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お沙汰

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「伊織…わらわは心配でならぬ―」

深夜見回り女中を早々に下がらせ奥向きへ密かに国部伊織を招き入れていた安藤直胤の正室於勢の方は寝巻きの裾を寝乱していた。


神鶴藩留守居役家老国部伊織は、江戸上屋敷で蟄居謹慎中の藩主に代わり於勢の方の疼く身体を夜ごとお慰め申し上げていた。

 「お方様 御心配には及びますまい。幕府とてこのような小藩のたわいなき争いに関わってはおれますまい」


国部の手が抱き寄せた於勢の方の寝巻きの胸元にスルリと滑り込む。

   アア…

於勢の方の手も国部の着物の裾の合わせ目を這い回り堅くなっりつつある陰茎を探り回る。


 「国部ぇ、もっとぉわらわを嬲ってたもぉ」

男の手の平が狭い着物の中に抑え付けられていた乳房に辿り着くと、ゆっくりと餅を丸めるように捏始める。


 「ハァァ…国部ぇもそっと強おぉ―フ―ゥンッ」


乳を含ませた事の無い小さな乳首を捜し当てギュッと抓る。

「お方様のご不安を国部がずっとお慰め申し上げまする」

国部伊織は、於勢の方を背後より抱きかかえながら右手で乳房を嬲りつつ開けた寝巻きの裾から見える朱い腰巻きが欲情を煽られ己の肉棒が熱くなってくるのを感じている。


「ハァ…伊織ぃ…わらわの陰部(ほと)が泣いておる…慰めてたもぉ」


真っ白い二本の脚をもじもじと擦り合わせながら早く拡げて欲しいと暗に求める…


国部伊織は朱い腰巻きの裾を巻きあげ閉じた白い脚の間に左腕を捩入れ


    「御免っ…」

    …ッ

太股を抱え上げ真っ二つに割った。

   「ああ― 国部ぇ早うう 早うう 掬ってたも…陰水が止まらぬ伊織ぃ」


於勢の方の寝巻きは胸元がはだけ白い手鞠のような乳房がこぼれ落ちている。


乳首を抓り上げる度に於勢の方のはしたない啜り泣きが漏れ、譫言のように国部伊織の名前をはっする。


忍び寄る幕府の詮議…に怯え、おののきながら、逃げるようにお互いの肉欲を貪り合う。

この先に待つ悲劇に向かって転がり堕ちて行く事がわかってはいても、もう歯止めが効かない所まで追い詰められていた。

開いた脚の中央の濡れそぼる女陰に指先を突き入れ縦の割れ目に沿って中のぬめりを掻き交ぜると…

    「ハァ…ハァ…もそっとぉお」 

於勢の方は恥じらいもかなぐり捨ててむっちりと肉の盛った臀部をよじりもっともっとと陰部を競り上げて来る。


  「お方様…實(さね)の鞘が程よく剥けておりますゆえ、まずは国部が摘んで差し上げましょうか」


国部の指先は陰水に塗れながら於勢の方の陰核を強く摘み引っ張った。


於勢の方は瞼を閉じて唇を半開きにしたまま涎を漏らしながら

   フウウ…ウウ…と、喘ぎ始めた。


止める事なく捻る揉む、擦り上げると

    「ああ あ―っ遣るぅ―」

         ヒィ…イイ… 

国部は気を遣る寸前女陰責めを止めて陰水でぬちゃぬちゃと粘り着く己の指先をぺろっと舐めて、自らの陰茎を掴み出してきた。


於勢の方は、突然に女陰責めを止められて恥もかなぐり捨て手淫を始めた。


    「あっ あっ あ―」


  「お方様…お声をお控え下され…」

 伊織の囁きも於勢の方には聞こえない。


間もなく訪れる極楽の高みへ下半身から押し寄せてくる痺れる膨張感。


