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ヘイマンリゾートビーチビラ2日目 サプライズ

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朝食後…

先生は「プールで泳いでろよ」と言い残し、ロブ達とダイビングスポットに行ってしまった。

ダイビング未経験の私には当然の仕打ちかも…  世界屈指のダイビングスポット。  初心者はお邪魔。どうせ、足手まとい。

………………………………………… … ‥

「  ちぇっ!!! 」

気分を切り換えて、水着に着替えパイルのロングパーカーを羽織る。とりあえず、胸はデカイのお墨付きを先生から頂いたので 、ビキニに挑戦してみた。  鏡の前で胸を突き出し、モンローウォークに挑戦してみたが 臀部のお肉が足らない!ヴィラを出たところで、

「Mrs.クロサキッ」  とウイリアムに 呼び止められた。
スイミングのインストラクターを紹介すると言う。


( コーチ付き…?  仕掛け人は、先生だっ…たくぅ!)

ウイリアムに 連れられプールサイドでインストラクターとやらを、待つ。


…小学校の頃のスイミングのコーチを思いだして、キュン とする。

(  ないない‥  どうせここは  セレブ御用達リゾートだよ ミチル!Wow!  Hot guy.(わあ セクシー)とか、Zowie~!Cool guy.(キャーイケメン)とか、なんとか…金髪イケメンか…ターザンみたいな野性のエロマッチョが定番に決まってる! 
胸毛もりもりとか、)  

「はぁ、 萎えちゃう…」

ウイリアムは、ニコニコしながらプールサイドを行き交うメイドのトレイからドリンクを選んでくれる。

「ウィルが、コーチならいいのにな…」

前方で メイドさんに案内されながら長身の男性が一人近づいてきた。近眼の私には、辛うじてシルエットが男性らしい…程度しか、わからない。プールサイドの女性達の視線が 彼 一点に集中する。

“  Whew  He'S hot.”
(ヒューエロ~イ)

 ターザンか…?太陽の逆光で 近くに来ても 顔がはっきりしない。


体躯は、欧米人っぽいが肌の色はアジアか、アラブか  まあーやっとアジアン系にお目にかかれた程度に、私は 手元のストローをクルクル弄ぶ。


「Mrs.クロサキ  インストラクターガ イラッシャイマシタ …」

視線をタンブラーから上げる。



「!!!なんで!!エーーーッ!エーッ!」





     “  かっ、かがわくん!”


「かっ、かっがわ 君…」

(どこがエロいの!  爽やかすぎて後光が射してるよ…)

ウイリアムが、先生から内緒のサプライズだと口止めされた、私へのプレゼント。どういう企み…か、香川君はさすがのクイーンズイングリッシュで、ウイリアムと話している。

「Mr.カガワ、アトカラ‘Drink' オモチイタシマショウ…ゴユックリ」

『僕には 日本語じゃなくていいよ』

「Certainly sir.」(かしこまりました)


事の成り行きが掴めない…
「綾野さん 、驚かしちゃったね   まずは…っと」

香川君は腕を広げハグを要求する。


私は約束どうり抱擁に答える

(…って…!!うわっ裸っ、上半身裸だよぉ…)

〝ドキュン 〟

香川君は、私の髪に鼻を押し付け スーゥーッと深く匂いを 吸い込むと、すぐに私の頬に、熱すぎるキスを じっくり時間をかけて落とす。



(  何!!!  この甘い香りはっ⁈ )

鼻腔が 香川君の甘い香りに おもいっきり反応する。

〝 ドキ ドキ ドキ 〟
 
強く抱きしめられると クラクラする。

( だっめー!だめ、だめ )


Whew~ Whew~(ヒューヒュー)

プールサイドで囃し立てられる。 帰国子女のすることはハデすぎる


( もう勘弁して…)  
 香川君は悪戯っぽく笑う。

 
私は、「…違反だよ 」と、呟く。


笑顔が眩しい。この笑顔に弱いー 
 犯人の黒崎先生は、東京を発つ前日香川君に連絡をよこしたという

※※※※※※※※※※※

「香川か 俺  、俺だよ」
スマホの液晶画面に :オヤジ黒崎:表示。

( 俺って 言わなくても画面に出てます…)
「…はい」…

先生は、香川君に   “  寝ていても、国試(医師国家試験)くらいは、当然合格だよな⁈   俺のクラークとしてオーストラリアに付き合え ”  と、  〝 お願い〟 ではなく 〝 命令 〟 だったとの事。
 
※※※※※※※※※※※※※



「どうしてっ よ! この大事な時期に、バッカじゃやないの…香川くん!」



(   アッタマくるぅ!)


