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四章 姉の下へと続く道
プルックのシーサーペント
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翌日、ドラゴスを出発し、半日程が経ったころ、わたし達は遂にプルックという港町へと辿り着いた!
潮の香りが漂うこの町の港には大きな帆船が停泊しており、そこから多くの人々が降りてきているため町は人で賑わっていた。
しかし、どこか港の様子がおかしく、帆船だけでなく多くの船が港に停泊していた。
それを見たルースさんは険しい表情で船を眺めていた。
「おかしいな……、帆船なら兎も角漁船まで海に出ていないな……。まだ日が高いのだから漁に行っていてもおかしくないのに……」
ルースさんのその呟きにわたしも港に目を向けると、確かに港に停泊している船のほとんどは漁船のようで、漁をしているような様子はなかった。
「何かあったのかもしれませんね。お姉ちゃんの事もあるし、ちょっと訊いてみます!」
わたしはそう言うと、みんなは頷き、わたし達はプルックの港のチケット売り場へと向かった。
「すみません。ここにカナって人が来ませんでしたか?黒い髪のポニーテールがトレードマークで、胸の小さな女の人なんですけど……」
「はて……、胸の小さなポニーテールの女性……?ん~……、悪いが覚えてないな……。ここには多くの人がやって来る。誰も彼も似たような人は多いからな……特定の人物を聞かれても分からんな……。とびきり目立つような特徴でもあれば覚えているんだろうが……。力になれなくてすまないね」
「いえ……ところで、船が多く停泊しておるようですが、何かあったんですか?」
「あぁ……。どうもここ最近、近海でシーサーペントという巨大な魔物が現れてな……。漁船はもちろんのこと、小舟にさえも手当たり次第に襲いかかってくるもんで帆船どころか漁にすら出れない状況なんだ……」
「シーサーペント……?こんな所にシーサーペントが出るの?」
チケット売場のおじさんの言葉に、エミリーは首を傾げていた。
「シーサーペントって何……?」
わたしは頭にハテナマークを浮かべながら聞くと、ユーリが答えてくれた。
「シーサーペントは別名『海蛇竜』という獰猛な魔物なんだ。その性格は凶暴そのもので縄張りに近付こうものなら超高圧水流で粉砕するんだよ」
そ……そんな危険な魔物がいるのか……。
「え……、と言うことはそのシーサーペントをどうにかしないと船が出ないってことですか?」
「ま、そういう事だな」
チケット売場のおじさんはお手上げだと言わんばかりに頷きながら言う。
その声はどこか諦めにも似たものだった。
「そんな……。どうにかしないとこの町の人達も困るじゃないですか!なんで誰もシーサーペントを討伐しないんですか?」
わたしは憤りを感じ、チケット売場のおじさんに食い気味に聞く。
「倒せるものならとっくに倒してるよ。それに、さっきもあんたの連れも言っていただろ?シーサーペントは縄張り意識が高くてな、帆船も漁船もあの付近を通るから近付くと攻撃してきちまうんだよ……」
「むぅ~……」
「そんな顔をしてもダメな物はダメだ」
お姉ちゃんの足取りは掴めないけど、だからと言ってこの町をこのままにしておく訳にも行かない……。
それなら……!
「それなら、わたしがそのシーサーペントを倒しますっ!」
「な……っ!?サナ!それはいくら何でも危険だよ……っ!?」
ユーリはわたしの宣言に驚いたのか、慌てて止めようとしてくる。
「でも、このままシーサーペントを放っておいたらお姉ちゃんを探しにもいけないんだよっ!?」
「そ……それはそうかもしれないけど……。いくらなんでもサナ一人じゃ無理だよ……!」
ユーリはわたしの身を心配して言ってくれるのは嬉しいけど、だからってこのままにしておくことなんて出来ない。
わたしはユーリに言い寄ろうとすると、チケット売場のおじさんが話に割って入ってきた。
「その兄さんの言う通りだ。あんたみたいな嬢ちゃんが一人でシーサーペントを倒すなんて無理に決まっている」
「う……」
おじさんの言うことも確かに分かる……。
わたし一人じゃ無理かもしれない。
でも、それでも……!この海の向こうにお姉ちゃんがいるかもしれないのなら……!
「サナ、おじさんの言うとおりだよ。それに、もしサナの身に何かあったら僕は……、僕は……!」
「ありがとうユーリ……、でもやっぱりわたしはこのまま放っておけないよ……!」
ユーリの気持ちは嬉しい、でもやっぱりこのままにしてはおけない!
