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第十三話 夜と朝
③
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……二日後……
ライディヌ政権が倒れて二日経った。
民衆のデモも落ち着き、町は平穏を取り戻した。
ジンが破壊した橋はダウンタウンの住人達によって、復興が進んでいる。住人の行き来は運搬用の飛空挺が、定期便として活躍しているそうだ。
ライフシティーはこれから生まれ変わる……住人の手によって……。
そんな中、ロック達は町の居酒屋にいた。ロックは昼間にも関わらず、ハイボールを豪快に飲み、エリスとジンはその様子を呆れて見ている。
ユイとマキは、マグワイアホスピタルに入院している、大バァのお見舞に行っている。
ジンはロックに言った。
「医者探し……難航しているようだな?」
「まぁな……」
ロックにさ程気にしたようすはなく、ジンは怪訝な表情になった。
「気が進まないのか?」
ロックは耳をほじりながら言った。
「この町の夜は明けたばっかだ。今は猫の手でも借りてぇぐらいだろ……」
エリスもロックに同意した。
「そうだよね……。なんか町の人見てたら、気が進まないのね……」
ジンは呆れた様子で言った。
「何を呑気な……我々の旅にも必要だぞ……医者は……」
ロックは頭を掻いた。
「わかってっけどよぉ……。ところでジン……お前通信オーブで撮らなかったのか?デモ……」
ジンはデモの様子を録画して、近隣地域に配信する予定だったが……。
「撮ってない……必要なくなった……」
エリスが言った。
「何で?」
「デモが始まる寸前に、アデルの飛空挺がやって来たからな……」
ロックは気の抜けた表情で言った。
「ガゼルか……」
ジンは二人に言った。
「我々は、まんまと利用されたようだ……知っていたか?」
ロックが言った。
「何を?」
「この町は左大臣の息がかかっていた……」
ロックは戦ったマッシュの言葉を思い出した。
「まぁな……戦り合った奴が言っていた……」
ジンはニヤリとした。
「今回のアデルの対応……早すぎる……。この対応はアリエル将軍か……」
ロックは言った。
「下らねぇ派閥争いだろ?」
エリスが言った。
「派閥って?」
ジンが言った。
「右と左で争っているのだ。今回の事で左大臣の失脚を狙ったのだろ?」
エリスは苦笑いした。
「何か……大人の話で……嫌だ」
ロックは言った。
「俺らには関係ねぇよ……」
ジンはぼそりと呟いた。
「だといいんだがな……」
……ダウンタウン……
時を同じくして、ギルはダウンタウンの自分の小屋にいた。
ギルは机に着いて、各患者のカルテに目を通している。
すると小屋に誰かがやって来た。
ギルは気配を感じると、その人物に言った。
「なんだ……テメェか……。何の用だよ?」
やって来たのはジルだった。
「兄に向かって、テメェとは何だ?」
ジルはため息をついて、空いている椅子に座った。
ギルはジルを見ることなく言った。
「うるせぇよ……。それで、何の用だよ?」
「すまなかった……」
いきなりのジルの謝罪に、さすがのギルも驚いている。
ジルは続けた。
「十年前に……私に勇気があれば……。お前がこの町に絶望する事もなかったっ!」
ジルの表情は悲壮感で満ちていた。
するとギルが言った。
「親父も同じ事を言ってたよ……。一族を護るために……家訓を曲げたってな……」
ギルはカルテを机に置いて、立ち上がった。
「俺は別にアンタらを恨んでねぇよ。大見栄きって出てって……振り上げた拳を下ろせなくなっただけだ……」
ギルは微笑した。
「そんな俺に……医者としての道を作ってくれた……。アンタには感謝してるよ……兄貴……」
ジルは目を見開いた。
「ギル……お前……」
ライフシティーの夜は明けた……ただ町だけでなく、この兄弟の夜も明けた。
ライフシティーは確実に進みだしたのだ。
