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二章 旅立ち
拐われたサナ
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酒場を後にした僕は姉さんとルースさんと共にサナを探していた。
探すと言っても、闇雲に探すわけではなくサナの匂いを探りながら街を歩く。
彼女の匂いはしっかりと覚えている、こういう時は半獣人とは言え、犬獣人の鼻が役に立つ。
そして、歩くこと数分ほど、僕達はサナを見つけることができた。
「サナ!さっきは本当にゴメンっ!」
僕はサナへと駆け寄ると深く頭を下げる。
しかし、いつまで経ってもサナからの返事がない……。
まさか、返事をしたくないほど完全に嫌われてしまっているのだろうか……?
僕は恐る恐る顔を上げてみると何のことか分からず、キョトンとしている彼女の姿があった。
「えっと……、サナ……だよね……?」
「え……?えっと……」
僕が尋ねてみるもどこか様子がおかしい……。
なんというか、変に他所を向いて目を合わせようとしていない。
さらに、よく匂いを嗅ぐと服こそサナの匂いがするけど、彼女の身体からは全く違う匂いがする。
「この人……、サナじゃない……っ!?」
目の前にいるこの女性はサナの服を着た全くの別人だっ!
「え……?確かにユーリの言う通り服にしかサナの匂いがしないわね……」
姉さんも鼻を使ってこの目の前にいる女性の匂いを確かめる。
「お前達匂いで分かるんだな……、すげえな犬獣人ってやつは……」
僕と姉さんとで匂いを嗅ぎ取っている様子を見てルースさんは若干引いていた。
そうは言うけど、これが種族による能力の差と言うヤツだ。
「君は誰?本物のサナはどこにいるのっ!?」
「え……?えっと……、その……」
僕が問うも、彼女はシドロモドロに目を泳がせるだけで何も喋らない……。
「あたし達の仲間はどこにいるのかと聞いてんのよっ!!」
「ひ……っ!?た……たぶん……私の父が知ってるはず……です……!」
彼女の態度に苛ついたのか、姉さんが胸ぐらへと掴んで、睨みつけると怯えながらも彼女は答えた。
僕達は怯える彼女の案内で、その場所へと向かった。
◆◆◆
「こ……、ここが私の家……です……」
歩くこと十数分、彼女が立ち止まると一軒の家を指さした。
どうやらここが彼女の家のようだ、匂いからしてたぶん間違いないと思う。
「本当にここなんでしょうね……っ!?違ってたら酷いわよ……っ!?」
「ほ……本当です!本当にここが私の家です……っ!!」
姉さんが指を鳴らしながらものすごい形相で詰め寄ると、彼女は半泣きになって震え上がっていた。
こういう時の姉さんってメチャクチャ怖いんだよね……。
「んじゃ、中に……」
「ルース邪魔!どいてっ!!」
ルースさんが玄関のドアを開けようとすると、何を思ったのか姉さんは玄関のドアを蹴破った!
ちょ……!さすがに蹴破るのはマズイんじゃ……!
「だ……、誰ですかあなたは達は……っ!?」
「あんたに聞くわ!このコが変装しているサナって子知ってるわよねっ!?あたし達の大切な仲間だから返して欲しいんだけどっ!」
この家の家主と思われる男性が突然のことで戸惑っていると、姉さんはそう言い、偽のサナを掴むと父親と思われる人物へと投げつけた!
