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学生生活

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朝から 講義を全て取り 午後も地方裁判所で 受託収賄事件の傍聴をした。レポート提出が迫ってきた。弟は手術後 順調な回復ぶりだが、 血液検査で引っ掛かっている。 まだ退院の目処が立っていない。

私はあの日 以来黒崎先生が 居ない時間を狙って 弟に会いに行っている。ほとんどを 大学の図書館で過ごし 司法試験の勉強にのめり込む。

「ミチル~ ね お願いあるんだ!」

加藤サヤカ!
私が嫉妬する美人で頭も良い 良家のお嬢様…
嫉妬するが…好みが正反対だから… 腐れ縁は続いている。

「なに? 」
私は眼鏡を上げてサヤカの顔をみる。

「今夜 飲み会 付き合って! K大の堺君をやっと 誘えたんだけど…」
サヤカは半ベソ顔で

「友達も 連れてくるって…」

サヤカのお願い攻撃に 私は 負けた。

シナリオは…
 四人で飲んで 途中 カップルになって 別れる。単純だけど 手っ取り早い。別れたあと 私はテキトーな嘘ついて 連れの男とさようなら…の予定…

7時に Nホテルのラウンジで待ち合わせのため、弟が入院している病院から直行しないと 間に合わない。

弟は 病棟の顔なじみを作り 毎日退屈しないで 過ごしている。
弟の入院もかれこれ一ヶ月近くになった。

私はノートパソコンと資料の入っているデカ鞄を下げ 大学から病院に原付きバイクで直行した。

「タダシ!早く洗濯物出して!」

私はぼちぼち外来の診察が終わってドクター達が病棟に上がってくる頃だと思った。

“奴”にだけは逢いたくなかった。

弟の洗濯物をデカ鞄に詰め込み

「明日は、朝から来るからねっ!」


明日は土曜日…土日は教授と准教授は休み…
新しいゲームに夢中の弟は手だけ上げて合図する。


(ったく 可愛くないったら)


私はデカ鞄の持ち手を肩に掛けて一般用のエレベーターホールへ走った。鞄の持ち手が肩に食い込み…痛い!


(なんで私が逃げなきゃならないのよ…だってそれは…あいつに見つかると…拒めないから…)


「そのっエッエレベーター待ってぇ」


無情にも満杯のエレベーターはデカい荷物を持って乗り込もうとする女を 無視した……

今夜はお決まりの週末。明日は休み。
サラリーマンも 老若男女も学生も 皆が繁華街へ繰り出し合コンに飲み会で盛り上がる。
すれ違う人達は皆晴れやかな笑顔で夜の繁華街に消えていく。

私だけが、心は重く湿ったまま…目の前のNホテルを見上げていた。

……………

あれから病院のエレベーターは私の前を二度素通りした。
三度目でようやく乗り込めたが、荷物は二人分の幅をきかせ…私は肩身の狭い思いをした。

(誰のせいっ!忌ま忌ましいあの‘おやじっ’    奴に逢わなかった事が不幸中の幸いかも…)

ホテルのラウンジでサヤカとK大の学生二人は、私の到着を待っていた。今どきの大学生… 彼らはお金持ちのお坊ちゃまお嬢様なんだ…

(まあ今夜限り、二度と関わる事も無い…)はずだった。


「ゴメン ゴメン 遅れちゃったぁ」

精一杯の作り笑顔で合流した。
サヤカは私を手招きし、その顔はすでにほのかに上気して眩しいほどに色っぽい。
二人の学生はと言うと、これもまた甲乙つけがたい、サヤカが狙うだけの事はあるイケメン達だった。


私達四人は、サヤカのシナリオ通りに事が運んでいった。やはり、サヤカは頭がいい。先を見通してそつなく自分のペースに周りを巻き込んでいく…


私達はホテルのラウンジから席をホテル内にあるバーに移した。
席に着くと、周りは 大人の雰囲気…
何となく…淫秘な薄暗やみを照明が演出し、モダンジヤズの生演奏…
アレンジのせいかしっとりと聴かせてくれる。

(ホントにお坊ちゃま達のすることって…大人の真似ばかり…親のすねかじりのくせしてそれとも自身の親の真似?
だったらなおの事、私のような庶民の学生が来る場所じゃないよ…ここは、)