「おもしれえじゃねえか!その話、アタイが乗ったぜっ!」
「っ!」
突然、後ろから聞こえてきた声に驚きながら振り向くとそこには一人の女性がいた。
その女性は赤いショートヘアーの髪に、頭と背中には、まるでドラゴンの角とドラゴンの尻尾のようなものが生えていた。
「あの……、あなたは……?」
「アタイの名はカレン、見ての通りドラゴニュートだ!」
「ドラゴニュート?」
聞き慣れない言葉にわたしが首を傾げると、チケット売場のおじさんが説明をしてくれた。
「ドラゴニュートはその身体の中にはドラゴンの血が入っているらしいんだ。だから彼らは人の姿とドラゴンの姿、そのどちらにもなれるのさ」
「へぇ~……」
なるほど……、だから頭に角と尻尾が生えているのか……。
それにしても、えらく男勝りな女性だな……。
「たまたまこの町に用があってきたらおもしれえ事になってるから見てみれば、あれを倒そうってヤツがいたとはな。気に入ったぜ、あんた名は?」
「え……?わたし……?わたしはサナだけど……」
「よし、サナか!ならあのシーサーペントをぶっ殺しにいくぜ!お前ら踏み潰されたくなけりゃ退きやがれっ!」
カレンという人の声にユーリ達を始めとした周囲の人々が退くと、カレンはわたしの身体を片手で軽々と持ち上げるとそのまま数メートル上空へと放り投げた!
「え……っ!?き……きゃあぁぁぁーーーー……っ!?」
「よっしゃーっ!いくぜっ!!」
カレンはそう言うと、ドラゴンへと姿を変えると上空へと放り投げたわたしを乗せて大空を羽ばたいた!
◆◆◆
ドラゴンへと変身し、プルックの港を飛び立ったカレンは物凄い勢いスピードで上空を飛んでいた。
そのため、物凄い勢い風圧がわたしを襲うっ!
「ひぎぃゃゃーーー……!落ぢる……!落ぢるーーー……っ!!」
『サナ!振り落とされねえようにしっかりと掴まってろよっ!』
「そ……そんな事言ったってーーーー……っ!!」
わたしは振り落とされないようにドラゴンの首のあたりに必死にしがみつくっ!
プルック沖の上空を飛んでいると、下から物凄い勢いで水流ブレスと言うのだろうか、超高圧の水流が放たれてきた。
海の方へと目をやると、そこには巨大な竜のような海蛇のような魔物の姿があった。
『サナ!出やがったぜ、シーサーペントだっ!』
そして、わたし達に向かって再び水流ブレスが放たれるっ!
「ひぃやぁやぁぁぁ……!!」
カレンはその水流ブレスを急旋回して避けると、わたしは悲鳴を上げながら必死になってカレンにしがみつく。
『サナ、何か手があるんだろっ!?さっさと攻撃しやがれっ!』
カレンの無茶振りにも似た言葉にわたしは必死に首を左右に振るっ!
「む……無理だよぉっ!そんな余裕ないよぉぉ……!!死ぬのはヤダァァ……ッ!!!」
『だったらそのまま落ちて死にてえのか!?』
「それもイヤぁぁぁぁぁっ!!!」
『ならごちゃごちゃ言ってねえでなんとかしやがれっ!あいつが海に潜ったらアタイの火炎弾じゃ当たらねえ、だからお前が何とかしろっ!』
「そんな事言われても、わたしだってしがみついてるので精一杯だよぉ……っ!」
そう言い合っている間にも、シーサーペントの水流ブレスは執拗に私達を襲う!
『分かった……、ならサナをアイツに向かってぶん投げれば何とかなるかっ!?』
「そんな事されたら、わたし死んじゃうからぁぁ……っ!!」
『じゃあさっさとどうにかしろっ!何か手があるから倒すって言ったんだろうっ!?』
「わ……分かったよぉ……っ!」
こうなったらやるしか無い……!
わたしは覚悟を決めると、ハングストリングを唱えると、カレンの首とわたしの下半身を固定させ、首にまたがったまま上半身を起こした。
すると、物凄い勢い風圧がわたしの顔を打ちつける……!
「ひぎゃぁぁーーー……っ!顔が……!顔がぁーー……!カレン!もっとゆっくり飛んで……っ!!」
『バカヤロー!そんな事したら奴のブレスに当たるだろうが!気合い入れてでどうにかしろっ!』
「そんな無茶苦茶なぁーー……っ!!」
しかし、確かにこのまま逃げ回っているだけじゃシーサーペントは倒せない……。
ならばとわたしは顔が物凄い勢い風圧に晒されながらも魔法の詠唱を始めた。
「ファイヤーバレットっ!!」
わたしはファイヤーバレットを唱えると、ファイヤーボールくらいの火球を幾つも発生させ、それをシーサーペント目掛け投げつける!
