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三章 恋に落ちた少年と少女

ユーリの発情

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 グリフィンの背中に乗せもらったわたし達は、まだ日の高いうちにダブールの側の山の麓へと辿り着いた。

 わたし達が降りたのを確認すると、グリフィンはわたしを一瞥いちべつし、巣がある方向へと戻っていった。

 思ったよりも早く、そして楽に山脈を越えれたのだけど、なぜかエミリーは不機嫌そうな顔をしていた。

「エミリー、どうしたの?」

「グリフィンのお陰で山脈は楽に越せれた……それはいいわ。でもね……」

「でも……何?」

 わたしの問に、なぜかエミリーは身体をわなわなと震わせながらわたしのとある一点を見つめていた。

 なんだろう……、なぜかわたしの胸にエミリーの視線を感じるのは……?

「やはりこの胸かっ!この胸が全てを解決するのか……っ!」

「きゃあぁ……っ!?」

 エミリーは突然手を伸ばすとわたしの胸を鷲掴みして来た!

「ギャロル村の時といい、今回といい……!さらに言えば弟をたぶらかせたのも全部この胸かっ!」

「痛い……!痛いよう……っ!わたしの胸をそんなに力強く揉まないでよぉ……!」

「こんな脂肪の塊……!あたしがむしり取ってくれるわっ!!」

 わたしの胸がエミリーの手によって引っ張られる!
 彼女の握力の強さもあり、かなり痛い……!

「やめてよエミリー……!わたしの胸が千切れちゃうよぉっ!」

「姉さん、止めなよ……!サナが痛がっているじゃないか……!」

「ユーリ!あなたはこの脂肪の塊を好きなだけ堪能出来るからそんな甘っちょろい事が言えるのよ!あたしはね、胸が無いからこの脂肪の塊が羨ましくて仕方ないのよ!男のあんたに持たざる者の気持ちが分かるっ!?」

 わたしを助けようとしてくれたユーリに、今度はエミリーが食ってかかる。
 心なしか、エミリーの目から血の涙が流れている……ような気がした。

「落ち着け、エミリー。なんならお前の胸は俺が揉み育ててやるから」

「離せ……!離しなさいよ……!誰もあんたなんかに頼まないわよ……っ!!」

 ルースさんが暴れるエミリーを引き離すと、ようやくわたしの胸はエミリーの手から解放された。

 うう……、痛かった……。

「悪かったな、サナ。こいつエミリーはたまにこういう発作が起きるんだ。ほら、行くぞエミリー」

「うるさい……!離せ!降ろせ!あんたなんかにあたしの気持ちは分からないわよ……っ!!」

「分かった分かった、後で飲みながらいくらでも聞いてやるから……」

 ルースさんは、未だ暴れるエミリーを肩へと担ぐと、そのままダブールの町へと向かって行った。

「……サナ、僕たちも行こうか」

「……うん、そうだね」

 わたし達は苦笑しながらダブールの町へと向かう事にした。


 ◆◆◆


 ダブールの町、ロブスの町とはティタニア山脈を挟んで反対側にある町で、規模はロブスと左程変わらないようだ。

 わたし達は今日泊まる宿を探して歩いていると、わたしはユーリの異変に気が付いた。

 なんというか、少し顔が赤いというか、息が荒いと言うか……、心なしか胸元を押さえているような気さえする。

「ユーリ……、どうしたの?大丈夫……?」

「サナ!来ないで……!」

 心配になったわたしは、ユーリへと近付こうとすると彼にそれを止められた。

「ユーリ……?」

「大丈夫……、しばらくすれば落ち着くから……。だから今は僕の事はそっとしておいて欲しい……」

 そういうユーリはどこか苦しそうにも見える。

「サナ、今のユーリには近付かないほうがいいわ」

 いつの間にか落ち着いたエミリーが意味深なことをわたしへと伝えてきた。

 どう言うことなのかを聞こうとしたけど、彼女はそのまま宿を探すために歩きだしていた。
 しかし、これがまさか自分の身にまさかの出来事を起こすことになるとはこの時のわたしはまだ知らなかった……。