「きゃあ……っ!?」
「サリア……っ!?誰ですか!ウチの娘に何を……っ!?」
「それはこっちのセリフよ……!サナをどこにやったのか答えなさい!答えないのなら力尽くで吐かせるわよっ!」
姉さんは男性を睨みつけながら胸ぐらを掴むと、片手でそのまま上へと持ち上げる。
実を言うと、姉さんの力はかなり強い。
本当かどうか知らないけど、一説ではオーガに腕相撲で勝ったという逸話すら存在する。
まあ、本当だとしてもある程度は話を盛っていそうだけど……。
「く……苦しい……!言う……!言いますから……離して……!」
「なら洗いざらい話してもらわよ!」
「げほ……!げほげほ……!は、はい……。実は……」
姉さんから開放された男性はポツリポツリと話し始めた……。
彼はこの街の金貸し屋である「バルザック」という男から金を借り、借金はキチンと返したのだが突然後になって高額の利子を請求され、それを払えないと分かると、彼の娘サリサを差し出せと要求されたのだと言う。
しかし、彼は早くに妻を亡くし、その上大切な娘を差し出せと言われ、途方に暮れているとサリアに似ていたサナ発見。
薬で眠らせた後、そのままさらってバルザックという高利貸しへと差し出したのだという……。
「バルザックは借金の方に捕らえた女を奴隷として売りさばいているという話も聞きます……。高額な利子を払う宛もなく街を歩いているとそのサナという女の子を見かけたんです……。歳も近く、見た目もサリアにそっくりだった!その時私の中で悪魔が囁いです……。この娘を身代わりにすればいいと……!私は大事な一人娘だけはどうしても守りたかった……!そして、この街から逃がせば娘は助かる!そう思ったんだ!だから仕方なかったんだ……!」
この人の話を聞けば聞くほど、その身勝手さに僕はだんだんと怒りがこみあげてくる……っ!
こんな自分勝手な理由でサナが拐われたなんて……っ!!
「そんな身勝手な理由で無関係のサナを自分の娘の身代わりに差し出したって言うのか……っ!?この……っ!」
「ひ……、ひい……!」
僕は怒りに顔を歪ませながら彼の胸ぐらを掴むと、そのまま殴ろうとしたのか拳を構えるが、その拳は姉さんによって止められてしまった。
「姉さんっ!?」
「ユーリ、こんなクズあなたが殴る価値もないわ。それより冒険者ギルドに行くわよ!そこならバルザックとか言うヤツの話ぐらいは手に入るはずよっ!」
「うん!」
「オーケーっ!」
「それとそこのあんたっ!あんたが身に着けてるもの返してもらうわよっ!それはあたしの仲間のものだからっ!」
姉さんはサリアという女性から服や装備を取り上げる。
そして、僕達はバルザックとかいう人の情報を得るため冒険者ギルドへと向かった!
そこならもしかするとサナの居場所が分かるかもしれない……!
待っててサナ……!僕達が今助けに行くよっ!
探すと言っても、闇雲に探すわけではなくサナの匂いを探りながら街を歩く。
彼女の匂いはしっかりと覚えている、こういう時は半獣人とは言え、犬獣人の鼻が役に立つ。
そして、歩くこと数分ほど、僕達はサナを見つけることができた。
「サナ!さっきは本当にゴメンっ!」
僕はサナへと駆け寄ると深く頭を下げる。
しかし、いつまで経ってもサナからの返事がない……。
まさか、返事をしたくないほど完全に嫌われてしまっているのだろうか……?
僕は恐る恐る顔を上げてみると何のことか分からず、キョトンとしている彼女の姿があった。
「えっと……、サナ……だよね……?」
「え……?えっと……」
僕が尋ねてみるもどこか様子がおかしい……。
なんというか、変に他所を向いて目を合わせようとしていない。
さらに、よく匂いを嗅ぐと服こそサナの匂いがするけど、彼女の身体からは全く違う匂いがする。
「この人……、サナじゃない……っ!?」
目の前にいるこの女性はサナの服を着た全くの別人だっ!
「え……?確かにユーリの言う通り服にしかサナの匂いがしないわね……」
姉さんも鼻を使ってこの目の前にいる女性の匂いを確かめる。
「お前達匂いで分かるんだな……、すげえな犬獣人ってやつは……」
僕と姉さんとで匂いを嗅ぎ取っている様子を見てルースさんは若干引いていた。
そうは言うけど、これが種族による能力の差と言うヤツだ。
「君は誰?本物のサナはどこにいるのっ!?」
「え……?えっと……、その……」
僕が問うも、彼女はシドロモドロに目を泳がせるだけで何も喋らない……。
「あたし達の仲間はどこにいるのかと聞いてんのよっ!!」
「ひ……っ!?た……たぶん……私の父が知ってるはず……です……!」
彼女の態度に苛ついたのか、姉さんが胸ぐらへと掴んで、睨みつけると怯えながらも彼女は答えた。
僕達は怯える彼女の案内で、その場所へと向かった。
◆◆◆
「こ……、ここが私の家……です……」
歩くこと十数分、彼女が立ち止まると一軒の家を指さした。
どうやらここが彼女の家のようだ、匂いからしてたぶん間違いないと思う。
「本当にここなんでしょうね……っ!?違ってたら酷いわよ……っ!?」
「ほ……本当です!本当にここが私の家です……っ!!」
姉さんが指を鳴らしながらものすごい形相で詰め寄ると、彼女は半泣きになって震え上がっていた。
こういう時の姉さんってメチャクチャ怖いんだよね……。
「んじゃ、中に……」
「ルース邪魔!どいてっ!!」
ルースさんが玄関のドアを開けようとすると、何を思ったのか姉さんは玄関のドアを蹴破った!