    「口吸いつかまつる」


はしたなく悶え声を上げる於勢の方の口を塞いだ国部は己の怒張した肉竿を上下に扱きながら、華奢な於勢の方の腹回りに腕を巻き付けた。


於勢の方は我慢出来ずに口を離すと


 「国部ぇ― 情けを情けを……」

陰茎を欲しいと懇願しだす。


手淫に耽っていた濡れそぼる女陰を親指と人差し指で割開くと肉と陰水の中の蜜壷目掛けて太竿を打ち突けた。


ヌメヌメとめり込みながら蜜壷の肉ヒダを巻き付けて行く。

  「おっお方様ぁ…」

国部の理性も崩壊に向かう。


………
既に神鶴藩城内には幕府の密偵…御庭番が潜入しているとは家臣の誰一人気づいていなかった。




 『やれ…藩主が謹慎おわしていると云うに…何たる有様…か……』

 
 『ふん…所詮我欲に眼が眩んだ外道共のしそうな始業…それはそうと下前田の…岩井は………………』

 『向こうは…川村 と村垣が抜かり無く探りを入れているはず…此処はもう良かろう…上田の御城下に戻るとしよう』


……………


神鶴藩城内は新将軍号令の下、御庭番衆が潜入して先の藩主安藤直胤乱心の真相を探り始めていた。


同時進行で下前田藩の若い藩主を補佐している筆頭家老岩井弾膳影嵩の身辺探索も始まっている。


また吉宗直々に奥越藩お取り潰しの真相を探れとの御下命も賜っていた。

奥越藩と吉宗は浅からぬ縁で繋がっていた。

十代だった頃、 父君光貞公について江戸下向の折、時の将軍綱吉に気に入られた吉宗は越前のとある小国を賜っていた。


名目は三万石との事であったが実際は土地は痩せ冬は雪に閉ざされた不毛の地と言っても過言では無かった。

しかし、吉宗は不毛の地を僅か三年で富める三万石の国に造り上げた。 その国造りの手本となったのが、隣国奥越藩だった。

紀州から出ることなく、配下の者を藩に置き 
藩運営を任せていたが三万石とは名ばかりで、藩財政は一向に改善されなかった。このままでは、父光貞に頼らざるおえない。
それこそ 幕府が思うツボ…
御三家 親藩 外様 全ての藩の力を削ぐ事が 幕府安泰の近道とばかりに 幕府は強引に諸藩の蓄えを、吐き出させていた。

吉宗(頼方)は無頼時代から身の回りに侍る根来衆から奥越藩の情報を得て、すぐさま 奥越藩主結城勝兼に書状を送り藩政の教えを乞うた。

結城勝兼との幾度かの書簡のやり取りで 奥越藩視察にまねかれ、吉宗は 内々に奥越藩に下向した。



結城勝兼は、誠実で質素倹約を旨として己を正す人物であった。領地の四方を奥信濃 奥飛騨 越中の深い山々に囲まれ冬ともなれば他国との交易も雪に閉ざされてしまう過酷な環境であったが、民、百姓は安寧に暮らしていた。その理由を吉宗は勝兼から学んだ。

平地が無いなら 山の祥を見つけよ。と‥
年中湧き出る温泉の地熱を利用する事で厳寒を憂う必要がなくなった。初夏から秋までは山々のありとあらゆる祥を蓄えることができた。痩せたわずかな土地には蕎麦、麦を植え民、百姓が飢える事は無い。

元禄年間の幕府は 表立った諸藩の財政には厳しい目を向けていたが弱小藩の藩政には目もくれていなかった。


その一方で 結城勝兼には後継ぎとなる男子がおらず、まだ幼き姫が1人いた。夫婦も高齢の為 この先、子に恵まれる事は考えられず、いずれは、姫に婿を迎えるか、何処かの藩と縁組し、その藩の領地に加えられるか…今の幕府の御政道から、おそらく改易になり領地は幕府没収となるだろと、吉宗に覚悟を伝えていた。



