上 下
46 / 67

43

しおりを挟む


 ガタッ ガタッ ゴトンッ

「っーーどういうこと?」

雑な揺れに目を覚まし徐に目を開けると、見知らぬ薄暗く狭い場所に閉じ込められていた。両手は頭上で拘束されている。片足は壁に繋がっている鎖で拘束されていて身動きが取れない。

まずは状況を理解しよう。トイレで手を洗っていたら変な人に口を押さえられて・・・これって拉致?

段々と置かれている状況を理解し呼吸が浅くなる。馬が走る音がするのでここはきっと馬車の中だ。拉致をされて今は移動中なのだろう。何とかしてここを抜け出したい。

コハルは拘束されている手や足を力づくで動かす。ガシャンッガシャンと音はするが拘束具が外れる気配は無い。

「お嬢ちゃん怪我するからやめなー?」

誰も居ないと思っていたのに声が聞こえて驚き怯える。薄暗い影の中には二人の人影がいた。よく見ると二人とも中年位の見た目だが髭面で小綺麗とは程遠く例えるなら山賊のおじさんだ。臭いもつんとしていて、とてもきつい。

「私をどうするつもりですか?」

コハルの質問に男達はニヤリと笑う。その笑顔も気持ち悪かった。

「お嬢ちゃん偉い人を怒らせちゃったみたいだね」
「女を好きにしていいって言われたから期待する玉じゃいと思っていたが、こりゃ上玉だな」

偉い人を怒らせた?誰の事だろう。

それから男達はこれからコハルをどうするか話し合っている。内容は売るか、薬漬けにして肉便器にするか等だ。冗談じゃない。助けを求めたいがきっともう王城から離れていて誰も拉致事件が起きている事に気づいていないかもしれない。ここは自力で何とかしなくては。

「お願いです逃がして下さい。今なら誰にも言いません」

 以前強姦は重罪で打首か奴隷堕と教えて貰った事がある。つまり女性を拉致する事は重罪だろう。だが男達は少し黙った後大声で笑い出す。

「お嬢ちゃんは処女か?」
「・・・」

質問に黙り込む。ここで処女だと言ったら犯されないだろうか。その方が確率は高いだろう。だがもし嘘だとバレた時が怖そうだ。落ち着け、考えろと自分に言い聞かせる。だが痺れを切らした一人の男が拘束されていない方の足を掴み開き、M字開脚にさせ新しい鎖で固定に拘束されてしまった。スカートを捲り上げ下着姿を見られる。

「白くて綺麗な肌だなあ」

 ひいっ!

男の大きくて汚い手が腿の内側を舐める様に撫でる。ゾワゾワと嫌悪感が増し鳥肌が立つ。更に男は持っているナイフを目の前で光らせ動くなと注意をされた。そのナイフで下の下着を切り取られるとコハルのつるつるとした大事なところが顕になる。男達は宝物を見つけたかのように目を輝かせた。

「うひょー!こりゃ高く売れるぜ」
「でもなー売るのも持ったいねぇな」

一人は今後の事を真剣に考えて、もう一人は面白おかしくナイフをチラつかさながらコハルのあそこに息を吹きかけて楽しんでいる。コハルは恐怖心からとうとう涙が溢れ出た。

「あれー?指が入りそうだよー?」
「やめてっ」

息を吹きかけて遊んでいた男の太い指がコハルの大事な所を浅く出入りさせる。

「濡れちゃってるよー?無理矢理されるのが好きなのかなー?」

違う。濡れているのは身体を守らなくちゃいけないと思っている生理現象で好きこのんで濡れている訳では無い。キッと睨みつけると男はこれに興奮したのかカチャカチャとズボンのベルトを外し始めた。

「おい、もう少し待てよ。考えさせろ」
「いいだろもう俺達の物にしちゃおうぜ」
「・・・はあ。しょうがねえな」

やばいっ本当にやばい

いよいよ説得していた男も売る事は諦めた様で自身の服を脱ぎ始めた。身動きの取れないコハルはこれから犯させる事を痛感し最後の足掻きに大声を出す。

「お願いっ誰か!誰か助けてー!!」
「ハッ今更こんなとこに助けが来るかよ」

ヒヒンーーッ

「なんだ!?どうした!?」

突然馬が雄叫びを上げ馬車が止まる。男達が何事かと慌て叫んでいると、コハルが繋がられていた鎖の壁が、大きい音と共に外から破壊された。
M字開脚から解放されたコハルはやっと出来た出口へ顔を向ける。何とそこには月夜に照らされ綺麗な黒髪が更に艶立ち、剣を持って凛々しく立っているラウルと、それを挟むように険しい表情をしながら双剣を持っているクルトとアルトがいた。

「っつーみんな!」

見知った顔が現れ喜ぶ。コハルは直ぐに彼等の元へ行こうと立ち上がろうとするがまだ手が拘束されていて動けない。それに、鎖で繋がられている足も重い。そんなコハルの姿を見たラウル達は更に眉間に皺を寄せ剣を男達へ向けた。

「公爵家の名のもと、処罰する」

 ギャーっ

男達がラウルに処刑されている間コハルはクルトに抱かれながら目を閉じていた。血の匂いがする。

「どうしてここが分かったの?」
「テラスから怪しい人影が見えたんだ。運ばれて行く女性のドレスの色がコハルが着ていたドレスに似てて、まさかと思って慌てて追いかけたんだけど、よかった。追いかけてよかった」

「っこわかった」

クルトの優しい声を聞いてやっと安心出来ると思ったら緊張が溶けて彼を抱き締めた。目からは涙が溢れ出て、えずいてしまう。

もう大丈夫。大丈夫だよ。
何度も大丈夫だよと言い、抱きしめながら頭を撫でてくれるクルト。もう泣き止みたいのに涙が終わらない。事が終わったのかアルトも背後から抱き締めてくれた。ラウルが空を見上げて呟く。