兄弟が和解した事により、晴々とした表情のジルは、病院に戻るため小屋を出た。
小屋を出るジルを見送るギルに、ジルは言った。
「ギル……これからどうするのだ?」
ギルは目を丸くした。
「どうって……ライディヌがいなくなったとはいえ、この町はまだまだ大変だ。しばらくダウンタウンに止まるが……」
ジルは首を横に振った。
「そうではない……出ないのか?世界に……」
ギルは目を見開いた。
ジルは続けた。
「ダウンタウンの患者の事は心配しなくていい……ライディヌが倒れた今、治療費は一律軽減し、さらに税金で補助する。よって、ダウンタウンの住人も医療を受けれる仕組みになる」
ギルは言った。
「兄貴……」
ジルはギルに対して優しい表情をした。
「行ってこい……。世界にお前の医療を広め……人々を救うのだろ?」
「世界はお前を必要としている……」
一方のロック達は引き続き居酒屋で、話し合っていた。
「でもバァさん、大丈夫そうでよかったな……」
ロックの言葉に、エリスが相づちした。
「うん……入院費もそんなに必要ないみたい……。それに村には定期船で帰るみたいだから……」
「そうか……マキさんとはここでお別れか……残念だ……」
少し儚げな表情のジンに、ロックが言った。
「何を言ってやがる……気の多い奴だな……」
ジルはロックに言った。
「ロックにはわからんかぁ……大人の恋愛事情は……」
「歳かわんねぇだろっ!」
ロックがジンに突っ込んだところで、エリスが言った。
「ユイも……一緒に帰っちゃうのかな?」
エリスの言葉に、一同はしばらく沈黙したが……ロックがニヤリとして言った。
「へっ……アイツは……俺達の仲間だろ?……なぁっ!ユイッ!」
ロックの言葉に、エリスとジンは目を丸くした。
すると……ロック達のテーブル席の側にある窓から、ユイがひょっこり顔を出した。
エリスはユイの登場に驚いた。
「ユイッ!……いつからそこにいたのっ!?」
ユイは目に涙を浮かべて何かを言っていたが……窓か閉まっているため、言ってる事がわからない。
ジンは呆れた様子で言った。
「顔が涙でくしゃくしゃだ……」
ロックは耳をほじりながら言った。
「嬉んじゃねぇの?」
泣きじゃくるユイを、一同はしばし眺めて、ロックが鍵を開けて窓を上げた。
ユイは泣きじゃくりながら、3人に言った。
「早く開けろよぉっ!バカッ!」
エリスはそんなユイに、笑顔で言った。
「よろしくねっ……ユイ……」
……その日の夜…アデル……
ライディヌはアデルの牢獄に囚われていた。
ライディヌは自分の状況を受け入れられず、憔悴していた。
「何故……こんな事に……。儂は……アデルに見捨てられたのか?」
暗い牢獄にたった独り……長く生きてきたが、初めての経験だった。
「交代の時間だ……」
牢の外では看守の交代時間のようだ。看守は数時間に1回交代する。
すると交代で来た看守が、ライディヌの牢の扉を開けて入ってきた。
ライディヌは食事の時間はとうに終ったはずと、思いながらも……そんな事を深く考える余裕はなかった。
すると看守が言った。
「貴方はアデルに捨てられたのですよ」
ライディヌは目を見開いた。
「何だと?……貴様は?」
看守はニヤリとした。
「まぁ……私には興味の無い話ですが……」
ライディヌはさすがに看守に違和感を感じた。
「貴様……何を言っておる?」
看守は制服を脱いだ……するとそこには、黒い髪を真ん中で綺麗に分けて、長い後ろ髪を三つ編みで束ねた、細目の男が現れた。
男は笑顔でライディヌを、その細い目で見ており、漆黒のスーツを纏っている。
男は笑顔で言った。
「もう悩む必要はありませんよ……貴方はここで死ぬのですから」
男の『死』という言葉に、ライディヌは目を見開いた。
「死……どういう事じゃ……貴様はっ!?」
男は笑顔のまま言った。
「どういう事?……普段は理由はありませんが……しいて理由をあげるなら……」
男はライディヌに近づいていく。
ライディヌは目を見開き怯えていたが……。
ザシュッ!
