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第二章

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 今夜は影の忘年会。店一件ごと貸切り盛大に酒を浴びる程呑む日だ。招待された騎士五人は入店して直ぐに視界にとまった騎士団長ジョンの姿を見てしまい、なぜ団長が居るんだと首を傾げている。

ジョンは影のリーダーであり、双子の兄弟でもあるジャックと楽しそうに会話をしていた。部下である騎士達を見つけると笑顔で手を振っている。頭を軽く下げ挨拶をした騎士達。それを見たジョンはもういいのだろうか再びジャックとの会話を弾ませた。

「泣き虫ウィル来たか!お前達ここ座れよ!」

ガッハッハッと豪快に笑ったヴォルフガングが騎士五人に手招きをした。

“泣き虫ウィル”

リリーが目覚めた日に号泣した姿を見られたウィルフレッドはあの日以降、影達から変なあだ名を付けられてしまった。長い呼び名で言いづらいだろうとムッとしたウィルフレッドだったが、彼らに否定したところで無駄だろうと諦めた。

五人はチラチラと周囲にリリーが居ないか確認をしながらヴォルフガングのそばへ移動した。こうして改めて影達を見るとその人数が多く、個性的な人物ばかりだなとしみじみと思う。

シルヴィやレンやロビン等見知った顔は散り散りに他の影達と呑んでいた。

リリーはどこだ?

結局リリーの姿を見つけられないままヴォルフガングの近くの席へ座った騎士達。そんな彼らに対しヴォルフガングが盛大に笑いながら遠くの席を指さした。

「リリーならあっちにいるぜ」

ヴォルフガングが言った通り遠くに女の集団が居てその中にピンクアメジストを発見した。同性といることに安心した騎士達は目の前に出された酒やつまみを美味しく頂きながらヴォルフガングの武勇伝を聞くことになった。

暫くして酒が進みほろ酔いになってきた騎士達。かなりの時間呑んでいるが影の忘年会は終わる気配がない。いつの間にかノエルとルークは爺の元へ移動し彼が開発した最新の薬や武器や魔道具の話で盛り上がっている。

ガヤガヤ わちゃわちゃと盛り上がる宴会は隣同士でも声を張らないと聞こえないくらい周囲がうるさい。

そんな中一層に盛り上がった声を出した影の女集団。ヴォルフガングが始まったかと言い酒を呑んだ。ウィルフレッド、エレン、リヒャルトの三人は楽しそうな悲鳴が上がった女集団に目を向けると瞠目し固まってしまう。

どんな経緯があったのかは知らないが服を脱ぎ出した女達。下着姿だけの者、全裸の者等様々だ。しかもその一部の女同士がテーブルの上で交合い始めたのだ。一人が下になり一人が上から重なりキスをしたり胸を揉んだりへそを舐め尻を揉む。まるでショーのように周囲を興奮させる彼女達の動きに釘付けになる観客の影達。

「あいつら酔いすぎると服脱ぎ始めるんだよ。目の保養になるからお前らも見とけ」

ヴォルフガングに言われた三人はまさかリリーも脱いでるんじゃないかと焦り慌ててリリーを探した。すぐに彼女を見つけることが出来裸になっていない事に安心・・・する事も出来なかった。

なぜかリリーはバニーガールのコスプレをしていた。黒いバニーガールの衣装に黒の網タイツ。白くて長いウサギ耳のカチューシャ。以前パン屋で見た、パンで耳を表現した姿が可愛らしいカジュアルウサギだとしたら、今のウサギ姿ははっきり言ってエロい。しかも酔っているのか顔が赤くとろんとしている。よく見るとリリーは着せられている最中のようで彼女の隣に居る女が手ぐしで髪を整えたりウサギのしっぽをつけたりしていた。

「今年はウサギか~昨年はリスだったな」

なんと毎年動物のコスプレをされていたのかと驚いた三人だったが服を着ていた他の女達もバニーガールの姿にその場で着替え始めたので驚く。いったいこれから何が始まるんだ?

それに服を脱いだのは女だけではなかった。
体に自信のある男の影達も脱ぎ出したのだ。バキバキの筋肉を見た女達が興奮し黄色い声を上げる。「いいぞー!」と他の男も歓声を上げた。

影達はストリップショーを始めた。盛り上がりが最高潮になる。再びリリーを見るとなんと彼女は女の影達から口移しで酒を飲まされていた。次々と飲まされ続けるリリーを見てさすがに止めた方がいいんじゃないかと立ち上がろうとした三人をヴォルフガングが止めた。

「今夜は無礼講なんだからお前らも記憶飛ばすくらい呑めよ」

そんな事を言われてもリリーが心配だ。

だがヴォルフガングから俺に口移しで飲まされたくなかったら黙って呑めと脅された為仕方なく強い酒を呑んだ。

珍しく酔っている三人。それでも眠くなりぽーっとしているだけだ。リリーが居たはずの場所を見て彼女が居ない事に気がついた三人はいつの間に居なくなったんだとリリーを探した。



ー数分前ー

 影の女達から可愛がられていたリリーはシルヴィに抱えられ席を移動していた。シルヴィの膝上で対面で座らされたリリーはとろんとした顔でシルヴィを見つめた。

「リリーさんゲット~♪あーあ。散々飲まされちゃって可哀想に。ねぇリリーさん僕の指に生クリームついちゃったの。舐めて?しゃぶるみたいにエロくね?」

酔っているリリーは言われた通りシルヴィの二本の指を舐めた。舌先で舐めたり、舌全体で下から上へ舐めたりとシルヴィの様子を見ながら指を舐めるその仕草が色欲をそそる。ゾクゾクと興奮したシルヴィが指を増やし早急にリリーの口の中で抜き差しをした。苦しくなったリリーは涙目になり顔を歪ませるがそれが更に彼を興奮させ止めることが出来ない。