しかし、シーサーペントは海に潜るどころか、水流ブレスを薙ぎ払うように吐くと、いとも容易く幾つものファイヤーバレットを撃ち抜いた。
『バカヤロー!そんなもので倒せるならアタイがとっくに火炎弾で倒してるっ!』
「それなら……!ファイヤーブラストっ!!」
ならばと、わたしはシーサーペントに向かってファイヤーブラストという炎系最上級魔法を放つと、地獄の業火のような炎がシーサーペントを襲う!
しかし、シーサーペントは海に潜る事でそれをすんでのところで躱していた。
『ち……!やはり海に潜りやがるか……、他に何かねえのかっ!?』
「それなら……!ギガントトルネードっ!」
次に風系の最上級魔法、ギガントトルネードを放つと、生み出された巨大な竜巻が、海水を巻き上げながら海中に潜ったシーサーペント目掛けて海底を抉り取る!
すると、ギガントトルネードがシーサーペントの体の一部に当たったのか、悲鳴のような大きな声を上げながら海上へと再び姿を現した。
『いいぞサナ!効いてやがるっ!』
「次はコレよ!ダブル・ブリザードっ!!」
シーサーペントが姿を現した所に今度は氷結系最上級魔法のダブル・ブリザードを唱えた!
絶対零度の凍てつく大竜巻が周囲の空気を凍てつかせながらシーサーペントへと向かっていく!
それを受けたシーサーペントは海面諸共瞬時に凍りついたかと思うとそのまま粉砕されたのだった。
「ふぅ……、これで何とかなったわね……」
わたしはホッと胸をなで下ろすと、ドラゴンの背中へと倒れ込んだ。
『やったな!サナっ!』
「うん、なんとか……。とりあえずみんなの所へと早く戻して……」
『それはいいが、あの凍った海はいいのか?』
「あ……」
わたしはファイヤーブラストを唱えると、ダブル・ブリザードで凍りついた海を溶かした。
『よし、それじゃあ町に戻るぞ』
カレンはそう言うと、プルックの港へと戻ったのだった。
潮の香りが漂うこの町の港には大きな帆船が停泊しており、そこから多くの人々が降りてきているため町は人で賑わっていた。
しかし、どこか港の様子がおかしく、帆船だけでなく多くの船が港に停泊していた。
それを見たルースさんは険しい表情で船を眺めていた。
「おかしいな……、帆船なら兎も角漁船まで海に出ていないな……。まだ日が高いのだから漁に行っていてもおかしくないのに……」
ルースさんのその呟きにわたしも港に目を向けると、確かに港に停泊している船のほとんどは漁船のようで、漁をしているような様子はなかった。
「何かあったのかもしれませんね。お姉ちゃんの事もあるし、ちょっと訊いてみます!」
わたしはそう言うと、みんなは頷き、わたし達はプルックの港のチケット売り場へと向かった。
「すみません。ここにカナって人が来ませんでしたか?黒い髪のポニーテールがトレードマークで、胸の小さな女の人なんですけど……」
「はて……、胸の小さなポニーテールの女性……?ん~……、悪いが覚えてないな……。ここには多くの人がやって来る。誰も彼も似たような人は多いからな……特定の人物を聞かれても分からんな……。とびきり目立つような特徴でもあれば覚えているんだろうが……。力になれなくてすまないね」
「いえ……ところで、船が多く停泊しておるようですが、何かあったんですか?」
「あぁ……。どうもここ最近、近海でシーサーペントという巨大な魔物が現れてな……。漁船はもちろんのこと、小舟にさえも手当たり次第に襲いかかってくるもんで帆船どころか漁にすら出れない状況なんだ……」
「シーサーペント……?こんな所にシーサーペントが出るの?」
チケット売場のおじさんの言葉に、エミリーは首を傾げていた。
「シーサーペントって何……?」
わたしは頭にハテナマークを浮かべながら聞くと、ユーリが答えてくれた。
「シーサーペントは別名『海蛇竜』という獰猛な魔物なんだ。その性格は凶暴そのもので縄張りに近付こうものなら超高圧水流で粉砕するんだよ」
そ……そんな危険な魔物がいるのか……。
「え……、と言うことはそのシーサーペントをどうにかしないと船が出ないってことですか?」
「ま、そういう事だな」
チケット売場のおじさんはお手上げだと言わんばかりに頷きながら言う。
その声はどこか諦めにも似たものだった。
「そんな……。どうにかしないとこの町の人達も困るじゃないですか!なんで誰もシーサーペントを討伐しないんですか?」
わたしは憤りを感じ、チケット売場のおじさんに食い気味に聞く。
「倒せるものならとっくに倒してるよ。それに、さっきもあんたの連れも言っていただろ?シーサーペントは縄張り意識が高くてな、帆船も漁船もあの付近を通るから近付くと攻撃してきちまうんだよ……」
「むぅ~……」
「そんな顔をしてもダメな物はダメだ」
お姉ちゃんの足取りは掴めないけど、だからと言ってこの町をこのままにしておく訳にも行かない……。
それなら……!
