こめかみの刺激が気持ちいいのか、彼は猫が主人に甘える様にコハルの肩にグリグリと擦り付ける。

かわっかわいい!

再び悶えるコハルは顔を赤く染めふるふるとロイドの可愛さに体が震え、耐えていた。

「コハルが良ければ交代で一緒に寝ませんか?」
「そうしましょう!もう手出しはしないのでコハルお願いします」

もう?

ウォルトの言葉にルイスが固まった。そうだ、こいつはコハルを抱いた事があるんだと思い出し彼は笑顔のまま眉をピクピクさせウォルトを睨む。

ウォルトはハッとし口を手で隠した。チラッと横目でルイスを見ると彼が凄く怖い顔をしていたので慌てて目を逸らす。

「あの、皆さんが良ければ私はそれで構いません」

コハルは一緒に寝る事を承諾した。正直に言うと今までずっと公爵家で誰かと一緒に寝ていた為今更独りで寝るのは寂しいと思ったからだ。それに、この三人なら安心出来る。

ルイス、ウォルトと別れロイドと共にベッドに入る。

どうしよう、眠れない。

安心出来ると思ったのだが緊張して眠れない。隣にあのロイドが居るのだから。チラッと片目を開け彼を見ると、うつ伏せの状態で腕に顔を乗せこちらをまたあの甘い笑顔で見ているロイドと目が合い驚いた。

「・・・うれしい。コハルが戻った」

甘い声で囁かれ思わず目をぎゅっと閉じてしまった。ちゃんと返事をしなくては失礼だろうと分かっているのだがドキドキしてそれどころではない。よし、言うぞ。

「私も会えて嬉し・・・あれ?」

ロイドはすやすやと気持ち良さそうな顔をして眠っていた。

この男、可愛すぎるっ

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