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おまけその2 武久 隼人の異世界での平凡な日々
二組の娘夫婦
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建物の中に入ると、そこは多くの客と思われる人々が
思い思いのテーブル席へと座ると、そこで酒や料理を楽しみながら賑やかに談笑をしていた。
そして、その中を佳奈とその仕事仲間と思われる人達が料理を両手に持ち縦横無尽に歩きまわっていた。
一方の紗奈はと言うと、小さな赤ちゃんを抱いてユーリと共に席へと着いているのが見える。
ま……まさか……あの赤ん坊は……!
「少しいいですかな?」
俺は紗奈の元へと向かおうとすると一人の男に声をかけられた。
その男は銀色の髪に、銀色の髭を生やしたがたいの良い男で、耳が長く尖っていた。
「誰だい、あんた……?」
「俺……もとい、私はここの責任者のグレンと言うものです。カナちゃんとサナちゃん……あなた方の娘さんからご両親が着ていると聞きお話だけでもと思いましてね。もしよければそちらの席へとお掛けください」
そう言うと、グレンと名乗った男は俺達に席をすすめてきた。
俺は少し警戒しながらも、亜希と共に席へと座ると俺は話を切り出した。
「まずはあなたと娘達との関係をお聞きしたい」
「そうですね、まずはそこからお話すべきでしょう。僭越ながら私はあなたの娘さん達の父親代わりをしておりました」
「父親代わり……?」
「はい、カナちゃんが最初にここへと着た時、彼女はごく普通の少女でした。わたしは彼女の身を案じここで働くように勧めたのですが、あなた方の所へと戻りたいという彼女の強い要望もあり、冒険者になることを認めました。そして各地を巡り逞しく成長をする彼女を見るたびに、いつしか私は父親にも似た感情を抱くようになりました。それからと言うもの、私は彼女を実の娘のような目で見守って来たのです」
「そうでしたか……、それは佳奈が大変お世話になりました」
俺はグレンに対して深く頭を下げた。
「いや、頭を上げてください。私としても好きでやったいたことですから。……話を続けてよろしいでしょうか?」
「はい、お願いします」
「では……一方のサナちゃんですが、彼女はここから遠く離れた土地からこの街へとやって来たそうで、残念ながら私は彼女をサポートすることが出来ませんでした……。ですが、ユーリや他にも頼れる仲間達の協力を経てこの街へとやって来たのです。それからというもの、サナちゃんの事もカナちゃんと同様に父親代わりとして見守らせて頂いておりました」
「なんと……、そうでしたか……」
あのいつも部屋で本を読むのが好きだった紗奈が……。
旅なんてしたこともないのに……、紗奈もこの世界に来て逞しくなったんだな……。
俺は二人の娘達の成長を知り、思わず目頭が熱くなるのを感じた。
「カナちゃんも、サナちゃんも旅で最愛の人と出会いこの街で幸せに暮らしています。あの二組の夫婦は共に苦労し、共に喜びを分かち合ってきただけありその絆は何よりも強い、あなた方の娘さん達はこれから先何があろうときっと生涯のパートナーと乗り越えて行ける事でしょう」
「……娘達がいなくなって、二人の安否だけを案じていましたが、今の言葉を聞いて安心しました。まさか……この地で……人生を共に歩むパートナーを見つけていたなんて……。何にしろ良かった……、二人が無事で本当に良かった……!」
俺はグレンの話を聞き、胸の奥から熱いものがこみ上げ、涙をこぼしていた。
「あなた……」
「良かった……亜希……、佳奈と紗奈が……無事に生きていて……、しかも……人生のパートナーまで見つけて……!」
「ええ、本当に……二人が無事で本当に良かったわ……」
俺と亜希は抱き合うと共に涙を流した。