「それなら、わたしがそのシーサーペントを倒しますっ!」
「な……っ!?サナ!それはいくら何でも危険だよ……っ!?」
ユーリはわたしの宣言に驚いたのか、慌てて止めようとしてくる。
「でも、このままシーサーペントを放っておいたらお姉ちゃんを探しにもいけないんだよっ!?」
「そ……それはそうかもしれないけど……。いくらなんでもサナ一人じゃ無理だよ……!」
ユーリはわたしの身を心配して言ってくれるのは嬉しいけど、だからってこのままにしておくことなんて出来ない。
わたしはユーリに言い寄ろうとすると、チケット売場のおじさんが話に割って入ってきた。
「その兄さんの言う通りだ。あんたみたいな嬢ちゃんが一人でシーサーペントを倒すなんて無理に決まっている」
「う……」
おじさんの言うことも確かに分かる……。
わたし一人じゃ無理かもしれない。
でも、それでも……!この海の向こうにお姉ちゃんがいるかもしれないのなら……!
「サナ、おじさんの言うとおりだよ。それに、もしサナの身に何かあったら僕は……、僕は……!」
「ありがとうユーリ……、でもやっぱりわたしはこのまま放っておけないよ……!」
ユーリの気持ちは嬉しい、でもやっぱりこのままにしてはおけない!
「おもしれえじゃねえか!その話、アタイが乗ったぜっ!」
「っ!」
突然、後ろから聞こえてきた声に驚きながら振り向くとそこには一人の女性がいた。
その女性は赤いショートヘアーの髪に、頭と背中には、まるでドラゴンの角とドラゴンの尻尾のようなものが生えていた。
「あの……、あなたは……?」
「アタイの名はカレン、見ての通りドラゴニュートだ!」
「ドラゴニュート?」
聞き慣れない言葉にわたしが首を傾げると、チケット売場のおじさんが説明をしてくれた。
「ドラゴニュートはその身体の中にはドラゴンの血が入っているらしいんだ。だから彼らは人の姿とドラゴンの姿、そのどちらにもなれるのさ」
「へぇ~……」
なるほど……、だから頭に角と尻尾が生えているのか……。
それにしても、えらく男勝りな女性だな……。
「たまたまこの町に用があってきたらおもしれえ事になってるから見てみれば、あれを倒そうってヤツがいたとはな。気に入ったぜ、あんた名は?」
「え……?わたし……?わたしはサナだけど……」
「よし、サナか!ならあのシーサーペントをぶっ殺しにいくぜ!お前ら踏み潰されたくなけりゃ退きやがれっ!」
カレンという人の声にユーリ達を始めとした周囲の人々が退くと、カレンはわたしの身体を片手で軽々と持ち上げるとそのまま数メートル上空へと放り投げた!
「え……っ!?き……きゃあぁぁぁーーーー……っ!?」
「よっしゃーっ!いくぜっ!!」
カレンはそう言うと、ドラゴンへと姿を変えると上空へと放り投げたわたしを乗せて大空を羽ばたいた!
◆◆◆
ドラゴンへと変身し、プルックの港を飛び立ったカレンは物凄い勢いスピードで上空を飛んでいた。
そのため、物凄い勢い風圧がわたしを襲うっ!
「ひぎぃゃゃーーー……!落ぢる……!落ぢるーーー……っ!!」
『サナ!振り落とされねえようにしっかりと掴まってろよっ!』
「そ……そんな事言ったってーーーー……っ!!」
わたしは振り落とされないようにドラゴンの首のあたりに必死にしがみつくっ!