(あ~あ!始まった)


皆とカウンターに並びカクテルを指先で弄ぶ私の視線の先でサヤカと堺君がなまめかしくか手を絡ませだした。


(私もそろそろ酔ってきた。ボチボチ退散のシナリオ実行しなきゃ……面倒臭い)

私達四人は、サヤカのシナリオ通りに事が運んでいった。やはり、サヤカは頭がいい。先を見通してそつなく自分のペースに周りを巻き込んでいく…


私達はホテルのラウンジから席をホテル内にあるバーに移した。
席に着くと、周りは 大人の雰囲気…
何となく…淫秘な薄暗やみを照明が演出し、モダンジヤズの生演奏…
アレンジのせいかしっとりと聴かせてくれる。

(ホントにお坊ちゃま達のすることって…大人の真似ばかり…親のすねかじりのくせしてそれとも自身の親の真似?
だったらなおの事、私のような庶民の学生が来る場所じゃないよ…ここは、)


(あ~あ!始まった)


皆とカウンターに並びカクテルを指先で弄ぶ私の視線の先でサヤカと堺君がなまめかしくか手を絡ませだした。


(私もそろそろ酔ってきた。ボチボチ退散のシナリオ実行しなきゃ……面倒臭い)


‥‥‥‥‥      ‥‥        ‥


「頭痛いっ」 
ゆうべはどうして家まで帰ってこれたのか、全く覚えていなかった。
着のみ着のままで寝てしまっている。私は置き時計で時間を確認した。
「もう昼じゃんっ」

急ぎシャワーを浴びに 階下へ降りると、ダイニングでは叔母と父が軽い昼食を摂っていた。


「帰ってたんだぁ」

父を一瞥して浴室へ駆け込む。

「お~い ミチル!タダシの退院はまだなのかぁっ!」


父親の大声は風呂場まで響く…私はいちいち答てられないと無視を決め込んだ。


(頭痛いし…いったいあんた、 タダシが入院して 何か役に立つことしたかあ?…)

暑いシャワーで徐々に覚醒してきた。
今日と明日は集中して勉強出来る。
私は身支度を済ませると父親に、

「まだ退院のお許しないけど、順調みたいだよ」
と報告した。


「そうか…」



(いいお天気っバイクも気持ちがいい~)

休日の巨大病院…病棟やコンビニ、レストランは見舞いの人でごった返している。
私は弟に着替えや叔母から預かった新しいゲームソフトを渡すと

「外来に居るから、用事あったら降りてきて!」
と伝えるが、弟は私に見向きもせず 
「うん」と返事を返してゲームソフトを取りだしている。


(…やれやれ)

私はノートパソコンと数冊の参考書片手に2階の外来診察室が集中しているフロアに向かった。
休日は誰もいない照明も疎らに消され薄暗いけど静かで勉強するにはうってつけの場所だった。

たまに病棟の看護師さんがカルテを取りに来ても私がパソコンと、睨めっこしているのを見咎められた事は一度もない。
ノートパソコンのキーを打つ音が外来待合室に響いた。


「机があったら なぁ…」


私は独り言を呟きつつレポートを作成していく。

殺人事件の無罪判決…物的証拠がない。
限りなく黒に近い無罪…証拠の鑑定結果を再検証してみる。

最近は作成したレポートは担当教授のパソコンへ転送すれば課題提出となる。講義に出なくても とりあえず課題さえクリアしとけばよっぽど出来が悪くない限り 「可」 はいただけた。
サクサクとはかどる。

背後の長椅子に人が座った事さえ気づかないほど集中していた。

どれだけ時間たったのか…

「うわっ、もう3時」

グゥ… 
お腹が鳴った。
ググゥ…

閑散とした休日の外来待合室に私の腹の虫が大きく鳴り響いた。


「ガイライニ~っヒビキワタルヨ~ハラノムシ~
ソレニツケテモぉ腹減った…」

へんてこな川柳を口ばしりつつ長椅子の背もたれで思いっきり背伸びをした…瞬間、強力な力で体をホールドされ、 
私は反発して背中を反りくり返って背後を確認した。


 (くっ黒っさきぃ)


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