「ちょっと……、お父さんもお母さんも泣きすぎよ……」
不意に声をかけられ、顔を上げると、俺の座っているテーブルの右側に佳奈とザクスが、左側には紗奈とユーリの姿があった。
そして、紗奈の腕には茶色い髪に犬のような耳と尻尾を生やしてた赤ちゃんを抱いていた。
「うるさい……!二人して急にいなくなって……親を心配させて……泣きすぎがあるか……!」
「ほら、お父さんそんなに泣かないでよ。それより、わたしの赤ちゃん、抱いてあげて」
紗奈はそう言い、娘の腕の中で眠っている赤ちゃんを手渡してくれた。
その重さは昔まだ赤ちゃんだった頃の紗奈と同じくらいの重さだった。
小さくて、儚く、まだ弱いが確かに力強く生きている紗奈の子供……。
「紗奈……この子の名前を教えてもらってもいいか……?」
「うん、この子はユーナ、わたしとユーリの初めての子供で女の子だよ」
「ユーナか……、いい名だな……昔の紗奈そっくりだ……」
この子が俺の孫娘か……、そう思うと涙があふれ、視界がぼやけてくる。
まさか、俺がこの手で自分の孫を抱く日が来ようとは夢にも思ってなかったが、今こうして抱くと本当に幸せと言うものを実感する。
「紗奈……、本当に……幸せになれて良かったな……、お前は昔から気立てが良かったし優しい子だからな……」
「もう……!お父さんったら、恥ずかしいよ……!」
紗奈はそう言いながらもまんざらでもない様子だ。
「ねえ、お父さん。今度は私の子供を紹介してもいいかな?ほら、隠れてないで出ておいで」
佳奈はそう言うと、佳奈とザクスの後ろから二人の子供が恥ずかしげに顔を見せてくれた。
一人は見た感じ五,六歳くらいの銀髪の男の子で、もう一人は三歳かそこらの黒髪の女の子だった。
「佳奈にも子供がいたんだな……」
「そりゃあ、私のほうが結婚したの早かったからね。こっちの銀髪の男の子がユリウス、そしてこっちの黒髪の女の子がサラサよ」
「ユリウスとサラサか……二人共おいで……お祖父ちゃんとお祖母ちゃんだよ……」
二人は躊躇いがちにこちらへと視線を向けていたが、佳奈とザクスに優しく背中を押されると、ゆっくりと近づいてきてくれた。
「そうか……、そうか……!お前達がユリウスとサラサか……!」
「ホント……、この子達も佳奈の面影があるわ……」
俺も亜希も涙を流しながら三人の孫達を抱きしめた。
「お祖父ちゃん、お祖母ちゃん……!」
「じいじ……、ばあば……!!」
娘達は無事で、人生のパートナーを見つけ、さらに孫のユリウスとサラサが俺と亜希の事をお祖父ちゃんお祖母ちゃんと呼んでくれる……。
こんなに嬉しいことはない……!
今日が俺の人生最良の日だ……!
「ところで、お父さんとお母さんはこれからどうするの?」
「これからか……まだ何も考えていないな……」
俺からユーナを引き取った沙奈が訊いてきた。
ここはどうみても俺たちがいた世界とは全く異なる別の世界とみて間違いないだろう。
となると、元の世界に帰る手立ては無いと見ていいかもしれない……。
「ならさ、お父さんこの冒険者ギルドの一角を借りて喫茶店みたいなのをしてみたらどう?」
頭を悩ませていると、佳奈が名案だとばかりに俺へと提案してくれる。
喫茶店か……悪くないかもしれないが……、だが、勝手にこの場所の一角を使わせてもらうわけにもな……。
「ねえ、グレンさん。このホールの一角をお父さんに使わせてもらっていいですか?お父さんの淹れるコーヒーとお母さんの焼くケーキは本当に美味しいんです!」
紗奈もここぞとばかりにグレンへと頼み込んでいた。
「それは構わないが……、でもお父さんの意見というものを聞かないことにはなんとも……」
グレンはそう言い俺へと視線を向けてきた。
まあ、そうだな……、ここは佳奈と紗奈の言う通りにしてみるか。
確かに悪くない手だ……頼んでみる価値はあるか……?