「なんでぇー 断らなかったのっ、この大事な  人生を左右する時期に  いい加減なオヤジの言う事を真に受けて!!!」と、

つい周りに関係なく声を荒げた。
香川君は 私が大声出して周りからヒンシュクをかっても、笑顔で対応してくれる。デッキチェアに腰を掛けると、ウィルが香川君に 飲み物を運んでた。香川君は少し水分を補給すると、

「なんだか…挑戦状突き付けられた気分…」
乱れた髪を掻きあげて、額に指を立てる。

一瞬、見とれてしまう。
「何?挑戦状って」

「だからさ…」

-------------

(  俺から奪えるものなら奪ってみろ!)
 
  黒崎先生の 挑戦状   香川君が言葉を選んでいる。

( なに…二人とも イカれてる )

「断ったら、たかだか国試程度で二、三日の休みも取れない余裕のない奴…って黒崎先生に思われるのが…ね」


フッと、微かな吐息混じりに息を吐いた香川君は、俯き額になおも指を当てる。


「バカバカしい  それって、…らしくないよ  香川君!ん、なのぉ…先生の思うツボじゃん」


「僕も…だと 思う…、まあ 、国試合格は心配するハードルじゃないけど…」
香川君は 両腕を上げて思いっきり背を伸ばした。

「そう…?  ならいいけど…」
私は顎を手の平に載せて香川君を見つめる。


(仕方ない 君が 好きなんだ…僕の心配なハードルは…君、 別にどうって 事ない普通の女の子なのに…妙に気が強くて  ‘可愛くない’…だけど…危なっかしくて…いつか―  壊れてしまいそうで 儚い…心配なんだ  僕の物なら絶対壊さないのに   僕の手に入らない…君)


「……」


( 今も、僕を心配そうに見る君が愛おしい…)

〝 パンッ 〟香川君は テーブルに手を突っぱると、


「さあ 泳ぐよ!僕の手始めの仕事は、君がスキューバダイビング出来るようにする事…」


「へぇっ?」


「午後から スキューバ 行くらしいからね」


香川君のスイミングのレッスンは、すぐに終わった。

「小さい時に習った事って、体が忘れてないね」


「大丈夫かな…ひれ付けれそう?」
私は不安が残り何度も香川君に確かめる。


「大丈夫、黒崎先生  びっくりするから、まあ見てて」

香川君はオッケーのサインを出してくれる。 ジュニアの一級もバタフライの基礎まで合格しないと取れない。フォームは完璧な競泳スタイル。一生懸命練習した事が、無駄じゃなかった。香川君と縺れ合いながら水中を潜りふざけあう。  スイミングスクールの授業前みんなで潜りっこして遊んだ記憶が蘇る。 あの頃はお母さんに送り迎えして貰ってた。今は香川君と学生時代をやり直ししているみたいだった。  プールの底を潜水する。  香川君の教え方が上手なので
1時間程で バタフライも思いのまま泳げる。競泳用プールではないので  軽くゆったり何周か、他の利用客の邪魔にならないように泳ぐ。

(これなら午後は 置いてけぼり喰わなくていいかも…)

泳げる事が嬉しくて、バックストロークからフリー、フリーからバタフライ、ブレストストロークまで  水面を自由自在に回りながら泳ぐ。


「綾野さんすごい!優雅で綺麗なフォームだよ…」

“ えっ ”  泳ぎに夢中で香川君の褒め言葉を聞き逃す。

「えっ なにぃ  何か言った?」
泳ぎを止めてプールサイドの縁を掴む。足がプールの底に届かない。香川君の腕が私の腰に絡まり支えてくれる。

〝…ドキッ 〟さっきから 素肌の密着が半端ない。


「見て 周りのギャラリー…」 香川君が周りを見渡す。

「 ギャッギャラリー?………えっ! 」
私はキョロキョロ周りを見回す
      
”  Who's that girl? (だれ あの子) ”


”   Little Mermaid.  (リトルマーメイド) ”

                “ Lovely  (かわいい~) ”

   ”  She's a mere child.  (まだ 子供だよなぁ) ”