男はライディヌの心臓を……手刀で貫いた。
ライディヌは口を開き、目を見開き絶命した。
男は笑顔を崩さず、絶命したライディヌに言った。
「しいて言うなら……貴方は……」
「私の弟子を苦しめたから……ですかねぇ……」
ライディヌ政権が倒れて二日経った。
民衆のデモも落ち着き、町は平穏を取り戻した。
ジンが破壊した橋はダウンタウンの住人達によって、復興が進んでいる。住人の行き来は運搬用の飛空挺が、定期便として活躍しているそうだ。
ライフシティーはこれから生まれ変わる……住人の手によって……。
そんな中、ロック達は町の居酒屋にいた。ロックは昼間にも関わらず、ハイボールを豪快に飲み、エリスとジンはその様子を呆れて見ている。
ユイとマキは、マグワイアホスピタルに入院している、大バァのお見舞に行っている。
ジンはロックに言った。
「医者探し……難航しているようだな?」
「まぁな……」
ロックにさ程気にしたようすはなく、ジンは怪訝な表情になった。
「気が進まないのか?」
ロックは耳をほじりながら言った。
「この町の夜は明けたばっかだ。今は猫の手でも借りてぇぐらいだろ……」
エリスもロックに同意した。
「そうだよね……。なんか町の人見てたら、気が進まないのね……」
ジンは呆れた様子で言った。
「何を呑気な……我々の旅にも必要だぞ……医者は……」
ロックは頭を掻いた。
「わかってっけどよぉ……。ところでジン……お前通信オーブで撮らなかったのか?デモ……」
ジンはデモの様子を録画して、近隣地域に配信する予定だったが……。
「撮ってない……必要なくなった……」
エリスが言った。
「何で?」
「デモが始まる寸前に、アデルの飛空挺がやって来たからな……」
ロックは気の抜けた表情で言った。
「ガゼルか……」
ジンは二人に言った。
「我々は、まんまと利用されたようだ……知っていたか?」
ロックが言った。
「何を?」
「この町は左大臣の息がかかっていた……」
ロックは戦ったマッシュの言葉を思い出した。
「まぁな……戦り合った奴が言っていた……」
ジンはニヤリとした。
「今回のアデルの対応……早すぎる……。この対応はアリエル将軍か……」
ロックは言った。
「下らねぇ派閥争いだろ?」
エリスが言った。
「派閥って?」
ジンが言った。
「右と左で争っているのだ。今回の事で左大臣の失脚を狙ったのだろ?」
エリスは苦笑いした。
「何か……大人の話で……嫌だ」
ロックは言った。
「俺らには関係ねぇよ……」
ジンはぼそりと呟いた。
「だといいんだがな……」
……ダウンタウン……
時を同じくして、ギルはダウンタウンの自分の小屋にいた。
ギルは机に着いて、各患者のカルテに目を通している。
すると小屋に誰かがやって来た。
ギルは気配を感じると、その人物に言った。
「なんだ……テメェか……。何の用だよ?」
やって来たのはジルだった。
「兄に向かって、テメェとは何だ?」
ジルはため息をついて、空いている椅子に座った。
ギルはジルを見ることなく言った。
「うるせぇよ……。それで、何の用だよ?」
「すまなかった……」
いきなりのジルの謝罪に、さすがのギルも驚いている。
ジルは続けた。
「十年前に……私に勇気があれば……。お前がこの町に絶望する事もなかったっ!」
ジルの表情は悲壮感で満ちていた。
するとギルが言った。
「親父も同じ事を言ってたよ……。一族を護るために……家訓を曲げたってな……」
ギルはカルテを机に置いて、立ち上がった。
「俺は別にアンタらを恨んでねぇよ。大見栄きって出てって……振り上げた拳を下ろせなくなっただけだ……」
ギルは微笑した。
「そんな俺に……医者としての道を作ってくれた……。アンタには感謝してるよ……兄貴……」
ジルは目を見開いた。
「ギル……お前……」
ライフシティーの夜は明けた……ただ町だけでなく、この兄弟の夜も明けた。
ライフシティーは確実に進みだしたのだ。
兄弟が和解した事により、晴々とした表情のジルは、病院に戻るため小屋を出た。
小屋を出るジルを見送るギルに、ジルは言った。
「ギル……これからどうするのだ?」
ギルは目を丸くした。