「あの……、もしよければここを貸してもらえませんか?」
俺はグレンへと頭を下げながら頼んだ。
すると、俺の行動に紗奈と亜希も頭を下げた。
「私からもお願いします!」
「どうか、この通り……!」
「カナちゃん……サナちゃん……。分かった!このホールの一角をお父さんに与えよう!」
「ありがとうございますっ!」
俺と亜希は立ち上がるとグレンさんへと深く頭を下げた。
一度は消えていた心の灯火に再び火がついたかのような感覚を思えた……。
こうして俺達夫婦は異世界で再び喫茶店を営むことになったのだった。
思い思いのテーブル席へと座ると、そこで酒や料理を楽しみながら賑やかに談笑をしていた。
そして、その中を佳奈とその仕事仲間と思われる人達が料理を両手に持ち縦横無尽に歩きまわっていた。
一方の紗奈はと言うと、小さな赤ちゃんを抱いてユーリと共に席へと着いているのが見える。
ま……まさか……あの赤ん坊は……!
「少しいいですかな?」
俺は紗奈の元へと向かおうとすると一人の男に声をかけられた。
その男は銀色の髪に、銀色の髭を生やしたがたいの良い男で、耳が長く尖っていた。
「誰だい、あんた……?」
「俺……もとい、私はここの責任者のグレンと言うものです。カナちゃんとサナちゃん……あなた方の娘さんからご両親が着ていると聞きお話だけでもと思いましてね。もしよければそちらの席へとお掛けください」
そう言うと、グレンと名乗った男は俺達に席をすすめてきた。
俺は少し警戒しながらも、亜希と共に席へと座ると俺は話を切り出した。
「まずはあなたと娘達との関係をお聞きしたい」
「そうですね、まずはそこからお話すべきでしょう。僭越ながら私はあなたの娘さん達の父親代わりをしておりました」
「父親代わり……?」
「はい、カナちゃんが最初にここへと着た時、彼女はごく普通の少女でした。わたしは彼女の身を案じここで働くように勧めたのですが、あなた方の所へと戻りたいという彼女の強い要望もあり、冒険者になることを認めました。そして各地を巡り逞しく成長をする彼女を見るたびに、いつしか私は父親にも似た感情を抱くようになりました。それからと言うもの、私は彼女を実の娘のような目で見守って来たのです」
「そうでしたか……、それは佳奈が大変お世話になりました」
俺はグレンに対して深く頭を下げた。
「いや、頭を上げてください。私としても好きでやったいたことですから。……話を続けてよろしいでしょうか?」
「はい、お願いします」
「では……一方のサナちゃんですが、彼女はここから遠く離れた土地からこの街へとやって来たそうで、残念ながら私は彼女をサポートすることが出来ませんでした……。ですが、ユーリや他にも頼れる仲間達の協力を経てこの街へとやって来たのです。それからというもの、サナちゃんの事もカナちゃんと同様に父親代わりとして見守らせて頂いておりました」
「なんと……、そうでしたか……」
あのいつも部屋で本を読むのが好きだった紗奈が……。
旅なんてしたこともないのに……、紗奈もこの世界に来て逞しくなったんだな……。
俺は二人の娘達の成長を知り、思わず目頭が熱くなるのを感じた。
「カナちゃんも、サナちゃんも旅で最愛の人と出会いこの街で幸せに暮らしています。あの二組の夫婦は共に苦労し、共に喜びを分かち合ってきただけありその絆は何よりも強い、あなた方の娘さん達はこれから先何があろうときっと生涯のパートナーと乗り越えて行ける事でしょう」
「……娘達がいなくなって、二人の安否だけを案じていましたが、今の言葉を聞いて安心しました。まさか……この地で……人生を共に歩むパートナーを見つけていたなんて……。何にしろ良かった……、二人が無事で本当に良かった……!」
俺はグレンの話を聞き、胸の奥から熱いものがこみ上げ、涙をこぼしていた。
「あなた……」
「良かった……亜希……、佳奈と紗奈が……無事に生きていて……、しかも……人生のパートナーまで見つけて……!」
「ええ、本当に……二人が無事で本当に良かったわ……」
俺と亜希は抱き合うと共に涙を流した。
「ちょっと……、お父さんもお母さんも泣きすぎよ……」
不意に声をかけられ、顔を上げると、俺の座っているテーブルの右側に佳奈とザクスが、左側には紗奈とユーリの姿があった。