口々に噂する。恥ずかしい!!! 私は香川君に隠れるようにくっつく…パチパチと、拍手さえおこる。


「かっ 、香川君どうしよう…」

香川君は私の腰に 手を回し少し屈むと、耳元で囁く

「堂々として!これからDr黒崎のファミリーとして 世界デビューがあるかもしれないよ…いい機会だから 慣れておこうよ」


香川君のお父さんは外交官。彼は、大使館関係の社交の場には、小さい頃から慣れている。  こんな場合は堂々と振る舞うこが大事だとレクチャー してくれる。

( ヤダー  …)

〝ドキドキ 〟


『お嬢さん一緒に泳ぎませんか』


(うわっ!  ‘シャルウイ スイミング?’ )

年輩の紳士が近寄ってきた。香川君に 助けを求める。

「さあ 泳いでおいで」
助けてくれるどころか、その紳士に私の腕を預ける。

〝  わあっ!ドキドキドキドキ 〟


『  素敵なフォームを見せてくれない?』

『はい…』   その男性と並泳する。男性はゆっくりブレストストストローク、私はフリースタイルで回転したりすると、『ワオ マーメイド』と、歓声が上がる。プールサイドでは皆が泳ぎたがる。香川君はプールサイドに寄り掛かり、

「すっかりヒロインだ…」
微笑みながら眺めている。

プールでは 泳ぎ自慢が競って 自慢のスイミングフォームを披露し、あっという間に人だかりが出来る。香川君はプールから上がり、デッキチェアでくつろぎながら私と目が合うと、ニッコリ微笑み 手を挙げて合図してくれる。私は皆のリクエストに応えて泳ぐ。


「 わりぃ、わりぃ  !無理言って…」
背後から香川君の肩をポンと叩く。
香川君が振り返ると、黒崎先生とナオミ.W教授  ロバート研究員がスキューバダイビングから戻ってていた。先生は、相変わらずふてぶてしい態度。

香川君は立ち上がり、
「先生…今朝ブリスベンに着きました。ヘイマンには2時間ほどまえに来ました 」


「急がすようで悪いが、講演を手伝ってくれるか?  後からスタッフが来るが 通訳が足らないんだ  」


「 わかりました、僕で役に立つ事があればお手伝いさせて  頂きます」

先生は香川君を、ナオミ先生とロブに紹介する。香川君はナオミ先生が世界的な免疫疾患学のドクターである事を知っていて、黒崎先生の顔の広さに脱帽する。 紹介された香川君は、ナオミ先生と 日本人スタッフとの連携が円滑に取れるよう通訳することを頼まれる。
香川君にとっては、彼の顔を覚えてもらえるチャンス…


先生は、香川君の今後に繋がると考えた上の行動だったと思う。

黒崎先生は今からナオミにアピールして損はないと香川君に耳打ちした。

私は、先生が戻って来た事に全く気づかなかった。プールで人魚のリクエストに応え、 水中をドルフィンキックで泳ぎ子供や、若いカップル達を追いかけて遊んでいた。“ ミチル ミチル ”と皆から呼ばれ
老若男女問わずハグの嵐にあう。

先生は プールサイドで楽しむ私に目を細める。プールの中央の水中から顔を出し、向いた正面に先生がいた。


サングラスを頭上に上げ顔を見せる。


「せんせいー!」

ドルフィンキックで先生の足元まで泳で行く。

先生は屈んで

「 Beautiful!」と冷やかす。

「エヘッ」私は思わずガッツポーズを取った。


「まだ泳ぐか?」

先生が戻って来たのに、泳ぐ必要は無い。先生に向かって腕を差し出す。先生は差し出された私の腕の手をにぎり、


「しっかり掴め!じやないと肩が抜けるぞ」


 「… うん 」
  片腕だけで私の体が水から引き上げられ、人目もはばからず抱きしめられる。
(  皆みてるよ 恥ずかしいよ…)

先生は周りから 〝 ヒューヒュー〟と、冷やかされてもかまわずベタベタする。

「水着がエロいな 」


「…バカ 」


ロブが気を効かせてバスタオルを放り投げてよこした。
「an attentive boy 」(気が 効くじゃん)


ロバート研究員に手で合図し、先生は私の体を拭きながら

「スパ 行くか」と誘う。先生の誘いも上の空で私は香川君を探す。

香川君は ナオミ先生と話し込んでる。仕事の打ち合わせ…。


香川君がふと  私達の方へ視線を向ける。先生の肩越しに目が合う。
私は、彼を置いてけぼりして、少し後ろめたい気分だったが、香川君は ‘上手くやれ’  と 合図をくれる。