「・・・もうじき雨が降る。家へ帰るぞ」
「あ、ロイドさん、お城へ戻らないと」

きっと今頃皆心配してくれているであろう。

「コハル、ここから公爵家は近いんだ。傷の手当をしたいし・・・」
「騎士団には後で連絡入れておくから俺達と帰ろ?」

コハルはいち早く騎士達に会いたかったが助けてもらったのだし、連絡をしてくれると約束してくれたのでここは彼等の言う通りにしようと決めた。

本来なら公爵家の馬車があるのだが三人は急いで追いかけて来た為馬しかない。先に馬に乗ったラウルがコハルの前で止まる。

「乗れ」
「え?いいよ公、コハルは俺が乗せるから」

アルトの発言を無視してラウルはコハルに手を差し伸ばす。

「結婚しろとか言うなよ」

テラスで言われた言葉と同じセリフにやっと笑えることが出来たコハルはその手を強く握った。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【R18】聖女のお役目【完結済】

ワシ蔵
恋愛
平凡なOLの加賀美紗香は、ある日入浴中に、突然異世界へ転移してしまう。 その国には、聖女が騎士たちに祝福を与えるという伝説があった。 紗香は、その聖女として召喚されたのだと言う。 祭壇に捧げられた聖女は、今日も騎士達に祝福を与える。 ※性描写有りは★マークです。 ※肉体的に複数と触れ合うため「逆ハーレム」タグをつけていますが、精神的にはほとんど1対1です。

5人の旦那様と365日の蜜日【完結】

Lynx🐈‍⬛
恋愛
気が付いたら、前と後に入ってる! そんな夢を見た日、それが現実になってしまった、メリッサ。 ゲーデル国の田舎町の商人の娘として育てられたメリッサは12歳になった。しかし、ゲーデル国の軍人により、メリッサは夢を見た日連れ去られてしまった。連れて来られて入った部屋には、自分そっくりな少女の肖像画。そして、その肖像画の大人になった女性は、ゲーデル国の女王、メリベルその人だった。 対面して初めて気付くメリッサ。「この人は母だ」と………。 ※♡が付く話はHシーンです

義兄様に弄ばれる私は溺愛され、その愛に堕ちる

一ノ瀬 彩音
恋愛
国王である義兄様に弄ばれる悪役令嬢の私は彼に溺れていく。 そして彼から与えられる快楽と愛情で心も身体も満たされていく……。 ※この物語はフィクションです。 R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。

逆ハーレムエンド? 現実を見て下さいませ

朝霞 花純@電子書籍化決定
恋愛
エリザベート・ラガルド公爵令嬢は溜息を吐く。 理由はとある男爵令嬢による逆ハーレム。 逆ハーレムのメンバーは彼女の婚約者のアレックス王太子殿下とその側近一同だ。 エリザベートは男爵令嬢に注意する為に逆ハーレムの元へ向かう。

大嫌いな次期騎士団長に嫁いだら、激しすぎる初夜が待っていました

扇 レンナ
恋愛
旧題:宿敵だと思っていた男に溺愛されて、毎日のように求められているんですが!? *こちらは【明石 唯加】名義のアカウントで掲載していたものです。書籍化にあたり、こちらに転載しております。また、こちらのアカウントに転載することに関しては担当編集さまから許可をいただいておりますので、問題ありません。 ―― ウィテカー王国の西の辺境を守る二つの伯爵家、コナハン家とフォレスター家は長年に渡りいがみ合ってきた。 そんな現状に焦りを抱いた王家は、二つの伯爵家に和解を求め、王命での結婚を命じる。 その結果、フォレスター伯爵家の長女メアリーはコナハン伯爵家に嫁入りすることが決まった。 結婚相手はコナハン家の長男シリル。クールに見える外見と辺境騎士団の次期団長という肩書きから女性人気がとても高い男性。 が、メアリーはそんなシリルが実は大嫌い。 彼はクールなのではなく、大層傲慢なだけ。それを知っているからだ。 しかし、王命には逆らえない。そのため、メアリーは渋々シリルの元に嫁ぐことに。 どうせ愛し愛されるような素敵な関係にはなれるわけがない。 そう考えるメアリーを他所に、シリルは初夜からメアリーを強く求めてくる。 ――もしかして、これは嫌がらせ? メアリーはシリルの態度をそう受け取り、頑なに彼を拒絶しようとするが――……。 「誰がお前に嫌がらせなんかするかよ」 どうやら、彼には全く別の思惑があるらしく……? *WEB版表紙イラストはみどりのバクさまに有償にて描いていただいたものです。転載等は禁止です。

【完結】令嬢が壁穴にハマったら、見習い騎士達に見つかっていいようにされてしまいました

雑煮
恋愛
おマヌケご令嬢が壁穴にハマったら、騎士たちにパンパンされました

公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-

猫まんじゅう
恋愛
 そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。  無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。  筈だったのです······が? ◆◇◆  「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」  拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?  「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」  溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない? ◆◇◆ 安心保障のR15設定。 描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。 ゆるゆる設定のコメディ要素あり。 つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。 ※妊娠に関する内容を含みます。 【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】 こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)

悪役令嬢は王太子の妻~毎日溺愛と狂愛の狭間で~

一ノ瀬 彩音
恋愛
悪役令嬢は王太子の妻になると毎日溺愛と狂愛を捧げられ、 快楽漬けの日々を過ごすことになる! そしてその快感が忘れられなくなった彼女は自ら夫を求めるようになり……!? ※この物語はフィクションです。 R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。

処理中です...