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二章 旅立ち
開放された街
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バルザックが倒れ、ランローズの街へと戻ると女性達は歓喜の声を上げながらそれぞれの家へと帰って行った。
そこら中から再会を喜び合う声を聞きながらわたし達とロニス達ゴブリンはライティスさんに呼ばれ、冒険者ギルドへと向かった。
「まずは改めて街の女達を助けてもらった事に礼を言う。そして、ロニスだったか、お前の協力がなければ女達を助けることもバルザックを倒すこともできなかった。本当に感謝する」
「オレ達ハ、謝罪コソスレド感謝サレル側デハナイ。オレ達ハバルザックノ言イナリニサレテイタトハ言エ、コノ街ノ女達ヲ監禁シテイタノダ。モシ報復ヲスルトイウノデアレバ、リーダーデアル、オレノ首ヲ取レ。ソノ代ワリ、他ノ仲間ニハコノ地ヲ去ルヨウニ伝エル。ダカラ手ヲ出サナイデクレナイカ?」
ロニスはライティスさんの前で座り込んで目を閉じると、その言葉に他のゴブリン達は「リーダーッ!」と悲痛な声を上げていたが、ロニスはそれを制した。
「待ってっ!ロニスは僕の仲間なんだっ!悪いのはバルザックだったはずだ!ロニスが無関係だとは言わない……、でもロニスだってバルザックの被害者だっ!どうか彼を許してあげて欲しい……!お願いだ……っ!」
しかし、ユーリはライティスさんとロニスの間に立つと、ロニスを庇うようにライティスさんの前に立った。
「ユーリ、オ前ノ気持チハトテモ嬉シク思ウ。ダガ、シテシマッタ事実ハ変ワラナイ。オレハリーダートシテソノ責任ヲ取ル務メガアル」
「ユーリ、そいつの言う通りだ。リーダーには責任を取る務めってヤツがある。だが、それは俺も同じだ。俺もバルザックの言いなりとなり女達が拐われるのを見て見ぬふりをしていた。そういう意味ではゴブリン達とやっていた事は然程変わらん……。そこでだロニス、俺から一つ提案かあるのだが……」
「提案……?ドンナ提案ダロウトオレ達ハ受ケ入レル覚悟ダ」
「そんな身構えなくてもいい、それに提案と言っても頼みのようなものだ。バルザックのせいでこの街はいろいろと警備やらなにやらガタガタだ。憲兵には俺から話を通しておく、共にこの街を守っていかないか?」
「……オレ達ヲ許スト言ウノカ?」
「許すも何も元々俺達は敵同士では無いはずだ。共にバルザックの被害者だ。それに、責任を取るというのであれば街を守る方向で責任を取ると言う手もある筈だが?」
「オ前達ハ優シイノダナ……」
「優しい……?少し違うな、仲間に手を貸すのは当然のことだろ?友よ」
ライティスさんはロニスへと手を差し伸べて握手を求める。
「違イナイ……。喜ンデオレ達ハコノ街ヲ守ラセテモラウゾ友ヨ!」
そして、ロニスはその手を掴むと二人は固く握手を交わした。
後にランローズにゴブリン防衛隊が出来る事になるが、それはまた別の話だ……。
◆◆◆
冒険記ギルドを後にしたわたし達は、ランローズの街中を歩いていた。
「サナ、次はどこに行くの?」
「えっと、靴を買いに……」
ユーリの問に私は答えた。
というのも、元々の目的であった靴をまだ買っていない。
買いに行こうとしていた時に、ユーリとケンカしてさらに拐われてしまったのだ。
最初こそケンカしなければと思ったけど、ケンカしなければバルザックも倒せなかったし、拐われていた女性達もどうなっていたか分からない。
そう思うと、ケンカしたのも無駄ではなかった……かもしれない。
「なら、俺とエミリーで宿を探してくるから、ユーリはデートのリベンジしてこい」
「はあっ!?あたしはあんたと行くなんて一言も言ってないわよっ!?」
「ほら、いいから行くぞ。ユーリ、折角なら手ぐらい繋げよ」
「ちょっと!引っ張らないでよ……っ!ユーリ!後であたしの匂いを辿って来なさいよっ!」
エミリーとルースさんの二人は小競り合いをしながらも人混みの中へと消えて行った。
そして、残されたわたしとユーリは少し気不味そうにお互いの顔を見合わせる。
「とりあえず行こうか、サナ」
「う……うん」
わたしはユーリから差し出された手を取ると共に靴屋を目指して歩き出した。
わたしはユーリと手を繋いだまま人混みの中を縫うように進んでいくと、目的の靴屋へとたどり着いた。
場所はライティスさんから聞いていたので迷うことなく無事につけた。
「いらっしゃ……」
店の中へと入ると、わたしとユーリは店の店主と思われる男性と目が合うとお互い固まってしまっていた。
それもそのはず、この店の店主はわたしを睡眠薬を染み込ませた布で眠らせたあの男性だったからだ!
