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しおりを挟むガタッ ガタッ ゴトンッ
「っーーどういうこと?」
雑な揺れに目を覚まし徐に目を開けると、見知らぬ薄暗く狭い場所に閉じ込められていた。両手は頭上で拘束されている。片足は壁に繋がっている鎖で拘束されていて身動きが取れない。
まずは状況を理解しよう。トイレで手を洗っていたら変な人に口を押さえられて・・・これって拉致?
段々と置かれている状況を理解し呼吸が浅くなる。馬が走る音がするのでここはきっと馬車の中だ。拉致をされて今は移動中なのだろう。何とかしてここを抜け出したい。
コハルは拘束されている手や足を力づくで動かす。ガシャンッガシャンと音はするが拘束具が外れる気配は無い。
「お嬢ちゃん怪我するからやめなー?」
誰も居ないと思っていたのに声が聞こえて驚き怯える。薄暗い影の中には二人の人影がいた。よく見ると二人とも中年位の見た目だが髭面で小綺麗とは程遠く例えるなら山賊のおじさんだ。臭いもつんとしていて、とてもきつい。
「私をどうするつもりですか?」
コハルの質問に男達はニヤリと笑う。その笑顔も気持ち悪かった。
「お嬢ちゃん偉い人を怒らせちゃったみたいだね」
「女を好きにしていいって言われたから期待する玉じゃいと思っていたが、こりゃ上玉だな」
偉い人を怒らせた?誰の事だろう。
それから男達はこれからコハルをどうするか話し合っている。内容は売るか、薬漬けにして肉便器にするか等だ。冗談じゃない。助けを求めたいがきっともう王城から離れていて誰も拉致事件が起きている事に気づいていないかもしれない。ここは自力で何とかしなくては。
「お願いです逃がして下さい。今なら誰にも言いません」
以前強姦は重罪で打首か奴隷堕と教えて貰った事がある。つまり女性を拉致する事は重罪だろう。だが男達は少し黙った後大声で笑い出す。
「お嬢ちゃんは処女か?」
「・・・」
質問に黙り込む。ここで処女だと言ったら犯されないだろうか。その方が確率は高いだろう。だがもし嘘だとバレた時が怖そうだ。落ち着け、考えろと自分に言い聞かせる。だが痺れを切らした一人の男が拘束されていない方の足を掴み開き、M字開脚にさせ新しい鎖で固定に拘束されてしまった。スカートを捲り上げ下着姿を見られる。
「白くて綺麗な肌だなあ」
ひいっ!
男の大きくて汚い手が腿の内側を舐める様に撫でる。ゾワゾワと嫌悪感が増し鳥肌が立つ。更に男は持っているナイフを目の前で光らせ動くなと注意をされた。そのナイフで下の下着を切り取られるとコハルのつるつるとした大事なところが顕になる。男達は宝物を見つけたかのように目を輝かせた。
「うひょー!こりゃ高く売れるぜ」
「でもなー売るのも持ったいねぇな」
一人は今後の事を真剣に考えて、もう一人は面白おかしくナイフをチラつかさながらコハルのあそこに息を吹きかけて楽しんでいる。コハルは恐怖心からとうとう涙が溢れ出た。
「あれー?指が入りそうだよー?」
「やめてっ」
息を吹きかけて遊んでいた男の太い指がコハルの大事な所を浅く出入りさせる。
「濡れちゃってるよー?無理矢理されるのが好きなのかなー?」
違う。濡れているのは身体を守らなくちゃいけないと思っている生理現象で好きこのんで濡れている訳では無い。キッと睨みつけると男はこれに興奮したのかカチャカチャとズボンのベルトを外し始めた。
「おい、もう少し待てよ。考えさせろ」
「いいだろもう俺達の物にしちゃおうぜ」
「・・・はあ。しょうがねえな」
やばいっ本当にやばい
いよいよ説得していた男も売る事は諦めた様で自身の服を脱ぎ始めた。身動きの取れないコハルはこれから犯させる事を痛感し最後の足掻きに大声を出す。
「お願いっ誰か!誰か助けてー!!」
「ハッ今更こんなとこに助けが来るかよ」
ヒヒンーーッ
「なんだ!?どうした!?」
突然馬が雄叫びを上げ馬車が止まる。男達が何事かと慌て叫んでいると、コハルが繋がられていた鎖の壁が、大きい音と共に外から破壊された。
M字開脚から解放されたコハルはやっと出来た出口へ顔を向ける。何とそこには月夜に照らされ綺麗な黒髪が更に艶立ち、剣を持って凛々しく立っているラウルと、それを挟むように険しい表情をしながら双剣を持っているクルトとアルトがいた。
「っつーみんな!」
見知った顔が現れ喜ぶ。コハルは直ぐに彼等の元へ行こうと立ち上がろうとするがまだ手が拘束されていて動けない。それに、鎖で繋がられている足も重い。そんなコハルの姿を見たラウル達は更に眉間に皺を寄せ剣を男達へ向けた。
「公爵家の名のもと、処罰する」
ギャーっ
男達がラウルに処刑されている間コハルはクルトに抱かれながら目を閉じていた。血の匂いがする。
「どうしてここが分かったの?」
「テラスから怪しい人影が見えたんだ。運ばれて行く女性のドレスの色がコハルが着ていたドレスに似てて、まさかと思って慌てて追いかけたんだけど、よかった。追いかけてよかった」
「っこわかった」
クルトの優しい声を聞いてやっと安心出来ると思ったら緊張が溶けて彼を抱き締めた。目からは涙が溢れ出て、えずいてしまう。
もう大丈夫。大丈夫だよ。
何度も大丈夫だよと言い、抱きしめながら頭を撫でてくれるクルト。もう泣き止みたいのに涙が終わらない。事が終わったのかアルトも背後から抱き締めてくれた。ラウルが空を見上げて呟く。
「・・・もうじき雨が降る。家へ帰るぞ」
「あ、ロイドさん、お城へ戻らないと」
きっと今頃皆心配してくれているであろう。
「コハル、ここから公爵家は近いんだ。傷の手当をしたいし・・・」
「騎士団には後で連絡入れておくから俺達と帰ろ?」
コハルはいち早く騎士達に会いたかったが助けてもらったのだし、連絡をしてくれると約束してくれたのでここは彼等の言う通りにしようと決めた。
本来なら公爵家の馬車があるのだが三人は急いで追いかけて来た為馬しかない。先に馬に乗ったラウルがコハルの前で止まる。
「乗れ」
「え?いいよ公、コハルは俺が乗せるから」
アルトの発言を無視してラウルはコハルに手を差し伸ばす。
「結婚しろとか言うなよ」
テラスで言われた言葉と同じセリフにやっと笑えることが出来たコハルはその手を強く握った。
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