チートなし!JK魔法使いの異世界冒険記〜姉を訪ねて三千里っ!?〜

ノン・タロー

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二章 旅立ち

後悔の念

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ーサナー

 わたしはどのくらい眠らされていたんだろう……、目を覚ますとそこは薄暗い牢屋みたいな場所だった。

 壁には松明が取りつけられ、それがこの部屋の中を照らし出している。

「良かった、目が覚めたのね」

 突然誰かに声をかけられた。
 声からして女の人のようだ。

 わたしはあたりを見渡すと、そこには多くの女性達の姿があった。

 彼女たちは種族こそバラバラだけど、見た感じ歳は上は三十手前くらいの人から、下は十代半ばくらいの少女の姿もあった。

「あの、ここはどこですか……?」

「ここはランローズから西に行った森の中にある洞穴よ。私達はバルザックに捕らえられているの……」

「バルザック……?」

「ランローズの高利貸しの男よ。あいつは人にお金を貸して、返し終わる頃に法外な利子を請求し、払えないと見るとその家の女達を拐って行くのよ!」

「え……?じゃあここにいる皆は……」

「そう……、バルザックからお金を借りたばっかりにこうして捕らえられているの……。残された男達はバルザックの言いなりとしてこき使われているわ……」

「そんな……っ!そのバルザックって人、どうにか出来ないんですかっ!?」

「ムリよ……、バルザックはゴブリンや野盗を手下にしているわ。変に手を出そうものなら街にゴブリンや野盗を放つって言ってたわ……」

「それに、私達もいつまでも無事でいられるとは限らない。バルザックとは奴隷商と繋がりがあるわ。バルザックは私達女を奴隷として売りさばいているのよ……」

 そんな……酷い……っ!

 その話を聞いたわたしはそのバルザックとか言う人に対して強い憤りを覚えた!

 人を奴隷として売り飛ばすだなんて……、まるで女性を物としか扱ってないじゃないっ!

「それなら早くここから逃げ出さないと……!」

「ムリよ……、だって牢の外にはゴブリンが沢山いるわ。それに野盗達も……、見つかったら何をされるか……」

 女性達は牢の外にいるゴブリンや野盗を見て顔を青ざめながら震えている。
 野盗達数人はこの牢屋を見張るように立っているし、ゴブリン達も何人も歩いている姿が目に付く。

「おい!お前達煩いぞ!静かにしろっ!!それともこの場で犯されてえのかっ!?声を上げたいのなら喘ぎ声を上げさせてやるよっ!」

 野盗の怒鳴り声を聞き、女性達は悲鳴にもに似た声を上げる。

 ゴブリンか……あ!そう言えばドラムロさんから友好の証を貰ってたんだった!
 これがあればなんとかなるかも知れないっ!

 わたしはマジックポーチへと手を伸ばそうとするも、それが無い……。

「あれ……?」

 おかしい……、マジックポーチが無い……!

 よく見ると、わたしは誰のか分からない全く違う服を着せられていたっ!

 ぅえええぇぇぇぇーーーーー……っ!?
 誰のよこの服……っ!?

 わたしは叫びそうになる声を必死に堪える。

 あとは手段があるとすれば魔法でどうにかするくらいだけど……、仮に魔法を使ってこの牢から出れたとしてもこれだけ多くの女性達を守りながらここを出るのは現実的じゃない……。

 それに、例え一人で牢を出たとしても、多くのゴブリンや野盗を倒しつつここから出るのも不可能に近い。

 ど……どうしよう……。

 わたし……、ユーリと仲直りすることが出来ないまま奴隷としてどこかへと売られてしまうのかな……。

 そう思うと言いようのない恐怖と寂しさがわたしを襲い、目からは涙が出そうになる。
 こんな事になるのならユーリとケンカなんかしなければ良かった……。

 ユーリ……、助けに来てくれるよね……。

 その時、ふと自分自身が言った言葉を思い出した。

 そう言えば、わたしユーリに一人でやって行けるって言っちゃったんだ……。

 ユーリに言ってしまった言葉に対し後悔の念が頭を過る……。

 あんな事……、言わなかったらよかった……。
 わたし、一人じゃ何も出来ないよ……。
 助けて……、お願いだから助けてよ、ユーリ……。

 わたしは膝を抱えて静かに泣いた……。


 ーユーリー

 ランローズの街を出た僕達は微かに残るサナの匂いを辿りながら西の森の中にあるというゴブリンの洞穴のすぐ近くへとやって来ていた。

 洞穴の近くにある茂みに隠れて様子を伺う。

 どうやら外には見張りと思われるゴブリン数匹の姿があるけど、野盗の姿は見た限りではいない。

「見張りがいるな……、どうする?強行突破してもいいが、迂闊に突入すると人質の身が危ないな……」

「大丈夫、これがあるわ」

 姉さんはそう言い、サナのマジックポーチからドラムロさんから貰った「友好の証」を取り出した。

「エミリー、なんだそりゃ……?」

「これはオーク族から貰った友好の証という物よ。これがあればオークやゴブリンから襲われないって言ってたわ。それに、うまく行けばサナ達も助けられるかも知れない」

「もしダメだったらどうするんだよ……?」

「その時はその時よっ!」

「ルースさん、ここでグズグズしていても仕方ないよ。まずはダメ元でやってみよう!」

「へいへいっと……」

 僕達は茂みを出て、ゆっくりと見張りのゴブリン達へと近づいた。

「誰ダ!オ前達ハッ!」

「待って、あたし達はこういう者よ」

 当然見張りに見つかるも、姉さんは友好の証をゴブリン達へと見せた。

 ドラムロさんを疑うわけじゃないけど……、本当にこれで上手くいくのかな……。

 僕は冷や汗を流しながら思わず息を呑む……。

「コレハ……、オーク族ノ友好ノ証……。分カッタ、オレ達ノリーダーノ所二案内スル。付イテ来イ」

 僕達はゴブリンのあとに続くと、彼らのリーダーに会うため洞穴の中へと入っていった。
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