(…香川君… ありがとう )


「 おいっ聞いてるか?」

「えっ 、ああ…」

先生の肩越しに 香川君の  ‘上手くやれ’ の合図に…………私が上手く先生の交流関係と社交ができるのか不安になる。
今は、訳がわからずただ黒崎先生の後ろをついて行くしかすべがない。楽しいか、楽しくないか、好きか、嫌いか、したいか、したくないか…自分で決めた目標は、結果がどうあれ、行程が大事なのはわかっている。今の私にはそれが無い気がする。

病気のせいにしていないーか? 誰もが長命とは限らない。今、出来る事…それは香川君が教えてくれた。 

   積極的に!黒崎先生の役に立つ事。  能動的になろう。


『ヒカル 、先に食事にしましょう タカシも一緒に』

ナオミ先生が 日陰のベンチからこちらに手を振る。

「っち…お前が愚図だから 捕まっちまった…たくっ…あのおばちゃん、うぜぇーんだよなぁ」  コツンと頭を小突き、まだ小声で文句を言っている。


(へっ…私のせい? お、おばちゃんって!)

ランチはスシバーにすると、ナオミ先生が強引に押し切った。


『タカシは 私達のペントハウスに泊まればいいわ  ♪  明日は、私達もケアンズに戻るから~』

ブリスベンにホテルを予約していた香川君も、ナオミ先生に強引に引き止められる。

『ご親切 ありがとうございます ナオミ先生 』

香川君は軽く会釈する。


『どう致しまして』

ナオミ先生も 香川君が話す、クイーンズイングリッシュと完璧なマナーに ご満悦の様子


香川君は話しを続ける。


『申し訳ありませんが、ブリスベンには午後に戻りたいので…明日朝1番にケアンズでお会いするという事で お願いいたします 』

(うわっ 自分の都合で 完結しちゃったよ‼︎ か、香川くん…)

香川君は世界的なドクターにも怯まず自分の都合を伝えた。


『タカシはブリスベンで用があるの?』

ナオミ先生は、自分の提案を拒否されてやや表情を雲らせる。

先生はニヤニヤして成り行きを見守り、ロブにいたっては、完全に茅の外に置かれ プールで楽しむ女の子を目で追っている。

私は、ナオミ先生が 機嫌を損ねないか、ハラハラする。

『  こちらの 友人と会う予定です』

表情一つ変えず、メイドが運ぶドリンクを取る。
ナオミ先生は テーブルに肘を突き、手の平に載せた顎を突き出す。明らかに苛々している様子。


『その友人とは、今日会わないといけない?』

生意気なぼうやとでもいいたげに、小刻みに脚を揺らす。

香川君は、余裕でトロピカルジュースを一口飲むと、

『ええ 是非』ニッコリ微笑み ながら、


『ナオミ先生何か 問題でもありますか?』
と、 切り返した。香川君の目は笑っていない。


( うわっ あっらー!!! )

ナオミ先生の顔が紅潮しだす。香川君は動じない。じっとナオミ先生の目をみる。


黒崎先生は下を向いて笑い声を押し殺し 小刻みに肩を震わし、足踏みしだす。

(せっ 先生ったら!!)

『わかったわ…友達は大事になさい………………タカシ、明日の朝ケアンズで   ………!お昼は一緒に食べれるでしょ? 』

香川君は左手のダイバーウォッチを見て、

『はい、 2時にここを出れば間に合います』


香川君の屈託ない笑顔に ナオミ先生もうっすら微笑む。

『そっ 、じゃ スシ行きましょ!着替えて12時よっ 』
 
ナオミ先生はロブを伴い席を立つ。


顔を下げ笑いを辛抱していた先生が、膝を叩いてげらげら笑い出す。


「くぅーーーッ!香川っ、お前 強ッ、久しぶりに清々したぞっ 、ナオミのやつの顔ったら‼︎ ざまあみろだっ」

〝 クハハハァハハー 〟

「先生、 僕が劣勢なら 助け船出すつもりでしたよね」

香川君が先生に微笑む。

「しらねぇよ~  今のは。ナオミが悪い 何でも自分の思い通りになると思ったら大間違いさ…ククク」


(…それは黒先にも言えることだろっ!)