「ちょっとそこのウサギ借りるよ」

ロビンがシルヴィからリリーを奪うように抱え席を離れた。いい感じの時に奪われてしまったシルヴィは地団駄を踏みながら周囲にロビンとリリーが居ないか見回す。

ロビンにより連れてかれたリリーは彼の膝の上で酒を口移しで飲まされていた。もう要らないと顔を横に振るとニヤリと口角を上げたロビン。

「キスで俺のこと満足させたらやめてあげるよ」

彼に言われた通りリリーからロビンにキスをした。一生懸命舌を動かしたり唇を甘噛みしてみるが彼は自分から舌を動かすことはなく受け身となるだけ。

「そんなんじゃ全然足りない。もっと頑張ってよ可愛いウサギちゃん」

くっと悔しくなったリリーはロビンの首元に噛み付いた。

「ッーー」

歯型をつけたリリーはその跡を舌先で舐め慰めると、首筋を下から上へ舐め上げた、その流れで耳たぶをはむっと咥えチュウチュウと吸う。

「もっとして欲しかったら何て言うの?」

形勢逆転とばかりにしたり顔で囁いたリリーを見たロビンはスイッチが入ったのか凄く良い笑顔を浮かべた。

「このウサギ躾が必要だね」

ピシッと怯えたリリー。所詮ロビンはドSなのだ。怒らせてしまったかと思ったリリーはシュンとウサ耳を垂らした。その姿を見たロビンがより興奮し今度はロビンからリリーにキスをしようとしたところで目の前に居たはずのリリーが消えた。

ちっ。舌打ちをしたロビンはリリーを探した。



 リリーはレンに連れ去られていた。
彼はロビンからリリーを奪うと膝の上に対面で座らせ網タイツ越しに脚を撫で両手で彼女のお尻を揉みしだいた。レンの胸に顔を埋めたリリーは直に陰部に触れてくれないレンを見上げる。

「何物欲しそうに見上げてんだよ」

「・・・触ってくれないの?」

「触ってんだろ。なあ、下着穿いてねーの?」

お尻を揉んでいたレンはリリーのお尻の穴の周囲をクルクルと指先で撫で回した。ビクビク反応するリリーは女達に下着を取られてしまっていたので彼の問いに頷いた。いい所に当てようと腰が勝手に動いてしまう。

「エロウサギ」

ピンッと陰部を隠す布を持ち上げられ食い込まされた。甘くて物足りないけど先程よりも強い刺激に全身で反応したリリーはもっと触って欲しいと彼の乳首を触りながら彼を見上げた。

「おら、もっと腰動かせよ。そしたら触ってやるから」

ニヤニヤと楽しんでいるレン。触って欲しくて腰を動かすリリー。そんな二人のそばにシルヴィとロビンが現れた。顔は笑っているが二人とも怒っている。

「ちょっと!僕がリリーさんとイチャイチャしてたのに何楽しいことしてるの!?」

「リリーおいで。躾、されたいだろ?」

邪魔されたレンは二人にガンを飛ばし失せろと手を振ったがそれにイラッとした二人は無理やりリリーを奪おうと彼女に触れた。

バチバチと火花を散らす彼らの間で酔っているリリーは快楽欲しさに彼らの腕をまとめて抱き寄せた。

「いっぱい気持ちよくして?お願い」

自分も頑張るからと懇願するリリーに対し我先にと彼女を抱えようとしたがタイミングが一緒だったせいで彼らは頭同士をぶつけてしまった。怒りが頂点に達した三人はリリーを床に置き喧嘩を始めた。

「上等じゃねえか、いつかはぶっ飛ばそうと思ってたんだよ」

「それはこっちのセリフだよ」

「バニーリリーは僕のものだよ」

いつもの三人の喧嘩が始まり周囲の影達は「いいぞー!」「もっとやれー!」とガヤを飛ばす。

酔いが回り床に放置されたリリーは天井を見つめていた。天井に備え付けられたライトを中心に天井が回っている。ボーッと天井を見つめていたら視界が暗くなった。

「リリー大丈夫?」

こちらの様子を伺っているのは騎士団長のジョンだ。彼はリリーを親が子供を抱っこする形で抱えた。ジョンを慕っている彼女は抱かれたままギュッと彼の首に腕を回し甘えた。

「触っといてイかせてくれなかった。お願いジョン気持ちよくしてぇ」

「えー。さすがにこの前まで死にかけてた子を相手に出来ないよー。ほら、よしよし。良い男探してあげるからね」

断られたリリーは拗ねて彼の肩に頬を乗せてムスッとした。そんな彼女の頭を撫でながら移動するジョン。幼い頃から一緒にいるジョンの手のひらの温もりに落ち着いたリリーはゆっくりと目を閉じた。

「あ、いたいた。あれ?リリー眠っちゃったみたい。悪いけどこの子の家まで運んでくれない?飲み足りなかったらまた戻って来なよ。なんか気持ちよくしてってずっと言ってたなー。それじゃあよろしく~」

ジョンはリリーを抱えたままウィルフレッド、エレン、リヒャルトの前に現れた。そしてウィルフレッドにリリーを預けると直ぐにどこかへ行ってしまった。

突然現れた上司に探していた彼女を渡された三人は顔を見合わせ、取り敢えずリリーの家に行くかと小さく笑い合った。

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