プルック沖の上空を飛んでいると、下から物凄い勢いで水流ブレスと言うのだろうか、超高圧の水流が放たれてきた。
海の方へと目をやると、そこには巨大な竜のような海蛇のような魔物の姿があった。
『サナ!出やがったぜ、シーサーペントだっ!』
そして、わたし達に向かって再び水流ブレスが放たれるっ!
「ひぃやぁやぁぁぁ……!!」
カレンはその水流ブレスを急旋回して避けると、わたしは悲鳴を上げながら必死になってカレンにしがみつく。
『サナ、何か手があるんだろっ!?さっさと攻撃しやがれっ!』
カレンの無茶振りにも似た言葉にわたしは必死に首を左右に振るっ!
「む……無理だよぉっ!そんな余裕ないよぉぉ……!!死ぬのはヤダァァ……ッ!!!」
『だったらそのまま落ちて死にてえのか!?』
「それもイヤぁぁぁぁぁっ!!!」
『ならごちゃごちゃ言ってねえでなんとかしやがれっ!あいつが海に潜ったらアタイの火炎弾じゃ当たらねえ、だからお前が何とかしろっ!』
「そんな事言われても、わたしだってしがみついてるので精一杯だよぉ……っ!」
そう言い合っている間にも、シーサーペントの水流ブレスは執拗に私達を襲う!
『分かった……、ならサナをアイツに向かってぶん投げれば何とかなるかっ!?』
「そんな事されたら、わたし死んじゃうからぁぁ……っ!!」
『じゃあさっさとどうにかしろっ!何か手があるから倒すって言ったんだろうっ!?』
「わ……分かったよぉ……っ!」
こうなったらやるしか無い……!
わたしは覚悟を決めると、ハングストリングを唱えると、カレンの首とわたしの下半身を固定させ、首にまたがったまま上半身を起こした。
すると、物凄い勢い風圧がわたしの顔を打ちつける……!
「ひぎゃぁぁーーー……っ!顔が……!顔がぁーー……!カレン!もっとゆっくり飛んで……っ!!」
『バカヤロー!そんな事したら奴のブレスに当たるだろうが!気合い入れてでどうにかしろっ!』
「そんな無茶苦茶なぁーー……っ!!」
しかし、確かにこのまま逃げ回っているだけじゃシーサーペントは倒せない……。
ならばとわたしは顔が物凄い勢い風圧に晒されながらも魔法の詠唱を始めた。
「ファイヤーバレットっ!!」
わたしはファイヤーバレットを唱えると、ファイヤーボールくらいの火球を幾つも発生させ、それをシーサーペント目掛け投げつける!
しかし、シーサーペントは海に潜るどころか、水流ブレスを薙ぎ払うように吐くと、いとも容易く幾つものファイヤーバレットを撃ち抜いた。
『バカヤロー!そんなもので倒せるならアタイがとっくに火炎弾で倒してるっ!』
「それなら……!ファイヤーブラストっ!!」
ならばと、わたしはシーサーペントに向かってファイヤーブラストという炎系最上級魔法を放つと、地獄の業火のような炎がシーサーペントを襲う!
しかし、シーサーペントは海に潜る事でそれをすんでのところで躱していた。
『ち……!やはり海に潜りやがるか……、他に何かねえのかっ!?』
「それなら……!ギガントトルネードっ!」
次に風系の最上級魔法、ギガントトルネードを放つと、生み出された巨大な竜巻が、海水を巻き上げながら海中に潜ったシーサーペント目掛けて海底を抉り取る!
すると、ギガントトルネードがシーサーペントの体の一部に当たったのか、悲鳴のような大きな声を上げながら海上へと再び姿を現した。
『いいぞサナ!効いてやがるっ!』
「次はコレよ!ダブル・ブリザードっ!!」
シーサーペントが姿を現した所に今度は氷結系最上級魔法のダブル・ブリザードを唱えた!
絶対零度の凍てつく大竜巻が周囲の空気を凍てつかせながらシーサーペントへと向かっていく!
それを受けたシーサーペントは海面諸共瞬時に凍りついたかと思うとそのまま粉砕されたのだった。
「ふぅ……、これで何とかなったわね……」
わたしはホッと胸をなで下ろすと、ドラゴンの背中へと倒れ込んだ。
『やったな!サナっ!』
「うん、なんとか……。とりあえずみんなの所へと早く戻して……」
『それはいいが、あの凍った海はいいのか?』
「あ……」
わたしはファイヤーブラストを唱えると、ダブル・ブリザードで凍りついた海を溶かした。
『よし、それじゃあ町に戻るぞ』
カレンはそう言うと、プルックの港へと戻ったのだった。
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