香川君がクスッと笑う。

先生はご機嫌で、香川君をヴィラに招く。

「おい 香川 、風呂入っていけ…」

二人はヴィラのリビングで 明後日の講演の段取りの話しをしだす。
私は、二人より先にシャワーを浴びて白いサマードレスに着替え、昼食会の準備を整えているのに…二人の打ち合わせは一向に終わらない。 ウィルが香川君のトラベルバックを持って来てくれた。

『ウィル なんか食うもの持って来てくれっ』

「ちょっとぉ! 先生ぇ…ナオミ先生との約束はっ?」
私が慌てると、


「あっ、…あれなぁぁ 香川…? わざわざこんな所まで来て 不味い ‘寿司'は、ねえよ~なっ、 なっ、」

先生は香川君に相談…ではなくて、一方的に同意を求める。香川君はやれやれと頭を掻く。


「寿司はやっぱり銀座…だろっ、 なっ?」
一時考えてから、先生が突然、


「止めっ!   ウィル  わりぃ~ でかいロブスターと、なにか、食う物 白ワインも頼む。」

(ハアーーーーッ!!)

「 Mr.クロサキ、カシコマリマシタ  フレンチデヨロシカッタデショウカ?」


「I'll leave it to you.」(任せたよ~)

先生は香川君の英訳原稿を見ながら手をヒラヒラす。

私は約束の時間が迫ってきてソワソワする。


「せんせえっ!」   少し声を荒げる。


香川君はニヤニヤと先生の対応を見守る。

(ったくぅ…)  先生はささっと メモ用紙に何やら走り書きし、

『 ウィル! 急いでペントハウスのロバート.Pって男に渡してくれ直ぐにっ』


しばらくして 私達のところにメモ書きの返事と、大きなロブスターや生牡蠣 ブイヤベースなど海の幸の料理がたくさん運ばれてきた。

ウィルがテーブルセッティングしている間に、


メモ書きの返事を先生が読む。

「 ククック…ウワァハハハハァ~)
先生がお腹を抱えて笑い「おいっ 見ろ」香川君にも返事を見せる。香川君は俯き、額に手を沿え失笑をこらえる。

私には教えてくれない。

「なにっ、なにっ!教えてぇ~!!」

「君が聞いて喜ぶ内容じゃないよ」
香川君は笑いを堪えつつも、優しくなだめてくれる。

私は引き下がらずに、厳しく先生を問いただす。

先生によれば、
〔欲求不満のヒステリー女を黙らせろ!フニャちん野郎〕
と、書いたメモを送り

〔雌ぶたは、俺のデカコックで黙らせた 安心しろ!明日ケアンズで会おう〕
と、ロブから返事が返ってきた。

その下品なやり取りを二人で笑っていた。


「……………」


ナオミ先生からは、何の連絡も来ない。先生の一行のメモで皆が気乗りしなかった寿司ランチは立ち消えた。

( ナオミ先生…欲求不満だったのかな?)


これからも、先生の下品な性格は治るはずもない。


先生は香川君からクイーンズイングリッシュの発音を習いロブスター片手に英会話のレッスンを受けた。アメリカ訛りの英語は時にバカにされる事がある。特にオーストラリアは、古き良き女王陛下のお膝元。先生が香川君を重宝するのには、それなりに理由があった。

「香川が来てくれて助かった、アメリカ訛りはバカにされっから 」

先生は狡猾だ。すべて抜かりなく用意周到に準備する。香川君も老獪な先生のペースに巻き込まれる。


( ご愁傷様……)


午後、香川君は クルーザーでハミルトン島へ渡り小型機でブリスベンに帰って行った。私へのハグを忘れず、先生の前でも構わず 頬に濃厚な?キスして…。

午後のスキューバダイビングは、ナオミ先生からキャンセルの連絡が入る。メイクラブに忙しいらしい。私と先生はスキューバダイビングの用意をして、ホワイトヘブンからハートリーフへ行き ダイビングスポットでスキューバダイビングを楽しんだ。

日焼けして 健康的に見える私も、夕方帰る頃にはくたくたで 夕食も喉が通らず、ベッドの中へ…。

その夜のナオミ先生のペントハウスでのパーティーには、参加出来ないままヴイラで休んでいた。

先生が、ナオミ先生を呼び夜遅くに診察を受ける。


『ヒカルは ミチルの事になると人が変わるわね』

『…っ』

先生は眠る私を見ながら 聞こえないふりをする。

『ララが天国で妬いてるかも…』

ナオミ先生が意地悪く話す。

『 昔の 話しだ…』


『…あの頃は楽しかったわ~♪ 』





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