この後
紀州藩は藩主が次々に病死。四男の頼方が紀州藩五十五万石の家督を継ぐ事となり、時の将軍徳川綱吉の一字を拝領し、名を吉宗と改めた。越前の所領は幕府召し上げとなり 奥越藩との関わりもこの時期から途絶えてしまった。


勝兼は、頼方に由宇姫との縁組を持ちかけていたが、頼方が紀州藩主となっては 徳川御三家と奥信越の小藩では釣り合いが取れず この縁組も立ち消えとなった。







~大晦日最終ページの続き~

宿場旅籠三笠屋の女中部屋には、大晦日、飯盛り女や下働きの姉や達が初詣に出掛けていた。残ったのは女童達と客の相手をしている女郎や留守番の手代だった。


 「さぁ お駒ちゃん仁吉のおじさんが離れで待っているから行こうね」


萩が駒の手を引こうとすると、頭を左右に振った駒が、
 
「だめだよ、女将さんに許し貰わねぇとぉ…」

俯く女童の小さな頭を撫でながら、


 「心配要らないのよ、お駒ちゃん。留守番の番頭さんにお許しは頂いているからさ」


 「姉ちゃん…本当かぁ」

駒の黒目がちの瞳が輝く。

「ええ 大丈夫よ、それから、もう新年だから…明けましておめでとうございます。」

萩は改まって正座し直すと少女達に新年の挨拶をする。


女中部屋に残った下働きの少女達は急に賢ばり新年の挨拶を返した。


 「はい…お年玉」


萩は懐から半紙に包んだ年玉を少女達に配ると

 「甘い物でもお食べなさいね」


少女達は思わぬ褒美に喜んで駒が正月を萩達と過ごす事を羨む事無く見送った。


 「お駒ちゃん、仁吉さんは知っているよね」

萩に顔を覗き込まれてもきょとんと瞼をしばたたかせるので、
 
  「覚えていないかなぁ…弥比古さんのお仲間だから、心配いらないよ」


駒は魚丸が宿を急に引き払ってから、離れに近寄る事なく厳しい下働きの仕事を黙々と頑張ってきた。


小さな手の平は皹だらけで、霜焼けのせいか、小指が倍ほどに赤く腫れている。

「随分な仕打ちだな…三笠屋め…」


仁吉は手酌で酒を盃に注いでは、ぶつぶつと独り言を言う。

『いいか、仁左衛門…
お駒がどのような酷い仕打ちを受けていようと、身体さえ壊していなければ知らぬ振りをしておれ』


『しっ、しかしっ水埜様。亡き猿渡様と吉野様の大事な忘れ形見ですぞっ。世が代なら三笠屋めっ無礼打ちでござろうものをっ』


『そちとてまだお駒を表に出す訳にはいかぬことぐらい承知しておろう、今我等が、小事で短気おこさば‥‥あ奴らが思うつぼ、…殿を陥れた岩井弾膳等一味 恐らくお駒の行方も血眼で探しておるはずだ』


『水埜様…あの童女はいったい…何故に命まで…』

『仁左衛門…今はまだお前にも言えぬが、しかし 必ずや駒の存在は我等の悲願達成の決め手となるはず。まず我等が成すべき事は殿の冤罪を晴らす事だ』

仁吉は、秋口に花籠楼で元神鶴藩御側用人、水埜彦四郎と密談した事を思い出していた。

(水埜様…今頃は)


萩は三笠屋の離れ座敷の次の間に設えられた寝床に駒を寝かせながら、
 「お駒ちゃん、明日は下前田の天神様に初詣に行こうね」

まるで母親のように優しく話しかける。お駒は寝床に入るなり大きく欠伸をすると萩の話す言葉も聞くや聞かずのうちにすやすやと寝息を立て始めた。


主間で仁吉は独りゆっくりと酒を味わいながら何やら物思いに耽っている。

 「仁左衛門様、 お酌させていただけますか」と、言うや萩が徳利に手をかけると、華奢な萩の手先を柔らかくかわしながら遠避けた。


  「萩、私の事はいいからお前は先にお駒様と休め…明日には桃や助蔵も来る」


 「仁左衛門様…いよいよですか ?」

萩の顔がさっと険しくなる。


 「いや 新しい公方(くぼう)様のお考えが水埜様にも今一つ読めないらしい。 先の御側御用人、間部様の頃には今のように容易に動けなかったが…今はきみが悪いくらい我等を野放しにしておる。ゆえに 事は急を要したが‥今暫くは…用心せねば…」