「どうって……ライディヌがいなくなったとはいえ、この町はまだまだ大変だ。しばらくダウンタウンに止まるが……」
ジルは首を横に振った。
「そうではない……出ないのか?世界に……」
ギルは目を見開いた。
ジルは続けた。
「ダウンタウンの患者の事は心配しなくていい……ライディヌが倒れた今、治療費は一律軽減し、さらに税金で補助する。よって、ダウンタウンの住人も医療を受けれる仕組みになる」
ギルは言った。
「兄貴……」
ジルはギルに対して優しい表情をした。
「行ってこい……。世界にお前の医療を広め……人々を救うのだろ?」
「世界はお前を必要としている……」
一方のロック達は引き続き居酒屋で、話し合っていた。
「でもバァさん、大丈夫そうでよかったな……」
ロックの言葉に、エリスが相づちした。
「うん……入院費もそんなに必要ないみたい……。それに村には定期船で帰るみたいだから……」
「そうか……マキさんとはここでお別れか……残念だ……」
少し儚げな表情のジンに、ロックが言った。
「何を言ってやがる……気の多い奴だな……」
ジルはロックに言った。
「ロックにはわからんかぁ……大人の恋愛事情は……」
「歳かわんねぇだろっ!」
ロックがジンに突っ込んだところで、エリスが言った。
「ユイも……一緒に帰っちゃうのかな?」
エリスの言葉に、一同はしばらく沈黙したが……ロックがニヤリとして言った。
「へっ……アイツは……俺達の仲間だろ?……なぁっ!ユイッ!」
ロックの言葉に、エリスとジンは目を丸くした。
すると……ロック達のテーブル席の側にある窓から、ユイがひょっこり顔を出した。
エリスはユイの登場に驚いた。
「ユイッ!……いつからそこにいたのっ!?」
ユイは目に涙を浮かべて何かを言っていたが……窓か閉まっているため、言ってる事がわからない。
ジンは呆れた様子で言った。
「顔が涙でくしゃくしゃだ……」
ロックは耳をほじりながら言った。
「嬉んじゃねぇの?」
泣きじゃくるユイを、一同はしばし眺めて、ロックが鍵を開けて窓を上げた。
ユイは泣きじゃくりながら、3人に言った。
「早く開けろよぉっ!バカッ!」
エリスはそんなユイに、笑顔で言った。
「よろしくねっ……ユイ……」
……その日の夜…アデル……
ライディヌはアデルの牢獄に囚われていた。
ライディヌは自分の状況を受け入れられず、憔悴していた。
「何故……こんな事に……。儂は……アデルに見捨てられたのか?」
暗い牢獄にたった独り……長く生きてきたが、初めての経験だった。
「交代の時間だ……」
牢の外では看守の交代時間のようだ。看守は数時間に1回交代する。
すると交代で来た看守が、ライディヌの牢の扉を開けて入ってきた。
ライディヌは食事の時間はとうに終ったはずと、思いながらも……そんな事を深く考える余裕はなかった。
すると看守が言った。
「貴方はアデルに捨てられたのですよ」
ライディヌは目を見開いた。
「何だと?……貴様は?」
看守はニヤリとした。
「まぁ……私には興味の無い話ですが……」
ライディヌはさすがに看守に違和感を感じた。
「貴様……何を言っておる?」
看守は制服を脱いだ……するとそこには、黒い髪を真ん中で綺麗に分けて、長い後ろ髪を三つ編みで束ねた、細目の男が現れた。
男は笑顔でライディヌを、その細い目で見ており、漆黒のスーツを纏っている。
男は笑顔で言った。
「もう悩む必要はありませんよ……貴方はここで死ぬのですから」
男の『死』という言葉に、ライディヌは目を見開いた。
「死……どういう事じゃ……貴様はっ!?」
男は笑顔のまま言った。
「どういう事?……普段は理由はありませんが……しいて理由をあげるなら……」
男はライディヌに近づいていく。
ライディヌは目を見開き怯えていたが……。
ザシュッ!
男はライディヌの心臓を……手刀で貫いた。
ライディヌは口を開き、目を見開き絶命した。
男は笑顔を崩さず、絶命したライディヌに言った。
「しいて言うなら……貴方は……」
「私の弟子を苦しめたから……ですかねぇ……」
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