 ◆◆◆


 その日の夜、わたしはダブールの町にある一軒の宿屋の一室で天井を見つめたまま眠れないでいた。

 空き部屋の都合で、エミリーとルースさんは同室だけど、ユーリとわたしは別室。

 なんでも、これには理由があるとかエミリーは行っていたけど、そのエミリーはルースさんと一緒に酒場へと出かけている。

「はぁ……」

 思わずわたしの口から溜息が漏れる……。
 理由は今日のユーリーの事だった……。

 どこか苦しそうだったユーリ……。
 まさか何かの病気かなにかなのかとも思ったけど、その割にエミリーは特に変わった様子も見せなかった。

 ユーリーは優しいし、強いからきっと私を守ってくれるだろう……。
 だけど、それに頼りきってしまうのは間違っている気がする……。

 現に、ユーリが苦しそうだったのに、わたしは何もしてあげられなかった。
 ユーリーの負担にはなりたくないし、やっぱり守られるだけは嫌だ……。
 でも、どうすればいいのかが分からない……。

「はぁ……」

 また溜息が漏れてしまう……。

 私はユーリーに守られてばかりで何もしてあげられていない。
 ユーリーは私を守ると言ってくれるけど、それに対して私は何も返せてはいない……。

「はぁ……」

 溜息ばかり出てしまい、自分の無力さに思わず涙が零れそうになる……。

 私はユーリーとずっと一緒に居たい……。
 でも、それは私の我儘でしか無いのかもしれない……。
 ユーリは本当はどう思っているのか……、それが知りたい……。

 そんなもやもやを抱えながら天井を見ていると、突然部屋のドアが開く音が聞こえた。

「誰……っ!?」

 戸惑いながらもわたしは起き上がってドアの方へと目をやると、そこにはユーリの姿があった。

「ユーリ……?」

 しかし、ユーリからの返事がない……。
 それどころか、日中よりも息が荒いような気さえする……。

「ユーリ、どうしたの……?」

「サナ……、僕……もう我慢できない……!サナ……、サナが欲しい……っ!」

「え……?き……きゃあぁぁーーー……っ!?」

 ユーリはわたしが寝ているベッドへと飛び掛かってくると、着ていた布団を落とし、乱暴にわたしの服を脱がしてくる。

「ちょっと……!ユーリ……、やめて……!やめてよぉ……!」

「はあ……!はあ……っ!サナ!サナ……っ!」

「いや……!いやぁぁぁぁーーーー……っ!!」

 わたしは必死に抵抗をするも、着ていたパジャマも下着も全て脱がされると、そのままわたしはユーリに乱暴に、そして何度も何度も犯されてしまったのだった……。


 ◆◆◆


 あれからどのくらい経っただろう……、いつの間にか落ち着きを取り戻していたユーリはわたしの前で土下座をしていた。

「ゴメン……!サナっ!本当にゴメン……っ!!」

「ユーリ!あれはどういう事か説明してよねっ!」

 わたしは自分に避妊魔法をかけながら問う。
 あんなレイプまがいなことをされたんだ、ただのイタズラでしたじゃ済まないからねっ!!

「実は、発情期が急に来て……」

「発情期……?」

 ユーリの説明にわたしは顔をしかめる。

 ユーリの話では半獣人である彼も、動物の犬と同じように発情期というのがあるらしく、年に一度そういうのが訪れるらしい。

 普段はどうにか自分で処理するなりなんなりして押さえていたみたいだけど、今回は押さえが効かなかったらしい……。

「という訳で……本当にゴメン……っ!!」

 ユーリは何度も何度も土下座をしながら説明してくれた。
 でも、発情期か……エミリーが変に近付くなと言っていたのはこれか……。

 まあでも……。

「はあ……、もういいよ……。重大な病気とかじゃ無いみたいだし……」

「サナ……、僕を許してくれるの……?」

「発情期なら仕方ないでしょ……?それに、他の女の人に手を出すよりはずっといいし……。それと、も……もし次また発情期が来たらちゃんと言ってよね。その時はその……わたしがいくらでも相手してあげるから……」

「え……?それって……」

「ほらっ!もうこの話はおしまいっ!!わたしはお風呂入って来るから!!」

「あっ!サナ……!」

 わたしは顔を真っ赤にしながら、恥ずかしさのあまりその場から逃げ出すようにお風呂へと駆け込んだのだった。
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