「お前はあの時の……っ!」
「あの時は本当にすみませんでしたーーーっ!!」
ユーリとこの男性に面識があるのか、ユーリが指差すと男性は物凄い勢いでわたしへと土下座をしてきた。
「え……えっと……」
わたしはそれを目を白黒させるさせながら見つめる。
「あなた方のご活躍でバルザックが倒されたと聞きましたっ!本日は私の何の御用でしょうかっ!まさか……、報復ですか……っ!?」
「えっと……、わたしの靴を買いに来たんですけど……」
わたしは店主の男性に今履いているボロボロの靴を見せる。
「わかりました!お詫びとお礼を兼ねてこの店にある最高の素材でお嬢さんの靴を作らせていただきます!もちろんお代はいりません!」
「え……っ!?そんなの悪いですよ!」
いくら酷い目に遭わされたとは言え、代金をいらないと言われては流石に気が引ける……。
「いえ!こうでもしないと私の気が収まりません!では早速足の採寸をさせていただきますっ!!」
そう言って男性はわたしの足のサイズを計り始める。
わたしは困惑した顔でユーリを見ると、諦めろとばかりに肩をすくめている。
わたしはこの店主の男性の勢いに負け、靴を作ってもらうことにした。
そして、出来上がりの日にちを聞いたわたし達はユーリの鼻を頼りにエミリー達のいる場所へと向かうことにしたのだった。
そこら中から再会を喜び合う声を聞きながらわたし達とロニス達ゴブリンはライティスさんに呼ばれ、冒険者ギルドへと向かった。
「まずは改めて街の女達を助けてもらった事に礼を言う。そして、ロニスだったか、お前の協力がなければ女達を助けることもバルザックを倒すこともできなかった。本当に感謝する」
「オレ達ハ、謝罪コソスレド感謝サレル側デハナイ。オレ達ハバルザックノ言イナリニサレテイタトハ言エ、コノ街ノ女達ヲ監禁シテイタノダ。モシ報復ヲスルトイウノデアレバ、リーダーデアル、オレノ首ヲ取レ。ソノ代ワリ、他ノ仲間ニハコノ地ヲ去ルヨウニ伝エル。ダカラ手ヲ出サナイデクレナイカ?」
ロニスはライティスさんの前で座り込んで目を閉じると、その言葉に他のゴブリン達は「リーダーッ!」と悲痛な声を上げていたが、ロニスはそれを制した。
「待ってっ!ロニスは僕の仲間なんだっ!悪いのはバルザックだったはずだ!ロニスが無関係だとは言わない……、でもロニスだってバルザックの被害者だっ!どうか彼を許してあげて欲しい……!お願いだ……っ!」
しかし、ユーリはライティスさんとロニスの間に立つと、ロニスを庇うようにライティスさんの前に立った。
「ユーリ、オ前ノ気持チハトテモ嬉シク思ウ。ダガ、シテシマッタ事実ハ変ワラナイ。オレハリーダートシテソノ責任ヲ取ル務メガアル」
「ユーリ、そいつの言う通りだ。リーダーには責任を取る務めってヤツがある。だが、それは俺も同じだ。俺もバルザックの言いなりとなり女達が拐われるのを見て見ぬふりをしていた。そういう意味ではゴブリン達とやっていた事は然程変わらん……。そこでだロニス、俺から一つ提案かあるのだが……」
「提案……?ドンナ提案ダロウトオレ達ハ受ケ入レル覚悟ダ」
「そんな身構えなくてもいい、それに提案と言っても頼みのようなものだ。バルザックのせいでこの街はいろいろと警備やらなにやらガタガタだ。憲兵には俺から話を通しておく、共にこの街を守っていかないか?」
「……オレ達ヲ許スト言ウノカ?」
「許すも何も元々俺達は敵同士では無いはずだ。共にバルザックの被害者だ。それに、責任を取るというのであれば街を守る方向で責任を取ると言う手もある筈だが?」
