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火曜日

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 秋は食欲の秋である。
 日中はそれなりに気温も高いけれど、夏バテは解消されてきた。美味しいものを食べるのにはもってこいの季節だ。
 香ばしい醤油の匂いに誘われて、キッチンに顔を出す。
「お、今日は魚か」
「たまにはねー。秋刀魚買いました」
 フライパンの上の秋刀魚には綺麗な焼き目がついている。美味そう。
「旬だもんな」
 今日は秋刀魚のしょうが焼きらしい。
 高松はたまに魚料理も作ってくれる。今日みたいにしょうが焼きや照り焼きの日もあれば、塩焼きの日もある。
 俺も高松も嫌いな食べ物はほとんどないし、食卓には色んな料理が並ぶ。高松は肉でも魚でも美味く作ってくれるのだ。
 味噌汁に入った鍋を覗き込むと、ネギににんじん……ごぼうに大根と具だくさんだ。
「もう、ご飯よそっていい?」
「いいですよ」
 しゃもじ片手に炊飯器を開けると、いっぱいの蒸気を思い切り顔に浴びてしまった。
「見えない……」
 蒸気で曇ったメガネを外すと、高松は小さく笑っていた。少し恥ずかしい。
 気を取り直して、二人分のご飯を茶碗によそう。豆腐サラダと味噌汁も、ダイニングテーブルに高松が作った料理が並んでいく。
「これで最後」
 メインの秋刀魚がテーブルの真ん中に置かれ、高松は食卓に着いた。今日の夕飯はこれで全部だろうか。
「そうそう! 今日はデザートにりんごがあるんですよ。後で食べましょうね」
「ああ。そういや、昨日言ってたな」
 果物は好きな方だ。
 食後にも楽しみが増えた。心が踊る。
 どれもこれも美味そうで、早る心を抑えて手を合わせた。
「いただきます」
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