仁左衛門を始め、水埜彦四郎配下も不気味な沈黙を守る八代将軍徳川吉宗率いる幕閣の出方を見るしか無かった。

しかし、既に幕府新設の御庭番衆は、下前田から神鶴、鬼怒ヶ峯から天領奥越まで隈なく探索の手を延ばしていた。


つい最近まで間部詮房が幕府の政(まつりごと)を牛耳っていた頃は、神鶴藩家臣には辛い時期だった。


 「そうなのだ…冬の間は鬼怒ケ峯で身を潜めねばならなかったが―」

萩にとっても辛い廓住まいが続いた。


※萩が遊女に身を落とすきっかけを思い出すシーン


水埜彦四郎から
花籠楼に遊女として入り、下前田藩の内情を探って欲しいと頼まれた。


二年間の奥女中奉公が済めば親が決めた旗本の次男へ嫁ぐ段取りになっていた。
その条件で神鶴藩江戸上屋敷に行儀見習い奉公に上がった。

婚儀の後は、その次男に家業の町道場の跡を継いで貰う親の算段。
貧乏旗本は冷や飯食いの次男を放逐できる胸算用。


萩は一目惚れした水埜彦四郎の側近くで二年間は暮らせる。


 「萩殿…そなたにこのような無礼な頼み事を私の方からするは…お門違いであった。ならば…今すぐに、断って頂きたい」


水埜彦四郎は江戸上屋敷にて藩主側近くに使える奥女中 萩 に頭を下げていた。


 「ひ…彦四郎様」


萩は信じられない申し出に落胆し、水埜彦四郎の苦渋の頼み事に動揺していた。


 「二年の奉公も終わろうかと言う時に…しかも、廓で男の相手をしろだの、すまぬ。 正気の沙汰ではなかった…この話しは、聞かなかった事にして欲しい」


水埜彦四郎はそう言い終えると部屋を出て行こうと立ち上がった。


 「水埜様っお待ち下さいー」


萩は障子に手を掛けかけた彦四郎を呼びとめ

 「そのお話し…お引き受けしとうございます」

萩のこうべは、畳に垂れ、正座した膝の前にきちんと揃えられた二つの手の甲にぽたぽと雫が落ちた。か細い肩が微かに震える。


   「萩殿…」


水埜彦四郎は立ったまま こうべを垂れた萩を見つめる。



水埜彦四郎は、平伏す萩の側で身体を屈めると…そっと萩のか細い両肩に手を掛け、

「すまぬ…そなたを窮地に追いやる気はさらさら無い。このまま勤めを全うし、宿下がりするが最善…」

囁くような優しげな彦四郎の声が萩の恋心に再び火を燈すと

 「嫌です っ 彦四郎様 ずっとずっと、萩は彦四郎様のお側近くにいとうございます。彦四郎様をおしたい申し上げておりました。萩をどうか、 お抱き下さりませ…萩を彦四郎様の物にして下さりませ。 さすれば、萩は嫁がず、 一生この身を、彦四郎様に捧げまする」


萩は水埜彦四郎にしがみついた。


   「萩殿…」


 「すまぬ…我が身命は既に殿に捧げたもの…萩殿を抱くるは、殿を裏切る事になる」


その昔、衆道で結ばれた上下関係は片方が落命した後は追腹を切って殉死する事が道でありそれこそが武士道の誉れだった。


 「それならば…貴方様のお役目として私が廓にこの身を落としたあかつきには初めての客として私にお情けを下さりませ」


萩は素気なくされればされるほど 愛しい男の為なら死んでもいいとまで思いつめ、涙で濡れた熱い眼差しで彦四郎を見つめた。


彦四郎とて心清い美しい器量の奥女中が思い詰めて心情をを吐露する姿をそでに出来るはずも無く…

(簡単に言えば情にほだされて😏)