「オ前達ハ優シイノダナ……」
「優しい……?少し違うな、仲間に手を貸すのは当然のことだろ?友よ」
ライティスさんはロニスへと手を差し伸べて握手を求める。
「違イナイ……。喜ンデオレ達ハコノ街ヲ守ラセテモラウゾ友ヨ!」
そして、ロニスはその手を掴むと二人は固く握手を交わした。
後にランローズにゴブリン防衛隊が出来る事になるが、それはまた別の話だ……。
◆◆◆
冒険記ギルドを後にしたわたし達は、ランローズの街中を歩いていた。
「サナ、次はどこに行くの?」
「えっと、靴を買いに……」
ユーリの問に私は答えた。
というのも、元々の目的であった靴をまだ買っていない。
買いに行こうとしていた時に、ユーリとケンカしてさらに拐われてしまったのだ。
最初こそケンカしなければと思ったけど、ケンカしなければバルザックも倒せなかったし、拐われていた女性達もどうなっていたか分からない。
そう思うと、ケンカしたのも無駄ではなかった……かもしれない。
「なら、俺とエミリーで宿を探してくるから、ユーリはデートのリベンジしてこい」
「はあっ!?あたしはあんたと行くなんて一言も言ってないわよっ!?」
「ほら、いいから行くぞ。ユーリ、折角なら手ぐらい繋げよ」
「ちょっと!引っ張らないでよ……っ!ユーリ!後であたしの匂いを辿って来なさいよっ!」
エミリーとルースさんの二人は小競り合いをしながらも人混みの中へと消えて行った。
そして、残されたわたしとユーリは少し気不味そうにお互いの顔を見合わせる。
「とりあえず行こうか、サナ」
「う……うん」
わたしはユーリから差し出された手を取ると共に靴屋を目指して歩き出した。
わたしはユーリと手を繋いだまま人混みの中を縫うように進んでいくと、目的の靴屋へとたどり着いた。
場所はライティスさんから聞いていたので迷うことなく無事につけた。
「いらっしゃ……」
店の中へと入ると、わたしとユーリは店の店主と思われる男性と目が合うとお互い固まってしまっていた。
それもそのはず、この店の店主はわたしを睡眠薬を染み込ませた布で眠らせたあの男性だったからだ!
「お前はあの時の……っ!」
「あの時は本当にすみませんでしたーーーっ!!」
ユーリとこの男性に面識があるのか、ユーリが指差すと男性は物凄い勢いでわたしへと土下座をしてきた。
「え……えっと……」
わたしはそれを目を白黒させるさせながら見つめる。
「あなた方のご活躍でバルザックが倒されたと聞きましたっ!本日は私の何の御用でしょうかっ!まさか……、報復ですか……っ!?」
「えっと……、わたしの靴を買いに来たんですけど……」
わたしは店主の男性に今履いているボロボロの靴を見せる。
「わかりました!お詫びとお礼を兼ねてこの店にある最高の素材でお嬢さんの靴を作らせていただきます!もちろんお代はいりません!」
「え……っ!?そんなの悪いですよ!」
いくら酷い目に遭わされたとは言え、代金をいらないと言われては流石に気が引ける……。
「いえ!こうでもしないと私の気が収まりません!では早速足の採寸をさせていただきますっ!!」
そう言って男性はわたしの足のサイズを計り始める。
わたしは困惑した顔でユーリを見ると、諦めろとばかりに肩をすくめている。
わたしはこの店主の男性の勢いに負け、靴を作ってもらうことにした。
そして、出来上がりの日にちを聞いたわたし達はユーリの鼻を頼りにエミリー達のいる場所へと向かうことにしたのだった。
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