そして、紗奈の腕には茶色い髪に犬のような耳と尻尾を生やしてた赤ちゃんを抱いていた。
「うるさい……!二人して急にいなくなって……親を心配させて……泣きすぎがあるか……!」
「ほら、お父さんそんなに泣かないでよ。それより、わたしの赤ちゃん、抱いてあげて」
紗奈はそう言い、娘の腕の中で眠っている赤ちゃんを手渡してくれた。
その重さは昔まだ赤ちゃんだった頃の紗奈と同じくらいの重さだった。
小さくて、儚く、まだ弱いが確かに力強く生きている紗奈の子供……。
「紗奈……この子の名前を教えてもらってもいいか……?」
「うん、この子はユーナ、わたしとユーリの初めての子供で女の子だよ」
「ユーナか……、いい名だな……昔の紗奈そっくりだ……」
この子が俺の孫娘か……、そう思うと涙があふれ、視界がぼやけてくる。
まさか、俺がこの手で自分の孫を抱く日が来ようとは夢にも思ってなかったが、今こうして抱くと本当に幸せと言うものを実感する。
「紗奈……、本当に……幸せになれて良かったな……、お前は昔から気立てが良かったし優しい子だからな……」
「もう……!お父さんったら、恥ずかしいよ……!」
紗奈はそう言いながらもまんざらでもない様子だ。
「ねえ、お父さん。今度は私の子供を紹介してもいいかな?ほら、隠れてないで出ておいで」
佳奈はそう言うと、佳奈とザクスの後ろから二人の子供が恥ずかしげに顔を見せてくれた。
一人は見た感じ五,六歳くらいの銀髪の男の子で、もう一人は三歳かそこらの黒髪の女の子だった。
「佳奈にも子供がいたんだな……」
「そりゃあ、私のほうが結婚したの早かったからね。こっちの銀髪の男の子がユリウス、そしてこっちの黒髪の女の子がサラサよ」
「ユリウスとサラサか……二人共おいで……お祖父ちゃんとお祖母ちゃんだよ……」
二人は躊躇いがちにこちらへと視線を向けていたが、佳奈とザクスに優しく背中を押されると、ゆっくりと近づいてきてくれた。
「そうか……、そうか……!お前達がユリウスとサラサか……!」
「ホント……、この子達も佳奈の面影があるわ……」
俺も亜希も涙を流しながら三人の孫達を抱きしめた。
「お祖父ちゃん、お祖母ちゃん……!」
「じいじ……、ばあば……!!」
娘達は無事で、人生のパートナーを見つけ、さらに孫のユリウスとサラサが俺と亜希の事をお祖父ちゃんお祖母ちゃんと呼んでくれる……。
こんなに嬉しいことはない……!
今日が俺の人生最良の日だ……!
「ところで、お父さんとお母さんはこれからどうするの?」
「これからか……まだ何も考えていないな……」
俺からユーナを引き取った沙奈が訊いてきた。
ここはどうみても俺たちがいた世界とは全く異なる別の世界とみて間違いないだろう。
となると、元の世界に帰る手立ては無いと見ていいかもしれない……。
「ならさ、お父さんこの冒険者ギルドの一角を借りて喫茶店みたいなのをしてみたらどう?」
頭を悩ませていると、佳奈が名案だとばかりに俺へと提案してくれる。
喫茶店か……悪くないかもしれないが……、だが、勝手にこの場所の一角を使わせてもらうわけにもな……。
「ねえ、グレンさん。このホールの一角をお父さんに使わせてもらっていいですか?お父さんの淹れるコーヒーとお母さんの焼くケーキは本当に美味しいんです!」
紗奈もここぞとばかりにグレンへと頼み込んでいた。
「それは構わないが……、でもお父さんの意見というものを聞かないことにはなんとも……」
グレンはそう言い俺へと視線を向けてきた。
まあ、そうだな……、ここは佳奈と紗奈の言う通りにしてみるか。
確かに悪くない手だ……頼んでみる価値はあるか……?
「あの……、もしよければここを貸してもらえませんか?」
俺はグレンへと頭を下げながら頼んだ。
すると、俺の行動に紗奈と亜希も頭を下げた。
「私からもお願いします!」
「どうか、この通り……!」
「カナちゃん……サナちゃん……。分かった!このホールの一角をお父さんに与えよう!」
「ありがとうございますっ!」
俺と亜希は立ち上がるとグレンさんへと深く頭を下げた。
一度は消えていた心の灯火に再び火がついたかのような感覚を思えた……。
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