ちょ……!さすがに蹴破るのはマズイんじゃ……!
「だ……、誰ですかあなたは達は……っ!?」
「あんたに聞くわ!このコが変装しているサナって子知ってるわよねっ!?あたし達の大切な仲間だから返して欲しいんだけどっ!」
この家の家主と思われる男性が突然のことで戸惑っていると、姉さんはそう言い、偽のサナを掴むと父親と思われる人物へと投げつけた!
「きゃあ……っ!?」
「サリア……っ!?誰ですか!ウチの娘に何を……っ!?」
「それはこっちのセリフよ……!サナをどこにやったのか答えなさい!答えないのなら力尽くで吐かせるわよっ!」
姉さんは男性を睨みつけながら胸ぐらを掴むと、片手でそのまま上へと持ち上げる。
実を言うと、姉さんの力はかなり強い。
本当かどうか知らないけど、一説ではオーガに腕相撲で勝ったという逸話すら存在する。
まあ、本当だとしてもある程度は話を盛っていそうだけど……。
「く……苦しい……!言う……!言いますから……離して……!」
「なら洗いざらい話してもらわよ!」
「げほ……!げほげほ……!は、はい……。実は……」
姉さんから開放された男性はポツリポツリと話し始めた……。
彼はこの街の金貸し屋である「バルザック」という男から金を借り、借金はキチンと返したのだが突然後になって高額の利子を請求され、それを払えないと分かると、彼の娘サリサを差し出せと要求されたのだと言う。
しかし、彼は早くに妻を亡くし、その上大切な娘を差し出せと言われ、途方に暮れているとサリアに似ていたサナ発見。
薬で眠らせた後、そのままさらってバルザックという高利貸しへと差し出したのだという……。
「バルザックは借金の方に捕らえた女を奴隷として売りさばいているという話も聞きます……。高額な利子を払う宛もなく街を歩いているとそのサナという女の子を見かけたんです……。歳も近く、見た目もサリアにそっくりだった!その時私の中で悪魔が囁いです……。この娘を身代わりにすればいいと……!私は大事な一人娘だけはどうしても守りたかった……!そして、この街から逃がせば娘は助かる!そう思ったんだ!だから仕方なかったんだ……!」
この人の話を聞けば聞くほど、その身勝手さに僕はだんだんと怒りがこみあげてくる……っ!
こんな自分勝手な理由でサナが拐われたなんて……っ!!
「そんな身勝手な理由で無関係のサナを自分の娘の身代わりに差し出したって言うのか……っ!?この……っ!」
「ひ……、ひい……!」
僕は怒りに顔を歪ませながら彼の胸ぐらを掴むと、そのまま殴ろうとしたのか拳を構えるが、その拳は姉さんによって止められてしまった。
「姉さんっ!?」
「ユーリ、こんなクズあなたが殴る価値もないわ。それより冒険者ギルドに行くわよ!そこならバルザックとか言うヤツの話ぐらいは手に入るはずよっ!」
「うん!」
「オーケーっ!」
「それとそこのあんたっ!あんたが身に着けてるもの返してもらうわよっ!それはあたしの仲間のものだからっ!」
姉さんはサリアという女性から服や装備を取り上げる。
そして、僕達はバルザックとかいう人の情報を得るため冒険者ギルドへと向かった!
そこならもしかするとサナの居場所が分かるかもしれない……!
待っててサナ……!僕達が今助けに行くよっ!
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