 「承知。そなたの初床入りは必ず私が申し受けつかまつる」


 


それから間もなくして、神鶴藩江戸上屋敷から一人の奥女中が消える事になる。

萩は江戸新吉原の「伊勢や」に、異例の振袖新造として揚羽太夫の世話を受ける事になった。
「伊勢や」は、当時江戸市中の武家が良く利用した大見世だった。


揚羽太夫は、下前田藩家老岩井弾膳が大金を工面してまで床入りを望むほどの入れ込みようの遊女だったが、太夫ともなれば床入りの客は太夫が選べるしきたりで例え国家老と言えど吉原では手も足も出せなかった。

揚羽太夫は岩井弾膳に伴って来る、下前田藩主の用人、田宮佐兵右衛にぞっこんだった。


弾膳はそれを薄々勘づいて田宮を伴って伊勢やにやって来る。
揚羽太夫は田宮が伴だって岩井弾膳が酒席を設けた時だけは、岩井の宴席に姿を見せた。
しかし、肝心の田宮佐兵右衛は、絢爛豪華 妖艶な遊女に囲まれた宴席であってもけして隙をみせず、職務に徹していた。


 「揚羽よ、新しい新造か…中々に初々しいではないか、今宵はその新造に酌を所望しようか」


 「主さん…羽若(はねわか)は、今宵が初お目見えなんして、どうぞお手柔らかにお願いしんす。」


座敷の一同が禿まで一斉に羽若を見る。

さすがに奥勤めで培った物腰や太夫から倣った遊郭の作法は完璧で一同を唸らせた。


 「ほほほぉ…これは近頃には珍しく品をそなえた美人よ…揚羽、其方も、うかうかしてられまいぞ わはははは」


  …岩井弾膳っ、お前が神鶴の利権を狙うは明白…

萩は、目の前の岩井弾膳の咽喉元を掻っ切って藩の憂いを断ち切ってしまいたい衝動に駆られ…必死で殺気を押し殺した。

時遡って 神鶴国元には、於勢の方の奏上によって藩主直胤は江戸表にて当分の間 謹慎 直胤の乱行の事実が証明された時に改めて、正式な処分(切腹? 蟄居改易?)沙汰するとした。その間、後継ぎの幼い八千代丸を補佐し、 政一切は下前田藩お預けとなった。


江戸新吉原…大見世《伊勢や》では、信州の小藩下前田藩家老岩井弾膳が、吉原一の花魁 揚羽太夫はじめ、振袖新造、禿を従えて
豪勢に酒席の宴を催していた。


  「御家老っ、国表より早馬が参っておりまする」


  「…うむ」

知らせの書状に目を通した岩井弾膳は、
  …いい塩梅の知らせよのぉ…


  「祝着っ」

と一言呟いた。



振袖新造羽若は、国表から届いた書状に目を通す岩井弾膳を凝視していた。

同席していた下前田藩側用人、田宮佐兵右衛(さひょうえ)が首尾を聞く。
   「岩井様…国表からいかに?」


  「田宮…首尾は上々、奥方の奏上を幕閣がお取り上げになった」

  「では…直胤公は…」

田宮佐兵右衛の表情が険しくなり、
羽若は、(お殿様…まさか)心臓が止まりそうなほどの緊張…


 「本日、江戸上屋敷にて謹慎、神鶴は我等の範疇じゃわクククク…」




萩(振袖新造羽若)はその場にへなへなと両手を突き、倒れそうになった。


  「あれ…羽若姉様ぁ大丈夫でありんすかぁ」

左右に控えていた禿(かむろ)は羽若の頭が突然前傾したので驚き悲鳴に近い声を挙げた。














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